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 人身傷害特約と無保険車傷害特約 その3

 
3:人身傷害特約と無保険車傷害特約双方を使う。

 前回のまとめですが、 1:では5000万円、 2:でも5000万円を回収できますので、結論としては変化がないと説明させて頂きました。

 しかし、皆様はここで一つ疑問が出てくると思います。

 過失分は人身傷害特約で回収し残りの分は無保険車傷害特約から回収できないのか?

 本件では人身傷害特約で2500万円、残りについては、無保険車傷害特約で回収し、合計5000万円を回収できないかという流れです。この流れでは手続きも早く、交通事故の早期解決が出来そうです。では、実際にそのようなことができるのでしょうか。

 結論から申しますと、保険会社は実際の運用段階では、約款上、併用を認めない記載があり、人身傷害特約と無保険車傷害特約のいずれかしか適用を認めないようにしているところが大多数です。
c_y_39  仮に約款やホームページ等でいずれも適用できるようなことが記載されていても、保険会社の担当者はどちらかのみ適用させるか、若しくは人身傷害特約を適用させて運用していこうとします。後者は、保険会社に勤めていた方からのお話では、担当者が無保険車傷害特約を知らないからであると言われています。何故なら、担当者は無保険車傷害特約を使ったことが無く、保険会社も研修や業務で教える機会があまりないことが多いことが理由として挙げられます。

 よって、 3:人身傷害特約と無保険車傷害特約双方を使うことは現実的ではないのかもしれません。

 しかし、無保険車傷害特約は、死亡もしくは後遺症(後遺障害)が認められないと利用できないという特徴があります。
 この点、交通事故の内容によっては、当初は重傷でも、腕のいい医者に巡り合うことができて、外観上完治しているような場合がありますが、目に見えない障害が残存してしまうようなケースもあります。また、治療期間が一定期間あるものの、死亡してしまったケースもあるでしょう。このように、死亡、後遺症(後遺障害)が残存するかどうかがわからない時期に保険会社が人身傷害特約と無保険車傷害特約のどちらを適用すべきかが判断できないことがあります。

 そのような場合はどのように保険会社は運用していくのでしょうか。

 元保険会社社員の方のお話ですと、この場合には、保険会社は先に人身傷害特約を適用させます。治療費(実額損害)を人身傷害特約で支払った後、後遺症(後遺障害)申請をして等級が認められた場合には、まずそのまま人身傷害特約で保険会社は運用していき、人身傷害特約の支払いで足りない分(慰謝料等)を無保険車傷害特約を適用して支払う運用をするようです。

 上記したように、無保険車傷害特約を保険会社の社員は知らないことが多く、後で気がつく場合が多いことからこのような事態が生じることもあるのです。

 前回からの比較をまとめますと、相手方加害者が保険に入っている場合には過失分、支払限度額で人身傷害特約、無保険車傷害特約のどちらが得になるのかを判断することになります。

 これに対して相手方が無保険車であった場合、弁護士の運用次第ですが、人身傷害特約、無保険車傷害特約のいずれも同額回収できますので、結論としては変化がありません。後者の場合で皆様に必要なのは、弁護士がこれらを知っているか否かを判断する力です。