交通事故の現場検証も警察官により完了しました。もし重症で救急車で運ばれ即入院となった場合の現場検証や供述の聞き取りは、後日行われます。後日の検証であっても、被害者と加害者の同時立ち合いが原則ですが、それが入院等で不可能な場合、それぞれ別に行うこともあります。

1、物損扱いと人身扱い

 事故証明書の右下に「人身」か「物損」かの扱いが記載されています。この違いについては読んで字のごとくですが、問題なのはどちらにするかの選択を迫られた時です。明らかなケガ人がいれば当然「人身扱い」ですが、ケガが軽い、念のため1回だけ診断を受けてこよう・・・実際このような場面の方が大多数と思います。その場合、立ち合いの警察官がどちらにするか聞いてくるのです。迷っているとお巡りさんは「とりあえず物損扱いにしておきます。人身にするなら後で連絡して」と去ってしまいます。なぜなら警察は人身事故として受理すると、自動車運転過失致傷罪、つまり刑事事件として捜査をしなければならず、実況見分調書・供述調書などの刑事記録を作成して、検察庁へ送付しなければなりません。刑事記録の作成は、司法警察職員という資格を持った警察官でなければならないため、立ち合った交通課の警官が資格がない場合や、書類の作成が面倒などの理由で敬遠されがちなのです。
 
 また加害者側へのペナルティも関わります。物損扱いなら罰金や減点はありません。しかし人身となると「刑事罰」の対象となります。さらに免許の点数が減点される「行政処分」が課されます。これはこのシリーズ中、表にまとめますね。

 このように病院へ行くならなるべく「人身扱い」が良いのすが、何かと周囲の影響を受けます。

★ よくある間違い

 追突してしまいました。被害者は大したことはないようなのですが、後になって治療費を請求されるかもしれません。運転の仕事をしていることもあり、なるべく物損扱いとしたいのですが、人身事故扱いにしないと保険がでないと言われました。

 原則として、物損事故では保険会社の対人賠償は生じません。しかし人身事故と言っても数回の通院で済む軽傷事故が大多数なのです。すべて律儀に人身事故にしていては警察もパンクします。保険会社も杓子定規な対応はできません。そこで物損の事故証明に「人身事故取得不能理由書」を添付し、物損事故にとどめた理由を説明します。これによって治療費や休業損害など傷害の支払いを可能とします。これは自賠責保険の請求でも同じです。
 人身扱いとしなかった理由の多くは「軽微なケガであったため・・」となるはずです。では大ケガの場合、問題が生じるのか?実際は後遺障害を残すような事故でも物損証明+人身事故取得不能理由書で通しています。これは調査事務所も審査する際、「今更、届出を変更できないし、事実障害があるのだから・・」としているようです。本音と建前の世界ですが、相当の治療が必要なケガの場合は必ず人身事故とすべきです。

人身事故取得不能理由書→http://www.jiko110.com/topics/syoshiki/higaisya_seikyu/1-12.pdf

 さらに物損のみの事故の場合、任意保険会社の対応は、保険請求に疑義がない限り、事故届&証明書がなくてもほとんど大丈夫です。多額の支払いとなる場合等、必要に応じて「事故証明書 取得不能理由書」(会社によって呼び方が違います)に署名・捺印します。自損事故でのケガ(人身傷害、搭乗者傷害)は診断書等で、車両単独事故(車両保険)などは写真&見積もりで同じ対応です。ただしあくまで届け出と証明書は必要と認識して下さい。