先日の記事「橈骨神経浅枝麻痺」から質問を頂きました。

「メチコバールってよく聞くけど何?」 

お答えします。(それほど難しい薬ではありません)

 メチコバールは4種類あるビタミンB12の一種で、神経修復作用を持ち、活性型ビタミンB12と呼ばれています。ビタミンB12の中でも、体内で利用されやすく、末梢神経に直接作用します。末梢神経とは体の隅々に張り巡らされた神経で、文字通り指先など末端に伸びている神経です。感覚を伝える神経ですので、この神経が損傷すれば、当然痛みやしびれも伝えることになります。ビタミンB12は末梢神経に作用し、傷ついた部分を修復し、外傷後の神経症状のみならず、肩こりや腰痛のつらい痛みやしびれ感を緩和する効果があります。ビタミンB12は末梢神経の構成成分であるタンパク質やリン脂質を体内で生成する働きをするからです。 

 ちなみにメコバラミンとも呼び、製薬会社により表記名を違えています。現在どちらの名前でもジェネリック製品が出ており安価になっていますが、ただのビタミン剤の割には高価な薬です。交通事故の場合、有無を言わせず正規製品となります。しかし病気で受診の場合は「ジェネリック薬品で」と医師に伝えて下さい。

 メチコバールは末梢神経のしびれ、痛み、麻痺などに使用される薬剤で、たとえば、顔面神経麻痺、坐骨神経痛、大腿神経痛、上肢、下肢のしびれ痛み、などによく処方されます。しかし交通事故のむち打ちで手指がしびれる場合、骨折後の神経症状に対し、劇的に効いた話は聞きません。もちろん服用自体は良いと思いますが、しびれや麻痺の程度がひどい場合、手術(神経縫合術、神経移植術、神経剥離術・・・文字通り切れた神経をつないだり、他から移植してつないだり、周辺を切って広げたりする手術)の対象です。

 手術には踏み切れないが、事故後しびれや異常感覚が続く方はほとんどが保存療法と併せて処方されることが多いです。ビタミン剤なので副作用も少ないのかと思います。

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最終更新:2019年11月25日

週末の相談会から~  橈骨神経麻痺にも種類、程度が・・・ 復習・・・腕・肘の後遺障害 8 橈骨神経麻痺

橈骨神経麻痺には手首や指の動きが全く障害されずに、しびれ感覚だけが残存する場合があります。これは橈骨神経麻痺でも特に橈骨神経浅枝麻痺(とうこつしんけいせんしまひ)が疑われます。

 

橈骨神経は浅枝深枝(後骨間神経)に分かれます。

 

◇橈骨神経の深枝(康橈骨神経)が損傷すれば、手首自体が動かなくなり、麻痺がひどいと下垂手となります。

 

◇浅枝は前腕で腕橈骨筋の深部を前外側に向かって走り、手首の手前、親指側の表皮に達します。

この神経は知覚枝であり、感覚を司るだけなので手関節、指の動きに影響はありません。

 

手の甲の感覚が無い?橈骨神経浅枝麻痺の可能性!後遺障害の立証を

 

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 先日の弁護士セミナーにて、S先生の講義から得た事がたくさんありました。研修資料をもとに、いくつかの論点を語っていきたいと思います。

 まず、MTBIと高次脳機能障害の区別についてです。これは以前も取り上げてきたテーマですが、数千件の高次脳機能障害の評価とMTBI患者の診断を行ってきたS医師の解説で、ようやく一定の理解を得ました。

 MTBIは外傷軽度脳損傷の略で、WHOの基準が良く知られています。これをベースに行政側が障害認定をする上で高次脳機能障害と区別しています。    詳しくは 👉 高次脳機能障害の立証 13 <新認定システム> 6    言葉通り、外傷による軽度の脳損傷(と推測される)患者は、現実に多くの症例が報告されています。臨床上の基準であるMTBIは、PTSDや高次脳機能障害の症状を含み、症状の類別はかなり広範囲です。問題はこの診断名が、補償制度や労災、自賠責などの対象外のものとする、行政側の定義と混同することにあります。臨床診断からの「広義のMTBI」と、補償制度の認定基準外と位置づける「狭義のMTBI」、このダブルスタンダードをS先生はご指摘されました。これは後日詳しく解説します。    ・・・S先生は、まずMTBIの症状について説明下さいました。以前、S先生の診断に一度立会ったことがります。患者に対し専門用語を控え、例え話や道具を使い、とてもわかりやすいものでした。    今回の研修では「あしたのジョー」を引用して下さいました。S先生へ敬意を込めて、秋葉なりに追補、まとめました。  

まず「あしたのジョー」を30秒で説明

 1968年連載のボクシング漫画。テレビアニメ放映、アニメ映画化。最近は山下智久さんの実写版も公開されました。

 主人公、矢吹丈という不良少年が南千住 泪橋にふらりと現れます。そこで元ボクサーの丹下段平に見いだされ、ボクシングの指導を受けます。

 その後、少年鑑別所を経てプロボクサーとなり、鑑別所で出会ったボクサー力石 徹とリングで再戦します。しかし試合直後、力石はジョーのパンチがもとで死亡してしまいます。そのショックでスランプに陥るもののカーロス・リベラとの戦いで復活します。

 その後も数々の強敵と戦い、自身もパンチドランカーとなりながら、ついに世界チャンピオン ホセ・メンドーサと対戦します・・・  

強敵カーロス・リベラ戦、そして廃人となったカーロス

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 今日は病院4か所同行、かなりタイトな移動スケジュールでした。今日の医師面談から感じたことを少し。文例研究シリーズは明日から再開します。

 メディカルコーディネーターの業務は医師に診断書・検査を依頼し、医証の収集を行い、障害・損害の立証を実現することです。しかしこれだけではありません。最も重要な事が含有されています。それは障害を残さず、完治を目指すことです。それはもちろん医師の仕事であって、私達ができることは限定されます。しかし稀に立証作業を通じて、医師が気付かなかった病変部をみつけることがあります。「〇〇症の疑い」から確定診断へ、そして医師の適切な治療へつなげます。また、場合によっては紹介状を依頼し、専門医への受診に誘導することもあります。これらの業務も一種の「連携」であると言えます。  昨日の面談の2件は改善が進まない症状について、改善の見込みや時期について医師と打ち合わせを行いました。そして想定できる障害等級と症状固定時期の検討を行い、等級の上下が読めない以上、症状固定時期を延ばして治すことに舵を切りました。早期の症状固定によるメリット、デメリットの観点も必要ですが、それはあくまで完治と言う究極の目標に付随されるべきことです。  昨日の医師は常に患者側の声に耳を傾け、このような検討にも心を砕いて下さいます。大変ありがたく思っております。 

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 脳に損傷を受けたり、頭蓋底骨折(脳の下とあごの骨の間にある薄い骨)があると、視覚、嗅覚、味覚、聴覚などに障害を起こすケースがあります。脳そのものの損傷の場合、それらの感覚を認識する「回路の故障」です。頭蓋底骨折の場合は、その周辺部において、脳から通じる神経が切れたり、損傷を受け、神経伝達が絶たれる事を原因とします。これは「ケーブルの断線」ですね。  いずれも眼科、耳鼻咽喉科にて受診し検査をします。回路の故障かケーブルの断線か、原因の特定は脳外科ですが、匂いがしない、味がわからないといった障害の有無、程度の検査はそれぞれの専門科になります。

味覚検査

1、電気味覚検査

 まず首にアース極線の首輪をはめます。続いて舌の前後左右の表面に電極を当て、微弱な電気を流します。ピリッときたら手持ちのボタンを押します。「ピーッ」と鳴ります。このように舌の神経が生きているか否かを判別します。  こっちまでピリッとしそうです。最初は恐る恐る検査していた患者も徐々に慣れてきます。所要15分程度でしょうか。

              

2、ろ紙ディスク法

 ピンセットの先の脱脂綿?に薬をつけ、順番に舌に当てていきます。そこで感じた味を申告します。これも舌の左右に分けて判定します。味を変えるたび、頻繁にうがいをします。

 甘味、塩味、酸味、苦味の4種の識別です。回答には無味も含まれます。素朴な疑問として四川料理の好きな私は「辛みはないのですか?」と検査中の看護師に質問しましたが、「辛みはないです」と冷たくあしらわれました。

 検査表はカラーで色を塗ったものや、下図のようなグラフを用います。

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 昨日は都内の某耳鼻科へ。脳の障害を原因する嗅覚、味覚の異常を訴える被害者さんをお連れしました。

 医師から検査の立会についてご許可を頂きました。私は出来るだけ検査に立会うようにしています。まさに被害者と一心同体で進める立証作業です。しかしそれだけではありません。実際に体験、見学すると障害への理解がぐっと深まります。書物だけの知識ではぼんやりしたイメージしか持てませんが、見たもの、体験したものは段違いです。

嗅覚

1、T&Tオルファクトメーター

 甘い匂い、焦げた匂い、腐敗臭 等々・・・5種類の匂いを試験管のような筒の先につけて、それを嗅いでもらい、濃淡0~5まで段階評価します。特に腐敗臭は同じ部屋にいても匂ってきます。この強烈な匂いが匂わないの?・・・嗅覚が完全脱出した被害者さんもいました。時間はおよそ20分程度です。           

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本日の病院同行は医師面談かないませんでした。この病院では2度目の空振りです。受付では別に面談時間(予約)を取ってほしいとの回答でした。前回は医師から「症状固定時には会います」との回答を得ていたので、少々がっかりです。気を取り直して面談予約したいと思います。三顧の礼など苦になりません。

 前提は病院側の体制、事情を尊重することです。毎日多くの患者を担当する医師にとって1分1秒も無駄にできません。後遺障害や保険会社や裁判など治療後の事など迷惑以外の何物でもありません。患者にとっては今後の治療費の確保にも非常に重要な問題なのですが、医師にとって目の前の治療の必要な患者さんが優先なのです。

 このような医療側の常識を認識した上でメディカルコーディネーターの仕事を進めていかねばならないのです。軽々しく「医師面談は簡単ですよ」などと言う法律家さんは毎回良い医師が続いているだけです。多くの経験を積めばわかることですが・・・。

① まったく面談のかなわない医師、およそ40人に1人です(昨年の統計)。

  ・・・だからほとんど面談OK=97.5%の面談率です。

② さらに面談できるが診断書や紹介状は面倒、検査等も協力しない、とにかく高圧的な医師は10人に1人です(同統計)

  ・・・したがって87.5%まではなんとか協力を取り付けることができます。

③ さらに後遺障害診断書について無関心、てきとう・不正確に書く医師は5人に1人(同統計)

  ・・・したがって67.5%までは私の仕事によって、正確な診断書へ落ち着かせます。

  これらを合計すると「32.5%の医師には大変苦労する」と分析できます。

 ではその32.5%に当たったら、「選んだ医師が悪かったので諦めましょう」と言えますか?

 その被害者は救えないのしょうか? 

 この32.5%がメディカルコーディネーターにとって勝負なのです!

 なんとか医師と面談に漕ぎ着け、後遺障害立証にご理解を頂き、しかるべき検査、診断書の作成まで協力を仰ぐ、そして全くダメなら転院させる。

 67.5%は私ではなくても「そこそこの者」が介入することで助けることができる被害者です。しかし被害者から報酬を頂くこと、それは100%が要求されるのです。絶望的な状況下にある32.5%の被害者を救う、まさに被害者の運命を変える仕事です。

 現在仲間の行政書士、メディカルコーディネーターを目指す人達に「医師100人面談」を運動・推奨しています。それだけ面談すればどんな医師に会おうとおのずと対処方法を身に着け、優良・不良の病院・医師の判別が進み、医療ネットワークが構築されていくからです。    どんな資格を持とうと、どんなに机上の学習を積んでも、知識・情報が豊富なホームページを作成しても、それだけではメディカルコーディネーターとして一人前にはなりません。経験を積まねば実践の役には立ちません、つまり32.5%を救えません。私たち実務家は単に交通事故・後遺障害に詳しい「学者」や「先生」を目指しているのではないのです。

 以上、年間100人の医師と会い、200件の病院同行をした上での意見でした。

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 では、肝心の後遺障害等級は?

 咀嚼、言語の機能障害を準用します。

咀嚼・言語の機能障害

1 級 2 号

咀嚼および言語の機能を廃したもの、

咀嚼機能を廃したもの? 流動食以外は摂取出来ないもの、

3 級 2 号

咀嚼または言語の機能を廃したもの、

言語の機能を廃したもの?  4 種の語音の内、 3 種以上の発音不能のもの、

4 級 2 号

咀嚼および言語の機能に著しい障害を残すもの、

咀嚼機能に著しい障害を残すもの?  粥食又はこれに準ずる程度の飲食物以外は摂取できないもの、

6 級 2 号

咀嚼または言語の機能に著しい障害を残すもの、

言語の機能に著しい障害を残すもの?  4 種の語音の内、 2 種の発音不能のもの又は綴音機能に障害があるため、言語のみを用いては意思を疎通することができないもの、

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食事場面を見ていても判断しにくい嚥下障害の検査法について

1、スクリーニング検査  口腔内を湿らせ、唾液を嚥下させ30秒間で可能な空嚥下の回数を評価する反復唾液嚥下テストを行い、30秒間で2回以下を異常とする。

2、ビデオ嚥下造影検査(VF)  バリウムなどの造影剤を含んだ模擬食品をX線透視下に嚥下させて透視像をビデオで録画し、 誤嚥があるかどうかのチェックと共に口腔・咽頭・食道の動きを観察する

3、単純X線撮影  造影剤を嚥下させる前後で、咽頭・喉頭部の単純X線撮影を行い比較して誤嚥の有無を判定する。

4、嚥下内視鏡検査(VE)  鼻咽腔内視鏡で咽喉頭粘膜の状態や声門閉鎖機能、分泌物の貯留・気道への流入の有無を確認し嚥下機能を評価する。

 この中で障害の立証上、最も有用なのは「 嚥下造影 ( VF ) 」です。

VF は、X 線透視下で造影剤を飲み込んでもらい、口・のどの動き、構造の異常、食べ物の動きを評価する方法です。 VF の目的・特徴は、診断的 VF ...

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■ 嚥下障害とは?

聞き慣れない言葉ですが「えんげ障害」と呼びます。これは食べ物や飲み物を普通に呑み込めなくなる障害です。飲み込む力が弱まったり、食道と気管を分ける弁の働きが悪くなったりする・・・むせたり、咳がでる、固い物が食べられないなどの症状に悩まされます。原因は大きく分けて3つあり、それぞれ病名も多肢に渡ります。

 今週、嚥下障害の造影検査についてお聞きすべく専門医に面談します。したがって今日・明日の日誌は予習です。  

■嚥下障害の原因

1、 質的原因・・・食物の通路の構造に問題があり、通過を妨げている。

・舌炎,口内炎,歯槽膿漏

・扁桃炎,扁桃周囲膿瘍・咽頭炎,喉頭炎

・頭頸部腫瘍(口腔・舌癌,上顎癌,咽頭癌)

・食道炎,潰瘍

・食道の蛇行,変形,狭窄

・腫瘍

・食道裂孔ヘルニアなど

2、機能的原因・・・食物の通路の動きに問題があり、上手く送り込むことができない。

・脳血管障害、脳腫瘍、頭部外傷

・パーキンソン病,線条体黒質変性症,進行性核上性麻痺など

・脊髄小脳変性症

・筋萎縮性側索硬化症,進行性球脊髄性筋萎縮症

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  昨日は高次脳機能障害が疑われる被害者の病院同行でした。主治医との面談が目的でしたが、急患の為、診断は別の医師が対応し、面談はかないませんでした。

  通常、主治医と面談し、今後の検査、書類について協力を仰ぎます。そして多くの場合、専門的な検査設備や人材がいないので他院への紹介状を頂くことになります。治療のための検査は行うが、障害の立証についての検査は消極的です。検査と治療はまったく別物と考えている病院がほとんどです。特に脳神経外科部門ではそれが顕著です。日々、くも膜下出血や脳梗塞で運ばれてくる患者の対応に1分1秒を争っています。脳外科の医師は超多忙なのです。当然ながら医師も一定の治療を終えた患者に対して興味はなくなります。高次脳機能障害が見落とされやすい障害である理由がよくわかります。この環境で障害を立証するのですから、必要な検査と専門医の診断、それらを落とし込んだ診断書を完璧にそろえるのは難しい。単に病院同行して書類作成を代行するだけでは済まないことが多いのです。高次脳機能障害の評価が可能な病院を確保する必要があること、この仕事に携わっている者なら常識です。

  HPを検索しますと、様々な専門家が高次脳機能障害について積極的な取り組みを喧伝してます。美辞麗句に惑わされることなく選ぶコツ・・・検査・評価のできる病院に誘致できるか否か?これを依頼する前にしっかり確認すべきです。

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 本日の病院同行は2件でした。いずれも鎖骨骨折の案件です。

 診断名に「鎖骨骨折」と記載されていますが、これだけでは不十分です。  前提として鎖骨骨折から注意すべき後遺障害4つを説明します。

1、疼痛の残存

2、変形癒合

3、肩関節可動域制限

4、上腕神経麻痺 続きを読む »

 弁護士からもよく聞きます・・・「うちも病院同行しています」、「医師面談をしています」、「後遺障害の立証に長けています」・・・

 是非言葉通り頑張ってほしいと思います。

 やはり交通事故における損害賠償の肝は、何と言っても後遺障害の等級認定です。

 昨日は立証作業に乗り出した行政書士の「転院ミッション」を披露しました。数は少ないですが昨日のような「無責任スーダラ型医師」に出くわすこともあります。この医師にかかればどんな優秀な弁護士・行政書士であろうと、経験を積んだメディカルコーディネーターであろうと医証獲得は不可能です。この場合、最後の手段として「転院」となります。しかし、できれば転院させず現状の病院、医師と協力して診断書を仕上げるに越したことはありません。

 つまり医療立証や医証獲得に関するミッションは一つではなく、いくつもパターンが存在します。

A 医師面談を数回重ね、医師の信頼を得て、後遺障害診断に対して協力を取り付ける。

B 治療に必ずしも必要のない検査であっても、後遺障害の立証のために実施していただく。

C その検査設備がなければ、他院への紹介状を書いていただく。

D セカンドオピニオン(他院にて診断を受ける)のご理解を頂き、別院の専門医に診断書を書いていただく。

  このように転院までさせずとも、かかっている主治医の協力を取り付け、必要な検査と理想的な後遺障害診断に牽引していくことがメディカルコーディネーターの仕事です。  医師も千差万別、色々な主義、性格をもった先生が存在します。どんな医師に出くわしても、瞬時に医師のタイプを判別し、どのようなパターンで進めていくか判断します。つまりメディカルコーディネーターの腕、センスが試されます。そしてなにより経験です。私は年間100人の医師と面談し、200回近く病院同行をしています。仲間の行政書士、メディカルコーディネーターも年間100件以上の病院同行を励行しています。

 この経験数と活動量だから言えます。患者の治療に多忙な医師に対し、余分な時間を取って、検査・診断していただき、診断書を書いていただく作業、これは簡単ではないのです。

稀に後遺障害に対し深い理解を持つ医師にあたります。これは文字通り「当たり!」です。この医師なら誰でも後遺障害の立証はできます。しかし残念ながらこのタイプの医師はごく少数、そして理解はあっても良い医師ほど多忙、患者の治療が優先なのです。

 年間100人医師面談をしている私が「この仕事は難しい・・」と毎回苦戦しているのですよ!  「病院同行を当たり前の業務としているか」、「医師面談を年間100件苦も無くできるのか」、「理想的な医証の獲得ができるのか」、「医者がダメな場合、他院に誘致できるのか」そして「医療ネットワークを持っているのか?」

 これらが交通事故解決力を示す新基準ではないでしょうか。逆に言えば、それができないのなら少なくとも「後遺障害の専門家」は名乗れないはずです。

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 たくさんの交通事故相談を頂きますが、質問の内容は30程度のパターンに分けることができます。皆同じような悩みを抱えています。それらに対し、的確・正確・迅速な回答を心がけています。しかし法律に照らした回答、言葉による指示ではらちが明かない問題もあります。その一つに「通院中の病院がよく見てくれない。検査をしてくれない。医師の診断に不安がある」等、治療先にまつわることが挙げられます。

 まず基本として患者も医師を見極める目を持たねばなりません。そうは言っても一体どこの病院が自身の傷病に精通しているか?きちんと診てくれる医師は?転院の仕方は?など、なかなか踏み越えられない壁があるものです。

 以前、ある弁護士事務所から、その事務所への依頼人の後遺障害について助言を求められました。それは・・・

1、何級の後遺障害が想定されるか?

2、そのためにどのような検査が必要か?

3、どのような事を診断書に書いてもらうか?    私たちにとっては極めてオーソドックスな質問です。対して、   >1、変形なら12級、偽関節ならそれ以上→「XPを見せて」、 可動域制限なら10級か12級、「可動域を測ってみましょう」

>2、周辺靭帯の損傷も明らかにしたいのでMRIも撮りましょう。神経麻痺があるなら「神経伝達速度検査」を。

>3、自覚症状と医師の診断、そして上記の検査を落とし込みます。3つ揃って等級認定です。

 このように回答します。そして指示通りに弁護士が医師へのアプローチを始めました。結果は?   医師:「そんな検査は必要ないよ、今更何で検査が必要なの。それに骨は癒着し始めているよ」  と一蹴されました。    ついに弁護士先生自ら医師面談に乗り込みました。しかし同じ対応です。   続きを読む »

  交通事故被害者業務を行う、行政書士、メディカルコーディネーターの仲間が全国に11名おります。日頃、お互い経験則の共有や情報交換を行い、業務に役立てています。全身2千か所に及ぶ交通事故外傷を経験するには、一人の、一事務所の業務では到底追いつきません。また多くの経験則を持ったベテランの指導が絶対に必要です。大勢の被害者、相談者を前に「私には未経験の外傷なので詳しい先生に聞いてみます」ときっぱり答えることができます。世間にはあまたの「専門家」「先生」が事故相談の宣伝をしていますが、一体誰の指導を受けて、どれだけの経験を積んで専門家になったのか気になるところです。多くの相談者から「〇〇弁護士、〇〇行政書士に質問したけど、よくわからない返事だった」と聞くことがあります。これはつまりその先生がよくわかってない証左です。誠実に「わかりません」と答えない事で被害者を迷わせてしまっているのです。 この点において、この道第一人者の指導と、士業、医療のネットワークを全国に持つ私たちのグループを誇りたいと思います、

  さて、神戸の夜では懇親会中でも「排尿障害の検査で・・・・・・括約筋不全で・・・・・審査は・・・・」熱く語る私、対してドン引きのホステスさん。いつでもどんな場所でも交通事故外傷の話題ばかり・・・少々呆れられました。   何と言っても先日ウロダイナミクス検査の成果を得て、得意満面だったもので。(皆さんごめんね)    続きを読む »

 本日同行した治療先の医師のことです。

 被害者さんのケガは以下の通り・・・

 手首・・・橈骨(遠位端)、尺骨(骨幹部、開放骨折)の骨折

 足首・・・脛骨(遠位端)、腓骨(骨幹部、粉砕骨折)の骨折

 これだけ重度の骨折となると、治療も長期間となり、後遺障害を残すことは必至です。ドクターはあらゆる治療手段を講じて回復に努めます。

 一方、立証を生業とする者にとって、これからどのような後遺障害が想定されて、何を指示をすべきでしょうか?上記の骨折の部位、形態から推察できる障害と必要な検査について、弁護士先生、行政書士先生も一緒に考えて下さい。

 私たち立証側の立場としては、今のうちにすべての後遺障害が見込まれる所見を洗い出し、治療と並行して随時検査をお願いしたいところです。しかし医師はあくまで「治すため」の検査しかしません。「(障害の原因としての)証拠を残すための検査」とは相容れない事もあります。今後、恐縮しながらもいくつか検査のお願いをしていかなくてはなりません。しかし昨日のドクターは、以下のような説明、指示をしました。

① 「手指に弱冠のしびれが残っていますので神経の状態を確認しましょう。これから神経伝達速度検査をします。検査結果によっては神経の回復する治療も加えていきます。」

② 「足首は脛骨、腓骨の骨折があるので、両方の骨の間隔が開いてしまうこと、距骨が曲がってしまうこと、周辺の靭帯や軟骨の損傷も心配です。来週MRIも撮ってみましょう。」

③ 「それらの検査の結果、手術か保存療法か選択をしましょう」   神経麻痺を確認するための神経伝達速度検査

 橈骨神経麻痺、正中神経麻痺、尺骨神経麻痺等・・・実際に患者さんは親指~中指の痺れ、感覚異常を訴えています。手指の神経麻痺は別系列での障害等級追加、もしくは可動域制限の根拠になります。                   ★ 靭続きを読む »

 早朝に病院同行、しかも仙台(から二つ目の駅)なので、当日の新幹線では間に合わず、前日の日曜から現地入りで泊まりでした。  この案件はすでに等級が確定し、弁護士に引き継いだ案件です。しかし自賠責の認定内容からさらに上位等級を目指しています。それは諦めきれない事情があるからです。まだ進行中の為詳しくは言えませんが少し語ります。

 自賠や労災での審査は平均的、画一的な審査基準なので「個別、特殊な事情」には対応しきれないケースが起きることがあります。例えば骨折癒合後の関節拘縮がその一つです。

 骨折後、骨がくっつく間、骨折部が肘や膝であった場合、しばらくの間は固定の為に関節を曲げることができません。固定が長期となれば、長い間曲げない関節は固まって曲がらなくなります。したがって引き続き回復のためのリハビリが必須となります。

 ここで順調に関節の可動が回復すれば問題はないのですが、関節部分の骨、顆部とよびますが、ここが骨折した場合、関節可動の完全回復は難しくなります。それが高齢者や持病をもつ患者ではリハビリの制限からより深刻となります。また今回のケースでは複数の受傷が相まって可動制限がおきました。これは現状の審査基準では判断不能なのです。

 印象としては自賠責調査事務所は骨折、靭帯損傷の程度から関節可動域の回復具合の目安を想定しているようです。例えば健側(ケガをしていない方の腕、足)に比べ患側(ケガをした方の腕、足)が2分の1以下の可動制限となり、「10級だ!」の申請に付しても、「この程度の損傷ではそんなに曲がらなくならないでしょ」と12級~14級におとしてきます。

※ この判断は骨折より靭帯損傷の場合によく見られます。確かに靭帯損傷が僅かの場合、自然治癒し、可動制限も深刻とはなりません。逆に靭帯が完全に断裂したとなれば手術で回復を図ります。そして後遺障害は可動域制限ではなく異常可動=動揺関節となるはずです。     もちろん本人のリハビリ不足=治療の努力不足は責められるべきと思います。しかしそれを自己の責任ではない高齢者や持病者、特殊なケースに当てはめることができるでしょうか?「個別の事情」とはそのことです。

 だから諦めないのです!無報酬、手弁当で新幹線に乗ります。私の仕事は利益の追求だけではなく、信念・執念で動く事もあるのです!・・・まぁ、たまにあります。  

 おかげで関東で見損なった桜満開を東北にて満喫。プチ出張はいいもんです。

  今回のお宿 震災の影響で少し傾いている?  昔ながらの宿です。ビジネスホテルよりこの風情に萌え~です。ご主人、おかみさんには大変親切にしていただきました。ありがとうございました。

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 前日の基本となる3つの測定に加え、症状によってさらに特殊な4つの測定を行うことがあります。

 実施する測定項目は専門医の診断により選定します。「専門医+ウロダイナミクス検査の設備」のコンビを備えた病院の確保がなにより重要です。  

膀胱内圧・直腸内圧・尿流同時測定

・膀胱内圧測定に圧を測定するトランスジューサー(電位計測装置)の数を増やすことで、より統合的な尿流動態検査が可能となります。

・排尿筋圧=膀胱内圧-腹圧(直腸内圧)、排尿筋圧を算出することで、(腹圧の影響を除いた)膀胱壁による圧力のみが明らかになります。これにより、咳、体動、いきみ、手洗いなどで誘発される膀胱の不随意収縮を正確に認識し、排尿筋過活動を同定することが可能です。  また、排尿困難があり、いきんで排尿している場合には、排尿時の膀胱内圧の上昇が腹圧による見かけ上のものか、あるいは排尿筋自体が収縮しているのかを鑑別できます。

・外尿道括約筋筋電図を同時に行えば、排尿筋・括約筋協調不全(DSD)の診断ができます。

・ビデオ・尿流動態検査:尿流動態の検査とともに、膀胱尿道造影のX線透視画像を同一画面上に表示・記録する。排尿筋・括約筋協調不全(DSD)の診断ができます。

  ⑤ 漏出時圧(leak point pressure)測定

・膀胱内圧・直腸内圧・尿流同時測定時に排尿筋収縮または腹圧上昇のいずれもない状態で尿失禁が起こった時の圧。腹圧や咳を負荷して施行することもあります(腹圧下漏出時圧)。

・排尿路の閉鎖機能の評価に有効となります。

  ⑥ 尿道内圧(urethral pressure)測定

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 ウロダイナミクス検査とは、排尿時の膀胱(膀胱内圧・排尿筋圧測定)と尿道(尿道括約筋筋電図)の働きを同時に記録することにより、排尿障害のタイプ(病型)を診断する検査です。従来の膀胱内圧検査を含み、様々な病態を計測することが可能です。

 蓄尿から排尿終了までの間の膀胱内圧、腹圧(直腸内圧で測定)、排尿筋圧、外尿道括約筋活動、尿流などを測定し、排尿障害の部位や程度を総合的に診断します。その7つの測定項目を順番に解説します。

  ① 尿流測定(uroflowmetry;UFM)

・排出障害の有無と1回排出量、最大尿流率がわかる。最大尿流率が15mL/秒以下で排尿困難とされます。

・尿流率は年齢、性、排尿量の因子に左右されることを念頭に置きます。男女とも、排尿障害の有無に関わりなく、高齢になるに従って尿流率は低下し、また、一般に女性のほうが男性より尿流率がやや高くなります。

膀胱内圧測定(cystometrography;CMG)

・経尿道的にダブルルーメンカテーテルを挿入し、一定の速度で膀胱内へ注水し、蓄尿時排尿終了までの膀胱内圧を測定します。

・尿意の程度、最大膀胱容量、排尿筋過活動(不随意収縮)の有無や程度を観察します。

・患者が最大尿意を訴えても膀胱内圧が低く保たれていれば、膀胱内へ注水を続けて排尿筋過活動が起こるか確認します。

外尿道括約筋筋電図(electromyography;EMG)

・針電極を尿道括約筋に直接刺入、もしくは表面電極を肛門括約筋あるいは会陰に設置し、付近の筋肉の蓄尿時および排尿時の電位を測定します。

(引用文献) 「下部尿路機能ポケットマニュアル」 信州大学医学部泌尿器科助教授 井川 靖彦 先生 石塚 修 先生 著

明日に続きます。

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 先日の弁護士研修会の最終日、「排尿障害の検査」について20分ほど講義をしました。そのレジュメから転載します。    排尿・排便障害は、腰椎圧迫骨折や仙骨骨折の場合に発症するケースが多く、脊髄の腰~お尻の部分=馬尾神経が病原となります。この神経に圧迫、損傷があると下肢のしびれ、歩行障害と並び排尿・排便に異常が起きます。稀に頚髄(首の辺りの脊髄)損傷でも発症します。このように腰椎捻挫、むち打ちを原因として排尿・排便障害に悩まされる被害者さんを多く経験しています。

 事故後に「おしっこが出辛くなった、回数が異常に増えた」被害者さんが行う検査とは・・まずは、膀胱内圧検査です。さらに、原因を追究すべく、より専門的な検査としてウロダイナミクス検査があります。しかし、ウロダイナミクス検査は、普通の泌尿器科では設備がありません。解読・診断できる専門医も限られます。何より、紹介状を書いてまで他院へなど、積極的に検査を行いません。「おしっこが出ないからここ(病院)にきたんでしょ?」=「今更、出ないことを検査してどうするの?」・・・このような受け取り方なので、検査は限定的な場合しか行いません。    しかし!    お医者さんは患者について「おしっこがでない」事を疑いませんが、保険会社、自賠責・調査事務所や裁判官は証拠を出さなければ信じてくれません。立証上、検査は必要なのです。     さらに!検査の必要性はそれだけではありません!!  昨年お会いした泌尿器科の専門医の考えは違っています。排尿障害といっても内圧の不調によるものか、括約筋の不全を原因とするのか原因は一つではなく、それに見合った治療が必要であると指導しています。

 例えば、カテーテル(導尿パイプ)を使用している閉尿(おしっこの出が悪い)の患者さんに対し、お腹を押して排尿を促すような指導が実際に行われています。この場合、閉尿の原因が括約筋不全であるなら逆効果で、さらに増悪する危険性があるそうです。数十年前の知識で治療をしている泌尿器科医も多く、間違った治療と相まって検査の重要性の認識が希薄なのです。

 現在、膀胱の内圧を計測するだけではなく、いくつかの検査を総合した「ウロダイナミクス検査」が最先端です。しかし町の泌尿器科の多くは設備がありません。大学病院クラスの検査先の確保が必要です。

 明日から「ウロダイナミクス検査」を解説します。研修では詳細まで踏み込む時間がなかったので、ここで責任回答させていただきます。

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