頚椎棘突起骨折(けいついきょくとっきこっせつ)
 
(1)病態

 頚椎骨折=首の骨の骨折とは大変なケガのように聞こえます。しかし、骨折部位によっては、一生残るような深刻な後遺症を残さないケースがあります。まず頚椎の図からみてみましょう。
 

 首の骨は全部で7つ、上からC1~C7と呼んでいます。加えて上の図のように細かな名称があります。棘突起とはそれぞれの椎骨の後ろに飛び出た出っ張りです。経験上、もっとも出っ張っている第7頚椎の棘突起が最も折れやすいと思います。それは首の後ろを触ればわかります。転倒で強打する、強い外力が加わることにより棘突起部が折れます。むち打ちでも、強度の衝撃で折れた例がありました。水平図は↓の通りです。
 
 むち打ちでの受傷例 👉 14級9号:頚椎棘突起骨折(40代女性・茨城県)
 

 
(2)症状

 形状をみれば細く突き出ているので折れやすいと言えます。この部分だけが折れた場合、多くの場合、手術することなく保存療法がとられます。つまり、安静とカラー固定です。転位(骨がズレてくっつく)がひどく、首の可動域に影響が出る場合、手術で金属固定する可能性がありますが、そのような重傷例は未経験です。
 
(4)後遺障害のポイント

 椎体自体の安定性、アライメント(骨の配列)に問題を残さなければ、医学上、運動障害は起こり得ません。頚部に限らず、脊椎骨の棘突起や横突起の骨折で「首(腰)が動かなくなった」と訴える被害者さんは多くおりますが、安静を保つために動かさないようにしたり、頚椎カラーをしているせいで頚部の筋肉が固まったことが原因で動かなくなったに過ぎません。この場合は自賠責は後遺障害として認めません。リハビリで回復するものと考えられるからです。
 
Ⅰ. 例えば、画像上骨の配列がずれていることから軸椎(C2)をスクリュー固定した場合や、2~3の椎体に固定術をした場合は可動域制限を残すことになります。それは8級2号の評価になりますが、当然、棘突起のみの骨折ではないはずです。もしくは、複数の棘突起骨折後に不整癒合したケースがありました。折れた2つの棘突起が癒着してしまったレアケースです。
 
 レアケースゆえに苦労した実例 👉 14級9号⇒8級2号:頚椎・棘突起骨折 異議申立(40代男性・埼玉県)
 
Ⅱ. 転位(骨がずれてくっつく)がひどい場合や、高齢者に多いのですがスクリュー(ネジ状の金属)固定したままの場合は、脊椎の変形で11級7号となります。これも小数例と思います。
 
Ⅲ. 多くの場合、痛みやしびれなどの神経症状を丹念に拾い上げて、神経系統の機能の障害を立証します。変形癒合が画像上認められれば12級13号となります。もっとも、画像上変形が明らかであれば、Ⅱ. 脊椎の変形=11級7号の判定に戻ります。癒合に問題なければ14級9号に留まります。結局、14級9号が多数例となります。
 
 交通事故以外の希少例 👉 施設賠償14級9号:頚椎棘突起骨折(30代女性・長野県)
 
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