(1)病態

 気道確保の目的で気管切開を行い、気管カニューレ=通称Tチューブを挿管するのですが、稀に、肉芽の増殖、気管切開の位置や管理上の問題で抜去ができなくなることがあります。気管や咽頭を受傷しても、同様のことが考えられます。

 傷病名は、気管カニューレ抜去困難症と診断されます。交通事故110番では1例を経験したのみで、極めて稀な傷病名です。   (2)治療

 医学の進歩は目覚ましく、気管カニューレ抜去困難症であっても、オペで除去することができるようになっています。しかし、予後は、術後に誤嚥をきたすか、肉芽が再増殖してくるかの2つのリスクがあり、いつでも、このオペで成功するのではありません。   (3)後遺障害のポイント

Ⅰ.

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 舌骨骨折(ぜつこつこっせつ)      男性では、喉の外側から、喉仏=アダムのりんご、喉頭隆起の位置が分かります。喉仏を、手の親指と人差指で、挟むように触れると、上側に、喉仏より柔らかい正中甲状舌骨靭帯があり、その靭帯を上方に辿っていくと、V状の固い骨らしきものに触れます。それが、舌骨です。

  (1)病態

 舌骨は、喉仏=咽頭隆起の上に位置する、三日月型の小さな骨で、手足の骨とは違って、舌首の筋肉で吊るされており、ものを飲み込む、舌を動かすときに連動して動きます。ヒトは、食べるとき、言葉を発するときも盛んに舌を使いますが、舌は大きな筋肉の塊であり、舌骨と呼ばれる宙に浮いた状態の骨を基盤にして働いています。この舌骨が本来の位置から外れる、あるいは不安定になると舌の働きに影響がでます。

 人間の殆どの骨は、隣り合う骨と接して関節を形成していますが、舌骨は顎の下で宙に浮いており、他の骨と接してはいません。胸からの筋肉、喉からの筋肉、そして顎や頭蓋骨や肩甲骨からの筋肉につながっていて、それらの筋肉がお互いにの引っ張り合うバランスによって位置が決まっているのです。   (2)症状

 ① ...

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(4)後遺障害のポイント   Ⅰ. 交通事故による口や咽頭の外傷で、かすれ声を除き、言語に機能障害を残した例を経験したことはありませんが、それはともかくとして、認定基準を解説しておきます。   ① 言語の機能を廃したものとは先の4種の語音のうち、3種以上の発音が不能になったものであり、3級2号が認定されます。

② 言語の機能に著しい障害を残すとは、4種の語音のうち2種が発音不能になったもの、または綴音機能に障害があり、言語では意思を疎通させることができないものであり、6級2号が認定されます。

③ 言語の機能に障害を残すものとは、4種の語音のうち1種の発音不能のものであり、10級3号が認定されます。

④ 声帯麻痺による著しいかすれ声は、12級相当となります。    そしゃくの機能の著しい障害=6級2号と言語機能の障害=10級2号の組み合わせは併合して5級相当となります。

 そしゃく機能の用を廃したもの=3級2号と言語の機能の著しい障害=6級2号の組み合わせは併合すると1級になりますが、これでは序列を乱すことになり、2級相当が認定されます。   Ⅱ.

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 反回神経麻痺(はんかいしんけいまひ)・・・言語の機能障害   ← 秋葉の声帯    人の発声器官は咽頭です。咽頭には、左右の声帯があり、この間の声門が、筋肉の働きで狭くなって、呼気が十分な圧力で吹き出されると、声帯が振動し、声となるのです。

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Ⅱ. 外傷性食道破裂後に想定される後遺障害は、瘢痕性食道狭窄による嚥下(えんげ)障害です。  

① 嚥下障害とは?

 交通事故では、咽頭外傷で舌の異常や、食道の狭窄をきたしたとき、頭部外傷後の高次脳機能障害により咽頭支配神経が麻痺したこと、頚椎前方固定術後で、椎体後方の食道や気管を圧迫したときに、また、少数例ですが、外傷性食道破裂でも、複数例の嚥下障害を経験しています。

 嚥下障害とは、飲食物の咀嚼や飲み込みが困難になることをいいます。咀嚼した食物は、舌により咽頭へ送り込まれて、飲み下すのですが、そのときは、軟口蓋が挙上して、口腔と鼻腔が遮断、喉頭蓋で気管に蓋をし、飲み込む瞬間だけに開き、食道へと送り込まれているのです。これらの複雑な運動に関わる神経や筋肉に障害が生じたときに、嚥下障害を発症します。

   嚥下障害の原因、傷病名 👉 唐突ですが、嚥下障害   ② 嚥下障害の立証

 瘢痕性食道狭窄は、耳鼻咽喉科における喉頭ファイバー=内視鏡検査で明らかにします。   続きを読む »

 咽頭外傷(いんとうがいしょう)・・・呼吸障害、嚥下障害、開口障害、嗄声、発声障害  

 ヒトの咽頭は、鼻・口から入った空気が、気管・肺へと向かう通り道と、口から入った食物が、食道から胃へと向かう通り道の交差点であり、空気と食物の通過仕分けをしています。

 喉頭は気管の入り口にあり、喉頭蓋=喉頭の蓋や声帯を有しています。喉頭蓋や声帯は、呼吸では開放されており、物を呑み込むときには、かたく閉鎖され、瞬間的には、呼吸を停止させ、食物が喉頭や気管へ流入することを防止しています。声帯は、発声では、適度な強さで閉じられ、吐く息で振動しながら声を出しています。

 喉頭は、① 呼吸する、② 食物を呑み込む、③ 声を出す、3つの重要な役目を果たしているのです。   (1)病態

 咽頭外傷は、広い意味で、食道破裂のカテゴリーですが、交通事故では、受傷機転が異なります。そして、件数においては、圧倒的に咽頭外傷が多いので、ここで解説しておきます。

 喉頭部に対する強い外力で、咽頭外傷が発生し、咽頭部の皮下血腫、皮下出血、喉頭軟骨脱臼・骨折などを発症します。プロレスの技で言えば、ラリアットをイメージしてください。交通事故で、大きな外力を前方向から喉頭に受けると、後方に脊椎があるため、前後から押しつぶされる形となり、多彩な損傷をきたし、呼吸、発声、嚥下の障害を引き起こすのです。   (2)症状

 症状として、事故直後は、破裂した部位の疼痛を訴え、痛みで失神することもあります。2次的には、食道が破裂、損傷することにより、縦隔気腫、縦隔血腫を、食道内の食物が、縦隔内に散乱して、縦隔炎を合併し、それらに伴って、呼吸困難、咳、痰、発熱などの症状が出現します。

 頚部や胸部の皮下に皮下気腫を認めることもあります。重症例では、食道からの出血に伴い貧血、出血性ショック症状を合併することもあり、要注意です。   ※ 縦隔気腫・縦隔血腫  縦隔の内部に空気が漏れ出したものを縦隔気腫、血液が溜まったものを縦隔血腫といい、どちらも胸部の外傷が原因で、気管、食道、血管などから空気や血液が漏れ出し、重篤な症状をもたらします。   (3)治療

 まず交通事故による鈍的外傷では、なにより、呼吸路の確保が優先されます。呼吸困難では、必ず、気管を切開して気道を確保します。

 軽いものでは、安静と、声帯浮腫を防止する必要から喉頭ネブライザーの併用ですが、通常は、呼吸が確保されていることを前提に、喉頭内視鏡検査、CTなどの画像診断、喉頭機能、呼吸、嚥下、発声を評価する各種検査が実施されます。骨折整復は、受傷後早期に行う必要があり、手術で軟骨の露出、喉頭を切開、損傷した部位の粘膜縫合や骨折整復の手術が行われています。

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外傷性食道破裂(しょくどうはれつ)

(1)病態

 交通事故では、胸部に対する強い打撃、圧迫により、稀に発症しています。秋葉事務所では未だに受任例がありません。    ネットで食道破裂の外傷例を検索してみました。、   ① 交通事故による第3胸椎破裂骨折に合併したもの、   ② 樹木からの落下で胸部を打撲したもの、   ③ 野球でのヘッドスライディングによる胸部圧迫、   ④ 風呂場での転倒による胸部の打撲に伴う外傷性食道破裂が報告されています。   ⑤ 変わったところでは、食器を運搬中に転倒して、箸が右頚部から刺入し外傷性食道損傷となったものもあります。   >① 75歳男性、歩行中の交通事故により受傷⇒胸部CTとMRIにて右血胸、縦隔血腫、頚椎骨折、第3胸椎破裂骨折を認め、ICUで管理⇒受傷4日後、呼吸状態悪化、人工呼吸を開始、⇒右胸腔ドレーンより血性排液あり、翌日、膿性排液となり、CTで血胸の増悪と縦隔気腫を認める⇒受傷6日後の内視鏡検査で、食道穿孔を認め、外傷性食道破裂と診断、同日緊急手術、⇒食道部分切除、食道瘻造設、開腹下胃瘻、腸瘻造設術施行、⇒食道破裂は胸椎骨折の骨片による損傷が原因と診断されました。   >② 57歳女性、木から落下、翌日より、嚥下での胸部痛とつかえ感が出現、近医を受診、⇒食道内視鏡検査にて下部食道に約2cmの全周性の潰瘍と左右に深い粘膜裂傷を伴う狭窄を認める、⇒超音波内視鏡=EUS検査で食道壁は全層にわたり肥厚、壁構造は消失、⇒狭窄部が瘢痕化した後、バルーンによる食道拡張を施行し, 狭窄症状の改善を認める、保存的治療にて改善、狭窄瘢痕部位はバルーンによる食道拡張術で軽快、12カ月経過後も再狭窄は認められていません。   >③ 15歳,男性、野球でヘッドスライディングをしたあと、前胸部痛が出現、飲水後に,前胸部がしみる感じを訴える、⇒.胸部XP、CT検査で縦隔気腫と診断、⇒縦隔気腫の原因精査のため、上部消化管内視鏡検査を施行、⇒食道入口部に約3cmにわたる裂創を認める、

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