【事案】

自動車運転中、センターラインオーバーの対向自動車と正面衝突、前額部をフロントガラスに強打した。診断名は外傷性くも膜下出血、他に胸椎、肋骨骨折となった。見当識の低下、記憶混濁、情動障害があり、高齢から認知症を発症したとされた。

【問題点】

現役で農業に従事していたが、高齢から事故外傷の影響だけではなく、認知症発症の疑いがあった。リハビリ先でも転倒から下肢の骨折、また内臓疾患での入院も重なり、事故外傷による高次脳機能障害を浮き彫りにする必要があった。

しかし、家族が地元の弁護士数件に相談したところ、「等級が出るまで待ってます」の対応ばかり。どの弁護士も認定結果を様子見しているかのよう。仕方なく、主治医に後遺障害診断書の記載をしていただいたものの、不安は尽きない。東京に在住する家族が、高次脳ではNo1の弁護士に相談したが、「等級認定は難しい」と謝絶され・・・途方にくれて、秋葉事務所に相談にいらした。

【立証ポイント】

高齢者の受任経験が豊富であり、年齢相応の認知機能低下と高次脳機能障害を切り分ける・・秋葉事務所の得意とするところです。早速、本人と主治医への面談を果たすべく、熊本へ飛んだ。本人と家族、主治医と面談、診断書や画像を確認し、「高次脳での等級はいける!」と判断した。もう、これは勘としか説明ができません。

脳はレントゲンとCTのみしか撮っていなかったので、MRI検査を追加手配し、脳外科医と画像の精査にあたった。くも膜下出血は受傷した前額部、つまり、前頭葉に出血痕がみられた。しかし、後頭葉に脳挫傷がみられる。これは額をフロントガラスに打ち付けた際、対側損傷と言って、衝撃が脳の反対側に及び、脳が傷つけられたものと判断した。この主治医との打合せを基に画像分析レポートを作成、後遺障害診断書に添付した。

 

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①前頭葉 ②側頭葉 ③頭頂葉
④後頭葉 ⑤シルビウス溝 ⑥中心溝

また、意識障害の記載についても、専用診断書に搬送先病院で追記・訂正を加えた。日常生活状況報告書も介護の必要性を前提に、家族と精密に作成、元気に農業をしていた記録を集積、提出書類に添付した。この間、熊本へ2回出張、滞在中は2つの病院を実に4回往復した。

結果、ややグレーな理由ながら、介護状態も認められ別表Ⅰの2級、胸椎圧迫骨折で11級、まさに逆境からの起死回生の認定を得た。ついで、博多の連携弁護士に賠償交渉を託した。本件の申請は熊本大震災の1週間前だった。震災と重なれば作業は大幅に遅れたであろう。

誰に障害の立証を託すのか? 手前味噌ですが、本件の結果がそれを示しています。

(平成28年8月)