舌骨骨折(ぜつこつこっせつ)      男性では、喉の外側から、喉仏=アダムのりんご、喉頭隆起の位置が分かります。喉仏を、手の親指と人差指で、挟むように触れると、上側に、喉仏より柔らかい正中甲状舌骨靭帯があり、その靭帯を上方に辿っていくと、V状の固い骨らしきものに触れます。それが、舌骨です。

  (1)病態

 舌骨は、喉仏=咽頭隆起の上に位置する、三日月型の小さな骨で、手足の骨とは違って、舌首の筋肉で吊るされており、ものを飲み込む、舌を動かすときに連動して動きます。ヒトは、食べるとき、言葉を発するときも盛んに舌を使いますが、舌は大きな筋肉の塊であり、舌骨と呼ばれる宙に浮いた状態の骨を基盤にして働いています。この舌骨が本来の位置から外れる、あるいは不安定になると舌の働きに影響がでます。

 人間の殆どの骨は、隣り合う骨と接して関節を形成していますが、舌骨は顎の下で宙に浮いており、他の骨と接してはいません。胸からの筋肉、喉からの筋肉、そして顎や頭蓋骨や肩甲骨からの筋肉につながっていて、それらの筋肉がお互いにの引っ張り合うバランスによって位置が決まっているのです。   (2)症状

 ① ...

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(4)後遺障害のポイント   Ⅰ. 交通事故による口や咽頭の外傷で、かすれ声を除き、言語に機能障害を残した例を経験したことはありませんが、それはともかくとして、認定基準を解説しておきます。   ① 言語の機能を廃したものとは先の4種の語音のうち、3種以上の発音が不能になったものであり、3級2号が認定されます。

② 言語の機能に著しい障害を残すとは、4種の語音のうち2種が発音不能になったもの、または綴音機能に障害があり、言語では意思を疎通させることができないものであり、6級2号が認定されます。

③ 言語の機能に障害を残すものとは、4種の語音のうち1種の発音不能のものであり、10級3号が認定されます。

④ 声帯麻痺による著しいかすれ声は、12級相当となります。    そしゃくの機能の著しい障害=6級2号と言語機能の障害=10級2号の組み合わせは併合して5級相当となります。

 そしゃく機能の用を廃したもの=3級2号と言語の機能の著しい障害=6級2号の組み合わせは併合すると1級になりますが、これでは序列を乱すことになり、2級相当が認定されます。   Ⅱ.

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 反回神経麻痺(はんかいしんけいまひ)・・・言語の機能障害   ← 秋葉の声帯    人の発声器官は咽頭です。咽頭には、左右の声帯があり、この間の声門が、筋肉の働きで狭くなって、呼気が十分な圧力で吹き出されると、声帯が振動し、声となるのです。

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Ⅱ. 外傷性食道破裂後に想定される後遺障害は、瘢痕性食道狭窄による嚥下(えんげ)障害です。  

① 嚥下障害とは?

 交通事故では、咽頭外傷で舌の異常や、食道の狭窄をきたしたとき、頭部外傷後の高次脳機能障害により咽頭支配神経が麻痺したこと、頚椎前方固定術後で、椎体後方の食道や気管を圧迫したときに、また、少数例ですが、外傷性食道破裂でも、複数例の嚥下障害を経験しています。

 嚥下障害とは、飲食物の咀嚼や飲み込みが困難になることをいいます。咀嚼した食物は、舌により咽頭へ送り込まれて、飲み下すのですが、そのときは、軟口蓋が挙上して、口腔と鼻腔が遮断、喉頭蓋で気管に蓋をし、飲み込む瞬間だけに開き、食道へと送り込まれているのです。これらの複雑な運動に関わる神経や筋肉に障害が生じたときに、嚥下障害を発症します。

   嚥下障害の原因、傷病名 👉 唐突ですが、嚥下障害   ② 嚥下障害の立証

 瘢痕性食道狭窄は、耳鼻咽喉科における喉頭ファイバー=内視鏡検査で明らかにします。   続きを読む »

 咽頭外傷(いんとうがいしょう)・・・呼吸障害、嚥下障害、開口障害、嗄声、発声障害  

 ヒトの咽頭は、鼻・口から入った空気が、気管・肺へと向かう通り道と、口から入った食物が、食道から胃へと向かう通り道の交差点であり、空気と食物の通過仕分けをしています。

 喉頭は気管の入り口にあり、喉頭蓋=喉頭の蓋や声帯を有しています。喉頭蓋や声帯は、呼吸では開放されており、物を呑み込むときには、かたく閉鎖され、瞬間的には、呼吸を停止させ、食物が喉頭や気管へ流入することを防止しています。声帯は、発声では、適度な強さで閉じられ、吐く息で振動しながら声を出しています。

 喉頭は、① 呼吸する、② 食物を呑み込む、③ 声を出す、3つの重要な役目を果たしているのです。   (1)病態

 咽頭外傷は、広い意味で、食道破裂のカテゴリーですが、交通事故では、受傷機転が異なります。そして、件数においては、圧倒的に咽頭外傷が多いので、ここで解説しておきます。

 喉頭部に対する強い外力で、咽頭外傷が発生し、咽頭部の皮下血腫、皮下出血、喉頭軟骨脱臼・骨折などを発症します。プロレスの技で言えば、ラリアットをイメージしてください。交通事故で、大きな外力を前方向から喉頭に受けると、後方に脊椎があるため、前後から押しつぶされる形となり、多彩な損傷をきたし、呼吸、発声、嚥下の障害を引き起こすのです。   (2)症状

 症状として、事故直後は、破裂した部位の疼痛を訴え、痛みで失神することもあります。2次的には、食道が破裂、損傷することにより、縦隔気腫、縦隔血腫を、食道内の食物が、縦隔内に散乱して、縦隔炎を合併し、それらに伴って、呼吸困難、咳、痰、発熱などの症状が出現します。

 頚部や胸部の皮下に皮下気腫を認めることもあります。重症例では、食道からの出血に伴い貧血、出血性ショック症状を合併することもあり、要注意です。   ※ 縦隔気腫・縦隔血腫  縦隔の内部に空気が漏れ出したものを縦隔気腫、血液が溜まったものを縦隔血腫といい、どちらも胸部の外傷が原因で、気管、食道、血管などから空気や血液が漏れ出し、重篤な症状をもたらします。   (3)治療

 まず交通事故による鈍的外傷では、なにより、呼吸路の確保が優先されます。呼吸困難では、必ず、気管を切開して気道を確保します。

 軽いものでは、安静と、声帯浮腫を防止する必要から喉頭ネブライザーの併用ですが、通常は、呼吸が確保されていることを前提に、喉頭内視鏡検査、CTなどの画像診断、喉頭機能、呼吸、嚥下、発声を評価する各種検査が実施されます。骨折整復は、受傷後早期に行う必要があり、手術で軟骨の露出、喉頭を切開、損傷した部位の粘膜縫合や骨折整復の手術が行われています。

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外傷性食道破裂(しょくどうはれつ)

(1)病態

 交通事故では、胸部に対する強い打撃、圧迫により、稀に発症しています。秋葉事務所では未だに受任例がありません。    ネットで食道破裂の外傷例を検索してみました。、   ① 交通事故による第3胸椎破裂骨折に合併したもの、   ② 樹木からの落下で胸部を打撲したもの、   ③ 野球でのヘッドスライディングによる胸部圧迫、   ④ 風呂場での転倒による胸部の打撲に伴う外傷性食道破裂が報告されています。   ⑤ 変わったところでは、食器を運搬中に転倒して、箸が右頚部から刺入し外傷性食道損傷となったものもあります。   >① 75歳男性、歩行中の交通事故により受傷⇒胸部CTとMRIにて右血胸、縦隔血腫、頚椎骨折、第3胸椎破裂骨折を認め、ICUで管理⇒受傷4日後、呼吸状態悪化、人工呼吸を開始、⇒右胸腔ドレーンより血性排液あり、翌日、膿性排液となり、CTで血胸の増悪と縦隔気腫を認める⇒受傷6日後の内視鏡検査で、食道穿孔を認め、外傷性食道破裂と診断、同日緊急手術、⇒食道部分切除、食道瘻造設、開腹下胃瘻、腸瘻造設術施行、⇒食道破裂は胸椎骨折の骨片による損傷が原因と診断されました。   >② 57歳女性、木から落下、翌日より、嚥下での胸部痛とつかえ感が出現、近医を受診、⇒食道内視鏡検査にて下部食道に約2cmの全周性の潰瘍と左右に深い粘膜裂傷を伴う狭窄を認める、⇒超音波内視鏡=EUS検査で食道壁は全層にわたり肥厚、壁構造は消失、⇒狭窄部が瘢痕化した後、バルーンによる食道拡張を施行し, 狭窄症状の改善を認める、保存的治療にて改善、狭窄瘢痕部位はバルーンによる食道拡張術で軽快、12カ月経過後も再狭窄は認められていません。   >③ 15歳,男性、野球でヘッドスライディングをしたあと、前胸部痛が出現、飲水後に,前胸部がしみる感じを訴える、⇒.胸部XP、CT検査で縦隔気腫と診断、⇒縦隔気腫の原因精査のため、上部消化管内視鏡検査を施行、⇒食道入口部に約3cmにわたる裂創を認める、

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味覚脱失(みかくだっしつ)   (1)病態

 味覚は、甘味、塩味、酸味、苦味の基本4要素が基本です。

 最近では旨味を加えて基本5要素とも言います。ちなみに辛味は入りません。耳鼻科の先生に聞くと、辛味は、正確には舌の痛みだそうです。

 味覚を感じる器官は、味蕾(みらい)と呼ばれ)、そのほとんどは舌の表面の乳頭、有郭乳頭、葉状乳頭、茸状乳頭という組織に存在しますが、咽頭粘膜などにも認められます。甘味、塩味、酸味、苦味の4要素では、感じ方にそれほどの差はなく、旨味のみ、舌の側面、付け根の部分で強く感じると報告されています。

 味覚の脱失や減退は、舌の外傷、顎周辺組織の外傷を原因として発症しています。さらに、頭蓋底骨折や頭部外傷後の高次脳機能障害でも、味覚障害が認められています。

 他覚的検査としては、濾紙ディスク法の最高濃度液検査を受けます。これは、甘味、塩味、酸味、苦味の4つの基本となる味のついた、濾紙を舌の上において味質の障害を見る検査法です。薄い味から濃い味へと5段階で検査が実施されています。

  ◆ 味覚と嗅覚は、風味といわれる通り、密接に関連していることが報告されており、嗅覚が低下することにより、味覚にも変化が生じています。嗅覚の異常によって味まで減退することを「風味障害」と呼びます。

 味を感じる経路は、

① 味物質の味蕾への到達

② 味蕾での知覚

③ 中枢への伝達に分類されるのですが、交通事故においては、舌や顎周辺組織の損傷を原因とすることもあり得るのですが、圧倒的には、中枢への伝達障害が予想されます。   (2)治療

 耳鼻咽喉科の受診を急ぎます。味覚の異常の多くは亜鉛が足りない、亜鉛欠乏症の疑いから治療がスタートします。亜鉛の服用は、抗潰瘍薬のポラプレジンク(プロマック)と、低亜鉛血症が保険適応病名の酢酸亜鉛製剤(ノベルジン)が代表的です。亜鉛の処方が続いても改善が無い場合、味覚減退・喪失は決定的になると思います。

 何より早期からの治療実績がないと、因果関係から事故外傷による味覚や嗅覚の異常は否定される可能性があります。内在的な原因=病気の可能性もあるのです。風邪でも味覚・嗅覚の異常は起きます。最近では、コロナ罹患後の後遺症で「味がしなくなった」が記憶に新しいところでです。   ◆ 脳外傷は別として、そもそも、むち打ちはじめ打撲・捻挫程度の衝撃で「味がしなくなる?」など、まず信用されません。受傷直後からの治療実績と検査結果が無ければお手上げです。その立証は苦戦どころか敗戦必至です。かつての記録からも、嗅覚障害での逆転・認定例はありますが、味覚では全敗中です。

    (3)後遺障害のポイント

Ⅰ.

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 顎関節症・円板損傷(がくかんせつしょう・えんばんそんしょう)

(1)病態・症状

 関節円板の位置のズレや変形があることで、開口・並行のときにカクンカクンのクリック音か出ること、変形が大きいと口が途中までしか開かない開口障害が出現しています。

 関節円板は下顎頭の外側と内側には強く連結しているのですが、前後方向への連結は緩やかで、関節円板は前後へ大きく動くことが可能になっているのです。

 関節円板障害は、正しい位置から前にずれることが大半で、関節円板前方転位といいます。つまり、下あごが、前に出っ張った状況となっているのです。原因として、ストレスからくる歯のくいしばり、歯ぎしりなどが指摘されています。   (2)治療

① あごを楽にするようなリハビリ運動

② マウスピースの装用

③ 噛み合わせの調整

 歯科医における上記の治療・矯正で、改善が得られます。   (3)後遺障害のポイント

 顎関節症は、時々相談を受けていますが、後遺障害の対象となる程の方はいませんでした。事故との因果関係に疑念があること、歯科の治療・矯正で改善が得られることの2つを理由としています。

 上顎・下顎骨に骨折がないと、開口障害やそしゃく障害を訴えても、まず見向きもされません。骨折など、相当のダメージを前提に、上下顎関節の転位、あるいは円板損傷があれば信用されます。円板損傷はMRIで立証します。それでも、経験上、微妙な画像が多く、立証の難易度は高いと言えます。    次回 ⇒ 味覚障害  

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 上顎骨、下顎骨、頬骨、いずれの骨折と同時に歯を折ることは多いものです。もちろん、単独で歯を折る(歯折)、歯を失う(歯牙欠損)、根本がグラグラになる(脱臼)等で治療を施すこともあります。歯の治療で、歯を削る・人口物で補うことを、専門的な用語で補綴(ほてつ)と呼びます。

 歯の後遺障害では、事故以前の虫歯なども含め、加重障害として等級が認定されています。そして、加重障害の計算は、単純な差引ではなく、とても複雑なものです。ここで特集しましょう。   1、歯の障害

 まず、歯の状態を4つに分類します。   a. 

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Ⅲ. 開口障害

開口は、正常であれば、男性で55mm、女性で45mmが日本人の平均値です。

 これが2分の1以下に制限されると、開口障害により咀嚼に相当の時間を要することになり、12級相当が認定されます。男女とも、指2本を口に挿入できなくなったときは、後遺障害の対象となります。    参考までに、そしゃく筋について、追加的な説明をしておきます。下顎骨の運動は、咀嚼筋と呼ばれる筋肉が主に働きます。この筋肉は、随意に動かすことができ、下顎を上顎に対して上下する、水平に移動することで、歯が食物を噛み切ったり、すりつぶしたりすることができるのです。

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(4)後遺障害のポイント

 上顎・下顎の骨折は、整形外科で対応することはできません。口腔外科を中心に、形成外科が共同して手術、その後の治療を担当しています。歯が折れるなど、歯科へかかることも多いものです。

 それらの診療科があって、治療技術の高い治療先を選択しなければならないのですが、これらの治療の開始には、10日前後の猶予があります。治療の開始が10日前後遅れても、それを原因として、大きな後遺障害を残すことは少ないものです。

 上下の顎骨骨折から頻発する障害を5つに分けて解説します。   Ⅰ.

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 下顎骨々折(かがくこつこっせつ)

1 オトガイ部(正中部) 2  下顎体部 3  下顎角部(埋伏智歯部) 4  下顎頸部

   (1)病態

 下あごの骨折で、顔面部の骨折では最も多い例です。交通事故では、バイク、自転車で走行中、自動車と出合い頭衝突などで転倒した際の外力で、下顎の骨折は発生しています。   続きを読む »

 上顎骨々折(じょうがくこつこっせつ)

(1)病態

 上顎骨は頬骨、鼻骨、口蓋骨と結合し、中顔面を構成しているのですが、上顎骨は、薄くて脆いもので、交通事故では、バイク、自転車で走行中、自動車と出合い頭衝突などで転倒した際の外力で、上顎の骨折は発生しています。

 上顎骨のほぼ下半分が骨折したものをルフォーI型骨折、上顎骨が鼻骨複合体を含めて骨折したものをルフォーII型骨折といいます。さらに、頬骨をも含め顔面中央部が全体として頭蓋骨と離断される骨折をルフォーIII型骨折といいます。また、上顎骨が正中部で離断されたものは矢状骨折といいます。

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頬骨々折(きょうこつこっせつ)・頬骨体部骨折(きょうこつたいぶこっせつ)

(1)病態

 頬の高まり、周辺部の骨折で、交通事故では、歩行者、自転車、バイクの転倒による強い打撲で発症しています。2、3カ所が同時に骨折する粉砕骨折が多く、骨折部が転位、ズレます。   (2)症状  以下の症状が予想されます   ① 頬の平坦化、頬部の凹みによる顔面の変形、

② 開口障害、口が開けにくい、

③ 複視、モノが重複して見える、

④ 瞼の腫れが強く、眼球に損傷がないが、眼球表面が内出血、

⑤ 眼窩がくぼみ、眼球が陥没、

⑥ 眼窩下神経を損傷すると、頬・上唇・歯茎・鼻の側面の痺れ、   (3)治療

 まずはXP(レントゲン)、続いてCTで確定診断が行われています。

 体部骨折では、視力・眼球運動検査など眼科的な検査も必要となります。   Ⅰ.

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(1)病態

 顔面は11種18個の骨から構成され、下顎骨を除いて互いに接合して1つの骨を形成しています。顔面骨折は、受傷原因や外力の強さの方向により、単独骨折と多発骨折に分類されます。骨折となると、整形外科のイメージですが、顔面骨折では、形成外科で診断・治療が行われています。

 顔面骨折は、①鼻骨骨折、②鼻篩骨骨折、③頬骨骨折・頬骨弓骨折、④眼窩底骨折、⑤上顎骨骨折 ⑥下顎骨骨折、⑦前頭骨骨折、⑧陳旧性顔面骨骨折、⑨顎変形症、上記の9つに分類されるのですが、交通事故では、複数の傷病名が合併することもしばしばです。

 また顔面・頭蓋は、多くの骨の組み合わせからなるため、骨折の部位・症状により、眼科、耳鼻科、脳外科、歯科、口腔外科、形成外科などが協力体制を組んで治療が行われています。   (2)治療

 診察とXP、CT、MRI検査で確定診断されており、治療の中心は、形成術による整復・固定です。

 多数例で、ずれた骨が再癒合を始める前の、受傷から4~10日前後に形成術が実施されています。手術の際の皮膚切開は、できるだけ傷跡が残らない切開線を選ぶように工夫されています。  通常、チタンプレートとスクリューで固定されていますが、最近では、数カ月で体内に吸収される吸収性プレートやスクリューが普及しています。吸収性プレート、スクリューの特徴は、骨癒合が完了する数カ月の期間は強度が保たれ、その後6カ月~1年で体内に吸収されることで、抜釘の必要がなく、子どもの成長にも対応できています。     ◆ 顔面骨折の3分類

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  (1)病態

 交通事故との因果関係はありませんが、毎年大流行していますので、参考までに取り上げておきます。

 アレルギー性鼻炎とは、花粉やダニなどを原因として、鼻粘膜に生じるアレルギー疾患です。アレルギーは、免疫機能が過剰に反応することであり、蜂に刺されることで生じるアナフィラキシー、金属の接触で発症する金属アレルギーなど、広範囲にわたります。

 アレルギーは、Ⅰ~Ⅳ型の4つに分類され、アレルギー性鼻炎はⅠ型アレルギーの代表的疾患です。I型アレルギーは、IgE抗体という抗体によりアレルギー反応が起こります。体内に花粉やダニなどの原因物質が入るとIgE抗体が作られ、この抗体が白血球の一種である肥満細胞や好塩基球細胞膜に付着することでアレルギー性鼻炎が発症します。   (2)症状

 くしゃみ、鼻水、鼻づまりが3大症状です。その他に、頭痛、頭重感、食欲不振、耳・のど・目のかゆみなどの随伴症状が起こることもあります。また倦怠感や意欲の低下にもつながり、これらの症状は非常に不快なもので、QOLを著しく低下させます。生命に関わることはありませんが、学業や仕事に集中力を欠くことになります。   (3)検査・治療

 血液検査と鼻粘膜誘発テスト、皮膚反応をチェックするプリックテスト、皮内テストなどが行われます。

 治療には、薬物療法としては、抗ヒスタミン薬と抗ロイコトリエン薬の内服です。くしゃみ、鼻水が主症状のときは、抗ヒスタミン薬を使用されています。鼻づまりが主症状のときは、抗ロイコトリエン薬が使用、中等症以上になると、鼻噴霧用ステロイドホルモン剤も使用します。

 薬物療法で十分な結果が得られないときは、レーザー治療、後鼻神経切断術、粘膜下下鼻甲介骨切除術などが選択されています。アレルゲン免疫療法と呼ばれます。アレルギーの原因であるアレルゲン(抗原)を少量から体内に投与し、身体をアレルゲンに慣らすことで症状を和らげる免疫療法も実施されています。    次回から顔の後遺障害のシリーズに移行します ⇒ 顔面骨折  

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 嗅覚脱失(きゅうかくだっしつ)    ちなみに漢字を区別すると・・匂い(良いにおい)・臭い(悪いにおい)です。  

(1)病態

 嗅覚障害は、鼻本体の外傷ではなく、頭蓋的骨折と頭部外傷後の高次脳機能障害、特に、前頭葉の損傷で発症しています。これらは、嗅神経の損傷を原因としたものであり、治療で完治させることができません。    その実例(高次脳機能障害に併発)👉 12級相当:嗅覚障害(20代女性・東京都)    例外的に、追突を受けた外傷性頚部症候群の男性被害者に嗅覚と味覚の脱失を経験しています。頭部外傷がなく、絶望的な思いでしたが、事故受傷直後から自覚症状を訴えており、そのことは、カルテ開示においても確認できました。検査結果でも、嗅覚の脱失を立証でき、嘘ではないと確信し、被害者請求で申請したのです。自賠責・調査事務所は、7カ月を要して、嗅覚の脱失のみを12級相当として認定してくれたのです。    その実例 👉 12級相当:嗅覚障害(60代男性・長野県)    もう一つ 👉 12級相当:嗅覚障害(30代女性・東京都)   (2)後遺障害のポイント

Ⅰ. 

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 鼻欠損(びけっそん)   (1)病態

 ヒトの外貌は、眼瞼と鼻そして口唇で成り立っており、個人の個性を表しています。その鼻が欠損するのですから、被害者の精神的な苦痛も大きく、相当に深刻な外傷です。

 形成術は、日進月歩ですが、完全な回復は、とても期待できません。ところが、後遺障害としての評価は、意外に低いのです。    (2)後遺障害のポイント

Ⅰ.

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