コロナ渦の影響か、昨年から有名人の自殺のニュースが続いています。先行き不安、閉塞感はいともたやすく人を窮地に追い詰めます。
 
 警察庁のデータによると、「令和3年の自殺者数は21,007人となり、対前年比74人(約0.4%)減。 ○男女別にみると、男性は12年連続の減少、女性は2年連続の増加となっている。 また、男性の自殺者数は、女性の約2.0倍となっ ている。」 ピークは平成15年の34427人で、以後15年は減少が続き、昨年は減少も令和に入りやや増加の傾向です。コロナとは無縁ではないと思います。とくに有名人の自殺は影響力がすさまじく、しばらく連鎖します。高校生の頃、アイドル歌手の岡田 由希子さんの例を覚えています。
 
 秋葉事務所では過去、重傷被害者さんを介護するご家族の自殺が3件、内未遂が2件ありました。ある日突然、日常を奪われた被害者本人はさることながら、その介護を担う家族の絶望感は計り知れないものがあります。そこで、精神的に弱っていると感じた場合、なるべく携帯電話をホットラインとして、24時間体制ででるようにしています。実際、深夜にかかってくることもありました。小一時間お話を聞いて、「また、明日考えましょう。お茶でも飲んで寝て下さい」と電話を切ります。これでも、少なからず効果はあったと思っています。

 最近の芸能人の自殺報道では、必ず電話相談のホットラインを案内しています。これは、とても良いことだと思います。死に取り憑かれた人の手を握りとどめるには、とにかく話を聞く事が第一です。
 
 交通事故で四肢麻痺となった夫の介護を担うことになった奥さん、老夫婦の例を紹介します。

 バイクと自動車の衝突事故で脊髄損傷、全介護となった被害者さん、当然に後遺障害1級を取りました。事故は連携弁護士によって解決、それなりの賠償金を得ることができました。加害者との戦いは終わりましたが、被害者家族の介護の日常は続きます。首から下がまったく動かない御主人は不甲斐ない自身に苦しみ、涙を流しながら、毎日のように奥様に「早く殺せー!」と叫びます。

 対する奥様は・・・「ハイハイ、明日殺しますから、今日はご飯食べましょうね」とスプーンを口に運びます。なんと、人間はかくも強くなれるものか・・。
 
 人は今日一日を生きるのに精一杯、余計な事を考えなくてよいのです。以来、「明日」こそ希望のキーワード、魔法の言葉と思うようになりました。
 
 奥様は、事故後に介護の勉強をして、心療内科の医師の指導も受けています。なんとか、持ちこたえているのです。介護や心理の専門家だけではなく、常に家族、友人とのコミュニケーションをとるようにしています。時にはヘルパーさんに介護を任せて外出や旅行もするようにしています。介護を担う者には、周囲の物理的・精神的助力が絶対に必要です。そして、その為のお金も当然に必要です。しっかり賠償金や保険金・補償を得ることの意味はそこにあります。