一言で説明は難しいのですが、つげ 芳春さんは、自らの旅をテーマにした短編を多く発表、前衛的でシュールな作風で、代表作は『ねじ式』、アングラ界では有名な漫画家です。

 湯宿温泉は、からっ風・群馬県の街道沿いの温泉地です。つげ先生が温泉をテーマにした短編集で描きました。ほとんど民家が並ぶだけ、わずか300m程度の温泉街です。作品の描写ですと、ボロ家が並び、街灯は割れて暗く、風がピューッと吹きすさび、人影はありません。昭和のさびれた温泉街のイメージが脳裏に残っています。これと言った観光地もなく、数軒の温泉宿がひっそりと生存している、そんな温泉です。

 江戸時代までは三国峠越を前に旅人が逗留、街道沿いの旅籠・温泉地として、それなりに栄えたようです。自動車の時代となれば、誰も彼も通り過ぎてしまうのでしょう。さすがに令和の世ですから、町おこしよろしく、何かしらあるはずです。その名を知ってから20年、ようやくの訪問となりした。
 
  
 メインロードはこんな細い路地が続きます。平日とは言え、2日間一切通行人を見ませんでした。当然、コンビニなどありません。商店は4~5軒ありますが・・まず開いていません。
 

 こちらが温泉街の中心、シンボルの窪湯です。
 

 宿は湯本館、その名の通り敷地内に源泉があります。ここから湧き出し、5m先の湯舟に注がれます。泉質は、ナトリウム・カルシウム-硫酸塩泉です。効能は万能型でしょうか。浴感は癖がないわりに、独特のまとわりつきがあり、透明な湯に潜む滋味を感じます。温泉・上級者向けの湯と言えるでしょう。
 

 翌日は雪景色に。雪がバイパスの17号を走る自動車の走行音を吸い込んで・・一層静寂が増します。
   
 いつか、暖かくなったら、有名な法師温泉を経由して、三国峠超えのルートを進んでみようと思います。