交通事故でケガをしました。直後から被害者はこれから治療と並行してさま様々な事務手続きを強いられます。周囲に相談できる詳しい人がいればよいのですが、ほとんどがそれぞれの窓口で一つ一つ聞きながら進めていきます。自動車保険の代理店さんなどが手伝ってくれれば良いのですが・・それでも結構大変です。また正確な答えを示してもらえないこともあります。各手続の窓口の人でさえ、間違った知識で対応することもあるのです。したがって「よくある間違い」も適時、挿入します。
 ケースbyケースの時も多々ありますが、今日からシリーズで基本的な手続きを説明していきます。

① 事故直後の3義務

 ご自身が被害者となり、ケガを負ったケースを中心に進めていきますが、加害者の義務にも触れておかねばなりません。事故が起きて、まず何を優先すべきか?以下3つを行います。

1、被害者の救護  2、安全措置  3、警察への届出

 けが人が道路に横たわったままでは危ないです。危険回避のため、路側帯に移動させます。また一刻も早く救命措置が必要の場合、止血や人工呼吸も必要です。これについては周囲に人がいれば、助けを求めることも重要です。同時に救急車を呼びます。車両は路側帯に停止させ、停止表示を置く、発煙筒を焚く、トランクを開けるなど後続車による2次的な事故を防ぎます。基本は救命と安全措置です。

 以上が確保されたら、警察への報告をします。これは人身事故でも物損事故でも同じく、道路交通法に定められています。

第七十二条  交通事故があったときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。

 このように、負傷者の救護、安全措置、警察への報告(下線)の3つが定められています。

 最後に自動車保険に加入していれば、保険会社に連絡します。アメリカでは先に弁護士に連絡ですが、日本はまだそこまではいってませんね。

★ よくある間違い 1

 軽い追突事故に遭いました。特にケガもないようで、加害者も「後で見積もりを送ってくれれば修理費を払うよ」と言っています。そこでお互いの連絡先を交換してその場は分かれました。急いでいたので警察への届け出はできませんでした。

 これはつまり先の道路交通法72条違反です。事故の軽重に関わらず、報告しなければなりません。そうは言っても急いでいるときなど面倒なケースもあります。その場合は警察に電話をして事情を説明し、後日、当事者双方で出頭すればOKです。しかしそれが許されるのは「事情」の内容によります。仕事で急いでいた、飛行機に間に合わない、などは考慮すべき事情とはなりません。命に係わる急病、出産などで急いでいるなどに限定されます。

★ よくある間違い 2
 
 軽い物損事故でしたが届け出をしたら、交通課のお巡りさんが「(届け出をして)事故証明がでないと保険が下りないのでしょ、何とかならないの(=
届け出なしで保険金を払えないの)保険屋さんは・・」とすごく面倒そうに対応されました。

 お巡りさんも間違ったことを言うケースがあります。このお巡りさんも交通事故が重なり、現場検証が多忙でつい本音が漏れたのだと思います。確かに届け出をしないと「事故証明書」は発行されません。それがないと保険がでないこともあります。しかし保険はなんとか対応できることが多いのです。これについては明日詳しく解説します。正しくは届け出は保険のため如何ではなく、法律に定められた義務なのです。
 また早く現場検証を済ませたいので、雑に検証を行う警官もいますので注意です。「ここで止まったんでしょ」と誘導口調に引っ張られないよう、しっかりと説明をしなければなりません。

★ もっとも注意すべきことは

 見ず知らずの他人を信用できるのが日本の美徳ですが、海外では1のようなやり取りは考えられません。加害者の連絡先が架空だったらどうします?また、全然連絡がとれない、事故状況がまったく食い違う、後で俺は悪くないと居直り、お金がないと尻をまくる、怖いお兄さんがでてきた、究極は「そんな事故記憶にない」としらばっくれ・・・これらはすべて保険代理店として経験してきました。
 やはり現場で警察の立会いの下、事故の検証をしておかなければこのようなトラブルになる可能性があります。警察の現場検証を経ていても、後々、事故状況でもめることが多いのです。自らの権利を守るためにも届け出は重要です。