LCL 外側々副靭帯損傷(がいそくそくふくじんたいそんしょう)

(1)病態

 LCL外側々副靭帯は、ACL、PCL、MCL靱帯に比較すると、損傷する頻度は少ないのですが、交通事故に代表される高エネルギー外傷においては、PCL後十字靱帯損傷や腓骨神経麻痺を合併することもあり、重篤な後遺障害を残すことがあります。

 交通事故では、膝の内側からの打撃、膝を内側に捻ったときに断裂することがあります。単独損傷はほとんど発生していません。多くは、後方の関節包、PLS膝関節後外側支持機構という領域を含む複合損傷を来します。
 
(2)症状

 LCL外側々副靭帯損傷では、靭帯が断裂または引き伸ばされることによる膝外側部の疼痛、外側半月板周囲の膝の激痛と運動制限を生じます。

 膝の左右の不安定感もハッキリしており、膝が外れる、膝が抜けるなどの感覚を伴います。Grade III(靱帯の完全断裂)では、腓骨神経麻痺による下腿から足先の麻痺、膝窩筋腱領域に広がる膝外側から膝裏にかけての広範な疼痛と不安定性が見られます。
 
(3)診断と治療

 LCL外側々副靭帯は、膝が内側に向かないように制御している靭帯です。LCL外側々副靭帯損傷は、徒手検査で外側不安定性を認めることで、診断可能です(外反・内半テスト)。


 さらに、ストレスXP撮影で、動揺性、靭帯の緩みを確認してグレードを判別することができます。MRIでは、骨挫傷、軟骨損傷、その他の靭帯や半月板損傷など、合併損傷がないかを検証します。とくに、後十字靭帯損傷を合併していることが多く、Grade II以上の不安定性を認めるときは、MRI検査で、それらを検証しなければなりません。

 膝外側側副靭帯損傷の治療は、原則的にはリハビリを中心とした保存療法が中心ですが、Grade IIIで重度な不安定性が見られるときは、靱帯再建術が必要となり、膝関節の専門医の出番です。
 
(4)後遺障害のポイント
 
  LCLの単独損傷で、GradeⅠ~IIのものであれば、保存的治療で完治する傾向です。後遺障害を残すことは通常ありません。
 
Ⅰ. Grade II以上で、ストレスXP撮影で軽度の動揺性を立証、損傷そのものはMRIで明らかにすると、12級7号が認定される可能性があります。
 
Ⅱ. 動揺性はないが、MRI画像で損傷が明らかなものは、理論上、神経症状(痛み等)で12級13号の判定となります。まだ、13号はみたことがありません。わずかな損傷や画像所見は微妙、陳旧性だが事故以来の症状、これらは、受傷機転(どのように膝を痛めたのか)と症状の一貫性から、14級9号の余地を残します。
 
Ⅲ. MRI検査で、PCL後十字靭帯損傷、半月板損傷などを合併しているときは、個別の対応で、後遺障害の立証を行うことになります。詳しくは、MCL内側側副靱帯損傷と同じ理屈になりすので、そちらを参考にして下さい。
 
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