外傷性骨化性筋炎(がいしょうせいこっかせいきんえん)
 

※「画像診断まとめ」 のホームページから引用しています。

 
(1)病態

 骨化性筋炎は、骨や関節周囲の軟部組織に外傷などの刺激が加わって起こる異常骨化現象で、本来、骨組織が存在しない部位に発生する骨化と定義されています。外傷性骨化性筋炎は、異所性骨化症ともいわれ、筋肉の炎症に引き続き、カルシウムが沈着し、石灰化現象が起こって筋組織の中に骨が形成されることを意味しているのです。

秋葉事務所でも良くみる症例です。
 骨折から半年後、症状固定時期の画像をみると、異所性骨化をたまに見かけます。それは、股関節だけではなく、脛骨、頚骨、手根骨などにみられました。些細なもの、骨片程度の大きさで、とくに問題なければ医師も処置をしません。変形癒合として後遺障害の主張も可能ですが、認定される程の骨化現象となれば、それなりの障害を残すこととなり、手術で除去することが一般的かと思います。
 
(2)症状

 激しい痛み、熱感、筋硬結、圧痛があり、関節の可動域制限を生じます。
 
(3)治療

 血液検査による血中ALPの数値、XP画像、骨シンチグラム検査で確定診断が容易です。XP、CTで骨化像が確認できます。骨化筋炎、異所性骨化症は、以下の経過をたどって進行していきます。
 
① 受傷、筋組織の損傷と血腫の形成 ⇒ ② 血腫の吸収と同時に石灰化が生じる ⇒ ③ 約2週間で石灰化部分が拡がる ⇒ ④ 3、4週間を経過すると、石灰化した部分が明瞭となり、骨化がXPで鮮明となる⇒⑤約4、5カ月、患部を愛護的に動かしてやれば、骨化した部分が徐々に小さくなっていく。
 
 受傷直後は、RICE処置が重要であり、これにより、血腫の拡大を防ぐことができます。

 患部の修復が始まる2~3週間位は、固定し、患部への刺激は極力避けるのがベターです。血腫が徐々に減り、石灰化した部位がXPで確認できる段階となれば、固定を外します。固定を外しても、無理やり動かすリハビリを実施するのは逆効果、タブーです。痛みを伴わない角度の範囲内でストレッチや関節運動を開始します。これで、骨化した部分は徐々に消失し、それに伴って、可動域も回復します。外傷性骨化性筋炎は、打撲に対する不適切なケアがもたらす長期的な合併症なのです。
 
(4)後遺障害のポイント

Ⅰ. 血液検査による血中の数値、XP画像、骨シンチグラム検査で確定診断が容易であり、これに対する治療法も確立されています。大きな血腫では、血栓溶解剤を血腫内に注射し、固まった血腫を溶かして吸い出す治療も実施されており、この方法であれば、3週間前後で治癒すると報告されています。

 筋肉内に広範囲に拡がる点状出血では、上記の治療はできず、自然治癒を待つしかありません。やや、時間は掛かりますが、いずれも、後遺障害を残すことなく、改善が得られています。
 
Ⅱ. 症例によっては、観血的手術、つまり、患部を切開して骨切り術、切除術が行われることもあります。
 

(5)交通事故110番の経験則

 代表の宮尾氏が経験した外傷性骨化筋炎は、もっと深刻なものです(以下、手記から)。
 
 頭部外傷、遷延性意識障害、左股関節後方脱臼骨折で入院中の被害者、23歳男性ですが、受傷から3カ月を経過した段階で、左股関節部に、上記の外傷性骨化筋炎が認められました。入院治療先は、頭部外傷、遷延意識障害の治療に集中しており、左股関節後方脱臼骨折は、放置されたままでした。

 この外傷性骨化性筋炎は、これまでに、私が経験したものの中では、最大のものでした。その後、意識は回復したのですが、左股関節と左膝の関節は、完全強直状態でした。主治医に確認したところ、頭部外傷、脊髄損傷では、11~22%で異所性骨化が発症すると報告されており、頭部外傷後の長期昏睡期間や多発骨折による長期間の関節運動停止が誘因ではないかといわれているが、原因の究明には至っていないとのことでした。異所性骨化の発生部位は股関節、肘関節、肩関節に多いと報告されています。

 本件の被害者は、飲酒で赤信号横断の事故発生状況であり、70:30の過失割合で、相手損保の対応は受けられず、相手の自賠責保険も重過失で20%減額が予想されます。

 別居の未婚の子であり、東北地方の実家にある自動車の任意保険を調べたのですが、人身傷害保険に加入しておらず、損害賠償はお手上げ状態です。程なく、関西から東北に転院され、その後の解決は、相談がなく、不明なままです。現在、頭部外傷、脊髄損傷後や股関節形成手術後の異所性骨化には、骨代謝改善剤が用いられており、効果を上げているとのことです。
 
※ 被害者側が、任意保険の人身傷害保険に加入していれば、損害のリカバリーはできる?

 加害者が任意保険に加入していない無保険車事故であっても、被害者が自動車を保有しており、任意保険に加入していれば、人身傷害保険、無保険車傷害保険に請求することができます。

 このときの被害者が、実家を離れて自活をしていても、独身であれば、別居の未婚の子として、実家の人身傷害保険、無保険車傷害保険に請求することができます。

 先の被害者は、自動車を保有しておらず、実家の自動車にも人身傷害保険の加入がありません。深夜の飲酒による赤信号無視の横断であり、労災保険の適用も受けられず、相手方の自賠責保険のみの請求ですが、それさえも、重過失減額で、傷害・後遺障害部分は20%カットとなります。23歳の若者で、後遺障害は高次脳機能障害で1級1号が確実視されるのですが、自賠責保険からの3200万円の支払で解決せざるを得ません。

 つい最近も、頭部外傷後の遷延性意識障害について相談を受けましたが、夜間・幹線道路に路外から自転車で飛び出しており、過失割合は、50:50が予想されます。相手の損保は、当然のことながら、任意保険対応を拒否しています。「こちらが被害者なのに、相手の保険の対応が受けられない、そんなバカな?」相談が寄せられたのですが、損保の対応に、大きな間違いはありません。しかも、自宅の自動車には、任意保険の加入がありません。We can not do anythingで相談が終わったのです。

 本来なら、カバーできる損害ですが、上手の手から水が漏れるというのか? こういうところに、重篤な事故は忍び寄ってくるのです。日頃の備えを疎かにしてはなりません。
 
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