変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)
 
(1)病態

 変形性股関節症は、関節軟骨の変性、磨耗によって、大腿骨頭、臼蓋部の骨の変形、破壊や関節滑膜の炎症が起き、疼痛や運動障害からADL障害をきたす股関節の疾患です。

① 股関節の隙間が保たれています。
 
② 股関節の隙間が狭くなっています。
 
③ 股関節部の軟骨はすり減り、大腿骨頭が変形し、骨棘が見えています。
 
 股関節に限らず、変形性関節症とは、関節の軟骨部が摩耗し、骨に変形をもたらす傷病名です。骨盤骨々折では、骨盤輪の連続性が失われるストラドル骨折やマルゲーニュ骨折、仙腸関節の脱臼を伴う恥骨結合離開、大腿骨頭の納まる部分の寛骨臼の挫滅的な骨折、股関節部では、股関節後方脱臼骨折、股関節中心性脱臼の重症例では、時間の経過によって、変形性股関節症を発症することが予想されます。

 軽度な股関節唇損傷であっても、損傷が見逃され、放置されることにより、股関節部の軟骨が広範囲に傷つき、変形性股関節症に移行することが考えられるのです。
 
 股関節唇損傷での認定例 👉 14級9号:股関節唇損傷(30代女性・愛知県)
 
(2)症状

 股関節は、脚の付け根に位置しており、初期症状では、立ち上がったとき、歩き始めのときに、脚の付け根に痛みを感じる程度ですが、変形性股関節症が進行すると、持続する痛みで、足趾の爪切りができない、靴下が履けない、和式トイレや正座が困難となり、日常生活でも、長い時間の立ち仕事や歩くことが辛くなり、階段や車・バスの乗降も、手すりに頼ることになります。
 
(3)治療

 股関節部のXP撮影で、確定診断がなされていますが、拡がりを観察するときには、CTが有用です。治療は、保存療法と手術療法に分けられます。早期であれば、保存療法で進行を抑えることができます。鎮痛消炎剤の薬物療法、プールでの水中歩行などによる筋力トレーニング、食事制限による肥満の防止、これらの3点セットが有効です。中期となれば、骨切り術が選択されています。

 骨切り術は、関節近くの骨を切って、関節の向きを調整する、残っている軟骨部に荷重を移動させるのですが、自分の骨を使うので、破損や摩耗の心配がなく、かなりの高い活動性が確保されます。体重がかかる部分の関節軟骨は消失し、その下にある軟骨下骨が露出する末期となると、骨切り術で改善を得ることは不可能であり、人工関節全置換術(↓)の適用となります。


  
 つづく ⇒ 後遺障害