反面教師となる事例をいくつか紹介します。

 まさに、「人身傷害保険への請求が交通事故解決の最大の山場」の例です。   1、自身の過失が50%!、弁護士に依頼したものの・・

 バイクと自動車、交差点で出会頭の衝突事故で重傷、後遺障害も5級が認定されました。ただし、バイク側の不注意も大きく、過失割合の相場は50:50の事故です。

 この件ですが、依頼した弁護士は相手保険会社(以後、賠償社)と交渉を担って頂けたものの、自身加入の人身傷害へは及び腰、「まずは、相手保険会社への賠償請求を先に」と進めました。本件で契約している人身傷害の保険会社(以後、人傷社)は東京海上日動ですから、自身の過失が何割であろうと、先に人身傷害への請求がセオリーです。

 しかし、この弁護士さんは人身傷害保険の約款をよくご存じないのでしょう。具体的な戦略なしに、賠償社とだらだら交渉しています。交渉と言えばかっこいいのですが、単に相手保険会社の提示をのんびり待つだけです。催促も実にやわらかで、1年半でたった2度の賠償金額の提示を受けたに過ぎません。症状固定日から無為に1年半が経とうとしています。つまり、なめられています。

 依頼者さんへも、「(東海日動から)こんな提示(額)が来ましたが、どうしますか?」とお伺いしてくるだけです。まるで相手保険会社のメッセンジャーの役割です。業を煮やした依頼者さんは、「では、相手の提示に対する先生の考える最良の策は何ですか?」と聞いたところ、「まず、交渉で賠償金を受け取り、次いで、人身傷害に請求です。」とのこと。    不安に駆られたこの依頼者さん、ネットで検索、「自身の過失分を裁判基準で回収する方法」を目にしました。↓

人身傷害特約 支払い基準の変遷 ⑭ 訴訟基準をゲットするための3策(1)     本件における裁判基準での全額回収は、人傷先行か裁判です(両方がベスト)。人身傷害で先に(少ない人身傷害基準とはいえ)過失減額のない100%を先取しておく、できれば、裁判で損害総額を決定させることが大事です。元の弁護士の方法ではダメです。いくら賠償社から交渉で裁判基準に近い額を勝ち取ろうと、過失分50%分に対する人身傷害からの(人傷基準での)支払い額は半分以下です。その回収に責任をもってくれるのでしょうか?

 本件の裁判基準での総損害額は8000万円ほどです。自身の過失分が50%なら4000万円を人身傷害に請求する必要があります。しかし、人傷基準での回収では半分程度です。つまり、2000万円の取りそびれとなります。

 本件は、「人身傷害保険への請求が交通事故解決の最大の山場」の典型例なのです。賠償社との交渉で裁判基準に近づけることなど、弁護士バッチさえあれば、むしろ簡単な作業と言えます。    続きを読む »

   

 人身傷害の担当者と任せた弁護士・・・果たしてこのような解決でよいのでしょうか?      良いわけありません!(怒) 交通事故被害者は自らが被った損害を最大限に賠償してほしい。そして、決して安くない掛金を払って契約した自動車保険からも約束通り保険金を払ってほしい。これは当然のことです。

 それでは、解決策を提案する前に、なぜ、お願いした弁護士先生が人身傷害保険の請求に消極的なのか、これを分析しましょう。    理由(1)引き受けたのは加害者(≒相手保険会社)との交渉ですから・・

 委任契約した弁護士さんは、あくまで「相手との賠償交渉を担っただけ」なのです。確かに契約書を読むと、「依頼者の契約している保険への請求を代理して請求します」などの記載はありません。それは「自分でやって下さい」なのです。もちろん。アドバイス的なことはあるでしょうけど、保険金請求の代理までお金を取ってまで弁護士がすることではないのです。

 しかし、昨日の①の例のように、自身の過失分が満額回収できない事態になったら・・どうしたらよいのでしょうか?    また、労災や健保、障害年金や介護保険の公的保険、その他傷害保険、共済・・・全部、自分でやらなけれなりません。自分でサクサクできるビジネスマンはなんとかしますが、書類仕事が苦手な人や高齢者は難渋しています。重ねてケガのハンデがあり、中には障害を負った人も独力で頑張らなければならないのです。家族の助けがなければそれこそ大変です。   理由(2)その費用は弁護士費用から出ないので・・

 ご存じ弁護士費用特約、これがあれば被害者は弁護士への報酬を気にせず依頼できます。しかし、この特約は「損害賠償に関わること」にしか使えません。約款上にはっきり書かれています。したがって、加害者側ではない、公的保険や自身加入の保険への請求、諸事務は対象外なのです。

理由(3)だったら、弁特外で有償でやってもらえませんか?

 と希望する被害者さんも少なくないはずです。しかし、肝心の弁護士先生もすべての保険事務に精通しているわけではありません。やったことのない手続きは門外漢なのです。それに、時間食ってかなり面倒です。比べると、賠償交渉の方がむしろが楽な業務であることもあります。したがって、お金をもらってまで面倒をみる責任を負いかねるのかと思います。

 さらに、人身傷害の場合、約款には「人身傷害の保険金は人身傷害の基準で計算します」と書かれています。相手といくらで示談しようが、関係ありません。(保険会社各社で表現の違いがありますが、おおむね「裁判での決着であれば、その金額で計算する」とはしていますが。)  一定の弁護士は「約款に書かれているから、これは絶対で、交渉の余地はない」と解釈しています。交通事故をよく知る弁護士は交渉の余地があることを知っています。しかし、約款=文章化された約束ですから、契約の効力を知る弁護士こそ拘束されてしまう傾向なのです。

 結局、「人身傷害の請求は、依頼者と保険会社(人身傷害加入の)の交渉で」と、委任契約から、交通事故業務から、切り離してしまうのです。   理由(4)逆に依頼者さんが「人身傷害への請求は請求書を出すだけですから自分でできます」と・・

 頼もしい被害者さんではありますが、やはり、人身傷害の基準に阻まれます。自身の過失分を”裁判基準で”回収するのは簡単ではありません。この理屈を知るには、かつて、人身傷害の約款解釈で起きた”裁判基準差額説VS人傷基準差額説”の話からしなければなりません。そして、満額回収を実現するには、(平成24年2月最高裁判例後に改定された)各社約款に応じた対策が必要です。  たいてい担当者から「人身傷害の基準で計算しました」と押し切られます。ここに至って、任せていた弁護士に相談しても、やはり「仕方ない」との回答です。  続きを読む »

 ここ数年の相談例から・・・   「弁護士に交通事故の解決を依頼しましたが、その弁護士に『人身傷害保険への請求は自分でやって下さい』と言われて・・    人身傷害加入先の保険会社に請求したところ、『当社に基準で計算したところ〇〇円です(自身の過失分よりえらく少ない金額)。これ以上の支払いはありません』と言われました。

 弁護士に相談しましたが、『約款でそうなっているので仕方ありません』と言われました。なんか納得できません。保険代理店さんの説明では、自分の過失分は人身傷害保険ででると聞いて契約したはずです」こんなパターンです。    これは、弁護士が加害者(側の保険会社)に請求する、いわゆる裁判基準と、保険会社が計算する人傷基準の隔たりが大きいことを原因とします。   <計算例で説明します>   1、頚椎捻挫で14級9号となった被害者さん(主婦)は交差点での衝突事故で20:80での過失割合でした。

2、弁護士に依頼して相手保険会社と交渉しました。賠償金の総額は300万円でした。

3、相手からの賠償金から自身の過失分20%が差し引かれます。300万円×(1-0.2)=240万円となりました。この金額で交渉解決となりました。

4、お願いしていた弁護士に、「自身の過失分20%は自分の自動車保険(人身傷害)へ請求できます」と言われました。

5、300万円×0.2=60万円、相手からの賠償金は240万円ですから、その差額60万円が埋まるので、満額回収!となるはずです。

6、しかし、保険会社(人傷社)からの回答は、「当社基準で計算のところ30万円となります」と。あれっ、満額にならない。

7、これを弁護士に相談しましたが、「約款の決まりですから仕方ありません」と・・・。

8、理由は、総損害額の違いです。裁判基準では300万円のところ、人傷基準での算定はほぼ半額の150万円です。同じ損害でも、慰謝料や逸失利益などは、計算基準の違いで大きな差が生じるのです。裁判での相場と保険会社の算定基準を比べると、倍以上の差が出ることは珍しくありません。

 したがって、差し引かれた300万円の20%は60万円ですが、人身傷害からでるのは150万円の20%で30万円、(わかりやすく簡略しましたが)、つまり、人身傷害から全額回収ができないのです。    これが、自身に過失がある交通事故被害者の「あるある」解決です。このモヤ~とした気分でスマホを検索した結果、以下、秋葉のHPにたどり着くようです(下はその主な記事)。   続きを読む »

 相手が無保険 だからと言ってやられ損、泣き寝入りなどできません。

 しかし、現実にお金を持っていない加害者からの回収は絶望的です。そこで、自身に自動車保険の加入があれば、その人身傷害保険や無保険車傷害保険に請求することになります。

 さらに、ここからも被害者の運命は分かれます。① 保険会社の計算する基準額で諦めるか、② 裁判の判決額を回収するか・・・①と②の差は、時に数倍の開きがあります。本件で言えば、① 3000万円 vs ② 1億円と、7000万円もの差がありました。

 結果、連携弁護士は1億円の回収に成功しました。私達は、保険会社が約款を曲げて支払ってくる可能性を最初から想定していました。無保険加害車に被害に逢った被害者さん、弁護士選びを誤れば7000万円を損します。交通事故の解決こそ、保険知識や約款解釈が問われます。正直、法律知識以上に大切と思っています。

 秋葉事務所と全国十数の弁護士事務所は、本例のような解決を目指して情報交換・勉強会をしています。  

死亡:脳挫傷(50代男性・千葉県)

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 最初に結論しますと、私の交通事故業務28年間では、ほぼ100%支払ってもらいました。    自賠責保険の自賠法、民間の保険の保険法では、それぞれ時効を以下のように定めています。   自動車損害賠償保障法 第19条(時効) 第16条第1項及び第17条第1項の規定による請求権は、3年を経過したときは、時効によって消滅する。   保険法 第95条(消滅時効)  保険給付を請求する権利、保険料の返還を請求する権利及び第63条又は第92条に規定する保険料積立金の払戻しを請求する権利は、3年間行わないときは、時効によって消滅する。    加えて、損保協会のパンフレットには以下のように注意書きが添えられています。

 保険金請求権の消滅時効の起算日は、保険法に規定が設けられていないので、民法の一般原則により判断することになりますが、保険商品や保険金の種類などにより異なりますので、注意が必要です。

 細かいルールは保険の内規、支払規定に書かれています。保険種別によって違いがありますが、損保商品の多くで「事故発生から30日あるいは60日以内に事故報告をして下さい。」とあります。それ以降に遅れて事故報告、保険金請求をした場合、規約に違反していますから「保険金を支払わない」対応も違法ではありません。しかし、この規約違反の請求に対して保険会社は割りと寛容で、「保険がでることを知らなかった」理由であれば、ほとんど支払OKの判断です。

 この報告遅延を含め、時効を理由に支払拒否をする、つまり「時効を援用する」ケースは、保険請求に悪質性がある場合、問題のある契約者の場合に限ると思います。    今年も終盤ですが、既に時効となった保険請求が2件あります。これらも問題なく請求・支払に続くと思います。

 

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 これもよくあるご質問です。答えは至ってシンプルです。   有給で消化した休業日は、交通事故による損害として休業損害日になります。つまり、損害賠償上、有給の買上げの形となります。    今年からの働き方改革でも、有給は法的義務にまでなっています。有給休暇は労働者に付与されたリフレッシュの為の休暇であって、病気ならまだしも、誰かの加害行為のせいで消化するものではありません。被害者の希望で通院日を普通の休業日とするか有給休暇とするか、休業損害証明書の記載にて選択できます。これでご質問は解決です。

 次いで、会社の事務方に休業損害証明の記載をお願いすることになります。ここからが本題かもしれません。休業損害証明書は自賠責の様式を使えばOK、任意保険会社へ対する請求はもちろん、裁判での証拠にも使えます。ただし、慣れていない事務担当者にとってこの書類は少々不親切で、有給休暇の扱いを含め、書き方についてご質問いただく事がしばしばでした。ところが、以前から入手していました某任意社の様式は大変に親切です。以下、2枚を比べて下さい。

 この書式では、事務方が記載に迷うであろうお休みの種別について、単に○(有給休暇)と、×(会社所定の休日)しか書き込めません。

 その点、下の書類は休みの種別が細かく記号化、表に書き込めます。

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 正確に言えば、「弁護士が請求する赤い本(裁判の基準)と比べて・・・」が頭につきます。

 これは、賠償金の相場を被害者に示した後に頂くご質問であり、また以前、弁護士事務所内の研修において、事務所のスタッフさんから頂いた質問でもあります。

 例えば、後遺障害の慰謝料の差は以下の通り、一目瞭然、倍以上の開きがあります。     この差を見れば、保険会社との相対交渉するなど愚の骨頂に思えます。それでは、タイトルの質問に戻ります。

 保険会社の基準額・提示額が低い理由は、第一に営利企業だからです。契約者から預かった掛金に対して、支払う保険金と経費を差し引いた残りが利潤となります。当然、儲けは多い方が良い。たくさん掛金を集めて、少なく支払えば、儲けは上がります。

掛金-支払保険金-経費=利益

   しかし、保険制度はそう単純ではありません。任意保険の会社は掛金の設定や新商品の販売において、監督庁である金融庁の認可が必要です。事故が少なく掛金が多ければ、つまり「儲け過ぎ」たら掛金を下げなければならず、逆に支払いが増大すれば、「赤字にならないよう」掛金の値上げを求めます。これは、損害保険算出機構が損害率を計算し、適時見直しをしています。保険制度の維持を目的とした、適正な利益にするシステムです。これが、単なる営利企業と一線を画するものです。

 利益を得る前に、支払い保険金以外にさらに経費がかかります。とくに人件費に関しては、保険を募集・契約する為の営業経費のみならず、保険会社特有のセクションとして支払機関(SC=サービスセンター)が存在します。示談交渉をする人身・物損・車両・傷害の各担当者、事故車両の見積もりをチェックするアジャスター、そして事故調査を外注する場合、事故原因や医療調査をする調査会社、治療費に目を当てる顧問医、もめた場合の協力弁護士や顧問弁護士・・・これだけの人達が関わっています。

 民法の原則として、挙証責任は原告(請求者=被害者)側にあります。被害者は証拠を突きつけて請求する側です。逆に加害者側の保険会社は被告(請求される側)ですから、見積・請求書と証拠を待っている立場、率先して保険金支払いに関する調査などしなくて良いことになります。それを膨大な設備と人件費をかけて、被害者に代わって実行していることになります。適正な支払をするために請求内容を精査しているとも言えますが、お人好しの被害者は「なるべく払いたくない」であろう加害者側に”おんぶに抱っこ”の状態なのです。

 「俺は被害者だから何もしない、相手が全部手配するのは当然だ!」との被害者感情も理解できますが、それは「加害者に全部任せた」ことなのです。相手任せで戦いを放棄したのですから、安い賠償金で我慢すべきとも言えます。

 これが、保険会社基準の安い理由と思います。だからこそ、裁判基準同様の賠償金を得るために、被害者は自ら汗を流して証拠を集め、あるいは、お財布を開いて弁護士等を雇う、挙証責任を果たす必要があるのです。安い基準で示談するのも、これら出費と面倒から開放されることを考えれば一つの選択です。軽傷の場合、費用対効果から保険会社任せでも良いかもしれません。しかし、後遺障害を負うようなケガの場合、上の表を見て判断してほしいと思うのです。  

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 加害者が自動車ではなく、自転車あるいは歩行者ですと、当然に自賠責保険が無いことになります。本件での相手は個人賠償責任保険となりますが、自賠責に同じく、しっかり後遺障害の等級認定を突き詰めます。本件の場合、より慎重に、労災の等級認定を確保してしてから、相手保険会社(個人賠償責任保険)に審査を求めました。保険会社の機微を計るような手続きですが、弊所ではこのような繊細な仕事をしています。    保険の性質を熟知し、保険会社の機微を知ることが大事です。  

11級7号:胸椎圧迫骨折(40代男性・埼玉県)

【事案】

バイク搭乗中、青信号の交差点を直進中、相手方自転車が右方から侵入し、接触、転倒した。救急搬送された後、胸椎圧迫骨折の診断となった。  

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 交通事故被害者さまのご相談を頂く中で、もっともご回答に窮することは、被害者感情の持っていきどころです。

 車の修理費など物損の場合、被害者さんにとって、その修理費を相手から取ることで全てOKとはいきません。純粋に修理費は直接損害と呼ばれ、まともな見積もりを突きつければ、大抵の損保は支払いに応じます。しかしながら、細かいことになりますが、車の修理に出す手間や様々な書類や交渉ごとに割く時間、これらの損害・対価は法律上、認められません。また、買って間もない新車などは「修理ではなく、取り替えてくれ!」と言いたくなります。高級車となれば、「格落ち」も発生しているかもしれません。これらは間接損害と呼ばれ、これを相手保険会社に請求しても、すんなり支払いを受ける事は困難です。それこそ、裁判などで白黒をつけない限り取れないものです。もっとも、裁判でも負ければ取れません。

 つまり、自動的にすべての損害を回収することなど、そもそも無理なのです。手間暇・金銭をかけて、苦労を重ね、自ら戦わなければ実現できません。この原則をすんなり理解できるか?一般的に欧米人と日本人の意識の違いを感じるところです。とくにアメリカ人の場合、歴史やメンタリティから、他人に対する信頼は大変に薄いものです。交通事故の相手があっさり「すみません」と非を認めて、即座に賠償してくれる期待など持っていないのです。明らかに自分が悪い追突事故でさえ、加害者は「I’m sorry」とは言わないことが普通です。また、お金がなく、任意保険に加入していないかもしれません。一方の被害者も、相手の誠意と賠償資力を期待していませんから、しっかり車両保険・人身傷害保険に加入、あるいは弁護士を雇うのです。言葉さえ通じない多種多様の民族の合衆国ですから、自分が受けた被害は自助努力や戦いで回復することが身に染みているのです。

 その点、日本はほぼ単一民族、全国的に日本語が通じ法律も統一、島国ならではのご近所関係・相互扶助もあり、他人に対する信頼は世界一のレベルではないでしょうか。その証拠に、落とした財布が届く率は63%との統計があります。ちなみに他国の統計は目にしたことがありません。他国にとって、ほとんど0%のことなど数えないからだと思います。これは世界に誇るべき日本人と美徳と同時に、被害者感情に大きく作用しているのではないかと私は考えるのです。交通事故の被害にあったのだから、「(信用すべき他人が)すべて弁償してくれるはず・・これって普通でしょ!」と。

 残念ながら、こと交通事故の争いとなれば日本人の美徳は薄れます。相手保険会社はさながらアメリカ人になります。グローバルスタンダードを高圧的に押し付ける存在ですから、法律に従って決して甘くない対応となります。基本、被害者側が証拠を集めて突きつけなければ払いません。間接損害の請求など、端から拒否します。

 それでも、直接損害の支払ならかなり信頼できる存在です。また、ケガをすれば、治療費の一括払い(病院に直接、治療費支払い)など、アメリカ人のくせに、似合わないサービスをしてくれます。また、強制保険(自賠責保険)により、任意保険以前に被害者に多少の過失があっても、一定額まで100%の治療費が確保できます。ヨーロッパの福祉国家さながら、健保・労災・自賠責と、社会保障制度が確立しています。これらは、発展途上国が目標としている社会保障制度:3種の神器で、世界的にあたり前に実現しているものでありません。国民国家としての努力の賜物です。実に、世界の半分以上の国は自賠責保険がないのです。そして、任意保険の会社があっても、肝心の加入率は30%程度が普通なのです。日本は80%のようです。すると、5台に1台は無保険になりますが、80%以上は世界的に優秀な加入率なのです。これらの比較から、いかに他人から被った被害の回復は大変なことで、当たり前に助けてもらえる事ではない世界基準を知ることになります。

 落ちていた財布を拾って届ける優しく気高い精神の人が、ある日交通事故被害にあったとして、対する他人(加害者側)が決して優しくも道徳的でもないことに直面します。当然、感情的にすんなり受け入れられるものではありません。連携弁護士を含む私達はその意を汲み、できるだけ損害を回復するように働くことになります。それには、被害者さんの自助努力や費用負担も当然に必要です。そして、私達は被害者の皆様の怒りや失望を、戦いへ切り替えさせることから着手します。損害回復は当たり前のことではない、戦いであると理解することからのスタートなのです。    ちなみに、私は過去4度財布を拾い、届け出て無事に持ち主に届きましたが ・・・ 逆に、自身2度財布を落とすも、まったく届きませんでした。日本も信用できませんわ(怒)!  

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  カルテ開示手続きは病院によって違います

 初回の自賠責保険請求ではほぼ使用しないカルテですが、再請求(異議申立)をする際に、初期症状や症状の推移を確認をするため、また、裁判上で症状の有無・程度が争われる場合、病院で開示請求をする必要が出てくることがあります。実際に、自賠責調査事務所に異議申立てをした際、カルテの提出を指示されることがありました。

 しかし、カルテ開示の請求は病院にとって一番嫌うことです。なぜなら、治療に疑問を持たれたと思われる上に、膨大な量のカルテをコピーすることになるからです。

 後述しますが、このため、カルテ開示請求の方法は病院によって異なってきます。具体的なカルテ開示方法については以下説明していきます。    方法1:郵便での取得    カルテが必要になった旨、必要な期間について記載された依頼書・請求書を病院に郵送して依頼する方法です。但し、この方法を拒否する病院が一般的です。なぜなら、カルテは重要な個人情報であり、診断書に記載されている個人情報以上に外部に漏れた場合のリスクが高いからです。そんなに簡単に考えてもらっては困るのでしょう。   方法2:病院窓口での取得    カルテが必要になったことを病院で直接説明し、取得申込書等に記入して行う方法です。この方法を採る病院が多い印象を持ちます。直接請求者を確認し、請求の理由と意思を検討できます。やはり、患者本人からの申請が望ましく、本人が高齢者や障害者であって難しい場合はご家族からの申請を原則としているようです。

 自賠責調査事務所へ提出するために取得するのであれば、方法1、2によることが多くなります。上記の法1、2による場合でも、士業の方が取得するには同意書も必要になります。但し、士業等や代理人の場合、病院がカルテ開示を拒絶して、本人からの請求のみ対応する場合もあります。なぜなら、治療行為が特に問題がなかったとしても、病院は医療過誤訴訟を恐れる立場にあるため、とくに相手が弁護士ともなると、当然に慎重になります。   方法3:弁護士会や裁判所からの命令    数ある病院の中には、患者本人からも、士業からもカルテ開示を拒否する場合もあります。セカンドオピニオンや患者への事前説明が重要視されている昨今では、珍しい部類になってきていると思います。このような場合には、弊所では連携先の弁護士に協力を要請します。弁護士会照会による診療記録を取り寄せる方法や、裁判中であれば裁判所からの命令による取得方法もあるそうです。      病院によってなるべく避けたいカルテ開示であることから、その開示方法は決まっていないことが多く、またその方法も病院によって異なるため、事前に病院の医事課に連絡してカルテ開示の担当者と密に連絡を取っていくことが必要になります。    もっとも、被害者請求や異議申立てであっても、不用意に病院を刺激することになりますので、できればカルテ開示をしないことに越したことはないと考えています。  

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 交通事故で加害者・被害者の双方が、文章に署名・捺印して示談書を交わしたら、これは正式に解決を証明するものとなり、法的にも絶対的になります。

 後で、「やっぱり、こうだ」と蒸し返しても、原則、ダメです。したがって、示談書を交わす場合は慎重に行わなければなりません。しかし、原則には例外があるもので、場合によっては成立した示談を無効にできる場合があります。法的には、示談内容を誤解した=錯誤無効を立証しなければなりません。あるいは、公序良俗に反する契約(示談)であったと無効を立証することでしょうか。例えば、入院中の朦朧としている時(正常な判断ができない)に示談した。監禁でもされて脅かされて示談した。・・・これら、極端なシチュエーション下である必要があり、立証はそれなりにハードルが高いものです。法律に関する学術的な見解は専門家に任せるとして、過去の経験から参考例を紹介します。   ○ 免許取りたての女子学生がタクシー運転者と交わした示談書を撤回させた件

 これは、代理店時代のことです。お客様(女子大生)が信号のない交差点で自動車同士の出会頭衝突となりました。直後・その場で、相手(タクシー)運転手から、「私に全面的に事故の責任があります」と示談書に署名させられた件です。

 本事故は、相手タクシーに一時停止があり、「20:80」でタクシーの責任が大きいものです。それは当然にタクシー運転手も知っていると思います。それが、その会社の方針なのか運ちゃんの悪知恵なのか、示談書を車内に常備しており、免許取りたて+初めての事故で気が動転している19歳の女子学生に、まんまと「100%過失を認める」示談書を書かせたものです。

 後に、事故連絡を受けた当方の保険会社担当者が交渉に当たりましたが、相手タクシーは示談書を楯にとり「100:0」を譲りません。膠着状態を見かねて、代理店の私が動くことになりました。

 ご本人を連れてタクシー会社を訪問し、まず、「私はその時、気が動転して・・怖くなって・・署名したものです。示談は撤回します。」と、本人に宣言させました。相手の担当者はそれでも、「示談書は有効に成立したものだ。法的手続きをとる」との返答です。

 同席の私は、「学生・未成年で、免許証をとって3ヶ月の女の子でしょ? 対しておたくの運ちゃんは2種免許取得者でこの道10年のベテランですよね? 一方的に脅かすような口調もありましたよね? 一時停止側の過失が大きいことは当然に知っていますよね? 法的手続きは望むところです。 こちらとしは、本件の経緯、つまり、会社ぐるみでこのような不当な示談行為をしていることを国土交通省(タクシーの管轄省庁)に陳情します。 また、ご本人からの撤回の宣言と今のやり取りは録音していますので、弁護士より裁判所に提出し、本件示談が錯誤無効ないしは公序良俗に反するとして撤回を主張します。 省庁や裁判所がどう判断しますかね」と畳みかけました。

 翌日、タクシー会社から「保険会社同士の話し合いに委ねます」と回答、事実上、示談書は撤回されました。    本件の場合、このような示談ではさすがにばつが悪く、お役所の目もあり・・タクシー会社は渋々引っ込めました。しかし、これが成人だった場合は、民法の原則通り「お互いで合意したこと」として、撤回は難しかったかもしれません。 悪質なドライバーにとって、弱腰の相手はいい鴨となります。  

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 交通事故の解決には、弁護士の賠償交渉に留まらず、色々な作業があることを示しました。また、すべての弁護士が宣伝文句通りに助けてくれない現実も説明しました。    それでは、弁護士がやってくれないのなら、誰がやってくれるのでしょう?    最近、めっきり少なくなった交通事故・行政書士、一時の流行は過ぎ去った感があります。10年前は交通事故を積極的に受任する弁護士は少なく、保険会社の顧問・協力弁護士が細々と保険会社から紹介を受けている程度、まして、ネット広告を出す弁護士は(広告規制の為ですが)皆無でした。もちろん、交通事故被害者からの相談・依頼はありますが、交通事故はあくまで死亡や重度障害のレベルでの受任であって、むち打ちなどの軽傷は謝絶が普通でした。

 このような環境下、隙間産業的に勃興したのが交通事故・行政書士でした。ビジネスとしての狙いは良いのですが、避けられないのは”業際問題”です。行政書士は代理権もなく、弁護士に比べてできる事が制限されています。それを示す表があります。

弁護士 行政書士

 書類作成

○ △(保険会社に対する請求書を作成。なお裁判所に提出する書類の作成は不可)

 示談交渉

○ ×

 調停

○ ×

 訴訟

○ ×

   この表は、交通事故・弁護士向けに販売されているHPのコンテンツです(HPの内容を自作せず、雛形を買っている先生のHPに同じように掲載されていますのでよく目に付きます)。それはさておき、まったくもって記載の通り、弁護士と行政書士を比べては話になりません。そもそも資格・専権業務が違うのですから当たり前です。ただし、私達の整理した表は、もっと細かく交通事故の作業を整理しています。それが、下の図です。  

3、行政書士ができる業務の範囲

 このとおり、交通事故業務はもっと広範に渡り、先の表は、上図の4 賠償交渉 ...

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 先週の東京相談会は厳しい残暑にも関わらず、8名のご参加を頂きました。参加された皆様、大変お疲れ様でした。毎度のことですが、既に弁護士に相談中、又は契約中のご相談者様が3名もおりました。    いずれも、賠償交渉以前の段階で難儀していながら、弁護士の先生に相談しても埒が明かない、不安が解消できないことから、相談会に参加となりました。つまり、交通事故で困って専門家に依頼したものの、相談先の先生では何も解決できないのです。それは、弁護士が法律の専門家であり、決して交通事故の専門家ではないことを示しています。加えて、この現象は交通事故業界の構造的な問題と考えています。交通事故の解決に必要な作業として、当然に弁護士先生の賠償交渉は必要です。しかし、交通事故は賠償交渉のみですべてを解決できるものではありません。百万遍の言葉を重ねてもわかりづらいと思いますので、8年前に作成した図を使った説明を試みたいと思います。  

1、交通事故発生から解決までの作業一覧

 1 事故発生から5 解決まで、被害者に課せられる作業です。人身事故を対象としていますので、病院の役割も下段に整理しました。ケガの痛みや入通院の苦難を抱えて、これらの作業を被害者がたった一人でやらなければなりません。ご家族の助けがあるにせよ、初めての事故で混乱することばかりです。だから、相手保険会社の言いなりに進んでしまうのだと思います。なにせ、保険会社は治療費を病院に払ってくれますし、事故車も見に行ってくれますし、休業損害まで払ってくれるのです。被害者にとって、これらは当たり前の事かも知れませんが、本来、被害者自らがきちんと立証書類を突きつけて請求する作業です。電話での感じは悪いながら、大変便利な相手保険会社におんぶに抱っこ・・後の賠償交渉でそのツケ(安い示談金で解決)を払わされることになります。

 実は交通事故の80%以上は、相手保険会社に囲われた状態で解決です。もちろん、その全てがダメとは言いません。多くはそれも省力的・合理的な解決方法と思います。しかし、後遺症が残るような重傷者の方はそうは行かないはずです。

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 前日の解説から、給与額・勤務日、その対比がはっきりしていれば、(b)方式=「休日を差し引いた勤務日数で月給を割って、日額を算定する」ことが正しい算定となります。それでは、アルバイト・パート・日雇い労働者の場合を続けます。

  (2)日雇い労働者やアルバイトについても、労働契約上、実際に労働した時間に応じた金額の給与が支給されることになっているはずですので、適切な証拠があれば、事故前に実際に労働した単位時間(実労働日1日)当たりの基礎収入を算定することが可能です。

 そして、労働契約上、各週・月のどの日に勤務するかが概ね決まっている者(アルバイトにはそのような者が相当数いると思われます。)については、事故に遭わなかった場合、どの日に労働していたかを認定することができるため、(b)の計算方法で休業損害を算定することができます。このような場合に、被害者側が(b)の計算方法で算定した休業損害を請求しているにもかかわらず、(c)の計算方法を採用することは、休業損害を過少に認定することになるので、適切とはいえません。    他方、日雇労働者は、通常、短期の契約を予定していて、事故の発生の時点で、将来どの日に労働するかが決まってないことが多いと思われます。

 また、アルバイトにも、労働契約上、各週・月のどの日のどの時間に勤務するかが決まっていない者もいます。このような給与所得者については、事故に遭わなかった場合、どの日に労働をしていたかを認定することが困難であり、(b)の計算方法で休業損害を算定することはできません。

 しかし、通院などによって、事故に遭わなかった場合と比較して、その分の労働の機会を失い、現実の減収が生じたとみることができますので、休日を含んだ一定期間の給与の平均日額を基礎収入とし、これに通院日等を乗じる方法((c)の計算方法)で休業損害を算定することになると考えられます 。  

 アルバイトについては、時給が定められており、勤務日(シフト)もある程度固定していれば、以前から保険会社も(b)方式で算定してくれました。日雇いも同じく、計算が易しいものです。しかし、今回の解説を読むと、証拠が必要であると読み取れます。保険会社に(b)方式で請求をすれば、勤務予定表や過去の勤務表なども必要になるかもしれません。

 保険会社は常に”払い過ぎ”に臆病な生き物です。細かい立証を待たず、(c)方式での支払が無難なのでしょう。そもそも、休業損害の支払いは、被害者の差し迫った損害に対し、急いで対応するものです。したがって、案件の性質に合わせて柔軟に算定方式を使い分けることはもちろん、まずは(c)方式での支払いを受けて、最終的な賠償交渉で、立証書類を基に(b)方式に算定し直し、不足分の追加請求も有りかと思います。

 総括しますと、判で押したように「事故前の3ヶ月を90日で割って、日額を算定する」方式は、もはや、スタンダードではない。ただし、「休日を差し引いた実勤務日数から、日額を算定する」方式は、それを裏付ける書類が必要であること。また、実勤務日数と対応する給与が明らかではない場合や、急場しのぎでは、「事故前の3ヶ月を90日で割って、日額を算定する」方式もあり得る、と言う所でしょうか。    

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 今年の『損害賠償算定基準2018・下巻』(いわゆる赤本)引用、 武富 一晃 裁判官 の解説を続けます。   (2)以下、どのような場合にどの計算方法を用いるべきか、給与所得者が継続して完全休業する場合と給与所得者が就労しながら一定の頻度で通院を行っている場合に分けて検討していきます。   給与所得者が継続して完全休業する場合

 休業損害は、事故による受傷を原因とする休業のために支給を受けられなかった減収分(差額)について認められるところ、労働契約上、勤務時間等が定まっていて、実際に労働した時間に応じた金額の給与が支給されている給与所得者については、休業損害を正確に算定するため、計算方法 ②で収入日額を算定し、これに実際の休業日数を乗じる方法((b)の計算方法)によるべきという考え方もあり得ます。

 しかし、完全休業の期間がある程度長期の場合には、(a)、(b)の計算方法のいずれを採用しても、結論に大きな差は出ません。また、休業損害は、事故後も事故前と同様に勤務を続けたという仮定的な状況において得られたはずの給与と現実に得た給与の差額を算定するものであること、給与は、基本給のほか、時間外・休日・深夜労働の割増賃金や歩合給を含む諸手当の金額、時間外労働や休日労働を含む実際の労働時間によって決まるものであって、同じ労働契約のもとでも、金額が期間ごとに変動することから、その性質上、厳密な意味で正確な休業損害を算定することはできません。

 したがって、ある程度長い期間継続して完全休業する場合には、(a)(b)の計算方法のいずれかを採用してもよいと考えられます。実務上、(a)の計算方法が採用されることが少なくないのは、このような事情によるものと思われます。 続きを読む »

 (今まで保険会社が判で押したように提示してきた)休業損害の計算方法について、以前から議論がありました。ついにと言うべきか、今年の『損害賠償算定基準2018・下巻』(いわゆる赤本)において、具体的な見解が示されました。今後の交通事故賠償のスタンダードになりうる算定基準と思います。連携弁護士K先生から、早速のご指摘がありましたので、同本より抜粋して勉強したいと思います。    まず、問題点を簡単に説明します。

○ 保険会社が用いる、休業損害の計算方法とは・・

 事故がおきた日の前の月、前々月、その前月、の3ヶ月間の給与を合算し、それを90日で割った金額を「休業日額」とします。これに、実際に事故で休んだ日を乗じます。

(例)会社員の山本さんは追突事故でむち打ちになり、大事をとって、翌日から会社を3日休みました。その後も、週2回の通院の日は会社を休みました。2ケ月後に完治して示談となりました。会社を休んだ日は合計で15日でした。  会社で書いてもらった休業損害証明書を保険会社に提出したところ、計算・提示してきた休業損害の計算式は以下の通りです。尚、山本さんの給与額ですが、ここしばらく毎月25万円でした。   25万円×3ヶ月=75万円 ÷ 90日 = 8333円(日額)× 15日(休んだ日)= 124995円     山本さんは、そんなものかなぁと印鑑を押しましたが。どうも釈然としません。なぜなら、日額の計算は、完全にお休みとなっている土日も含んでいます。本来、25万の月給は、土日を除いた週20日前後の業務に対しての賃金です。事故前の3ヶ月の出勤日は祭日もありますので、それをひくと(20日、22日、21日)でした。したがって、   25万円×3ヶ月=75万円 ÷ (20日+22日+21日=63日) =11904円(日額)× 15日(休んだ日)= 178560円     保険会社の計算に比べ、約5万円も高いのです。これが正当な計算ではないかと・・・    これら計算方法による金額の違いが、長らく議論となっていました。     ここで、最新の裁判官の解説を見てみましょう。

 

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 被害者請求の方法について、復習したいと思います。(先月の山梨代協セミナーから抜粋)

後遺障害部分の損害が、重度の障害になると、 賠償金全体の平均85%・・・逃した魚は、本当に大きいのです。

   損害賠償を氷山に例えると、眼に見える部分が傷害部分=治療を完了するまでの損害です。後遺障害部分の損害は、海の中で見えませんが、総損害額に占める割合は、12級以上ともなれば、85%となります。 赤本基準で、ムチウチで非該当、14級9号、12級13号を比較してみましょう。

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 交通事故に関する相談の10件に3件は、既に弁護士に契約している被害者さんです。

 また、昨年から相談会に参加される被害者さんの35%は、既に相談中あるいは、契約している弁護士に不安をもってのセカンドオピニオンです。    無料相談会では、既契約の弁護士さんの評価云々ではなく、解決に向けての最良策を回答します。また、紳士的な対応、業界の筋目を考えれば、弁護士の切り替えを勧めるわけにはいきません。それでも、契約した弁護士と方針が合わないのであれば、弁護士交代も仕方ないのかも知れません。困ったことに私は弁護士ではありませんので、後遺障害に関する保険手続きや調査しかできません。”その部分”だけお願いされても、既契約の弁護士さんと委任契約を結んでいる以上、その先生の許可なくお手伝いはできません。毎度、困ったものです。

 結局、多くの弁護士先生は後遺障害等級が認定されるまで、何もしてくれないことが普通のようです。交通事故の解決は、賠償交渉が主作業であることに異論ありませんが、実は、後遺障害の等級認定を代表に、損害の調査・立証が事故解決の重大なポイントなのです。その他、被害者さんは、健保や労災、障害者手帳、障害年金・・数々の手続きに忙殺されます。頼りの弁護士さんがやらなければ、誰かが助けなければならないのです。そもそも、交通事故には専門性が必要です。保険知識、医療知識が重要で、むしろ法律知識以上のウェートを占めているとさえ思えます。交通事故の経験少ない先生に任せた結果、重大な見落としがあり、数百万円も取り損なった例をたくさんみてきました。これを、「被害者の二次被害」とまで断罪する先生もおります。

 また、実力どころか、「弁護士と連絡がつかない」、「連絡がないので経過がまったくわからない」、「電話をしても折り返しがない」、「弁護士は最初の電話だけ、あとは事務員しか話ができない」、「弁護士費用特約から着手金をとった後、連絡がこなくなった」・・実は、こんな非常識な対応をよく耳にします。先生と呼ばれる職業はまるで殿様商売、世間の常識と隔絶しているように思います。もちろん、常識的に真面目に業務を遂行している先生の方が多いですが・・。    昨今、大型法人弁護士事務所の業務停止処分や懲戒のニュースが多くなってきました。ここ数年の交通事故業界に限定しても、さもありなん、でしょうか。問題は、交通事故という大問題に直面した被害者さんが路頭に迷うことです。ダメな先生に依頼をしてしまったら、早めに見切りをつける決断もやむを得ません。    今まで以上にセカンドオピニオンは増加するでしょう。幸い、秋葉事務所では交通事故に精通した弁護士事務所と連携、全国20に及ぶ事務所を紹介できます。積極的に呼びかけはできませんが、弁護士交代はもはや普通のこと、困ったら、迷ったら、不安があったら、ご相談下さい。

   万能の先生はいません。依頼前に、その先生が交通事故に精通しているか見極める必要があります。HPの宣伝をまんま信じないことです。(多くのHPはその弁護士先生が書いているのではなく、業者から買ったコンテンツです)  

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 ここ数年の業務日誌で、常にアクセス数が上位の記事はこれです。

弁護士対応とされた被害者は交渉失敗です    事故で大変な目にあったのに、相手保険会社の無感情な対応に、かっとする気持ちはよくわかります。しかし、感情に任せてケンカをすれば、益々、不利な状況に追いやられます。その中でもむち打ちなどの14級9号認定こそ、後遺障害審査への影響が大きくなります。それを示す1例をご紹介しましょう。私が保険会社のSC(サービスセンター=保険金支払い部門)に配属された時の電話です。   秋葉:「はい、○○火災 埼玉第1SCです。」

自賠責:「大宮の調査事務所の○○だけど、いつもお世話になっています。対人担当の山本さんをお願いします。」 

秋葉:「はい、おつなぎします。」 (以下、会話内容を横耳で聞き取り)   山本:「はい、山本です。○○さんご無沙汰しております(※)。」 

 ※ 自賠責・調査事務所には一定数、損保会社からの出向社員がおります。   自賠責:「先日、佐藤さんという被害者の後遺障害請求を受けて、審査中だけど・・担当は山本さんでしたね。」

山本:「ええ、あの佐藤ですね。何か?」

自賠責:「通院日数もけっこうあって、14級とするか検討中だけど・・どんな人?」

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 先日、「ご依頼者様からのお叱り」とのタイトルで記事を書きました。

 弁護士事務所の多くは、賠償交渉以外の事務、とりわけ後遺障害の経験が手薄であることを訴えました。HPでは派手に「後遺障害に強い!」と謳っていますが、実際は宣伝通りに思えません。なぜなら、セカンドオピニオンがあまりにも多すぎるからです。このHPでも、毎度、愚痴っています。

 被害者の多くは、事故の初期に弁護士に契約したとても、等級認定までの諸手続きを被害者自身がやらなくてはならず、”弁護士は賠償交渉の段階まで待っている”ことが常態です。これを事務所開設前から数年に渡って問題視してきました。私は「弁護士が賠償交渉以外の事務をしないのなら、秋葉がやりましょう!」との意気から、事務所を開設したとすら言えます。現在まで、およそ16事務所、延べ40人の弁護士先生と仕事をしてきました。その数では、わずかな抵抗でしょうか、被害者さんの環境は不変に思います。改めて、問題点を整理してみます。         被害者さんは、人身事故にあって、法律事務所のドアを叩くのですが・・以下、二分します。     1、弁護士費用特約がなければ、受任留保。「等級が取れてから、また来て」

 弁護士費用特約がなければ、昔ながらの「等級が取れてからまた来て下さい」との対応になります。しかし、被害者さんは事故直後から、様々な問題に直面します。事故直後に、警察・保険会社・病院窓口での折衝があります。続いて、公的保険の併用の場合、健保の第三者行為届け、または、労災の申請手続きが続きます。さらに、その他保険請求、転院やリハビリ計画の相談、検査の手配、最後に後遺障害診断書の依頼など、やることがたくさんあります。この間、精神的に最もキツであろう相手保険会社との交渉が続きます。

 各局面で弁護士に相談するも・・契約するのかどうか煮え切らない態度です。これでは、相談者はその事務所へ二度と戻らないでしょう。    2、弁護士費用特約があれば、即、契約も「等級が取れるまで、のらりくらり」

 どの事務所も、弁護士費用特約のある場合はすかさず受任してくれます。なぜなら、等級がどうなろうと、保険会社から着手金を確保できるからです。しかし、ここから事務所の実力や経営方針によって、被害者さんの運命は左右されます。健保や労災については、「それぞれの役所窓口で聞いて下さい(弁護士事務所がわかるわけないでしょ!)」、「早く、医師に診断書を書いてもらって下さい(医療には面倒なのでタッチしません)」との生ぬるい対応に終始します。着手金さえ入れば・・冷めてしまったのでしょうか。

 例によって電話をしても担当弁護士がつかまらず、事務員対応でなんら解決しません。稀に弁護士がつかまっても、場当たり的なアドバイスで、ほとんどの手続きは依頼者任せ、等級がでるまで待っています。仮にこれらの事務が弁護士先生にとって専門外であっても、依頼者さんの失望は免れないでしょう。このような場合、多くの依頼者さんは他の事務所に走るのです。  

 これがセカンドオピニオン激増の理由です。弊所としても、もっと弁護士先生の理解・協力を広めることが必要であると痛感しています。    弁護士&行政書士、この連携業務の受益者は、結局、被害者さんに他なりません。多くの弁護士先生に連携を呼びかけるのは、利益追求からの動機ではなく、求める声に応える仕事がしたいからです。  

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