任意保険に未加入で走行している自動車は、この30年間ほぼ変わらず20%前後とのことです。警察や損保協会の統計はあくまで確認できた範囲なので、実態として20%は多少前後すると思います。10年続けていた交通事故相談会では、参加10名の被害者さん中、1名は無保険車の被害の相談でした。実感としては、5台に一台(無保険車)の信憑性を感じています。

 さて、無保険車の加害者さんは、その後、しっかり賠償に応じてくれるものでしょうか。秋葉は学校卒業以来、損保時代を通じて30年以上、交通事故に携わってきました。人身事故に限りますが、加害者の方が謝罪の訪問やお見舞いにきたことは数度ほどで、電話が0~1回が関の山です。ちなみに、数度の謝罪の2回は秋葉のお客様がたまたま、無保険の自動車で人身事故を起こしたケースです。そう、秋葉が促し、同伴して謝罪に行きました。

 無保険の加害者さんは、のらりくらりと対応し、結局は電話連絡が途絶えます。せいぜい、自賠責保険の請求書類が送られてきて、「(被害者に対し)それで請求して下さい」。その後、やはり連絡は途絶えます。責任感など、どこ吹く風です。多くの場合、謝罪の言葉すらないものです。考えて下さい、任意保険に入らず運転している人ですよ・・自分が加害者になるなど微塵も考えていないので、責任を感じることや責任を果たす義務感が非常に薄いのです。したがって、自らのお財布を開いて、治療費や慰謝料を支払うなど極めて稀なことです。経験上、秋葉が同伴した2件以外、みたことがありません。統計が難しく、明確に数値化できませんが、2~3%ではないかと思っています。

 だからこそ、自らを守る保険を完備することです。自動車保険で言えば、人身傷害保険、車両保険、弁護士費用特約などでしょうか。

 では、加害者は何故、せめてもの謝罪をしないのでしょうか? 加害者の心情を考えると、人間の嫌な面を実感することになります。それは、交通事故の自責感に耐えられない、単に面倒、自分は悪くいない運が悪いだけと自己擁護・・実に身勝手な理屈ばかりなのです。被害者さんが訴える「加害者の誠意」など、そんな期待はほとんど裏切られるのです。残念ながら、それが30年の結論です。

 被害者さんにとって許せない事です。しかし、人間とはそんなもの、どこか割り切った感覚で解決まで進めるしかないと思っています。    

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 12月20日にネットニュースで自賠責保険のことがやっていましたので、記載してみたいと思います。(読売新聞参照)    国土交通省は、交通事故による重度後遺障害者の支援を充実させるため、自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)の保険料に車両1台あたり年100円程度を上乗せし、財源とする方針を固めた。2023年度実施を目指し、来年の通常国会に関連法の改正案を提出する。現在の保険料は自家用車1台で2万10円(2年)。人身事故の補償が目的で、うち「賦課金」(約32円)と呼ばれる徴収金は加害者が不明のひき逃げ、無保険車による事故の被害救済に使われる。この部分に100円程度加算し財源とする。今は01年度まで実施されていた自賠責保険の政府再保険制度による運用益を財源に、年140億円程度の予算を確保している。残高は約7500億円あるが、今後の増加が見込めない上、うち6000億円余りを国に貸し付けており財源として制約があった。一方、重度後遺障害者を受け入れる病院は老朽化が進み、施設も足りていない。親が子を介護するケースも多く、社会の高齢化で入所希望者が増えることも予想される。国交省は病院や施設の整備を図る方針だ。    自賠責保険は車やバイクの全所有者に加入が義務づけられている。対象車両は国内約8000万台で、100円上乗せで新たに年約80億円の財源が確保できる。    ◆重度後遺障害者=遷延性意識障害(いわゆる植物状態)となったり、脊髄損傷で介護が欠かせなくなったりした人。交通事故で障害を負った人には、国土交通省が専門病院で受け入れるなど支援している。    悲惨な事故は後を絶ちません。重度後遺障害者の支援として独立行政法人自動車事故対策機構(通称NASVA)があり、療養センターを国内に4ヵ所(千葉療護センター、東北療護センター、岡山療護センター、中部療護センター)、療護センターに準じた治療と看護を行う委託病床を国内7ヵ所(中村記念病院、聖マリア病院、泉大津市立病院、湘南東部総合病院、藤田医科大学病院、金沢脳神経外科病院、松山市民病院)に設置・運営しています。1台につき100円~150円で困っている被害者を救えるのであれば安いものですね。

 今後、車の所有台数は減少していく一方だとは思いますが、交通事故被害者や無保険、ひき逃げの件数は減らないような気がします。年々、国民の負担は膨らむばかりで辟易としますが、久々にこれなら上乗せで払ってもいいと思えるようなニュースでした。   現在、弊所のご依頼者でも、NASVA施設に入院の方が1名おります。  

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 警察や損害保険協会等、ここ30年の統計上、およそ20%の自動車・バイクが任意保険に入っていないと言われています。この20%、私が新卒で保険業界に入った時から、なかなかに安定した数字です。それなりに多い数字かと思います。

 交通事故の加害者が強制保険(自賠責保険)だけの加入で、任意保険に入っていなかった・・・さすがに、20%よりは下ります。それでも、弊所がお預かりした交通事故の相談の7件に1件程度は、相手が任意保険に入っていないケースです。すると、相手からの補償はほぼあてになりません。「私が悪うございました」と、お金を持ってきてくれる加害者は極めて稀です。私の30年近い歴から2件だけでした。

 この場合、まず、自身加入の保険をフル稼働する必要があります。まず、人身傷害保険の加入を探します。ご自身所有の自動車だけでなく、ご家族加入の保険、独身(婚姻歴無し)で単身住まいの方は、実家の保険すら調べます。人身傷害がなければ、相手の自賠責保険に請求をかけます、被害者請求という自賠法で定められた制度を活用するのです。3か月程度の通院で済む軽傷であれば、これで足ります。

 稀に自賠責保険すら未加入のケースも存在します。自賠責の加入ない自動車は、ほぼ無車検車です。日本に一時滞在の外国人で、不法就労者に多いようです。その場合、政府の保障事業への請求になります。数年に一度、この手続きの依頼が入ります。また、後遺障害を残すようなケガの場合に付け加えますが、人身傷害保険がなくとも、再びご自身・ご家族加入の自動車保険から無保険車傷害保険を活用します。

 最初から、加害者が責任もってご自身のお財布からすべて払ってくれれば良いのですが、その確率は極めて低く、加害者はたいていお金を持っていません。また、持っていても「持ってない」と言います。こうして、被害者は自身の損害の回復の為に、ケガをおして奔走することになります。常に被害者は不利なのです。    そして、各方面に相談するも、「相手が無保険では・・・」ほとんどの弁護士がさじを投げてしまいます。法律の専門家であっても、保険や補償制度に詳しいわけではありません。仮に各保険による救済方法を知っていても、その保険に請求する作業にわざわざ有償で弁護士が代理するまでもない、という判断に帰結してしまうのです。構造的に無保険車による被害者は、自ら奮闘するか、「あきらめ」に追いやられます。     人身傷害保険を活用した損害回復につて、以前の記事が具体的です。

 ⇒ ときに「人身傷害保険への請求が交通事故解決の最大の山場」となる     ある日、交通事故被害に遭って、相手が無保険だからと言って、簡単にあきらめることなどできましょうか。    さらに言えば、ご自身の人身傷害保険の少ない補償額で我慢できますでしょうか。    人身傷害保険から裁判基準額で回収する方法もあります。問題は、それを弁護士が知らない、あるいは、面倒がってやらないことでしょうか。

 それぞれ策はあるのです。私たちは法律のプロではありませんが、交通事故のプロです。ぜひとも、ダメ元でも結構ですからご相談下さい。

 最近も弁護士事務所や損保関係者から、無保険車による交通事故被害者を2件ご相談頂きました。各保険の最大活用こそ、弁護士の法律行為・賠償交渉以前に絶対に必要な作業なのです。私達は弁護士はもちろん、医師、損保、お役所窓口と毎度、皆で知恵を絞っています。    今日も、各地で無保険車による被害が何件も発生しているはずです。願わくは、その被害者さん達とめぐり合いますように。    

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 相手が無保険 だからと言ってやられ損、泣き寝入りなどできません。

 しかし、現実にお金を持っていない加害者からの回収は絶望的です。そこで、自身に自動車保険の加入があれば、その人身傷害保険や無保険車傷害保険に請求することになります。

 さらに、ここからも被害者の運命は分かれます。① 保険会社の計算する基準額で諦めるか、② 裁判の判決額を回収するか・・・①と②の差は、時に数倍の開きがあります。本件で言えば、① 3000万円 vs ② 1億円と、7000万円もの差がありました。

 結果、連携弁護士は1億円の回収に成功しました。私達は、保険会社が約款を曲げて支払ってくる可能性を最初から想定していました。無保険加害車に被害に逢った被害者さん、弁護士選びを誤れば7000万円を損します。交通事故の解決こそ、保険知識や約款解釈が問われます。正直、法律知識以上に大切と思っています。

 秋葉事務所と全国十数の弁護士事務所は、本例のような解決を目指して情報交換・勉強会をしています。  

死亡:脳挫傷(50代男性・千葉県)

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 たいてい、逃げます。 もちろん、ひき逃げは少数例ですが、「自賠責保険で勘弁して下さい」と泣き崩れるか、「お金はありません」と居直ります。

 道を走っている自動車の5台に1台は任意保険に入っていません。日本の任意保険付保率は世界で上位ながら、無保険車の数はかなり多いと感じます。毎回、相談会に1名はおりますので。多くの被害者は加害者からの補償を期待しますが、20%は報われないのです。すると、相手の強制保険である自賠責保険だけが頼りとなります。しかし、ご存知のように自賠責には限度額があり、ケガで120万、後遺障害・死亡で3000万(介護状態で4000万)までとなります。自賠責だけでは補償が足りず、また、慰謝料なども最低金額で、がっかりすることになります。

 したがって、あらゆる保険をフル動員しなければなりません。まず、通勤途上・業務中であれば労災を適用、治療費と休業給付を確保します。後の後遺障害の請求も視野に入れます。労災の適用外であれば、当然に健康保険を使って治療費を圧縮します。治療費が一定額を超えれば高額医療費の請求を、休業が長期化すれば傷病手当金を請求します。 

 そして被害事故で最も役に立つ保険は、ご自身が加入している自動車保険の人身傷害や無保険車傷害です。できれば、自身向けの補償もしっかり備えておきたいものです。交通事故の解決には、加害者や相手保険会社に期待せず、また、弁護士や業者を選ぶ以前に、まずは自ら保険にしっかり加入しておくことが大事です。

 最悪例は、相手が無自賠(車検切れで自賠責未加入の状態)で、さらに、ご自身も人身傷害・無保険車傷害などの自動車保険が未加入、弁護士費用特約なし、その他、傷害保険や共済の加入もないケースです。最後の砦として、政府の保障事業への請求が残るのみです。ここから自賠責保険と同等の補償を確保できますが、重度の障害を負った場合、焼け石に水です・・。    ここまで、様々な無保険車対策を挙げました。さて、本来責任を取るべき加害者はどこへ行ったのでしょう? 私の交通事故業務26年の歴史で、「私が悪うございました。きっちり賠償金を払います」などと言った、頼もしい?無保険の加害者に会った事がありません。冒頭で言いました通り、加害者の資力、支払い能力など、ほとんど期待できません。お金持ちで誠実な人なら、そもそも、しっかり賠償保険に加入しているものです。

 それでは、加害者に辛うじて支払い能力があった場合ですが・・これも当てになりません。裁判で勝って、月額○円で分割支払としても、大抵、3ヶ月目から入金が途絶えます。そして、本人との連絡も途絶えます。つまり、夜逃げか、行方をくらまします。加害者はこれからの人生、毎月○万円を支払うことなど真っ平ごめんなのでしょう。弁護士は一様に「裁判に勝っても回収が・・」と嘆きます。  ない袖は、  

 最後に、実際にあった例を一つ。

 ある保険未加入の加害者は、障害を負った被害者から3000万円もの請求を強いられ、自己破産しました。「びた一文払えん」と、ケツをまくったのです。この加害者は確か土地・建物を持っていたし、ベンツに乗って、それなりに現金も持っていたはずです。むしろ、羽振りのいい自営業者さんでした。

 その加害者の言い分ですが、「離婚して、女房に全財産を持っていかれた」とのことです。しかし、夫婦仲は悪いわけではなく、こっそり一緒に住んでいるようです。つまり、計画的な財産隠匿です。賠償の支払いを逃れるために財産を奥さん名義にした後、離婚し、自己破産したのです。ほとぼりが冷めれば、また籍を戻すのでしょう。

 このように、汚い人もおります。いえ、むしろ、人間は追い詰められたらこんなものです。性悪説を実感する瞬間です。

 最近は、このあからさまな債務逃れに鉄槌するような、厳しい司法判断も聞きます。それでも、周到な準備の上、夫婦が別居して、こっそり会っている程度では、回収は困難、手も足も出ません。    最後に本ケースにはオチがあります。この奥さん、自己名義となった財産をもって別の男に走りました。主人が主人なら奥さんも奥さん、皆、悪党です。もう、ぐちゃぐちゃ。  

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 前回から少し空きましたが、続けます。     無保険車傷害と人身傷害の(補償が)被る問題は約款上、一定の決着をみています。東海日動、三井住友の「吸収型」か、損保ジャパンの「人身傷害を先に請求、足りなければ無保険車」とした「序列型」に大別できます。

 整合性がついてすっきりと思いきや、一つだけ気持ち悪いことが残りました。それは、無保険車傷害が人身傷害の算定基準で計算されてしまうことです。もちろん、両者の支払い基準は(どの会社も)同じです。しかし、任意保険発売以来、「加害者と裁判をして、和解や判決で決まった額なら支払い額と認めましょう」とする無保険車傷害に対し、人身傷害は「あくまで保険会社の基準でしか払わない」と約款を盾に、裁判で決まった損害額を無視することです。既に数件、各地の弁護士先生から耳に入っています(怒)。

 裁判で決まった額を認めるのは、先に人身傷害から支払いを受けて、次に加害者から判決や和解で勝ち取った額に対する「既払い人身傷害保険の求償額を計算する時の全損害額」に対してのみです。これは平成24年2月「差額説」判決を受けてのことです。難しい論点ですが、あえて復習したい方は・・参照⇒差額説

 これでは、無保険車によって後遺障害や死亡となった、気の毒な契約者さんはせっかく裁判で勝っても、自身の保険会社にその額を請求したら・・「当社の基準額で払います」の一点張り、人身傷害基準の低い額しか支払われません。それが、掛金の高い人身傷害付き保険での結果です。

 対して、人身傷害の付いていない、かつてのPAP(現在、各社、別の名称)の場合、東海さん、損Jさん、三井さん他各社、無保険車傷害の適用になりますので、交渉次第で判決額が支払われることになります。つまり、無保険車傷害は長らく裁判での和解・判決の額を認めていたのです。

 後遺障害が残るような大ケガの場合、人身傷害の算定額よりも、裁判での判決・和解額が2倍以上も高額となることが多いのです。計算例から比較しましょう。一番軽い14級の被害者(主婦)さんを例にとっても以下の通りです。

費目 判決額 3246200円を 人身傷害に請求したら・・ 判決額 3246200円を 無保険車傷害続きを読む »

 「人身傷害」と「無保険車傷害」の併存問題、続いて東京海上日動の整理を見てみましょう。   (3)東京海上日動

人身傷害条項 第5条(支払い限度額に関する特則)

(1)第4条(お支払いする保険金)(1)ただし書の規定にかかわらず、下表のすべてに該当する場合は、1回の人身傷害事故について当会社の支払う保険金の額は、被保険者1名について2億円を限度とします。

① 第1条(この条項の補償内容)(2)の表の①に該当する事故のうち、無保険車の運行に起因する事故により人身傷害事故が生じ、その直接の結果として、第4条(お支払いする保険金)(2)の表の②または同表の③に該当すること。 ② 賠償義務者があること。 ③ 保険証券記載の保険金額が無制限以外であること。    ①は読みづらいですが、従来の無保険車による傷害事故を指しています。②は事故の相手がいること、つまり、自爆事故ではないとの意味です。③は人身傷害の限度額が無制限であれれば、無保険車による被害は2億円ではなく無制限とします。

 要するに内容は三井住友と同じです。人身傷害約款に無保険車傷害を吸収させました。すると、三井住友同様、人身傷害を付保していない契約はどうなるのか?東海日動はしつこく?、いえ、論理的に整理しています。   18  無保険車事故傷害特約

第1条 (この特約の適用条件)  この特約は、この保険契約に対人賠償保険が適用され、かつ、人身傷害保険が適用されていない場合に適用されます。

19  無保険車事故傷害特約不適用に関する特約 第1条 (この特約の適用条件) 続きを読む »

 それでは人身傷害と無保険車傷害の競合問題について、3メガ損保の現約款を確認してみましょう。

 いずれも「27年10月改定」版からです。(最近は毎年のように約款改定が続き、追いかけるのが大変です!) c_y_1

(1)損保ジャパン日本興亜

4-5 無保険車傷害特約  第10条 支払い保険金の計算

⑦ 普通保険約款人身傷害条項第8条(支払い保険金の決定)の保険金が支払われる場合は、その保険金額 ・・を無保険車傷害の保険金から差し引きますよ。    つまり、無保険の自動車にケガをさせられた場合、多くは人身傷害で治療費や休業損害を賄っているはずです。続いて後遺障害が生じた場合も「まず人身傷害で支払い、足りなければ無保険車傷害から払います」、との意味になります。これは実務的な流れを裏付けるものです。

 損保ジャパンは日本興亜との合併前、一時期、人身傷害の約款に無保険車傷害を組み込みましたが、すぐに無保険車傷害を独立した約款に戻しました。結局、両者の約款を併存させたまま、被り問題をこの約款条文で調整しました。

 最初からこうすればよかったのにね。

★ 限度額は人身傷害付き契約(THEクルマの保険)、人身傷害がない契約(SGP)共に、限度額の記載がありません。2年前の改定から「2億円」⇒「無制限」に統一したようです。保険証券には「無制限」ときっぱり記載されています。

  (2)三井住友

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 平成10年10月、東京海上から人身傷害特約(保険)が発売されました。以後、各社、ほぼ同内容で続きました。

 しかし、従来から存在していた、搭乗者傷害特約、無保険車傷害特約、自損事故特約と”自らの人身事故に支払われるもの”として、補償が被ることになりました。

 搭乗者傷害保険は重複して支払われるので問題ないとして、無保険者車傷害と自損事故は調整が必要となりました。損保ジャパンは無保険車傷害を一時期、人身傷害約款に組み込み、また独立させた経緯があり、軽く混乱したと言えます。また、各社、約款に不明記ながら、「人身傷害の金額を超えたら無保険車傷害で支払う」などの社内規定で整理したり、また、請求事故が起きたら、その都度、社内会議で決めていたようです。

c_y_200(例1)人身傷害と無保険車傷害が競合した場合

 人身傷害は最低保険金額が3000万円、最高は無制限です。保険金額は選択でき、最も多い契約金額は5000万円です。対して無保険車傷害は2億円、もしくは無制限が保険金額です。保険金額は選択できず、約款で決められています。

 ケガの治療費や休業損害は人身傷害で支払います。なぜなら、無保険車傷害は後遺障害と死亡のみの補償だからです。後遺障害が認定された場合、やはり、人身傷害特約で支払います。それが契約金額を超えた場合、ようやく無保険車傷害からの支払いとなります。

 明らかな高額賠償の場合、最初から治療費・休業損害・その他費用を人身傷害から、後遺障害・死亡保険は無保険車傷害からとばっさり分けたケースもありました。   (例2)人身傷害と自損事故が競合した場合

 自損事故は死亡1500万円、介護費用200万円、入院1日6000円、通院1日4000円の定額保険なので、支払い保険金は人身傷害の方がほとんどのケースで高額になります。したがって、約款上、人身傷害付きの保険では自損事故特約は消滅しています。     さて、(例1)の実務上の対応もさることながら、人身傷害と無保険車傷害の併存問題について、約款上の整理もしくは統合を各社、進めました。最新約款を確認してみたいと思います。 

 前置きが長くなりましたが、ここからが本シリーズの主題に入ります。

 続き⇒  

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セミナー表紙20160214_00002 昨年末から自動車保険の約款をテーマとしたセミナーが続いています。  約款と言えば「難解」、「何が言いたいのか解らない」等々・・約款をじっくり精読してから契約を検討する自動車保険の契約者さんは皆無でしょう。一部の約款マニアは別として、保険会社社員や代理店さんですら、余程必要がないかぎり、約款を開くことはありません。現場ではカラーで解りやすいパンフレットで十分なのでしょう。

 さて、被害者救済業を名乗る以上、約款の熟知・活用は私達にとって避けられない重要事項です。

 とくに、任意保険に未加入の自動車による被害者さんは、人身傷害特約、無保険車傷害特約が頼りとなります。無保険車の被害者にとって知られざる重大なテーマなのです。

 約款解説は毎回長文となり、シリーズ化しますが、まずは以前に使用した表をご覧下さい。自動車保険で自らのケガ・後遺障害・死亡に支払われる主要な補償は以下の通りです。見ての通り、いくつか補償がダブっています。平成10年10月に東京海上が開発、販売をスタートさせた人身傷害特約の登場によってダブりが頻発したと言えます。

 明日からの内容について、下表と併せて以下を復習しておくと理解が容易となります。(長いですよ)

そして『無保険車傷害特約』は吸収された・・・①~⑧

結局、無保険車傷害特約は独立した ①~③  

契約車 搭乗中 他車 搭乗中 歩行中 自転車 他の交通機関 保険金 計算方法 重複 払い  人身傷害保険 〇 △ (特約で選択) △ (特約で選択) 実額 × 無保険車 傷害 特約 〇 〇 〇 実額 × 自損事故特約 〇 〇 × 定額 × 搭乗者傷害保険 〇 × × 定額 〇

  ※ 保険金支払い方法

実額… 実際にかかった治療費、交通費の他、契約している会社の基準により慰謝料、逸失利益、休業損害を個別に計算する。

定額… 契約時に定めた死亡・後遺障害・手術・入院・通院・その他金額。その金額により入通院は1日当たり○○円、もしくは部位症状別に○○円と決まります。   ※ 重複払い

 搭乗者傷害(現在は多くの会社で「傷害一時金」と改名されています。あえて旧名で表記します。)のみ、上の3つに加算して支払われます。しかし治療費を人身傷害に、後遺障害を無保険車傷害にと、ケガと後遺障害を別々に請求する場合は重複とはなりません。

 つづく  

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人身傷害特約における休業損害のアドバンテージ

 休業損害の請求について・・・自賠責基準ではでは1日5700円の定額、それ以上の場合は収入証明(源泉徴収票、申告書)を示し19000円まで。また加害者に請求可能でそれらの保険基準を上回る場合、収入に関する証明を示した結果、加害者側(多くの場合、任意保険会社)が納得すればその額の支払いを受けられます。しかしひき逃げでは相手(相手保険)はいません。ご自身が人身傷害特約へ加入していた場合、まっさきに請求します。

 人身傷害特約の約款を読むと、休業損害は「別紙に定められた算定基準に従い算出」とあります。つまり別紙のより高ければ「個別適用」と言って収入の証明が必要になります。逆を言えば、その別紙算出基準と自分の収入を比べることからスタートです。つまり以下の年齢別平均給与と実収入の高い方を請求します。まず自身の実収入と表と見比べて下さい。 

年令別平均給与額(月額)

年令

男性

女性

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 明日は弁護士事務所でひき逃げ事案の引き継ぎです。本件は政府保障事業に申請をかけ、1年の審査の結果、ようやく高次脳機能障害5級が認定されました。今後の保険請求について、弁護士代理による保険を熟知したテクニカルな請求を遂行していくことになります。

 毎年、数多くのひき逃げや加害者が無保険の相談を受けております。ひき逃げの場合、当然ながら相手からの補償は受けられません。そうなるとご自身が加入している保険を総動員し、一番有利な支払いを受けるべく計画的に進めねばなりません。ケースによってたくさんの選択肢がありますが、まず人身傷害特約(以下、人傷)の加入がある場合とない場合で2分します。

1、治療費

<人傷がある場合>  人傷から支払いを受けられます。そして損保は安く抑えるために健保、業務中・通勤中であれば労災の使用を推奨します。通常、交通事故で相手の保険があり、自身の過失がなければ(少なければ)、病院が喜ぶので自由診療を原則とします。しかしひき逃げの場合の健保使用は病院も仕方ないと思ってくれます。したがって健保、労災の使用で大丈夫と思います。損保と病院の合意が取れれば一括払い(損保会社が病院に直接治療費を支払てくれる)も可能です。

 相手がいないので求償することがでできず、損保は大変です(損保も最終的に自賠責に対して求償するように政府の保障事業に求償したいのですが、国は民間で払われるものですら控除すべきとして拒否しています。)

<人身傷害がない場合>  健保、労災の使用は必須です。そして政府の保障事業への請求を進めます。政府の保障事業とは相手がいない場合、国が肩代わりして補償してくれる制度です。自賠責保険と同じく国土交通省の管轄で、審査も自賠責調査事務所で行います。厳密に言いますと自賠責の調査・支払事務は民営化されていますが、政府の保障事業の事務は国交省の公務員が行います。

 支払い内容は、自賠責保険とほぼ同じと言っていいでしょう。120万円まで治療費や休業損害、入通院慰謝料が確保できます。限度額がある以上、入通院慰謝料の額を確保するために、健保、労災を使用し治療費を圧縮する必要があります。自由診療では健保の2~3倍の費用がかかりあっという間に120万円を使い切ってしまうからです。                                     

★ まず人身傷害特約が入っているかを調べて!

 この保険の適用如何でその後の運命が分かれます。ご自身の自動車に乗っているときだけではなく、他の自動車や自転車、歩行中の交通事故にも適用できる可能性があります。多くの場合、ご自身だけではなく同居の家族、別居の未婚の子も補償対象に含まれます。

人身傷害特約の復習  ⇒ そして『無保険車傷害特約』は吸収された・・・

別居の未婚の子の復習 ⇒ 「別居の未婚の子」とは・・・

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