支払い基準は約款の『第〇条 損害額の決定』の条項を確認します。ここに払うべき保険金の計算根拠を示してあります。具体的な計算式は別条項の『支払保険金の計算』と『別紙 算定表』『別表』に書かれています。この計算式で計算される金額は、概ね対人賠償の保険会社基準と同程度の金額になります。この算定金額が裁判基準に比べ、あまりにも低いのが問題なのです。何故、低くなってしまうのか? 理由を以下、計算方式から説明します。
1、治療費や医療関係の実費は実際にかかった費用となります。
2、同じく休業損害も実費です。サラリーマンであれば源泉徴収票の数字をそのまま採用します。しかし、自営業の方の算定では実収入の認定額が問題となります。また、双方、休業の対象日の決定も約款上、保険会社が決めることになります。
3、慰謝料は任意保険基準でぴったり金額が決まっています。
4、逸失利益、介護料については計算式が示してあるものの、根拠となる年収額や労働能力喪失率と喪失年数は保険会社が決めます。ここで保険会社の担当者の判断や会社の運用基準が関与します。結果として、保険会社の都合でいかようにでも計算できることになります。
保険会社の基準が裁判等で決まった数字と比べて著しく低くなる理由は、上記2~4の計算上、保険会社が根拠となる数字を決めるからです。それが被害者の被害の実態に即していないことが多く、とくに慰謝料は金額が約款に明記されており、見ての通り一律に低いのです。
例として、後遺障害慰謝料:14級は・・・
赤い本(≒裁判基準の相場)⇒ 110万円 に対し、
人身傷害特約 ⇒ 50万円 (損J)
損Jに限らず、各社、ほぼ半額以下です。
続きを読む »
さて、人身傷害特約の約款改定も触れないわけにはいきません。東京海上の発売から16年、もはや個人契約自動車保険には80%以上付帯されています。発売当初、「夢の実額補償」「過失があっても全額補償」と謳われた保険でした。 特約について詳しくは ⇒ 人身傷害特約のおさらい しかし、実額補償と言っても日本では保険会社の計算する賠償金と裁判の相場ではものすごい開きがあったので、様々な矛盾、問題が噴出しました。 その一つは、
「人身傷害はあらかじめ保険会社が支払い基準を定めた傷害保険である」
つまり保険定食?
これに対して、「人身傷害特約に裁判基準の賠償金を請求できないか?」
それでは、無保険車傷害特約の支払い基準が、人身傷害特約のように「保険会社の基準が絶対!」とせず、裁判の判決・和解の額を認める余地があるのか、つまり元に戻ったのかを確認しましょう。(わかり易くするため、加筆、修正、省略を加えています)
無保険車傷害特約
第8条(損害額の決定)
(1)損害額は、被保険者が第2章(保険金を支払う場合)(1)のいずれかに該当した場合の、次の区分(①~③)ごとの、それぞれ普通保険約款別表3に定める損害額算定基準に従い算出した金額と自賠責保険等によって支払われる金額(注1)のいずれか高い金額の合計額とします。
① 傷害
・・治療が必要と認められる状態であること。
② 後遺障害
・・後遺障害が生じたこと。ただし、同一事故により被保険者が死亡した場合を除きます。
③ 死亡
・・死亡したこと。
多くの方は「無保険車傷害特約の約款が独立した?、だから何?」と思うでしょう。しかし、相談会にやってくる被害者さんで、「相手が任意保険に加入していないので困った・・」は決して少なくない相談なのです。これは私たちのような被害者救済を生業とするものとって座視できない問題なのです。
<無保険車傷害特約をおさらい>
保険に入っていない、保険が足りない、支払い能力のない加害者やひき逃げ等で相手が不明の場合、自ら加入の保険が代わりに支払います。契約自動車に乗っているとき、歩行中や自転車、他の車(任意保険に入っていない)に搭乗中でも適用されます。 契約本人はもちろん同居の親族全員が対象となります。契約自動車に搭乗中の事故であれば他人もOKです。 死亡、後遺障害の場合に限定されます。実額を補償をしますが、限度額は会社によって最高2億円、もしくは無制限です。
損保ジャパン自動車保険、平成26年7月改訂で「無保険車傷害特約」が人身傷害特約の約款から離脱しました。
長らく対人賠償特約に含まれていた(つまり自動担保)「無保険車傷害特約」が、対人賠償の約款から切り離され、人身傷害特約に吸収されたのは2年前のことでした。しかし以前の記事で指摘したように、損保側も自ら矛盾と混乱を理解したのでしょうか・・やはり支払い基準を無理やり人身傷害特約に合わせようと、同じ約款に組み込んだのは失敗だったと思います。
結局、同特約は対人賠償の約款に戻らず、独立した条項になりました。迷走していた「無保険車傷害特約」はついに独立を果たしたのです。
こんな感慨にふけっている行政書士は日本に私だけかもしれません。興味ある方は「そして無保険車傷害特約は吸収された」を読んで下さい(長いシリーズですよ)
まずは証券からそれぞれクリックしてご確認を、
2年前の人身傷害特約への吸収
首都圏相談会を前身とした東京相談会、場所や顔ぶれを変えながら進化しています。会場も参加弁護士の事務所移転に伴い、来月から丸の内に移動です。皇居の目の前、だらしない格好で歩いていたら無礼打ちされそうです。なんといってもここは徳川家の地、江戸城の中です。
交通至便ですので、都内はもちろん関東各県からも参加申し込みをお待ちしています。明日の有楽町会場は最後となります。
弁護士・行政書士・交通事故110番 丸の内合同交通事故無料相談会のお知らせ
日時
11/15、12/20 土曜日 午前10:00~午後17:00まで会場
新国際ビル6階 会議室 〒100-0005 東京都千代田区丸の内3-4-1アクセス
地下鉄 有楽町駅D1出口から2分 地下鉄 日比谷駅B4出口から4分 JR有楽町国際フォーラム口から4分
実績ページは大変好評をいただいております。それは依頼者さんが依頼前に自身と同じケガを探して熟読いただいていることから実感しています。
被害者さんに限らず調べごとをする場合、今やホームページからの情報が第一であることは異論ないと思います。10年前は交通事故外傷、後遺障害に関するホームページは「交通事故110番」を筆頭に数件でした。しかし今やどこを検索しても後遺障害の専門家だらけ、弁護士、行政書士、整骨院まで・・400を超えています。もはや交通事故分野は一市場と化しています。そのような中、今更、医学書を写したコンテンツを載せて専門家ぶっても被害者の心には届かないと思っています。学術的な知識・理論ではなく、いかに立証に成功したのか?、実例から示していきたいと考えました。具体的なノウハウはもちろん、現場の熱気・息遣いを感じる実績ページの充実と継続を目指したのはそのような理由からです。
もちろん、宣伝効果を第一に期待したものですが、依頼がなくとも多くの被害者さんの参考になっていることは喜ばしいことです。また、多くの弁護士・行政書士さん等、同業者さんにも影響を与えていることも光栄に受け取っています。交通事故で有名な弁護士事務所・行政書士事務所の本棚に拙書が並び、「ホームページを観ているよ」と言われることが多くなりました。
継続は力なり。実績の積み重ねこそが交通事故業務の力量を示すバロメーターと思っています。
3つめの横文字傷病名の実績はスミス、コーレス、ローランドなどを考えましたが、アルファベットの短縮呼称でおなじみの最新実績を選びました。
TFCC損傷は見落とされやすい症例です。完全に断裂して手術が必要な場合は医師も見落とすことはありませんが、骨折がない場合は捻挫とし、骨折があっても骨の癒合が完了すれば関心が薄れます。しかし、私たちは手根骨の骨折、橈骨・尺骨の遠位端骨折の被害者さんに対し、常に(TFCC損傷の)疑いを持った目で接しています。
12級6号 :TFCC損傷 異議申立
【事案】
バイクで直進中、左路外から飛び出してきた自動車と衝突。その際、右膝を自動車とバイクに挟まれ膝蓋骨、脛骨を骨折、さらに転倒の際に左手をつき手根骨(大菱形骨・小菱形骨)と橈骨茎状突起(剥離骨折)を骨折。
【問題点】
事前認定での結果は膝の疼痛で14級9号。この結果をもって相談会に参加された。 後遺障害診断書上、手首に関する記述は診断名のみでまったくのスルー。もちろん計測は未実施、MRI上も異常なし。医師は膝の後遺症だけを捉えているよう。 相談会で即座に手関節の可動域を計測したところ、手首の屈曲・伸展には明確な制限を残していた。そして、MRI画像を観て「これはTFCC損傷の高信号では?」と読み取った。
2日目はベネット骨折です。これも医師名、E. H.ベネットが由来です。病態について詳しくは過去記事をご参照下さい。⇒ ベネット骨折 和名は母指CM関節脱臼骨折です。簡単な骨折のようですが、用廃の10級10号を取ると賠償金は跳ね上がります。
10級7号 :ベネット骨折(40代男性・埼玉県)
【事案】
バイクで直進中、交差点で並走自動車の急な左折に巻き込まれ転倒したもの。肋骨が一本折れた。さらに右手の第一中手骨を骨折した。これがベネット骨折。
【問題点】
ベネット骨折処置の基本通り、折れた中手骨を鋼線で固定(経皮ピンニング)してシーネで外固定した。後はなるべく関節硬縮を起さないよう、早めの可動域訓練が望まれる。しかし、相手運転手勤務の会社が社有車の保険を使ってくれず、相手保険会社も一括払い拒否状態。治療費の心配から健保を使用し、自宅でのリハビリを中心とした。 本人は慰謝料などは無理と、あきらめムードで相談にいらした。
【立証ポイント】
そんなバカな話は許さない。弁護士から相手の会社及び、相手保険会社への対応を任せ、こちらは直ちに病院同行した。そして親指の可動域計測に立会い、MP屈曲・伸展はもちろん橈側外転・掌側外転までしっかり計測いただく。さらに写真と申述書で可動域制限を丁寧に説明した。
ベネット骨折はその性質から癒合しづらく、可動域制限も頻発する骨折です。そして親指の可動域制限は10級と高いのです。
続きを読む »
和名の傷病名は長くなりがちです。例えば「尺骨骨幹部横骨折及び橈骨骨頭肘関節脱臼(モンテジア骨折)」、これを診断書に書くのは医師も大変です。そこでよく英語名が使われます。その多くは医師の名前が由来となっています。例えば手首のスミス骨折(橈骨遠位端部屈曲型骨折)とコーレス骨折(橈骨遠位端部伸展型骨折)、ベネット骨折、ジョーンズ骨折など。ちなみにスミスはロバート・ウィリアム・スミス、コーレスはアブラハム・コーレス、共に外科医です。 部位を表したプラトー骨折、環境を表したコンパートメント症候群、その他、英単語を頭文字で短縮したもの=ACL損傷、TFCC損傷、TCS、MTBI、PTSD・・たくさんあります。
それでは上肢の横文字傷病名の実績を3回シリーズで。
10級10号 :モンテジア骨折(40代男性・埼玉県)
バイクで直進中、T字路で対向自動車が急に右折、衝突したもの。初期診断名は左足関節脱臼骨折、左脛骨天蓋骨折、右橈骨遠位端骨折、モンテジア骨折、外傷性肝損傷、腹腔内出血、びまん性脳損傷(脳の障害はなし)・・以上、左脚と右腕に障害必至の重傷である。
【問題点】
モンテジア骨折(尺骨骨折による橈骨の肘関節脱臼)による肘関節の可動域はほぼ正常に回復、回内・回外も12級の基準以下、わずかの変形癒合が確認できるのみ。これでは神経症状の残存による12級13号が限界。なんとか橈骨遠位端骨折による手関節の可動域制限で10級10号としたいが、わずかに基準外。他には正中神経の軽度麻痺によるしびれ、手術痕である醜条痕が残存した。
【立証ポイント】
手関節の掌屈・背屈の可動域は10級の基準である1/2制限にわずか5°オーバーしている。この場合、参考運動である橈屈・尺屈が1/2となれば繰り上げ10級となる。ここでモンテジア骨折の影響が大きく寄与する。モンテジア骨折により、尺骨の長さが微妙に伸長、やや転位もあるため、手関節、特に尺屈の可動域に影響があった。この参考運動の1/2制限による繰り上げで10級を確保した。なによりのポイントは上記すべての計測の意味を医師に説明し、理解を得た上で正確に記録したことに尽きる。 ちなみに尺骨の変形は「15°以上の屈曲」はなく、正中神経麻痺もしびれを残す程度のため、等級とはならなかった。もちろん手術の傷も掌以下の面積で非該当。
2か所の損傷を複合的に一つの障害として観察していくこと、さらに複数の症状について、最も高い等級にまとめる設計図を描くことが大事です。
前腕骨折の重傷例を解説します。骨幹部がポキッと折れた骨折は比較的、障害を残さずに治癒しますが、関節の脱臼を含むような骨折は何かと障害を残しがちです。
病態
モンテジア骨折とは、尺骨骨幹部骨折と同時に肘部の橈骨頭の脱臼したものです。原因は、転倒によって手を地面に強く突く、もしくは強くねじると、腕の中で尺骨と橈骨が強制的に回内運動、つまり内側にねじれを起こします。逆に回外、外側にねじれて脱臼することもあります。その時に尺骨は橈骨と強く衝突して骨折し、その衝撃が元になって橈骨は橈骨頭が脱臼してしまうのです。
下図のようにねじれの方向によって伸展型(左)と屈曲型(右)に分かれます。
← 伸展型のXP
治療
徒手整復を基本とします。多くはまず骨折した尺骨をプレート固定します。次に肘部脱臼の整復ですが、橈骨輪状靱帯や方形靱帯(それぞれ尺骨と橈骨をつなぐ靭帯)の断裂を伴う場合、再脱臼を防ぐためワイヤーで固定します。
後遺障害
〇 橈骨の脱臼部により肘関節の可動域や、尺骨の長さが変わることにより手関節の可動域制限が起こる可能性があります。したがって肘関節は必須、その他、手関節や回内・回外の可動域制限の有無を確認します。
部位
今朝は新幹線で宇都宮、先ほど帰宅。ここ数日の医師面談から・・
事前に「怖い先生」「厳しい先生」と聞いていました。しかし、毎年200回以上、医師面談をしていれば、どんな先生であろうと今更びっくりはしません。本件も実際にお会いして、お話をした結果、すんなり診断書の記載を了解していただけました。修正・追記も了解いただけました。特に難しい先生とは感じませんでした。
やり取りはわずか3~5分です。医師は多忙で患者の診断に分刻みですから、だらだら話をすることを嫌います。理路整然と要望を伝え、無駄を極力排した折衝としなければなりません。医師も人間、色々なパーソナリティーがあって当然です。私達、メディカルコーディネーターの「コーディネーター」とは調整役という意味です。あらゆる相手・条件・場面でも調整し、まとめ上げるのがプロの仕事です(たまに失敗もありますが)。
中には上手く医師と折衝して診断書を記載依頼できる患者さんもいるでしょう。しかし、現実は患者さんが医師と上手に話をまとめることは難しく、特に口下手な患者さん、遠慮がちな患者さん、気の短い患者さん、いずれも上手く交渉ができません。多くは、医師のとの相性で運命が左右されてしまうものです。結果として良い診断書が仕上がりません。やはり、少なからず専門家の手助けが必要です。交通事故賠償の世界では、メディカルコーディネーターは潜在的に望まれている、隠れた仕事と思います。人知れず頑張らねばなりません。
診断書の記載依頼、これは書類のやり取りだけでは埒が明きません。医師にしっかり説明・申告しなければ、不正確で内容の乏しいものとなります。それで等級を取りこぼしては泣くに泣けません。医師面談が決め手となることが多いのです。
私もまだまだ知識、経験共に未熟と日々自戒しております。しかしながら年齢を考えると、若手を指導する立場を逃れることはできません。もちろんこの3年でメディカルコーディネーターを数人、実地で教えてきました。今後もより多くの人材の発掘と育成が必要です。
先日、補助者に教示をたれました。今日はそこから思うことを一つ。
どの仕事も天性の素質というか、センスが最後にはものを言います。では才能のないものはいくら努力しても駄目なのか?断言するにはなかなかに難しい論点です。なぜならほとんどの人が才能に恵まれていません。「自分の才能を最大限発揮できる仕事に就いた」と言い切れる人、「自分は才能がある」と自覚できる人は果たして何人いるでしょう。
そのような時はシンプルに努力と根性、そして志の重要性を説きます。どのような仕事でも本気で十年取り組まなければ見えてこないものがあります。わずか2~3年で見切ってしまう頭の回転の速い人もいますが、本当のところ深いところまで見えていないはずです。まず、縁あって直面した目の前の仕事について、本気で取り組んでみることが大事ではないでしょうか。そしてその仕事によって助けられる人が必ずいるはずです。どのような仕事もまずは自分の生活(金銭収入)の為ですが、同時に必ず人の為(社会貢献)になっています。
交通事故にまつわる仕事はまさに人助けが根底にあります。「人の為」がダイレクトに実感できる仕事と思います。特に保険会社、弁護士、医師の3者が代表的な立場でしょうか。そしてメディカルコーディネーターはその3者を有機的に結び付ける、まさに調整役です。すべての局面とは言いませんが、多くの被害者に潜在的に必要とされています。それに応える意気、志こそが仕事の精神的支柱となるはずです。
そして、決して目立たず、縁の下の力持ちのような立ち位置ながら、一つだけ3者に勝ることがあります。それは被害者と最も密接に寄り添い、解決まで苦楽を共にすることです。
明日から、土曜日は神奈川県藤沢市、日曜日は山梨県甲府市と2連日相談会です。弁護士と共同でみっちり対応します。ご参加の皆様、よろしくお願いします。
相談会後は甲府に泊り、翌月曜日の病院同行に備えます。そして午後は急いで東京に戻って埼玉県幸手市へ(間に合うのか?)、翌日は栃木県宇都宮市へ(ヘトヘトです)それぞれ病院同行です。かっこいいことばかり言っていますが、体がもたない!常に人手が足りないのです!
頭蓋底骨折、眼窩底骨折は嗅覚、味覚、視覚など、様々な感覚器障害を引き起こす好発部位です。骨折箇所を丁寧に観察しなければなりません。画像では3DCTによる精査が必須と思います。正面・横からのレントゲンでは確認できないからです。
また、本例のように触覚低下や疼痛・しびれについて、筋電図検査等では神経麻痺の程度を明らかにできません。やはり画像と医師の診断、そして自覚症状の詳細な説明が必要です。
12級13号 :眼窩底骨折(20代女性・埼玉県)
【事案】
交差点で横断歩道上を横断中、後方からの右折自動車に衝突され、顔面部を強打した。CT検査で眼窩底に骨折が判明。
【問題点】
ほほの痛み、しびれを残すものの、幸い眼球や視野・視力に障害は残らなかった。このままでは14級9号が限界かと思われた。
【立証ポイント】
医師面談を繰り返し、顔面神経麻痺の可能性を医師に主張した。しかし軽度の麻痺では外見上わからないことはもちろん、筋電図等の検査でも明らかにはならない。それでもCTの画像から受傷部位の神経損傷について医師の見解を引き出し、診断名として「三叉神経障害」が示唆された。それを後遺障害診断書に落とし込み、自覚症状については別紙にて丁寧に記述し、添付した。 続きを読む »
顔面の外傷について実績例が少なかったので、今年認定された2事案を挙げてみました。
いわゆる顔面神経麻痺の場合、通常時でも顔が歪むほどひどい引きつりや震えがあれば障害認定は容易いと言えます。しかしながら痛みや痺れはもちろん、触覚・温冷感の低下など微妙な症状に悩まされる方が多いのです。わずかな障害も見逃すわけにはいきません。今日、明日と二回に分けて掲載します。
14級9号 :頬骨骨折(50代男性・埼玉県)
【事案】
サイクリング中、対向自動車が急に右折してきたため衝突、転倒したもの。その際、顔面と大腿骨転子部を骨折した。
【問題点】
頬骨、大腿骨共に骨の癒合良く、目立った障害を残さず症状固定日を迎えた。本人のリハビリ努力から完治と思われた。しかし骨が折れてすべて元通りとはならないはずである。
【立証ポイント】
この場合、骨折後の神経症状として14級9号を確保する仕事が求められる。主治医に面談し、顔面部のしびれや感覚異常などを自覚症状に書き加えていただいた。わずかな症状でも、しっかり主張すれば、ケガの程度や治療経過から神経症状を認めてくれる余地がある。
先日、ある弁護士先生から「秋葉さんは異議申立をしない方針ですよね?」と聞かれました。
確かに平素から、「原則、異議申立はお引き受けしません」と消極的にしております。しかしながら現在、異議申立ては5件ほどお預かりしております。捨て置けない案件については限定的に受任しています。
まず、異議申し立ては簡単ではありません。自賠責保険の統計では平成21~23年の3年間で上位等級に認められたのはわずか7%ほどです。100件の異議申立のうち成就したのはたった7件、93件は無駄骨なのです。それだけ最初の審査で認定された等級には重みがあるのです。そのような数字をみると、ホームページで積極的に異議申立を受任している先生には頭が下がる思いです。まして高確率の成功数字を出している先生はマンガ的に超人です。
異議申立の相談を受けた場合、最初に十分検討します。可能性が低ければ、きっぱり諦めていただく説明を行います。そしてあまりにも気の毒な件についてのみ受任した結果、極めて限定的な受任数になってしまうということです。これが実情です。ちなみに私の異議申立の成就率は昨年43%です。どんなに厳密に引受け判断をしても半分に満たないのです。
理想は早めに相談いただき、正しいレールに乗って解決を図ることです。きちんと治療し、しかるべき検査を受け、間違いのない診断書にたどり着けば、異議申立の苦労はいりません。残念ながら少なからずの被害者さんが正しい解決のレールから脱線しているのです。それを正すのは受傷初期からのアドバイスです。私が相談会の開催や相談者の誘致に力を入れているのは、早期のアドバイスやお手伝いによって「異議申立撲滅」を目指しているからです。
先日、14級を11級に引き上げることに成功しました。逆にどうしても非該当を14級に上げることができなかった案件が2件もありました。解決までの時間を無駄にさせてしまった。そして何より、がっかりする顔を2度も見たくはないのです。
今日は朝から年金事務所で障害年金の申請書記載について相談、午後からは青色申告会で帳簿記載の実習でした。
税金関係は税理士に依頼すべきで本業に専念すべきと思います。帳簿も経理に一任すれば楽でしょう。しかし、仕事柄、休業損害や税金の質問をいただくことがあります。やはり「帳簿、税金は専門外です」などとは言いたくありません。知識の隙はない方がよいです。
常日頃、交通事故の知識は法律、保険、医療の三本柱を挙げていますが、保険一つを取っても自賠責保険、任意保険、健康保険(国保、社保)、労災、障害年金、生保、共済、障害者手帳・・実にたくさんの項目があります。交通事故相談を受ける身としてはそれらに対し横断的な知識が求められます。それぞれの専門家はいますが、すべてを横断的に調整できる知識量をもった者は非常に少ないと感じます。
そのような事から合理性を顧みず、記帳や申告など自分でできる程度にはしておきたいのです。


続きを読む »














