前回までのように、一々保険会社にかみつくと・・・どうのような反応が返ってくるのでしょうか?
 
 当然ですが、担当者は「こん畜生(怒)」と思うでしょう。SC(保険金支払い部門)の職員は、対人で一年でおよそ100件の処理に当たります。対物の担当はもっと多いはずです。入院3か月に及ぶような重傷案件や死亡案件ならまだしも、むち打ちなど軽傷に多くの時間を割いていられません。

 初期対応(病院への治療費一括払い手続き)→休業損害の支払い→3か月で治療打ち切り→さっさと示談、このサイクルを事務的に管理していきます。この流れで、一々争ってくると・・面倒な被害者の烙印を押されます。もちろん、揺るぎない証拠を示して、紳士的に理路整然と交渉してくる被害者さんには、相応の対応をします。請求内容が常識的で、正当であれば、多少の融通はしてくれるものです。

 もし、不正な書類を提出したり、非常識な請求を言い続ければ、担当者は弁護士介入を検討します。弁護士を立てられたら、「今後の話し合いは、私共の法律事務所が対応します」と弁護士名と印鑑がずらーっと並んだ書面が届きます。今後一切、加害者はもちろん。保険会社担当者との直接の連絡はできなくなります。そして、その法律事務所に電話しても、「その請求にはお支払いしかねます」と、さらに塩対応、いえ、タバスコ対応となります。納得できる証拠書類を提出しなければ、びた一文払いません。

 それでも、ごねると、「債務不存在確認訴訟」をうたれます。これは。「これ以上、払う言われはない。お金が欲しくば法廷で決着しよう」との裁判です。その結果、被害者さんは、屈するか戦うかの選択になります。私の経験した限りでは、裁判で争っても被害者さん側が勝った試しがありません。保険会社と弁護士は、負ける戦いなど挑むはずがありませんので。負けるくらいなら、とっくに保険金を支払っています。

 そのような、不利な戦いに臨むべきではありません。交渉で取れるもの、裁判で決着をつけるもの、請求すべき項目・金額を見極める必要があります。問題は、常識的で正当な請求なのか否か、被害者さんがわからない時です。その場合、弁護士や交通事故相談を利用して、意見を聞いてみればよいと思います。周囲からの雑音に迷わされるべきではありません。無責任な周囲は、「保険会社にはガツンと強気で言わなきゃダメ」、「むち打ちは後からでるので、長く治療すべき」、「保険会社が払わなければ、加害者に直接、請求すべき」等々・・これで保険会社を怒らせて、悪い結果になっても、誰も責任を取ってくれないでしょう。
 そして、最も厄介なものは、「感情」です。ある日、交通事故被害で理不尽な目にあった被害者さんの怒りは、事故以来、詫びにも来ない加害者ではなく、保険会社にぶつけるしかありません。担当者の電話での口調や態度で、その怒りは心頭に達します。ついつい、激しい口調になるのが人間です。しかし、相手も人間です。よく、被害者さんの相談から、「保険会社担当者の態度が悪い」との相談を聞きますが、実は、その原因は被害者さんの口調にあることが多いようです。担当者を、「お前」呼ばわり、「ふざけるな!」などのライト暴言、「あんたじゃ話にならない、上の者をだせ」、「女じゃだめだ、担当者代われ」・・・これを言われた担当者は、紳士路線を捨てて、合わせ鏡の対応に切り替えるでしょう。担当者だってアウトレイジ化するのです。

 私が研修でSCにいた時、このような被害者に憤慨している担当者さんとよく飲みに行きました。毎日、被害者さん達に暴言を言われて、大変な職業です。もちろん、彼らはプロですから、理性的に交渉できない被害者さんであっても、慣れた対応で進めます。しかし、何度も言いますが、彼らも人間です。ストレスが高じれば、絶対に意地悪をしたくなります。もちろん、憎たらしいからと言って、被害者相手に違法や不正など働きません。後でバレて、失職や査定が下がるような事をするわけありません。できる範囲で、合法的に、スマートに、より厳しい対応をするでしょう。あるいは、あっさり、弁護士介入とするかもしれません。 やはり、
 

 払う側が強いのです。

 
 被害者さん側は、このような視点がどうしても欠けてしまうのです。だからと言って、保険会社の言いなりにしろ、保険会社に逆らうな、このような卑屈な事を延々と解説しているのではありません。戦うべき時はしっかり戦うべきです。ただし、戦う時を誤るなと言っているのです。そして、自分は頭に血が上るタイプ、冷静に交渉などできるか!と思われたら、お金はかかりますが、迷わずプロに相談すべきです。その代金が見合えば、早めに弁護士を雇うのも好判断に思います。
 
 では、戦うべき時はいつか、そして、冷静に交渉した結果は、それは明日、最終回にて。