テーマは、「決して見逃してならない後遺障害3選」。顔面醜状痕、鎖骨骨折、むち打ちから3問出題、弁護士の解説を加えました。セミナー会場は雨の日も安心の駅直結です。
とくに、参加された損保代理店の方で、ちょうどご自身が転倒して肩鎖関節を脱臼し、その脱臼部分が出っ張っているとのことです。傷害保険に加入しており、通院などの保険金は受け取っているものの、後遺障害の申請をしていないそうです。早速、後遺障害診断書を記載頂き、鎖骨の写真を添えて提出するよう指示しました。死亡保険金額が1000万円なので、おそらく12級5号の認定から、その10%である100万円が支払われるはずです。
毎度毎度のことですが、自損事故に対しての支払いは、入通院を除き厳しいものです。入通院の保険金は、1日いくらと保険金が決まっており、病院に行った日をカウントするだけですから簡単です。日数が少なければ、診断書もいらず、請求書の通院日欄に〇をするだけで、迅速に支払われます。
ところが、後遺障害となると話は別です。審査自体が難しいこともあり、自賠責保険・調査事務所に諮問(何級になりすかねぇと質問)することによって、ある程度の精度をもった回答を期待しますが・・初回は非該当か低い等級で返ってくることが多いのです。その原因は、担当者が後遺障害に慣れていないこと、保険会社の支払いが大きいこと、とくに、相手がいないのですから、相手の自賠責保険に求償はなく、全額が保険会社の出費になることが大きいと思います。
保険会社とは、常に支払いに対して慎重なのです。どうしても、秋葉事務所の出番が多くなります。問題は、その相談が弊所に届かないことです。多くの方は、保険会社の(初回の)回答で、あきらめてしまうと思います。
そんな事例集 👉 ちょっとアーカイブ ~ 自分の保険への後遺障害請求
簡単にあきめずに・・ご相談をお待ちしております。
自損事故 12級6号:橈骨遠位端骨折 異議申立(40代男性・大阪府)
【事案】
バイクでツーリング中、路上の陥没にタイヤを取られて転倒、右手首を骨折したもの。手術でスクリュー固定とした。後に抜釘したが、安定の為に一部のスクリューを残した。原因の特定まで及ばないが、手関節の可動域制限が残った。
当たり前のことですが、後遺症などなく治ることが一番です。それでも、事故で損失した時間と痛み、その代償はお金に他なりません。本件、ご依頼者様の希望は完全回復です。それでも、必ずなんらかの支障は残るケガです。ご希望を尊重しつつ、等級認定も取るミッションとなりました。
いやぁ、根性のある被害者さんでした
14級9号:橈骨遠位端骨折(50代女性・埼玉県)
【事案】
信号のない交差点を自転車で直進中、左方より走行してきた自動車に衝突し、負傷した。直後から右手の痛み、神経症状に悩まされる。 【問題点】
当初、保存療法で問題ないということだったが、3回目の診察にて「骨折部にズレが生じたため、急遽3日後にプレート固定の手術を受けることとなったが、術後に痺れが出現したため、抜釘時に手根管開放術を同時に実施する方針となり、症状固定予定日が更に遅れることとなった。 【立証ポイント】
ご本人・ご家族の意向としては、後遺障害の認定を受けることよりも完治を目指す(症状が少しでも回復するのであれば、治療期間や金額は関係ない)ということだったため、症状固定日の設定に苦労した。今回のようなケガであれば、事故から1年が妥当だが、ご本人・ご家族と医師の意見を勘案し、1年半で症状固定することとなった。ご本人が外国籍だったため、自覚症状については、ご家族とともに箇条書きしたメモを作成し、病院窓口へ渡した。
骨癒合も良好なため、自覚症状メインの申請であったが、1ヶ月で14級9号の認定を受けることができた。ご本人・ご家族が望む治療期間を確保し、後遺障害等級認定を受けるという2つのミッションをなんとかやり遂げることができた。
先日の実績投稿で予告の通り、近年、自身契約の人身傷害や傷害保険への後遺障害申請を振り返ってみたいと思います。
それぞれ、初回申請は厳しい回答が多いようです。任意保険でも後遺障害の審査・認定は、自賠責保険の基準に照らしています。そこで、担当者は、自賠責保険の調査事務所に諮問(つまり、軽く審査をしてもらう)することになります。その結果は、比較的に読めるものです。ただし、軽易なケガでは、共済や通販系の保険会社などは、よくわかっていない担当者がお手盛りで認定するのでは・・との懸念があります。とくに、自損事故での初回申請はそう感じます。逆に加害者が存在し、その自賠責保険から回収の目途が立つ場合の人身傷害は、認定・支払いが優しく感じます。 以下の例は、幸い秋葉にたどり着く事で認定を得た方々です。全国では、保険会社の審査に従ってしまう方が多いと思っています。また、等級認定となっても、逸失利益の交渉が必須です。かなり低い額で提示してきますので…一発で合意しないように、秋葉事務所ご相談下さい。
自損事故 14級9号⇒12級13号:肩腱板損傷 異議申立(40代男性・埼玉県)14級9号⇒12級13号:腰椎捻挫 異議申立(30代男性・東京都)
自損事故 11級7号:腰椎圧迫骨折(20代男性・東京都)
人身傷害 12級6号 :橈骨遠位端骨折(60代女性・神奈川県)
傷害保険 併合9級:両舟状骨骨折(40代男性・東京都)
人身傷害 併合14級:頚椎・腰椎捻挫(50代男性・神奈川県)
相手のいない事故、自分で転倒、ぶつかったなど、いわゆる自爆事故の認定について。やはり、初回では「非該当」が目立ちます。おそらく、「そんなもんかな・・」と、受け入れてしまう人が多いのではないかと思います。
本件の被害者さんは、以前に被害事故でお手伝いさせて頂いた方です。その経験から、非該当はおかしいと、秋葉への再依頼となりました。結果は、毎度のごとく、丁寧に再申請を行って等級をつけました。
経験上、自賠責保険なら初回で認定されるべき件でした。つまり、自身加入の保険(人身傷害、自損事故、搭乗者傷害)への後遺障害認定の方が、厳しく感じるのです。とくに自損事故の場合、相手がいません。これは、相手の自賠責保険からの回収が0円を意味します。途端に、保険会社の支払いが渋くなる・・とはうがった見方でしょうか。
自分の保険への請求依頼・・増えています。
PS.
もう、最初から肋骨変形狙いでした。左右14本バキバキで、14級ではかわいそうです。おそらく審査側も同じ感想をもつはずです。初期の相談から、丁寧にフォローを続けて、体幹骨の変形12級を鎖骨・肋骨双方で達成しました。 その後の賠償交渉では、本来、多額の逸失利益の見込めない鎖骨・肋骨の変形でありながら、連携弁護士はしっかり交渉、がっつり確保しました。折れ方や治療経緯をみれば、痛み・不具合の残存は強く残るはず、逸失利益が生じて然るべきと思います。
なかなか取れない肋骨変形、弊所では3例目の成功です
併合11級:鎖骨・肋骨骨折(50代女性・静岡県)
【事案】
自宅の敷地内に停車中、自車からドアを開けて荷物を降ろしている際、後方から前方不注意の自動車の衝突を受け、体がドアに挟まれ受傷したもの。右鎖骨と左右14本の肋骨が折れた。 【問題点】
当初、退勤時であることから労災適用の可能性があった。ただし、途中の買い物により、寄り道で免責の可能性が・・。トライしてみましょうと申請のところ、労災OKとなった。
症状としては、骨癒合が中々進まず、激痛に耐えながら症状固定まで13カ月を要することに。また、症状固定後も、リハビリしていた整形外科が閉院してしまうなど、山あり谷ありであった。
当初から注力した部位は、肋骨の変形癒合(12級5号)。「裸体で確認できる」ことが条件であるが、多くの場合、外側から確認できるほどの変形に至らない。 【立証ポイント】
骨癒合をじっくり待って、仕上げの作業に移った。鎖骨の撮影は慣れたもので、簡単に変形・左右差を確認できた。肋骨は、家族に協力により撮影角度などを工夫して残した。また、治療経過や困窮点など、文章4頁で補完した。
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手指の障害において、突き指は「変形障害」の起因となるケガの一つです。障害を残さぬよう、正しい処置が望まれます。今回は指の変形シリーズのまとめにもなります。 (1)病態
突き指は、指を突いたときに指先から力が加わって、関節や靱帯、腱、骨などに損傷が加わることです。多くは、野球やバスケットなど、球技でボールを受け損ねて受傷します。また、ドアや壁などの固いものに指先を強くぶつけた場合でも起こります。つまり、交通事故外傷でもあり得ます。
その突き方や強さなどによって、症状もさまざまであり、ケガそのものの状態も捻挫程度から脱臼や骨折までとさまざまです。手指の正常な状態では、上側に伸筋腱、下側に屈筋腱、関節の左右には、内・外側側副靱帯があり、それぞれ連結して、指の可動域を確保しています。骨折や靱帯損傷などの場合は関節が変形したり、後の動きに支障が出たりということもあるので、正しい処置が必要になります。昔はいい加減でした。冷やすだけなら良いのですが、曲がった指を無理やり引っ張るなど、間違った処置がされていました。これは靭帯に悪影響でしかありません。
(2)治療
(1)病態と治療
このサインは、国によって意味が異なります。英語圏では「幸運を」との意味が主流ですが、ギリシャでは「くたばれ」の意味だそうです。一説によると、日本の一部では「チョメチョメ」との意味でも使われるそうです(おそらく、昭和の山城 新伍さん由来?)。ここでは、骨折後の変形として話を進めます。
患指がとなりの指の下側に潜り込むことを、クロスフィンガーと言います。示指中手骨骨折部が回旋した状態で骨癒合したことが原因です。通常は骨切り術で対応します。再骨折させ、指を曲げたときに重ならない位置に整複して、ミニプレートなどで固定する手術です。 (3)後遺障害のポイント
クロスフィンガーにおける後遺障害についてですが、手の専門医の骨切り術でクロスフィンガーが矯正されれば、後遺障害を残しません。また、クロスフィンガーによる後遺障害は、等級認定表に定めがありません。
毎度のごとく、以下、手指の機能障害をご参照下さい。変形が改善されて、可動域にも問題がなかったとしても、痛みや不具合が残れば、14級9号だけでも認定させたいところです。 👉 上肢の後遺障害 52 手指の障害 序論 ...
(1)病態
指の第1関節が木槌(きづち)のように曲がった状態なので、マレット変形と呼びます。
マレット変形は、伸ばすスジ(腱)である伸筋腱が伸びたために生じるものと、第1関節内の骨折が生じて起こるものに分かれます。痛みや腫れがひどく、自分の意志で曲げ伸ばしは不能です。他動での伸展・屈曲は可能です。 (2)治療
伸筋腱の断裂を腱性マレットと呼び、剥離骨折は骨性マレットと呼ばれています。腱性マレットでは、装具やシーネを用いた固定による保存療法をおこない、必要に応じて鋼線による指を伸展した位置での固定や腱を縫合します。
(1)病態
モノをつまむとき、ビンのふたを開けるときなど母指に力を必要とする関節をCM関節と呼びます。CM関節=第1手根中手骨関節は、母指が他の指と向き合って、物をつまむ動作ができるように働いています。
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(1)病態
手指のまん中の関節の骨折です。手指の関節の骨折では、もっとも治療が困難で、手術が選択されることが多い骨折です。
指先から2つ目の関節を脱臼することをPIP関節脱臼といい、しばしば骨折を伴う脱臼骨折となります。これは、突き指をしたときや、関節が本来動く範囲を超えて強制的に動かされたときに生じます。 (2)治療
関節が安定していればシーネなどで外固定して治療します。指専用のアルフェンスシーネ(↓写真)で外固定します。関節が不安定で、関節面に40%以上のズレが認められるときは、手術が選択されます。細い骨の固定では毎度おなじみ、キルシュナー鋼線(という専用の針金)で固定します。靱帯断裂では、骨髄内からの陥没骨片の整復、ピンを用いた骨折の安定化などをおこないます。
拘縮や変形が進み、強く固定する必要がある時は、創外固定器という持続牽引装置が用いられてきました。最近は変形癒合のときは、良好な機能は期待できないため、再建手術を要します。矯正骨切り手術や、肋骨肋軟骨を移植して関節を再建する手術が行われます。手指であっても、人工関節置換術や関節固定術などが選択されることがあります。
(3)後遺障害のポイント
処置が良好でも指関節の拘縮が避けられず、関節可動域制限を残した場合は、機能障害として可動域の計測を行い申請します。序論 手指の機能障害をご参照下さい。 👉 続きを読む »
中手骨骨幹部骨折 (ちゅうしゅこつこつかんぶこっせつ)
(1)病態
骨幹部骨折は、骨折線の方向によって横骨折と斜骨折に分類されています。関節部の骨折では、骨片が小さくズレが少ないときは、変形もなく、腫れや痛みなどの症状も比較的軽度であり、いわゆる突き指として放置されることが一般的です。骨片が小さく、転位が少ないとXPでは見逃されることも多くなります。
早期に適切な治療がなされないと、ズレが増強し、後に大きな障害を残すことがあるので注意が必要です。 (2)治療
基本的には、先の中手骨「頚部」「基底部」に同じです。軽度であれば、例えば亀裂骨折(ひびが入っただけ)は、サポーター等の外固定、保存療法で癒合を待ちます。およそ6週間程度の固定で改善が得られますが、重度の腱損傷や骨折を伴うときは、手術が選択されています。骨折部が連続性を失っている(折れた骨が離れている)場合は、骨の外側から、あるいは髄内にキルシュナー鋼線を通して固定します。さらに、転位(骨折部がズレてしまう)を防ぐため、外側からシーネで外固定も加えます。 続きを読む »
中手骨基底部骨折 (ちゅうしゅこつきていぶこっせつ)
(1)病態
中手骨の基底部とは、手の甲の骨となる中手骨の手首側、根本です。単に基部と呼ぶこともあります。中手骨基底部と接する手根骨との間でCM関節を構成します。
基底部骨折は、直接の打撲などで発症しています。脱臼骨折では、手部の隆起、突出、手指の顕著な変形が見られます。親指の中手骨骨折は、付け根部分に発生することが多いのですが、親指の中手骨基底部関節内の脱臼骨折では、尺側基底部に骨片を残し、遠位骨片が橈側近位へ向けてズレるものをベネット骨折と呼んでいます。 ベネット骨折の実例 👉 10級7号:ベネット骨折(40代男性・埼玉県) 交通事故では、手を固く握った状態で、打撃、打撲などの衝撃が加わって発症しています。この骨折は整復位保持が困難な骨折として知られており、わずかなズレが残っても痛みが持続します。とりわけ親指に機能障害を残すことから、ベネット骨折では手術が選択されています。 続きを読む »
中手骨頚部骨折 (ちゅうしゅこつけいぶこっせつ)
(1)病態
中手骨の頚部とは、上図の青字の部分(中手骨5本すべて)です。手の甲の骨が指の骨に接する骨頭部のくびれの部分にあたります。頚部骨折は頻度が高く、次に基底部骨折、骨幹部骨折、骨端線離開の順で発生しています。共通する症状として、外傷の衝撃後に激痛、骨折部位の圧痛、手指の機能不全、腫脹、変形、運動障害などを発症します。拳を握った状態で打撃、打撲による外力が加わったときに発症します。
パンチ動作で発生することも多く、ボクサー骨折とも呼ばれます。好発部位は、環指や小指の中手骨によく発生します。交通事故では、バイクや自動車のハンドルを握ったまま正面衝突したときに、外力が中手指節関節から中手骨の長軸に向かうことで発生しています。
腱と関節包との結合部位では剥離骨折が多く発生し、伸筋腱断裂によってマレットフィンガーと呼ばれる遠位指節間関節の屈曲変形が生じることがあります。
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側副靭帯損傷(そくふくじんたい そんしょう)
親指MP関節尺側側副靭帯の損傷 = スキーヤーズサム
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屈筋腱(くっきんけん)
(1)病態
手の掌側にある屈筋腱が断裂すると、筋が収縮しても、その力が骨に伝達されないので、手指を曲げることができなくなります。
切創や挫創による開放性損傷、創のない閉鎖性損傷、皮下断裂があります。屈筋腱の損傷では、同時に神経の断裂を伴うことが高頻度で起こります。このときは、屈筋腱と神経の修復を同時に行うことになり、専門医が登場する領域です。
手指の屈筋腱は、親指は1つですが、親指以外は、深指屈筋腱と浅指屈筋腱の2つがあります。親指以外で、両方が断裂すると、手指が伸びた状態となり、まったく曲げることができなくなります。深指屈筋腱のみが断裂したときは、DIP関節だけが伸びた状態となり、曲げることができません。しかし、PIP関節は、曲げることができるのです。 (2)治療
指関節の可動域制限があり、拘縮が進む場合、オペを検討する必要があります。屈筋腱損傷の治療は、手の外傷の治療のなかで最も難しいものの1つで、腱縫合術が必要です。年齢、受傷様式、受傷から手術までの期間、手術の技術、手術後の後療法、リハビリなどにより治療成績が左右されます。
治療が難しい理由としては、再断裂と癒着の2つの問題があります。手術では、正確かつ丁寧な技術が求められ、手術後の後療法も非常に重要となります。 続きを読む »
伸筋腱 脱臼(しんきんけんだっきゅう)
(1)病態
手を握って拳骨を作ったときの拳頭部分は、中手骨頭を覆うように伸筋腱が存在しています。この中手骨頭は丸い形をしており、矢状索と呼ばれる組織が、伸筋腱が中央部からずれることのないように支えています。
この矢状索が損傷すると、伸筋腱を中央部に保持できなくなり、拳骨を握ると、伸筋腱が中手骨頭の横にズレ落ちるのです。この状態を伸筋腱脱臼と呼んでいます。 (2)治療
治療は手術により、矢状索損傷部の縫合、もしくは伸筋腱の一部を用いて矢状索を再建する方法が実施されています。後述の後遺障害14級9号の実例では、指関節の可動に問題なく、ひどい痛みでもないケースでした。当然、オペはしません。保存療法のまま症状固定日を迎えました。脱臼といっても軽重があるようです。
指のオペができる病院・医師は限られます。脱臼が整復された後も、指の曲がりが改善しているか、硬直していないか、慎重に観察を続けます。異常があっても漫然と「様子をみましょう」とせず、専門医の診察を継続すべきと思います。どうも、「指ごとき」と軽く考える医師もいるように思います。
(3)後遺障害のポイント 指の曲がりが改善し、機能障害を回避できたとして、痛み・不具合などの症状の一貫性から14級9号を確保したいところです。 14級を確保した実例 👉 14級9号:手指 伸筋腱脱臼(40代女性・静岡県) 以下、序論 ...
伸筋腱損傷 (しんきんけんそんしょう)
(1)病態
伸筋腱が断裂すると、筋が収縮しても、その力が骨に伝達されることはなく、手指を伸ばすことができなくなります。つまり、曲がったままになります。切創や挫創による開放性損傷と、創がなくて生じる閉鎖性損傷、皮下断裂があります。
皮下断裂は、突き指などの外力によって生じるもので、これが圧倒的多数です。開放損傷により、手の甲で腱が断裂したときは、MP関節での手指の伸展が不良となります。手背部の伸筋腱は、腱間結合という組織で隣の伸筋腱と連結しているので、完全に伸展することはできませんが、一定程度までの伸展は可能です。骨折と違い、強い疼痛を伴うことはありません。
DIP、PIP関節の背側での皮下断裂は、放置すると伸筋腱のバランスが崩れ、スワンネック変形やボタンホール変形という手指の変形に発展します。
指の切断です。一覧表を見て頂いた方が早いと思います。
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手指の機能障害(多くは可動域制限)による後遺障害等級 手指の障害の傷病名別の各論に入る前に、手指の機能障害について、まとめて等級を整理しておきましょう。 (1)機能障害の3パターン
機能障害とは、① 骨折・脱臼後の変形などから物理的に関節が曲がらなくなる可動域制限と、② 神経麻痺・断裂などで自らの意志で曲げることができなくなる可動域制限があります。それぞれの計測に際して、前者は他動値で判断され、後者は自動値で判断します。
問題は、すべての医師がこの理屈を理解していないことです。多くの被害者さんは、未計測や誤計測で等級を取りこぼしていると思います。実際、間違った計測値や、自動値が未計測の診断書の方が多いくらいです。つまり、秋葉事務所の出番となります。
機能障害では、他に ③「動揺性」といって、関節がぐらぐらになるものもあります。膝関節に多く、靭帯損傷後に残存する障害です。指の場合は、指の靭帯が切れて、関節の保持ができなくなる状態ですが、多くは手術で固定します。この場合、指の可動域に制限が加わりますが、動揺性よりは可動域制限に収めるようです。そのせいか、手指の動揺性による機能障害について、自賠責、労災共に基準が細かく明示されていないようです。かなりレアケースなので、指関節の動揺性の場合は、その程度を下図(2)「廃したもの」に照らして判定されるものと思います。
(2)等級表
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