本日のニュースはSK氏の記者会見一色でしたね。やはり聴覚障害に触れないわけにはいかないでしょう。

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 さて、本件で問題となっているのは身体障害者手帳の等級です。

 自賠・労災よりはシンプルです。そして全ろう、それに近い重篤な難聴しか認定等級がありません。手続きですが、医師の診断書とオージオメーター(聴力検査)の検査表を市役所に提出すれば該当の等級が認定されます。問題はオージオメーターは本人の意思で嘘の検査値を出すことが可能な事です。これについては耳鼻科の医師によると、経験にもとづいて嘘を見抜くことはできると言っています。

 等級は以下の通り、平衡機能の障害と一緒の表になっています。
 

等級

聴覚障害

平衡機能障害

1

   

2

両耳の聴力レベルがそれぞれ100デシベル以上のもの(両耳全ろう)  

3

両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの(耳介に接しなければ大声語を理解し得ないもの) 平衡機能の極めて著しい障害

4

1、両耳の聴力レベルが80デシベル以上のもの(耳介に接しなければ話声語を理解し得ないもの)

2、両耳による普通話声の最良の語音明瞭度が50パーセント以下のもの

 

5

 

 

 

平衡機能の著しい障害

6

1、両耳の聴力レベルが70デシベル以上のもの(40センチメートル以上の距離で発声された会話語が理解し得ないもの)

2、一側耳の聴力レベルが90デシベル以上、他側耳の聴力レベルが50デシベル以上のもの

 

 
<ポイント解説>

1、SK氏は何級だった?

 何級の手帳を持っていたかは知りませんが、「全ろう」と言われているので3級以上であったはずです。
 そして一部の例外(乳幼児の先天性疾患など)を除き、手帳には更新義務がありません。等級変更する場合であっても本人申請が前提です。障害が重くなった為に再度申請し直す人はよいとして、障害が改善したのにそのままの人が生じる可能性があります。もっとも改善が見込めないと判断されたから手帳が交付されるのですが・・。
 最近のマスコミ発表によるSK氏の再検査の数値は「右:48.8db 左:51.3db」で6級の基準に満たなくなっています。つまり「障害に該当しない。」この新たな診断書によって手帳を返還することになったようです。

 ちなみに自賠責では現状でも11級5号の数値です。しかし自賠の審査は一定期間を空けた検査を3回行い2~3回目の平均値を算出し、誤差や演技を排除します。さらに外傷の有無、事故との因果関係も厳しく見ますので簡単には認定されないものです。
 

2、SK氏の難聴は感音性難聴です。

 耳の構造は、体の外の音を振動に変えて体内に伝える部分(伝音器)と、体内に取り込んだ振動を電気信号に変換して脳に伝える部分(感音器)となります。難聴は障害の起こっているこの2部分によって以下類別されます。20140205_2


伝音器(外耳・中耳)の部分に機能障害がある場合を伝音性難聴

 ②感音器(内耳・聴神経)の部分に機能障害がある場合を感音性難聴

 ③伝音器にも感音器にも機能障害がある場合を、混合性難聴
 
 

3、SK氏の罪は?

 身体障害者福祉法第16条によると「障害を有しなくなったときには、すみやかに手帳を返還しなければならない」と規定しています。したがって障害がなくなったのに手帳の恩恵を受けたとあれば当然に詐欺罪となります。最初から聞こえなかった?の疑惑については、最初の審査で「全ろう」と決定済です。検査の真偽、真相はもはやわかりません。

 またCDの購入者において「耳が聞こえない作曲家の曲だから買った、金返せ!」と主張が出た場合、これを詐欺と立証するのは困難でしょう。作曲者のプロフィールにCDの価値が左右されるのか?また個々の購入動機を明確に証明できるのか?・・と大変難しい議論になります。
 

私が思う最も重い罪は・・・

 ある目的をもって病気やけがを装うおう詐病者、この場合「詐聴者、詐聾者(さろうしゃ)」がはびこると、ますます障害認定が厳しくなるということです。身体障害者手帳、介護認定、自賠責、労災、諸制度で必ず補償を不正に得ようとする詐病者が存在します。それらを排除するために、審査側が厳しく審査することはよいことです。(視覚や聴覚の場合、究極は脳波検査です。これは演技ができません。)
 しかし一方で微妙な状況・数値から、その障害の立証に苦労する被害者がたくさんいるわけです。なかには疑われて等級が認定されない障害者もいるはずです。審査側を頑なにしてしまう、この詐病者の存在が障害者・被害者にとって一番の迷惑かもしれません。

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