◆ めまい他に対する最新の検査機器

 基本的な眼振検査は町の耳鼻科でも備えるようになりましたが、大学病院などでは、最新の検査機器も登場しています。
 
① ビデオ式眼振計測装置、VOG

 

 自発眼振検査、頭位眼振検査、頭位変換眼振検査、カロリック検査などに対応しており、前庭検査をPCにカメラを接続し起動するだけで、簡単に計測、解析ができて、精度も高いのです。

 ENGのように電極を貼り付けることや、校正を行う必要がなく、被験者の負担が少なく、簡易に検査を行うことができます。
 
② エアーカロリック装置

 患者と検査員両方の負担を減らす新しいカロリックの検査方法です。

 30度の冷水、44度の温水を用意することなく、温風、冷風を注入して、温度眼振刺激を与えます。注水式に比べ被験者に対して負担が少ないカロリック検査を実施することができます。

⇐ この方法、最近ではみなくなりました
 
② Titan聴覚検査機器

 Titanは、インピーダンス(オージオメーター)、聴性脳幹反応=ABR、耳音響放射=OAE、新生児スクリーニング検査=ABRISに対応できる検査機器です。

 いずれの最新機器も、操作が簡便で精度が高いことをセールスポイントにしています。めまい・失調および平衡機能障害の治療や立証では、ネット検索で、最新設備を備えている神経耳鼻科を選択することです。

 めまい・平衡機能障害・失調で後遺障害が審査されるのは、深部知覚、前庭、眼、小脳、大脳の障害が立証されることが前提であり、現実的には、頭部外傷を原因としたものに限られています。外傷性頚部症候群(むち打ちなど)で、めまいを訴えても、相手にはされません。
 
※ 平衡感覚を感知する器官

 耳には、音を聞く働きの他に、身体のバランスをとる、平衡感覚の役割があります。耳の平衡感覚を感知する器官としては、耳石器と半規管があります。耳石器は2つあり、卵形嚢は水平に、球形嚢は垂直に位置していて、この2つの袋の中には、リンパ液と炭酸カルシウムでできている耳石という小さい石が入っています。

 耳石器の内部は、薄い膜で覆われており、その奥には有毛細胞という細かい毛の生えた感覚細胞があって、耳石がリンパ液のなかを動くと、この有毛細胞の毛が刺激されて、位置を感知することができるのです。卵形嚢は水平方向の動きを、球形嚢は垂直方向の動きを感知しています。

 半規管は、前半規管・後半規管・外側半規管の3つがあり、まとめて三半規管と呼ばれています。半規管は3つの中空のリングから構成されており、内部は内リンパ液で満たされています。前庭の近くに膨大部と呼ばれるふくらみがあり、そこには感覚毛をもった有毛細胞があります。感覚毛の上にはクプラと呼ばれるゼラチン状のものが載っています。

 内リンパ液が動くことによって、クプラが押され、感覚毛が曲がり、有毛細胞が興奮します。頭部が回転すると、内リンパ液はしばらく静止したままなので、感覚毛が逆に曲がります。この情報と視覚の情報から体が回転したと認識します。

 三半規管は、それぞれ別の面にあるので、あらゆる回転方向を認識することができます。これらの半規管はそれぞれ直角に交わっていてX・Y・Z軸のように3次元空間の回転運動の位置感覚を感知しています。G難度、E難度をいとも簡単に達成する体操の内村航平さんは、研ぎ澄まされた3次元空間の回転運動の位置感覚を有しているものと思われます。
 

<めまい・失調・平衡機能障害の後遺障害等級>

 
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