大阪研修会でも「鎖骨骨折」にしっかり時間を割きました。交通事故外傷ではむち打ち、腰椎捻挫の次に障害認定が多いのではないかと思います。

c_g_a_6 講義では主に変形の12級5号、遠位端骨折であれば肩関節・可動域制限の12級6号、10級10号の説明に終始しましたが、ある弁護士先生から・・

「先日、鎖骨骨折の相談があったのですが、よく治って変形も可動域制限もなく、後遺障害はあきらめました。この場合は仕方ないですよね?」 

 この質問には「実績」から回答しましょう。  

併合14級:鎖骨骨折(10代女性・群馬県)

  【事案】

 自転車交差点を通過のところ自動車と出合頭衝突。意識を失うも幸い脳には受傷なく、鎖骨骨折に留まり、骨幹部にプレート固定を施す。  

【問題点】

 鎖骨は幸い外見上の変形はなく、2cm程度の手術痕を残すのみ。その後経過も良く、後遺障害の認定基準である12級5号の鎖骨変形は無理。また外貌醜条痕14級4号も鎖骨部分では顔や手足と違い該当しない部位であり、大きさも障害の基準外。  そして完全な回復を願う両親は相手保険会社の示談の提示について応じず、そのまま2年間放置状態に。   

【立証ポイント】

 こうなったら、努力賞・お土産とも言うべき14級9号を目指すのが我々の仕事。

 まず無駄と分かっていながら、事故当初の意識障害に注目し「頭部外傷後の意識障害の所見について」の記載を主治医に依頼する。これは事故の深刻度を理解いただくことはもちろん、脳障害の残存を心配し、長い治療期間を必要とした根拠とする。

 そして無駄と分かっていながら、外貌写真を添付。なんといっても18歳の女子です。1mmの傷でも許せないのです。

 さらに無駄と分かっていながら腰痛の訴えを含めた父親による切々とした気持ち、一連の経過を書面にして添付する。

 申請後、なぜか自賠責から腰部のXPの提出依頼がきたので取り寄せて提出する。

 そして結果として鎖骨部の疼痛で14級9号、腰痛で14級9号のダブル認定で併合14級に。こちらの主張を好意的に受け止めてくれたよう。

 自賠責も人の子、娘を思う親の気持ちに応えてくれたのかな?    

 とにかく私は骨折した方には全件等級をつけて解決しています。骨折までしてお土産(後遺障害慰謝料110万+逸失利益)なしで解決なんて納得できないでしょう?

 

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 本日は可動域制限の追加計測の立会いです。お忙しいDr.に再び計測の労を取らせてしまい恐縮ですので、短時間でささっとお願いします。

 さて、手首から前腕部や肘の受傷で、手首や肘に可動域制限が起きた場合、それぞれ対応する後遺障害は下表の通りです。さらに前腕部には回内・回外という計測項目があります。多くの場合、手首もしくは肘の可動域制限と比べて高い方の等級が認定されます。まず骨折の部位と様態が手首と前腕、両方の可動域に影響を及ぼすかを検証します。そしてよほどひどい骨折で癒合状態も最悪、または前腕部全体に及ぶひどい神経麻痺でなければほとんどの場合、回内・回外の等級とは併合しません。ここでも関節可動域の基本「癒合状態」が判断の前提となります。

 経験ではTFCC損傷の被害者さんは回外がきついようです。TFCC損傷でも軽度の損傷、もしくは手術で修復が進んだ場合、掌屈・背屈はかなり改善します。実際、尺屈(参考数値)のみに制限を残し、掌屈・背屈は正常値になってしまった被害者さんがおりました。このままですと14級9号止まりです。この被害者さんは医師からも「治って良かったんだよ」と言われ、諦めていたところで相談にいらっしゃいました。その後、私が病院同行して回外の計測を追加依頼し、12級6号を確保しました。普通、医師はこのような考えまで及びません。後遺障害は医師にとって別分野なのかもしれません。

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部位

主要運動

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 脚の骨折、腕の骨折、骨折の形態も、横骨折、斜骨折、粉砕骨折、剥離骨折、亀裂骨折、挫滅骨折、いろいろ経験してきましたが、四肢すべて骨折は初めてです。右上肢は上腕骨幹部骨折、左上肢は橈骨遠位端、右下肢は大腿骨骨幹部、左下肢は近位端、そして年齢は80代。これではもう歩けません。痛みはもちろん日常生活の不自由は深刻です。年齢から回復は望むべくもなく、このまま衰弱していく・・・そのような危惧を家族も医師も抱いていたはずです。

 受傷から一年が過ぎ、症状固定を迎えました。歩行不能ですが車イスでなんとか自力移動できます。そして両腕は事故前の筋力が戻りました。年齢からすると驚異的な回復です。関節可動域制限も残りましたが、12級レベルまで戻っています。事故に遭うまで農家の畑仕事は現役でした。平素維持した体力はもちろん、若いころから我慢強く、80超えてもなお精神力を保っています。

 感嘆すべきおばあちゃんです。対してむち打ちで1年もだらだら通院し、仕事に復帰しない若者もいます。被害者の務めはなにより回復努力と日常生活への復帰です。治療をする医師や補償問題に取り組む私達はそのお手伝いをしているに過ぎません。被害者には事故に負けずに頑張って欲しいのです。

                      

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 昨日はやや涼しくなった長野で相談会でした。今回は頭部外傷のオンパレード!幸い重篤な方は一名で、他の方は高次脳機能障害とまではいかないようです。しかし脳に出血があればなんらかの障害を残す可能性が高く、今後も注視が必要です。  では恒例の所感を少し。

空いている病院

 単に人気がないのか、いつもすぐ受診可能な病院があります。昨日の相談者から受診中の病院に対し、「この病院、ヤル気あるのかなぁ」と不安視する声もありました。やはり何か空いている原因があるものと思います。もちろん医師の診断力や人間性が大事ですが、不安を感じたら転院も検討すべきと思います。数か月後に泣きをみないためにも患者に決断力が必要です。  行列のできる病院はやはりいい病院?

鎖骨骨折の変形による障害認定は外見で決まる!

 鎖骨に限らず、骨が折れて無事にくっついた場合でも癒合部が少し太くなってしまうことが多いようです。これをレントゲンでみれば変形ともとれますが、わずかな変形では障害認定はありません。そもそも日常生活に影響がないからです。しかし鎖骨は外見上、服に隠れないかぎり見えるものです。折れ方、癒合状態がひどければ、その部分が出っ張って目立ってしまうことがあります。この写真を提示すれば容易に等級認定となります。しかし皮下脂肪の多い人はそれが目立ちません。つまり太っている人は不利なのです。この場合、女性に対しても「ダイエット命令!」となります。後遺障害があるのに(骨が変形しているのに)等級を取りそびれるわけにはいきません。こっちも失礼覚悟です!

 説明によく用いる肩関節+鎖骨モデル

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 膝や肘など関節部分を骨折すると、高い確率で後遺障害が残ります。ざっくりと後遺障害の指針を示します。   1、骨折の癒合後の骨変形や転位(ズレてくっつく)、関節面の不整による可動域制限   2、骨折が完全に癒合しなかった場合、偽関節による動揺関節   3、骨折と併発した靭帯損傷、軟骨損傷による痛みから、関節が曲がりづらい   4、骨折と併発した、もしくは単独の靭帯断裂、靭帯損傷(靭帯が伸びてしまった)による動揺関節   5、骨折と併発した軟骨損傷による、関節の隙間の狭小化による可動域制限   6、骨折が正常に癒合したが、関節硬縮や疼痛による可動域制限(ただし、14級9号止まり)   7、靭帯や半月板が損傷し、疼痛による可動域制限(14級~12級)      さて、もうお解りと思いますが、関節の機能障害は大きく分けてこの2種です。赤は関節の動きが悪くなったもの(可動域制限)、青は関節がぐらぐらになったもの(動揺性)です。両者は同じ骨折を契機とした障害であっても、障害の種類が違うのです。    可動域制限は、ケガをした腕(膝)と、ケガをしてしない方を比べて、4分の3位までしか曲がらない(12級)、半分しか曲がらない(10級)、硬直、ほぼ曲がらない(8級)と基準が分かれます。

 (ただし、自賠責保険は、この計測だけをもって判断しません。画像上、損傷と一致していないと疑われます。)    動揺関節は、労災の基準では、硬性補装具の使用状態から12級(たまに装着)、10級(重労働時には装着する)、8級(お風呂以外は常時装着)とします。膝の靭帯が損傷、多くは不全断裂によって、緩んでしまったので、装具をつけないと膝がぐにゃっと崩れます。とくに、階段を降りる時は恐怖だそうです。

 (ただし、自賠責保険は、装具の装着だけをもって判断しません。画像上、損傷と一致していないと疑われます。)    通常、「可動域制限と動揺関節は並立しない!」これが原則です。この2つの機能障害の次いで、茶色の神経症状の残存(痛みやしびれの継続)が検討されます。この審査の視点に乗って進めないと、後遺障害の立証が迷走します。    例えば、骨折後、靭帯の複合損傷で動揺性が残ってしまった障害であるのに、靭帯損傷や補償具の使用頻度に触れず、関節可動域の数値が記入されている後遺障害診断書を見たことがあります。つまり青の種類の損害なのに、赤を主張している診断書です。これはズバリ的外れ。当然ながら可動域は、ほぼ正常なので、骨の変形や転位がなければ、茶色の12級13号もしくは最悪14級9号の判断が返ってきます。    お医者さんも、その辺をよくご理解していない状態で診断書を書いてしまうことがあります。だからこそ、障害の予断が大事なのです。「このケガであれば、このような障害が残りやすい」と予想し、「可動域制限なのか動揺性なのか」を明確に区分しておくのです。これこそ、秋葉の仕事です。医師の「治療」と障害の「立証」を結びつけることなのです。

 

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Q、自転車走行中、自動車に交差点で巻き込まれ転倒、左橈骨遠位端骨折となりました。ボルト固定手術を経て、医師からは完治を言われているものの、自覚症状として手首が曲がり辛くなりました。近日中の症状固定を予定しています。医師は骨の癒合に問題はない、MRIでも異常は見られないとのことです。

  そこで後遺障害についてお聞きしたいのですが、手関節の可動域について、ケガをした手首の可動域(背屈40°掌屈50°)合計90°であり、ケガをしていない手首の可動域(背屈70°掌屈90°)が160°です。これを法律相談で専門家に見ていただいたら、4分の3以下の制限で12級と聞きました。10級はダメでしょうか?  

A、その専門家は参考運動を見落としています。10級か12級か・・・本件の場合、この参考運動(橈屈、尺屈)が明暗を分けます。左右差が2分の1にわずか10°オーバーしているので、「惜しい、10級を逃した」状態です。橈屈、尺屈の計測を加え、この参考運動の左右差が2分の1以下となれば、10°のオーバーを負けてくれるのです。

   

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 被害者さんはもちろん、医療調査、病院同行を業としている方に知ってもらいたい事を。

 骨折等、交通事故外傷で後遺障害が残った場合、その部位が関節であれば、その関節の可動域に制限が起きることがあります。その制限の程度はどのくらいか?これを「関節の用廃、関節の著しい障害、関節の障害」と3段階に重篤度を判定します。これは医師、もしくは理学療法士(PT)、作業療法士(OT)がゴニオメーターと呼ばれる分度器で計測します。この計測で保険金が決まります。この角度によって数百万円もの差が生じることがあります。したがって間違えて計測されるわけにはいかないのです。

 ← ゴニオメーター 

 しかし経験上、半分くらいが不正確な計測方法、いい加減な目見当で計測されていると思います。まさか医師や専門家が間違えるはずが・・と皆思います。しかし断言します。日本整形外科学会の基準通りに正確に計測されることは少ないのです。

 これは整形外科の医師から聞いた話ですが・・・「医大時代、さらっと見ただけでよく勉強していない。試験にも出てこない。これを専門的に勉強するのはPT、OTで医師は専門ではない」と。医師は教科書にでている計測方法を見たことがある程度で、実習をしているのはPT、OTのみです。私も仲間と練習したり、何人もの障害者を計測した「実習」の結果マスターしたのです。したがって実習経験もない医師は自己流の計測になりがちです。実際、計測方法は一つではなく、2~3種存在します。  勉強熱心な医師は、臨床の場で専門書を見ながら正確に計測する実践を積んでいます。しかしこのような医師は少数と覚悟しなければなりません。

 では専門家であるはずのPTやOTの先生なら安心でしょうか?もちろん正確な計測方法を熟知しています。資格取得の試験にもでてくる内容ですし、なにより実習を積んでるからです。しかし油断はできません。

 普段、PT、OTの先生はリハビリで患者の機能回復訓練を行っております。リハビリ室で「はい、今日は少し頑張って曲げてみましょう」と言いながら、患者の膝をぎゅーっと曲げています。これは訓練なので、患者は痛くても頑張らなければなりません。訓練、リハビリであれば当然の場面ですが、困ったことに後遺障害の計測の時においてもぎゅーっと曲げる先生がいるのです。

 後遺障害診断における計測値はエンドフィール(関節終端感覚)と呼び、痛くて「もう曲がりません!」と感じるところを限界としています。ですので機能回復訓練のように頑張って痛みに耐え、限界を超えて曲げたところではないのです。なぜなら日常生活で痛みをこらえて限界まで曲げることなど通常生じないからです。このエンドフィールが障害の生じる角度なのです。これを勘違いしている医師やPT、OTの先生も多いのです。

 計測では2つの値を測ります。

① 自動値・・・患者が自分の意志で曲げる限界点

② 他動値・・・補助者が手を添えて曲げる限界点

関節可動域制限では、機能障害は②の他動値で判定します。神経麻痺の場合、例外的に自動値で判定します。続きを読む »

 最近、等級認定結果に苦戦が続いていましたが、会心の結果がでました!

 某弁護士事務所からの相談ですが、明らかな鎖骨骨折の変形があり、「12級は取れそう。しかし腕も上がらないのだが・・」状態でした。  私の回答は、「鎖骨の骨幹部骨折では肩関節の可動域制限の原因には成り辛いです。関節の可動域制限で10級を取るには、肩のMRI検査で腱板損傷を明らかにする等、原因の明確化と共に丁寧に検証を重なる必要があります。このままでは12級止まりです。」

 しかし弁護士の働きかけに関わらず、病院が非協力的でMRI検査をしてくれません。弁護士も「このまま等級審査するしかないかな・・」と弱気です。そこでこの案件は私に預けてもらい、弁護士の下請けとして受任しました。作業は以下の通り。   1、検査もリハビリも非協力的な医師と面談、今後の協力継続を断念し、信頼できる病院へ誘致。   2、リハビリを継続し、まずできるだけの改善を図る。後遺障害を残さないのがベストであることは言うまでもありません。   3、MRI検査を依頼、肩の拳上不能の原因を追究する。棘上筋に損傷を発見する。   4、鎖骨の癒合状態(偽関節となっていた)について、医師と相談しながら詳細・正確な診断を促す。   5、症状固定時、肩関節の計測に立合、間違いのない計測に落ち着かせる。   6、肩の筋委縮を見てもらうよう、写真を添付する。   7、以上の検査数値、画像、資料を添付した、記載内容も完璧な後遺障害診断書を作成。       そして想定した最大の結果、鎖骨の変形12級+肩関節可動域10級=併合9級の認定を引き出しました。 

 あの時諦めていたら最悪12級止まりだったのを9級に仕立て上げたのです。

 請求額も12級から9級では倍以上に膨らみます。弁護士の報酬もドカンとアップです。

 これが被害者の運命を変えるメディカルコーディネーターの仕事です。(えへん)

 後日、実績ページにドヤ顔でUPします。  

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 最近鎖骨の脱臼、亜脱臼の相談が続いています。多くは胸鎖関節ではなく肩鎖関節の脱臼です。

今日の病院同行もGradeⅡの被害者さんです。まずこのGradeとは

 

 

分類

肩鎖関節の脱臼は3段階に分けられます。これをtossy分類とよびます。

Grade1 靱帯の軽度の損傷のみで捻挫と同様、明らかな脱臼はない。 Grade2 肩鎖靱帯の損傷があり、亜脱臼位 を呈する。 Grade3 肩鎖靱帯損傷に烏口鎖骨靱帯の損傷が加わり、完全脱臼位を呈する。

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 昨日は六本木相談会で、10名の相談者を担当させていただきました。弁護士、メディカルコーディネーター、行政書士、保険調査員、各分野のプロフェッショナルが総力をあげて対応しました。

 今回珍しい事例がありました。それは舟状骨骨折とTFCC損傷が右手首に同時に受傷、そして左手首にTFCC。手首の受傷では小指側を痛めるTFCC損傷(三角線維軟骨複合体損傷:さんかくせんいなんこつふくごうたいそんしょう)、親指側を痛める舟状骨骨折のどちらかのケースになりますが、両方が併発しているケースは初めてです。また舟状骨は破裂骨折をしており、2か所の亀裂を確認しています。この場合、癒合状態が後遺障害の程度の大きなポイントになります。

      

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最終更新:2019年11月25日

週末の相談会から~  橈骨神経麻痺にも種類、程度が・・・ 復習・・・腕・肘の後遺障害 8 橈骨神経麻痺

橈骨神経麻痺には手首や指の動きが全く障害されずに、しびれ感覚だけが残存する場合があります。これは橈骨神経麻痺でも特に橈骨神経浅枝麻痺(とうこつしんけいせんしまひ)が疑われます。

 

橈骨神経は浅枝深枝(後骨間神経)に分かれます。

 

◇橈骨神経の深枝(康橈骨神経)が損傷すれば、手首自体が動かなくなり、麻痺がひどいと下垂手となります。

 

◇浅枝は前腕で腕橈骨筋の深部を前外側に向かって走り、手首の手前、親指側の表皮に達します。

この神経は知覚枝であり、感覚を司るだけなので手関節、指の動きに影響はありません。

 

手の甲の感覚が無い?橈骨神経浅枝麻痺の可能性!後遺障害の立証を

 

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 「肩関節が半分以下しか挙がらなくなった」=10級10号のつもりが、なぜか14級!に・・・分析してみましょう。関節可動域制限の神髄へ接近します。  

段落

本 文

解 説

結 論

自賠法施行令別表第二第14級9号に該当するものと判断します。  結果は最初に書かれます。

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 待つこと2か月、Cさんのもとに自賠責保険の等級認定表が届きました。ずばり、昨日の解答です。では、実際の文章を見てみましょう。   <結 論>

 自賠法施行令別表第二第14級9号に該当するものと判断します。   <理 由>

 左肩腱板損傷に伴う左肩関節の機能障害につきましては、提出の画像上、棘上筋に高信号が認められますが、後遺障害診断書に記載されているような高度の可動域制限を生じるものと捉え難く、しかしながら疼痛や治療状況等も勘案すれば、将来においても回復が困難と見込まれる障害と捉えられることから、「局部に神経症状を残すもの」として別表第二第14級9号に該当するものと判断いたします。     これを見て、Cさんはひっくり返りました。「ええっ!α先生は10級が獲れるって言ったじゃないですか!なんで14級なんですか!」    Cさんに責められたα先生も面目を潰され、「おかしい!これは自賠責保険の横暴な判断です、異議申し立てしましょう!」と息巻いています。     このようなやり取りをよく目にします。しかし、一方では10級が認められる被害者さんもいるわけで・・・。  

ある被害者Dさん(43才 女性 主婦)のケース

 Dさんは買い物の帰り自転車で走行中、交差点で一時停止無視の自動車に衝突され、転倒、救急車で搬送されました。レントゲンを撮ったところ、鎖骨の遠位端(肩関節と接する部分)が折れていました。担当した医師は「整復するには手術が一番ですが、手術痕が残るでしょう。」と判断しました。しかし、傷を残したくないDさんの希望が強い為、医師はクラビクルバンドで固定し、適時XP(レントゲン)で骨の癒着具合を観察していきました。    その後、主治医は適切な治療とリハビリを続けましたが、Dさんは左腕が半分までしか挙がりません。右肩に比べ、見た目でわかる程、痩せて筋肉が落ちています。Dさんは9カ月リハビリを続けましたが、完全回復を諦めて症状固定することを考えていた矢先、秋葉事務所を紹介されました。    秋葉のアドバイスは・・・「可動域が2分の1になっただけで、簡単に10級は認めてくれませんよ。可動域制限は骨折や靭帯・軟骨損傷の部位・程度、そして骨折後の癒合具合の良し悪しや変形・転位の有無、靭帯損傷の回復具合から判断されます。それらの前提から矛盾のない、納得できる可動域制限なら認めます。    まず全XPを精査します。とくに、受傷直後と症状固定時期が重要ですが、すべての画像提出は必須です。さらに、いくつかの医証を補強します。MRI検査を追加し、肩腱板、肩鎖靭帯の損傷などを解明し、診断名として診断書に記載していただきます。そして筋萎縮の程度も追記、外貌写真も添付しましょう」と続けました。      肝心の関節可動域は屈曲100°、外転80° です。(内転、伸展、内旋、外旋も計測しました)    以上βさんの指示に従い、自賠責の申請を行いました。・・・結果は以下に全文掲載します。   

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ある被害者Cさん(49才 男性 会社員)のケース

 Cさんは原付バイクで通勤中、並走の右折車の巻き込みにより、左肩から転倒しました。レントゲンを撮ったところ、幸い骨折等はありませんでしたが、左肩と左膝の打撲でしばらく通院となりました

 リハビリを続けていますが、3か月経っても左肩の痛みが治まらず、左腕が半分位しか挙がりません。主治医に訴えたところ、「肩腱板を痛めているかもしれないねぇ・・・まぁリハビリを続けてみましょう」と困り顔です。

 そしてそのまま6か月目、相手の保険会社も「打撲・捻挫なんだから・・・そろそろ治りませんか?」と治療費の打ち切りを迫ってきました。しかし、相変わらず痛みが残っていて腕は挙がりません。

 Cさんは不安になり、ネットで検索した後遺障害申請専門を謳う行政書士α先生に相談しました。そのα先生は、「肩腱板を痛めているのならMRIを撮って器質的損傷を明らかにすることです」と力説し、先ほどの主治医の協力のもと、MRIを実施しました。

 結果、「T2にて棘上筋に高信号、棘上筋損傷」との所見を得ました。

 そして、肩関節の可動域 屈曲90° 外転85° の測定結果を診断書に記載しました。

 α行政書士は得意満面、「これで腱板損傷が立証できました。関節の可動域が2分の1以下に制限されていますので、〇級〇号が獲れますよ!」と予想しました。    さて皆さんも一緒に考えて下さい。Cさんは何級が取れたのでしょうか?    ヒント→ 肩の後遺障害 2    答えは明日(つづく)   

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 本日の病院同行は2件でした。いずれも鎖骨骨折の案件です。

 診断名に「鎖骨骨折」と記載されていますが、これだけでは不十分です。  前提として鎖骨骨折から注意すべき後遺障害4つを説明します。

1、疼痛の残存

2、変形癒合

3、肩関節可動域制限

4、上腕神経麻痺 続きを読む »

【病態】    肘関節は、上腕骨(じょうわんこつ)と2本の前腕骨(ぜんわんこつ)(橈骨(とうこつ)・尺骨(しゃっこつ)が組み合った関節で、上腕骨内側の滑車(かっしゃ)という部分と、尺骨の肘頭とカギ型の部分とが強くからみ合って、曲げ伸ばしの運動が行われています。この部分がはずれることを肘関節脱臼と呼びます。多くの場合、転倒した時に手をついて起こります。  尺骨が上腕骨に対して後ろ側に脱臼して(後方脱臼)、肘関節の屈伸ができなくなります。外側の橈骨頭だけがはずれる場合は、単に橈骨頭脱臼になります。    

※ 骨折と脱臼の合併

 肘の脱臼骨折は橈骨頭骨折を合併した肘関節脱臼と、腕尺関節の不安定性を生じる近位橈骨、尺骨骨折に大別されます。これらを含む骨折のパターンは以下の4つに分類できます。

1、橈骨頭骨折+肘関節後方脱臼

2、橈骨頭骨折+鉤状突起骨折+肘関節後方脱臼、いわゆるTerrible triad

3、前方への肘頭脱臼骨折、いわゆる経肘頭脱臼骨折

4、後方への肘関節脱臼骨折、Monteggia 骨折の最も近位のタイプ  

【治療】

 徒手整復が基本です。肘関節を軽く屈曲して、前腕を後方に押し下げながら牽引すると、通常は簡単に整復されます。整復後、肘関節を安定度に応じて1~3週間程度ギプス固定をします。その後固定を解除し関節の自動運動を行います。  整復されても、すぐに再脱臼を起こすような場合は、肘関節の広範囲な靭帯(じんたい)損傷が疑われます。この場合、動揺性を残す後遺障害となる可能性がありますので、靭帯の損傷具合によって、手術による靭帯縫合も検討します。

    ①           ②           ③   続きを読む »

■ 病態

 上腕骨遠位端骨折は肘周辺骨折の中で最も頻度の高いもので、転落や転倒により手をついた場合生じます。一般に診断は容易ですが、適切な治療を行わないと後遺障害を残すことがあります。  肘過伸展位(肘関節が反対側に曲がり過ぎて…)で手をつくと、骨皮質が薄く、また骨の断面積も小さい上腕骨の顆上部にストレスが集中し骨折を生じます。通常末梢骨片は伸展位をとり、程度が強い場合には後内側へ転位し、回旋を伴います。    顆上骨折、顆部骨折が多く、顆部は外顆骨折、内顆骨折に分かれます。 

■ ...

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■ 病態

 橈骨神経は正中(せいちゅう)・尺骨(しゃくこつ)神経と並び、腕を走る大きな神経のひとつです。橈骨神経のはたらきは大きく分けて3つです。  

1、肘関節を伸ばすこと(上腕三頭筋(じょうわんさんとうきん)の収縮による)    2、上腕二頭筋と協力して肘関節を収縮すること(腕橈骨筋(わんとうこつきん)の収縮による)    3、手首と手指を伸ばすことです。  

 感覚領域は手の背部で親指、人差し指とそれらの間の水かき部を支配しています。  橈骨神経麻痺は、上腕中央部で上腕骨のすぐ上を走っている神経が、骨と体の外の硬い異物との間で圧迫されることで起こります。

■ 症状    症状は、手指や手首が伸ばしにくく(下垂手)なり、しびれ感と感覚の鈍さが親指と人差し指の間にある水かき部に起こります。橈骨神経麻痺は圧迫性末梢神経障害(あっぱくせいまっしょうしんけいしょうがい)のなかでも代表的なものです。例えば、深酒をしたあとに腕枕をしたり、ベンチに腕を投げ出すような無理な姿勢をすることや、腕枕をすること(フライデーナイト症候群、ハネムーン症候群といったしゃれた俗称もあります)、これら上腕で神経が圧迫されることにより発症します。

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