最後にCグループです。
すでに三井住友さんは、3年前の改定で交通乗用具の範囲を限定し、支払い内容も定額払いとしていました。それ以降の注目は、他社もそれに続くのか?でした。以下の表に整理しましたが、交通乗用具に関しては、他社に改定の動きはありませんでした。 その他、大きな改定として、長らくCグループの特徴としていた「支払基準」が変更されていました。
👉 人身傷害・今年の約款改定 ② ~ 三井住友、交通乗用具やめるってよ
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続いてBグループです。
支払い基準ですが、裁判の結果なら、その判決・和解額を損害総額とみなす」とは言うものの、実際、東海日動の担当者さんは、「その条項は求償の規定です。つまり、先に人身傷害保険を受け取り、後に裁判をした場合、裁判での損害総額に応じて、契約さんが損しない範囲で求償します、との意味なんです。これは、先に裁判で賠償金を受け取った後の過失分請求についての規定ではありません。したがって、支払い保険金は人身傷害基準で計算します(あしからず)。」と、満額支払いを拒否ってきました。
その話(長く難解ですが) 👉 人身傷害・今年の約款改定 ③ ~ 交通乗用具・三国志
それでも、連携弁護士が交渉、あるいは秋葉がお手紙を書いて説得し(保険金請求行為のお手伝いなので、非弁ではないですよ)、なんとか満額回収に成功しています。しかし、あきらめてしまう被害者さんが多いのではないかと思います。東海日動さん以外のBグループ社では、そのような回答はなかったと思います。さすがに、東海日動さんの担当者は手ごわい。悪い意味で優秀かもしれません。
この通り、東海日動さんは交通乗用具を半分復活させた一方、他社に目立った改定はありません。すると、日新さん、全労済さんの交通乗用具はフルセットの補償のままということです。支払い制限等もないので、「古き良き人身傷害」と言えるでしょう。
別紙 ↓
主要社の比較に移ります。私共は、約款の支払い条項からA~Cと3グループに大別しています。それぞれの、支払い内容とその違いは、すでに何度も取り上げています。本筋に逸れますので、お時間のある方は以下をご覧下さい(長いですよ)。
👉 人身傷害の約款改悪シリーズ 夢の全額補償が破壊された ②
前提として、人身傷害保険は、「自身に過失があっても、過失減額なく全額支払います。」「人身傷害保険で相手から減額された自身の過失分を出します。」と、全社パンフレットにうたっています。しかし実際は、損害総額を人身傷害の基準で計算しますから、弁護士などが介入して、賠償金を赤い本基準に釣り上げた場合、その額は認めず、あくまで自社の計算を限度にしか払わないのです。この問題は、平成23年2月の最高裁判例で、「裁判で決まった額なら、それで計算すべき(裁判基準差額説)」と、一応の決着はつきました。以後、各社は約款改定に追われ、支払い基準は、およそ3つのパターンに分かれました。
Aグループの支払い基準は、「裁判での和解・判決なら、その額を損害額の総額として認める」としています。最高裁判例に素直に従った形です。しかし、逆を言えば、「交渉解決では、人身傷害の決めた支払い基準ですよ」となります。交渉や斡旋機関で、裁判に近い賠償金を勝ち取った弁護士は、その後の人身傷害への請求(自身の過失分の回収)に毎度苦労させられます。あるいは、人身傷害への請求を放棄する先生も多いようです。
放棄の例 👉 ときに「人身傷害保険への請求が交通事故解決の最大の山場」となる ① 全額回収ならず
また、裁判で決まった額であっても、「支払い保険金は、人身傷害基準での総額まで」との、限度が規定されております(損保Jさん)。この天井によって、自身の過失が大きい被害者さんこそ、(過失割合によりますが)満額回収ができなくなります。
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交通乗用具に限っては、フルセットの損保ジャパン、その優位(大盤振る舞い?)が目立ちますが・・
最初に身も蓋もない事を言いますと、交通乗用具の補償範囲だけで損保の優劣は語れません。また、契約者さんもその観点のみで、保険会社を選ばないと思います。 ただし! 保険のプロたる代理店さんはそうはいきません。また、乗合代理店(複数の損保と取引、商品を扱う)の場合、違う責任が生じます。それは、お客様のニーズに合った商品・会社を選択して、お勧めする義務です。例えば、やんちゃ盛りの男の子3人は自転車を乗り回し、お父さんは駅まで自転車通勤、お母さんも買い物で自転車を・・このようなご家族に対し、(人身傷害の)自転車の補償を外すことは保険設計のミスです。もし、その補償のない商品・会社に切り替えて頂いた後、自転車で重傷を負ったら・・お客様に責められます。場合によっては、訴えられるリスクすらあるのです。
もっとも、飛行機や船、エレベーター・エスカレーターでのケガで、その補償がない商品に切り替えたとしても、そう責められることはないと思います。あくまで、自動車保険なのですから。
それでは、3メガの一覧表です。見た方が早いです。
※ 三井住友さんの△ですが、自転車・車いす・ベビーカー・シニアカーのみに限定しています。 詳しくは 👉 人身傷害・今年の約款改定 ② ...
この2年間、大きな動きがないこともあって、約款チェックを怠っていました。この春のセミナーにて取り上げるテーマですので、久々に(全社に近い)主要社の約款、その改正部分を確認していきたいと思います。まず、今年の改定では、交通乗用具の補償について、東京海上日動さんに動きがありました。 (1)交通乗用具への補償、その変遷を振り返ります
人身傷害保険は、平成10年(1998年)、東京海上さんがアメリカのノーフォルト保険を参考に開発・発売し、その後、ほぼ全社が導入、今や自動車保険のスタンダードになっています。
その後、大きな変化は「支払基準」と「交通乗用具」の改定です。今回の改定は後者についてになります。発売当初は、およそ移動に用いる乗り物なら、くまなく補償範囲としていました。それが、モラルリスク(不正な保険金請求)やリザルト(損害率)を理由に、東京海上さんが平成23年(2011年)に、続いて翌年、損保ジャパンさんから各社が次々に廃止しました。一方、三井住友さん、AIG(当時は富士火災)さん、日新さん、全労済さんなど、数社は残しました。
それから10年後、何故か損保ジャパンさん、交通乗用具を復活させました。また、交通乗用具の範囲を狭めて定額払いとした三井住友さんや、補償内容を一部制限したあいおいさんなど、保険約款上、各社の違いが生じてきました。近年の約款改定で、最もダイナミックな部分と言えます。 基本、自動車が絡む事故・ケガであれば、人身傷害保険が適用されることは、一貫して変わりません(「契約車両のみ補償」を除く)。それでは、自動車が絡まない事故での交通乗用具の補償範囲について、今年改定の東京海上日動さんから見ていきましょう。 (2)交通乗用具への補償拡大を「人身乗用具事故補償特約」としました。パンフレット等には、以下のように整理されています。この特約で、「お車以外の乗用具に搭乗中の事故」、「歩行中や自転車運転中の乗用具との接触等による事故」に○がつきました。どこまで補償範囲が復活したのでしょうか?
(3)交通乗用具の補償範囲を狭めました。
かつての交通乗用具は、自動車以外も幅広く乗り物を認めていました。電車、船、飛行機まではわかりますが、人力車やベビーカーも含み、動く歩道やエレベータ―などは、もうわけがわからない補償範囲でした。
本改定では、「軌道を有しない乗用具」と「軌道を走行する乗用具」と二分し、乗用具の定義を「軌道を有しない 陸上の 乗用具」としました。つまり、「軌道を有しない」で、まず電車が外れます。「陸上の」で、飛行機、船も外れます。エレベーター等は、問題外のようです。
以下の通り、復活部分は黄色、かつての補償範囲すべての復活ではありません。
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この1か月間は休みなしのロードです。土日もおよそ半日は勤務状態が続いています。明日の土曜は、茨城に病院同行です。翌日曜日は事務所にて被害者さんの面談です。現在、異議申立て等の書類作成は7件が残っています。つまり、ひと昔前の激務に戻ったようです。コロナの閑散期を経験していますので、これはこれでありがたい事になります。
弊所のスタッフ・人員も限りがありますから、健康を気にしつつも、多少の無理は避けられません。ある弁護士先生に聞いた言葉、「忙しいということは人気があること」、これを励みに乗り切ることになります。2月は祝日含めた3連休が二つあります。丸々休めないでしょうが、これでインターバルは取れそうです。お待たせしているご依頼者の皆様、もう少しのご猶予をお許し下さい。
明日も茨城の海と朝日が待っています!
1回目の事故で治療中に、重ねて事故に遭うことがあります。そのケガが、同一の部位で同じようなケガが重なった場合、1回目事故と2回目事故の保険会社は、治療費支払いを引き継ぐことになります。これは、保険業界のルールに思います。
ただし、部位が違うのであれば、それぞれのケガについて、二つの保険会社に(別々に)対応頂きたいと思います。当然、後の慰謝料もそれぞれ別個にもらいます。一緒にされたら、慰謝料が一本化されて損します。
自賠責保険の後遺障害審査ですと、同じ部位であれば「異時共同不法行為」として、二つの事故のダメージが重なった障害として評価することがあります。この場合、後遺障害の限度額が2つ分の自賠責保険金になりますので、自身の過失から大きく減額される場合や、相手に任意保険が無い場合、大変助かります。この場合は、二つの事故を混ぜた方が、被害者にとってメリットになります。
さて、本件は、「1つの事故として賠償金支払いを済ませたい」1回目事故担当の損保の思惑から、担当者が無理やり1つの事故として、2回目の会社に治療費支払いをリレーしようと画策しました。結果は、私達が付いていますから、以下の通り、切り分けて解決へ進めています。
切り分けた方が得のケース、混ぜた方が助かるケース・・・正しい知識と誘導が必要です。
混ぜるな危険
14級9号:腰部背部打撲(70代女性・静岡県)
【事案】
自転車を押して歩いていたところ、左折してきた自動車に巻き込まれ転倒した。直後から腰背部痛等、強烈な神経症状に悩まされる。 【問題点】
この事故から1ヶ月も経たないうちに、今度は歩行中に自転車にひかれてしまい負傷した。1回目の保険会社としては、連続事故として2回目事故の保険会社に引継対応してもらいたいようであった。2回目事故の担当者も危うく応じそうであった。
また、高齢なため、MRIなどの検査を受けることが困難であった。 【立証ポイント】
まずは1回目と2回目での負傷部位をそれぞれ確認。「頭部打撲傷」という、一部の診断名が重なっているとはいえ、それぞれの負傷した主要の部位が異なり、救急搬送先や治療・リハビリ先も異なるため、連続事故とはせず、それぞれ治療を継続していく方針とした。治療部位・内容については、各病院に事情を説明し、切り分けて頂いた。
受傷機転と症状の一貫性、通院実績を根拠に打撲傷で後遺障害申請を実施したが、MRI検査未実施でも14級9号が認定された。MRI検査の重要度は年々下がっているように感じてはいたが、検査を受けることができるのであれば、それに越したことはない。誤解なきよう追申します。
医師はじめ、医療従事者が不正に治療費・施術料を請求している問題ですが、10~5年前に摘発が相次ぎ、その後、鎮静したかに思えました。しかし、コロナ明けの昨年は2件、今年に入ってすでに1件、ご依頼者さんからその情報が聞こえてきました。 病院の不正を目にしたのは、損保時代を含め、この30年間で1件だけでした。しかし、接骨院・整骨院など柔道整復師による不正請求に出くわすのは毎年数件です。その手口は相変わらずで、施術をしていないのに、架空の施術分を健康保険や、交通事故の場合は任意保険や自賠責保険に請求します。最もひどい手口は、その院に柔整師やスタッフが就職する際に、本人と家族全員の健康保険証の提出を求められます。その健康保険証から、あたかも院に通った形に書類を作り、家族順番に架空の施術料の請求をします。これは、柔道整復師の方から聞いた話です。その方は、良心の呵責から辞めたそうです。
不正を行う先生方の認識は、「皆、やっているよ」「バレなきゃ大丈夫」のようなノリで、総じて罪の意識が希薄に感じました。ただし、これはれっきとした保険金詐欺です。しかも、健保や労災相手だと、公金に対するもので、警察がすぐに動きます。したがって、バレないように少しづつ、できれば患者とグルで、それなりの工夫をしているようです。
どの業界にも悪党はおります。それは弁護士、行政書士も同じです。ただし、医療従事者の不正は、得てして各方面に、何より患者さんに害が波及します。例えば昨年の実例ですが、弊所と弁護士によって、とっくに解決した交通事故の被害者さんに警察から連絡が入りました。事故当時に通っていた接骨院で、「実際に施術をしたのか?」、「その日付は?」などの聴取を受けたそうです。まるで「グルか?」の疑いです。その被害者さんにとって、まったく身に覚えのない嫌疑がかかったのです。これは、不正が見つかった院について余罪がないか、過去に遡って警察が調べているからです。もうこれだけで、大変な迷惑です。
当時の記事 👉 接骨院・整骨院の不正請求
また、交通事故の被害者さんが、通院中の院にそのような不正が発覚、ないし疑いが生じた場合、直ちに保険会社の治療費支払いが止まります。後の後遺障害申請においても、そのような治療経緯はマイナスでしかありません。治療状況や症状の一貫性等を重んじる、14級9号の認定などは致命的かもしれません。
今年に入って、早くも疑い濃厚な院に出くわしました。繰り返しますが、施術料の不正請求は、刑法上の罪はもちろん、実害が非常に大きいと思います。そのような院に対し、その不正を告発することは簡単ですが、それは私達の業務ではありませんし、何と言ってもキリがありません。柔整師の先生の道徳心に頼るのは限界がある位、とにかく不正が多過ぎて、現場では嘆くばかりなのです。柔道整復師の業界をあげて、徹底的に不正撲滅に動くべきと思います。このままでは、業界全体の信用失墜です。不正を行うような院で、施術を受けたい患者さんなどいないと思います。
かつて、スタッフだった柔整師からも色々と業界の醜聞を聞いたものです。
種子骨々折(しゅしこつこっせつ)
(1)病態
種子骨は、親趾付け根裏の屈筋腱内にある2つの丸い骨であり、種子骨の周辺には筋肉や腱が集まり、これらの筋肉や腱が効率よく動くことを助けています。
種子骨の骨折は、歩行中に交通事故による外力で踏み込みが強制されて、母趾球を強く打撲したときに発生しています。 (2)症状
直後は激痛を感じますが、しばらくすると痛みは和らぎます。症状が進行すると足を地面につけただけでも痛みがあり、歩行も困難になってきます。 (3)治療
足を安静下におき、足の裏にかかる負担を軽減するために柔らかい素材のパッドを靴の中に入れて使用します。パッドは母趾球部がくり抜かれており、体重をかけたときに圧力がかかりません。
大多数は、改善しますが、効果が得られないときは、手術で内側の種子骨を摘出しています。 (4)後遺障害のポイント
足指や足部では、打撲や捻挫の傷病名で後遺障害認定は、例外がありますが、多くは非該当です。損保では、DMK136という言葉で語られており、D打撲は1カ月、Mムチウチは3カ月、K骨折は6カ月をおおよその治療の目安としているのです。したがって、「DMK136は治るもの」が原則です。
例外的に秋葉事務所では、捻挫や挫傷で多くの認定を得ています。 なんとか認定 👉 14級9号:足背部挫傷(60代男性・東京都) 脱臼や骨折、靱帯断裂など、器質的損傷をCT、MRIの撮影で立証しなければなりません。もちろん、受傷から2カ月以内に撮影しないと、事故との因果関係の立証が困難となります。 ◆ 足指の関節 親指では、指先に近い方からIP、MTP関節、その他の足指にあっては、趾先に近い方からDIP、PIP、MTP関節、これが手指となると、親指では、IP、MCP関節、その他の手指にあっては、指先に近い方からDIP、PIP、MCP関節と呼ばれています。
現実的には、足趾の後遺障害は関節の機能障害よりも、痛みの神経症状で14級9号、12級13号の獲得を目指すことが多くなります。12級13号であれば、骨癒合の不良もしくは変形癒合を緻密に立証しなければなりません。2方向のXPだけでなく、3DCTによる立証が有用です。 ◆ 医師に不審を感じたときは、ネットで、「日本足の外科学会」を検索してください。ホームページでは、専門医が紹介されています。近くの専門医に、急いで、セカンドオピニオンを求めるのです。 次回 ⇒ 足趾(足指)の機能障害 下肢シリーズ最終回です。
今月は損保関連の新年会に2つ顔を出しました。ただし、元日から地震や事故が続き、おめでとうムードではないようです。何より、昨年の損保業界は不祥事が続きましたので、業界全体がピリピリしているそうです。今週、損保ジャパンへの処分も発表されたようです。大手4社、カルテルの問題もいずれ処分が下るのでしょうか。そんなこんだで、大手保険会社に限って社員の顔はそろわず、全体的に出席率悪く、中止になった新年会もあると聞きました。 祝辞は抑えめに・・挨拶も簡単にしました。
ところで、今年は佐藤を伴っての参加でした。「事務所の補助者です」と紹介しましたが、「補助者?」との表情・・その呼称に慣れていないのでしょうか、何度か秋葉との関連を聞かれました。そこで、今風の例えで回答しました。
「フリーレンとフェルンです。」 ⇒ 「あぁ、師匠と弟子ですね。」
確か10年程前、佐藤が入所面接に来たとき、
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足の甲をタイヤで踏まれるなどで、中足骨が折れます。中足骨は、足趾(足の指)の骨につながる足の甲の部分です。その数本がバキバキに折れて、リスフラン関節が脱臼する重症もあれば、レントゲンを撮ったら第5中足骨が折れていた、などの軽度の骨折もあります。
バキバキの例 👉 7級相当:脛骨・腓骨・第2~5趾リスフラン関節脱臼骨折(60代男性・千葉県)
よくある第5中足骨のみ骨折 👉 14級9号:中足骨骨折(30代男性・山梨県)
上のバキバキのケースは、建設業の方でした。現場作業への復帰は相当に厳しいものです。それでも、足底版つきのシューズ、補装具をつけて働いている方もおります。一方、第5中足骨にひびが入った程度、保存療法とした方はほぼ完治します。骨の癒合は年齢はもちろん、個人差があります。それでも、深刻な障害を残すものではありません。
第5中足骨折だけでも、痛みから体重をかけて足をつけないものですから、松葉杖の使用となる方もおります。もちろん、受傷直後は仕方ありません。しかし、痛みがあるからと1か月が経ち、2カ月目も杖は離せず、3カ月目になって「骨は癒合しています」と言われても、痛みから仕事を休み続ける被害者さんも少なくありません。
確かに「痛み」は残っているかもしれません。全体重をかけての歩行は辛いと思います。しかし、杖が無いとまったく歩行ができない、すべての仕事が不可能・・とはないはずです。明らかに大げさと取られてしまうのです。極端な例でしょうが、私の剣道部の仲間はテーピングをぐるぐる巻きして、翌日から休まず稽古をしていました。ほとんど休まずに、仕事帰りに通院している方も多いのです。
骨折様態、程度にもよりますが、骨の癒合さえ進めば、お医者さんも復職可能としているはずです。何より、長期の休みとなれば、職場でのキャリア・信用も駄々下がりです。交通事故被害者全般に言えますが、その被害者意識から、一層痛みを強く感じ、治療が長期化することが多いのです。休業損害や労災の休業給付がでるものですから、無理して復職をしません。気持ちはわかりますが、社会復帰の遅れや日常生活の犠牲が最も大きな損害のはずです。被害者とは言え、ケガに甘えていられないのです。
昨年、中足骨の亀裂骨折から1年も休職、保険会社の打切り後もずっと治療中の方がおりました。確かに痛みは辛いものですが、その過保護とも言える長期間のギプス固定によって、足指から足関節まで関節拘縮を起こしていました。わずか中足骨のひびから、二次的な障害へ発展しているのです。これは、完全に被害者さんの治療方針に問題があると思います。しかし、誰を恨もうと、悪化させた責任は他でもない、患者自身なのです。
被害者さんの義務は2つあります。
① 損害賠償で実利ある解決を果たすこと。
② 早期に回復を図り、社会復帰し、日常生活を再建すること。
①はお金の獲得、②は治療努力と日常を取り戻すことです。
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第5中足骨々幹端部骨折 = ジョーンズ骨折(Jones骨折)
(1)病態
ジョーンズ骨折は、つま先立ちの姿勢で足を捻挫したときに、第5中足骨の基部に発症する骨折です。この骨折は、サッカー、ラグビー、バスケットボールなど、走っている最中に方向転換をする際、前足部でブレーキをかけて捻る動作を繰り返すうちに、第5中足骨の後方端と骨幹部の境界辺りに物理的ストレスが蓄積し、徐々に疲労性の骨折を生じると考えられています。長時間の歩行の結果、折れたとする行軍骨折、疲労骨折などの好発部位でもあります。
剣道部時代、同期の仲間が連日の稽古から「なんか足が痛い・・」と、それでレントゲン撮ったら折れていたことがありました。交通事故でもわりと多くを経験しています。足の甲をタイヤにひかれたケースなどです。 (2)症状
下駄骨折よりは弱い痛みで、腫れることは少ないのです。直後は歩くこともできますが、痛みは徐々に強くなってきます。 (3)治療
ジョーンズ骨折は、骨折部の癒合が悪く、偽関節に陥りやすい骨折であり、やや難治性です。骨癒合が不良のときは、低周波や超音波による骨癒合促進刺激を実施し経過観察となりますが、現在では、積極的に、小さなスクリューで固定されています。そして、このスクリューは、再骨折を防ぐ目的で留置され、抜釘されません。
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下駄が庶民の履物であった時代に、多発した骨折であることから、下駄骨折の名前がついています。もちろん、現在でも、足が捻転したときに、この骨折が発生しており、第5中足骨基部骨折とは、小趾側の甲にある中足骨の根元が骨折したものです。 (2)症状
受傷直後から足部の強い痛みと腫れ、皮下手血が出現し、足の小指側に痛みがあり、足を着いて歩けない状態になります。 (3)治療
XPで確定診断され、徒手整復できるものでは、3~4週のギプスシーネ固定を行います。徒手では整復困難な転位があるときは、ワイヤーで締結もしくは小さなスクリューで固定されます。 (4)後遺障害のポイント
ジョーンズ骨折でまとめて解説しています。 次回 ⇒ 続きを読む »
交通事故では、足の甲を自動車のタイヤに踏みつけられた、自転車で交差点を横断中に自動車の巻き込みで足が自動車と自転車に挟まれた、変わった例ではフォークリフト、積み荷のリフトが足の甲に落ちたなどの受傷を経験しています。
中足骨とは、足の指につながる足の甲、5本の骨です。5本ある中足骨の小指側の一本が最も折れやすく、長距離の歩行により折れることがあるので、行軍骨折との呼称もあります。疲労が重なり、いつの間にか折れていた・・疲労骨折の好発部位でもあります。
(1)病態
細い骨なので、折れやすく、癒合し易いとも言えます。ただし、足には体重がかかるので、当然に痛みから歩行に支障はあります。後遺障害の対象となるのは、複数の中足骨に、転位のある骨折をしたとき、粉砕骨折や挫滅骨折したときに限られ、単独骨折で、早期に固定術を受けたものは、後遺障害を残すことは少なく、14級の認定を取るにも工夫が要ります。 (2)症状
受傷直後から足部の強い痛みと腫れと皮下手血、足に体重をかけて立つと激痛でしょうか。 (3)治療
亀裂骨折(ひび)程度ですと、レントゲンで骨折様態を確認後、消炎鎮痛処置で帰されます。亀裂骨折の多くは、3~4週のギプスシーネ固定(わずかな亀裂なら、テーピングも用います)を経て、保存療法のようです。折れ方により転位(骨がズレてくっつく)の危険性があれば、ようやく手術で固定します。固定と言っても、細い骨なのでプレートより、小型のスクリュー(ネジ)やワイヤー(針金のようなもの)固定が多くなります。
深刻な例は、足首側のリスフラン関節、足指側のMTP関節の脱臼を伴うケースです。足裏のアーチ構造が崩れるので、体重をかけて立つことができなくなります。そのようなケースでは手術での整復は必須となります。折れ方により、軽重症の差が広い部位と言えます。
すべての骨折に言えますが、癒合までは患部を動かさないようにします。ただし、固定が過度に長期間になると、関節拘縮を起こします。したがって、癒合の進行に問題がなく、転位が無ければ、固定の解除を急ぎたいところです。 (4)後遺障害のポイント
普通に癒合が進めば、深刻な障害を残すことはありません。自賠責保険は、他の骨折に同じく、折れ方と癒合状態に注目しています。破裂骨折、挫滅骨折の類は元通りの整復が難しく、手術でどこまで整復させるかにかかります。やっかいなのは、リスフラン靭帯断裂を伴う剥離骨折(はくりこっせつ)です。靭帯が付着している部分が「べりっ」とはがれ、靭帯がゴムのように骨片を引っ張るので、くっつきが悪いのです。その場合、スクリューを打ち付けて骨折部を固定します。 ○ 変形や転位を残せば、12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」が対象となります。もっとも、部位的に変形や転位を残さないように治療します。歩くと痛いので。 ○ 手術で整復した場合や、保存療法でも癒合に問題がない場合、痛みや不具合の一貫性から、14級9号の余地を残します。 ○ MTP関節の脱臼を伴う場合は、足指の可動域制限に注目します。指の可動域を丁寧に計測して、足趾の機能障害を審査に付します。 軽い障害から重い障害まで、以下、数々の認定例を見て頂いた方が早いと思います。理屈より実例です。 微妙な骨折だが認定の例 👉 14級9号:中足骨不全骨折?(20代女性・千葉県) ボルト3本で固定した例 👉 14級9号:第1中足骨骨折(50代男性・神奈川県) 珍しい第5以外すべて骨折の例 👉 続きを読む »
扁平足とは、足の裏が平たく、扁平化し、土踏まずが、ほとんど見られない足のことをいいます。上のイラストにあるグリーンのカーブが平坦になった状況です。
交通事故などで、踵骨の骨折により距踵関節面が陥没すると、それに伴って舟状骨も落下することで、アーチの後部が低下し扁平足になります。 (2)症状
距骨と踵骨の関節面は整合性を崩し、後脛骨静脈圧迫による血行障害、腓骨筋腱鞘炎などを合併して、慢性の疼痛とむくみに悩まされます。アーチの低下により、足の靱帯や関節などに、直接的な衝撃が加わり、蹴り出す力を生み出すことが困難になります。
中足骨の脱臼・骨折でも扁平化を生じ、このときは血行障害が著しく、大きなむくみとなります。比較的に強い足関節捻挫であると診断され、放置されると、徐々にアーチが低下し⇒下肢の支持性が低下し、蹴り出しが不十分となり、⇒足裏の筋、下腿三頭筋のポンプ作用が低下し、⇒血流量が低下、⇒足はむくみ、⇒足裏の筋、下腿三頭筋の筋力が低下、⇒さらに、アーチが低下する悪循環に陥ります。 (3)治療
保存的治療が中心で、①足指じゃんけんの運動療法、②血流を促進させる温熱療法、③靴底にアーチパッドを装着し、土踏まずに当てることで、一定程度の改善が得られます。
改善が得られないときは、後脛骨筋の移行術や骨切り術、最悪では、関節固定術などで足のアーチを作成することになります。 (4)後遺障害のポイント
関節固定術が行われたときは、足関節の用廃で8級7号が認定されます。それ以外では、それぞれの症状に合わせて立証していくことになりますが、現在、外傷性扁平足は未経験です。 次回 ⇒ 中足骨骨折シリーズ
カップラーメンが食べたいのです。 ここ数年、栄養バランス重視のため、カップラーメンを控えています。昨年は年間で3個しか食べませんでした。かつて、事務所でカップラーメンを食べると、健康を気遣われて社員から軽く怒られたものです。 👉 どうして女子社員はお母さんになってしまうのだろう ところが、今年は1月だけで早くも3個です。理由は寒さです。毎度、冷たいサラダの食事が味気なく、+汁物を欲するからです。ただし、1人分の味噌汁やスープ、ましてや麺類の調理は実に面倒です。カップ麺はお湯を入れるだけの、速攻の御馳走なのです。 昨年暮れの病院同行でしたが、到着駅にて時間調整、昼食を取りたかったのですが、駅前に飲食店がまったくありません。コンビニは駅内の売店のみです。仕方なく、パンとコーヒーでも買うかと思いましたが、レジ横にポットがありました。もしかして、お湯を下さるの?と聞くと、「カップラーメン用でお使い下さい」と。
立ち食いそばもない駅で、カップ麺はまさに冬のオアシスです。体も温まりました。
二分靱帯損傷(にぶんじんたいそんしょう)
(1)病態
足関節捻挫は、腓骨と脛骨そして距骨が接する青○印部分で発生しています。ところが、足関節捻挫でも、直近の別の部位を捻挫することがあるのです。
中でも、イラストのオレンジ色で示したY字型の二分靱帯が損傷することが多いのです。二分靭帯は、かかとを構成する踵骨(しょうこつ)、立方骨と舟状骨を固く締結する役目です。爪先立ちのような姿勢で、内返し捻挫となったとき、二分靱帯は損傷や断裂することがあります。バレーボールでジャンプ、着地で内返し捻挫となると、ほぼ確実に二分靱帯は損傷を受けるのです。 (2)症状
踵骨前方と舟状骨との間に圧痛や腫れ、皮下出血、荷重歩行時の疼痛などが発現します。足関節の内反や底屈動作を行うと疼痛が誘発・増強されます。 (3)治療
たかが捻挫と思っていても、二分靭帯が付着部分の骨、踵骨、立方骨、舟状骨で立方骨ごと剥がれることもあり、専門医であれば、○○骨剥離骨折もしくは裂離骨折と診断します。診断は、XP検査が中心ですが、小さな剥離骨折では、CTが効果的です。二分靱帯損傷で、損傷部が腫れ上がっているときは、足関節の捻挫と見分けがつきません。しかし、専門医が丁寧に触診すれば、足関節と二分靱帯は部位が違うので鑑別ができるのです。
治療としては、最初はギプス固定、次に包帯固定に切り替えて2~3週間もすれば、腫脹や痛みは緩和され、後遺障害を残すことなく治癒します。剥離骨折の治療は約4~6週のギプス固定となりますが、骨片が大きければ固定術が選択されます。しかし、ここでのテーマは、足関節捻挫と診断され、パップ剤のみで放置されていることです。MRIで二分靱帯の損傷や断裂が確認されたときは、歩行時の疼痛が後遺障害の対象になります。 (4)後遺障害のポイント Ⅰ.
立方骨圧迫骨折(りっぽうこつあっぱくこっせつ) = くるみ割り骨折
(1)病態
立方骨は、足の甲の真ん中から、やや外側に位置しており、前は小指と薬指の根元の中足骨、後は、かかとの骨=踵骨と連結して関節を形成しています。強い外返し捻挫により、立方骨は、踵骨と第4、5中足骨でクルミのように挟まれ、踵骨・立方骨関節面の軟骨下骨が潰されて骨折するのです。立方骨は足のアーチの要となる骨で、体重が乗ったときに、他の骨とともに衝撃を吸収する役割を果たしています。立方骨にゆがみが生じると足全体の構造が崩れ、扁平足をきたします。
交通事故110番の相談例では、自転車やバイクVS自動車の出合い頭衝突で、複数例を経験しています。最近では、駅構内の階段を1段踏み外し、左足を外側に捻挫、くるみ割り骨折となった被害者から相談を受けました。捻挫の瞬間、ボキボキって音が足から聞こえてきたそうで、手摺にしがみついて、なんとか転倒は免れたのですが、直後は、激痛で、一歩も歩き出すことができなかったとのことです。人身傷害保険の対応ですが、骨折部の疼痛で12級13号が認められました。 (2)症状
足を外側に捻って、強く捻挫したときに、足の外側部が腫れ、強く痛み、歩くことができません。捻挫と診断され、放置されることが多く、痛みが長期間、継続します。 (3)治療
XPでは、踵・立方骨関節面に沿って骨折線が認められます。初期のXPで発見できないときでも、骨萎縮が始まる3週間前後のXPで確認することができます。治療は、麻酔下で徒手整復後、ギプス固定、その後、硬性アーチサポートで外側縦アーチが保持されていれば、平均的には3カ月前後で骨癒合が得られ、骨折部に疼痛を残すことも扁平足に発展することもありません。 2013年9月、西武の 炭谷銀仁朗捕手は、本塁上で走者と交錯した際に左足の外側を痛め、左足立方骨亀裂骨折と診断されました。しかし、彼は1流のアスリートであり、優勝のかかった終盤戦で離脱することは困難な事情もあり、その後も捕手として休むことなく活躍しました。サッカー選手やマラソンランナーでも、立方骨の疲労骨折が複数例報告されています。疲労骨折であれば、交通事故外傷として後遺障害の対象にはなりません。主として外返し捻挫を解説してきましたが、内返し捻挫の受傷機転では、二分靭帯による立方骨剥離骨折を発症することがあります。 (4)後遺障害のポイント Ⅰ.
有痛性外脛骨(ゆうつうせいがいけいこつ)
(1)病態
外脛骨とは、足の内側にある過剰骨もしくは、種子骨の1つで、健常人の15~20%位に認められていますが、 骨の出っ張りが見られるだけで、痛みの症状がなければ、なんの問題もありません。
なお、過剰骨とは、普通にはない、余分な骨と定義されています。上のイラストは、足の内側部で、内側の骨の端に外脛骨があります。舟状骨粗面という足の内側に、出っ張った部分があるのですが、その部分に後脛骨筋という筋肉がついており、この筋肉は、足の土踏まずを維持する上で重要な役割を果たしています。この筋肉が緊張することで、足のアーチが保たれているのです。
有痛性外脛骨による疼痛は、捻挫や繰り返される後脛骨筋の引っ張り作用で、外脛骨部分が舟状骨の部分から剥がれ、その部分で炎症を起こしたことにより発症しています。 (2)症状
繰り返す痛みと腫れで、女性に、とりわけ思春期の女性に、発症例が多いことが特徴です。 (3)治療
局所の安静下で、鎮痛剤、温熱療法などの保存療法で疼痛の改善を目指します。症状が長期化するとき、繰り返し疼痛が出現するようなときは、ギプス固定や足底板=アーチサポートを装着させるリハビリ治療が行われます。
大多数は保存療法で改善が得られていますが、4カ月以上の保存療法を行っても、症状の改善が得られない、また、なんども再発を繰り返し、日常生活に支障があるときは、手術が選択されています。手術は、外脛骨を摘出、舟状骨突出部も一部骨切りを行い、最後に支持組織である後𦙾骨筋腱と底側踵舟靱帯の再縫着を実施します。 (4)後遺障害のポイント
常識的には、過度な運動や、足にフィットしない靴を履き続けることによって、外脛骨を有する人、主に女性に発症するもので、交通事故外傷で有痛性外脛骨は聞きません。また、手術により、運動痛は消失するので、後遺障害を残すことはありません。 次回 ⇒ 立方骨圧迫骨折