いよいよ、人身傷害特約をめぐる争いの世界に突入です。覚悟してついて来て下さい。

   交通事故でけがをした場合、事故相手(相手保険会社)だけではなく、自身も人身傷害特約に加入していれば、双方に請求することが可能です。  まず、被害者が先に自らが加入している保険会社(以後、人傷社とします)に人身傷害特約を請求・取得し、その後に裁判等で賠償金を取った場合を想定して下さい。その賠償金は加害者が任意保険に入っていればその保険会社(以後、賠償社とします)が支払うことになります。この場合、先に人身傷害を支払った人傷社がその賠償金からすでに払った人身傷害保険金をどれだけ求償できるのか?を争った裁判です。

 人傷社は「既に支払った全額を返して!」と「絶対説」を主張し、被害者は「過失関係なく全額補償するのが人身傷害特約でしょ?」と主張しました。そして、裁判の結果、「被害者の賠償金全額を超えない範囲で求償しなさい」と、人傷社の全額求償を否定しました。これが「差額説」です。

 これから続けます人身傷害約款の問題点に触れる前に、この「絶対説」「差額説」の理解は避けて通れません。難しい話なので裁判の判旨を読んでも弁護士しか理解できないでしょう。今日・明日は人身傷害の「絶対説」vs「差額説」を世界一易しく解説します。これは昨年の「弁護士研修」の講義の内容からです。  

「絶対説」では全額補償とならない?

   矢口さんは自動車で走行中、交差点で出合頭の衝突事故でケガをしました。腕を骨折し、半年後、後遺障害12級の認定を受けました。過失割合については相手と事故状況が食い違い、争っています。治療費は相手のTUG損保(賠償社)から支払われていましたが、後遺障害の話となると険悪となってしまい、話し合いが進みません。20140507 そこで矢口さんが加入している加護火災(人傷社)の人身傷害特約から、先に保険金500万円を受け取りました。

保険会社 加護続きを読む »

 支払い基準は約款の『第〇条 損害額の決定』の条項を確認します。ここに払うべき保険金の計算根拠を示してあります。具体的な計算式は別条項の『支払保険金の計算』と『別紙 算定表』『別表』に書かれています。この計算式で計算される金額は、概ね対人賠償の保険会社基準と同程度の金額になります。この算定金額が裁判基準に比べ、あまりにも低いのが問題なのです。何故、低くなってしまうのか? 理由を以下、計算方式から説明します。  

1、治療費や医療関係の実費は実際にかかった費用となります。

2、同じく休業損害も実費です。サラリーマンであれば源泉徴収票の数字をそのまま採用します。しかし、自営業の方の算定では実収入の認定額が問題となります。また、双方、休業の対象日の決定も約款上、保険会社が決めることになります。

3、慰謝料は任意保険基準でぴったり金額が決まっています。

4、逸失利益、介護料については計算式が示してあるものの、根拠となる年収額や労働能力喪失率と喪失年数は保険会社が決めます。ここで保険会社の担当者の判断や会社の運用基準が関与します。結果として、保険会社の都合でいかようにでも計算できることになります。  

 つまり、保険会社の基準が裁判等で決まった数字と比べて著しく低くなる理由は、上記2~4の計算上、保険会社が根拠となる数字を決めるからです。それが被害者の被害の実態に即していないことが多く、特に慰謝料は金額が約款に明記されており、見ての通り一律に低いのです。  

books5 例として、後遺障害慰謝料:14級は・・・

 赤い本(≒裁判基準の相場)⇒ 110万円 に対し、

 人身傷害特約 ⇒ 50万円 (損J)  損Jに限らず、各社、ほぼ半額以下です。 続きを読む »

 さて、人身傷害特約の約款改定も触れないわけにはいきません。東京海上の発売から16年、もはや個人契約自動車保険には80%以上付帯されています。発売当初、「夢の実額補償」「過失があっても全額補償」と謳われた保険でした。

   特約について詳しくは ⇒ 人身傷害特約のおさらい

   しかし、実額補償と言っても日本では保険会社の計算する賠償金と裁判の相場ではものすごい開きがあったので、様々な矛盾、問題が噴出しました。

 その一つは、  

「人身傷害はあらかじめ保険会社が支払い基準を定めた傷害保険である」  sanmaつまり保険定食?

 これに対して、「人身傷害特約に裁判基準の賠償金を請求できないか?」

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 それでは、無保険車傷害特約の支払い基準が、人身傷害特約のように「保険会社の基準が絶対!」とせず、裁判の判決・和解の額を認める余地があるのか、つまり元に戻ったのかを確認しましょう。(わかり易くするため、加筆、修正、省略を加えています)  

無保険車傷害特約

第8条(損害額の決定)

(1)損害額は、被保険者が第2章(保険金を支払う場合)(1)のいずれかに該当した場合の、次の区分(①~③)ごとの、それぞれ普通保険約款別表3に定める損害額算定基準に従い算出した金額と自賠責保険等によって支払われる金額(注1)のいずれか高い金額の合計額とします。

① 傷害

・・治療が必要と認められる状態であること。

② 後遺障害

・・後遺障害が生じたこと。ただし、同一事故により被保険者が死亡した場合を除きます。

③ 死亡

・・死亡したこと。

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c_y_164  多くの方は「無保険車傷害特約の約款が独立した?、だから何?」と思うでしょう。しかし、相談会にやってくる被害者さんで、「相手が任意保険に加入していないので困った・・」は決して少なくない相談なのです。これは私たちのような被害者救済を生業とするものとって座視できない問題なのです。  

<無保険車傷害特約をおさらい> 

 保険に入っていない、保険が足りない、支払い能力のない加害者やひき逃げ等で相手が不明の場合、自ら加入の保険が代わりに支払います。契約自動車に乗っているとき、歩行中や自転車、他の車(任意保険に入っていない)に搭乗中でも適用されます。  契約本人はもちろん同居の親族全員が対象となります。契約自動車に搭乗中の事故であれば他人もOKです。  死亡、後遺障害の場合に限定されます。実額を補償をしますが、限度額は会社によって最高2億円、もしくは無制限です。  

c_y_1続きを読む »

 損保ジャパン自動車保険、平成26年7月改訂で「無保険車傷害特約」が人身傷害特約の約款から離脱しました。

 長らく対人賠償特約に含まれていた(つまり自動担保)「無保険車傷害特約」が、対人賠償の約款から切り離され、人身傷害特約に吸収されたのは2年前のことでした。しかし以前の記事で指摘したように、損保側も自ら矛盾と混乱を理解したのでしょうか・・やはり支払い基準を無理やり人身傷害特約に合わせようと、同じ約款に組み込んだのは失敗だったと思います。

 結局、同特約は対人賠償の約款に戻らず、独立した条項になりました。迷走していた「無保険車傷害特約」はついに独立を果たしたのです。   yjimageU3E33L9F  こんな感慨にふけっている行政書士は日本に私だけかもしれません。興味ある方は「そして無保険車傷害特約は吸収された」を読んで下さい(長いシリーズですよ)

 まずは証券からそれぞれクリックしてご確認を、  

2年前の人身傷害特約への吸収

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 先日に続き、弁護士費用特約(以下、「弁特」と略)もう一つの追加条項をみてみましょう。東京海上日動さんを例にとりましたが、今後、他社も類似条項を追加すると予想します。  

行政書士への報酬は明確に制限

 これまで弁護士費用等補償特約(日常生活)で補償していた「行政書士または司法書士による保険会社に提出する損害賠償請求のための書類作成費用」については補償の対象外とし、自動車に関する補償をご契約いただいている場合に限り、自動付帯される法律相談費用補償特約(上限10万円)で補償することとします。  

<解説>    行政書士に対して制限が加わると予想したことが現実となりました ⇒ 過去記事 

   ご存知の取り、弁特は発売後すぐに支払い対象を司法書士、行政書士に拡大しました(国内社に多く、外資・通販の多くは非対象)。しかし代理権を持たない、もしくは制限のある両資格について何をどこまで支払えるか?特に行政書士については、保険会社担当者又はセンター長の裁量により対応・解釈がバラバラでした。これは仕方のないことです。そもそも弁護士・行政書士間の業務範囲そのものに議論があるのです。これでは保険会社も迷いますよね。

 以前、損保ジャパンの担当者に行政書士に対する弁特の支払い範囲を訊ねたところ、「法律相談費用(10万円)までは担当者の判断で割と寛容ですが、本費用は要検討でしょうか・・」と歯切れ悪く答えました。特約の明文化を待たず、今までも多くの行政書士が10万円制限を受けていたようです。

 対して弁護士の報酬に対しては保険会社と弁護士会が申し合わせをしたLAC基準が存在します。また、LACを通さなくても多くは旧日弁連基準を相場としてきたようです。このような申し合わせを行政書士会から働きかけるのは困難と思います。まず先に業務範囲の線引きを弁護士会としなければなりませんが、そのような積極的な動きは皆無です。やはり交通事故における行政書士のスタンスはその権限からあくまで補助的です。

 しかし保険会社の示す制限について私は好意的に受け止めています。なぜなら、先日の「非常識弁護士」以上にめちゃくちゃな報酬請求をしている行政書士の話を多く耳にするからです。報酬自由の原則があるにせよ、自賠責保険の請求書の代書だけで弁護士並の報酬を設定している先生が多いのです。やはり報酬に見合った仕事、依頼者が納得する仕事が求められます。そして「弁特があるから契約を」=依頼者さまはお金がかからないのだからとりあえず契約をしましょう・・このような契約勧誘は不健全ではないでしょうか。  

 弊所の依頼者さまは弁特加入の有無、さらに弁特からの支払い額如何で依頼を躊躇しません。すべての依頼は病院同行や検査誘致、診断書・画像分析等、専門性を評価いただいた結果です。資格云々を評価しているわけではありません。弁護士事務所からの依頼についても同様で、常に技術的に高度な調査業務が期待されています。そこには弁特の有無など考慮している場合ではない被害者の窮状があるからです。   20140508  20140508_3続きを読む »

 今年の秋、10月から各損保会社は自動車保険の約款改定を行います。昨年のノンフリート等級改定に比べれば細かな改定ですが、以前から要望が高かった弁護士費用特約もその対象です。以下、東京海上日動さんの内容を抜粋します。支払い内容についてより具体的な条項が加わった印象です。  

弁護士費用等補償特約(日常生活)の改定

   弁護士費用を算定する場合において、一般的にはその費用算定の対象に含まれない以下a.b.の額に対する費用は、弁護士費用等補償特約(日常生活)の補償の対象外とします。  

a.保険金の受取人が損害賠償請求を行った額のうち、補償を受けられる方の過失により減額された額  

b.損害賠償の額のうち、既に保険金の受取人が受領済みの額  

 c_y_184 

<解説>

 a.の内容は「依頼者側の過失割合により減額された賠償金分は報酬計算の対象金額ではないですよ」とのことです。報酬とは相手から勝ち取った金額からのボーナスですから、常識的にa.の通りですよね。  また、仮に自身が契約している人身傷害特約に「過失減額された分を請求・補てんしたとしても、この補てん額は弁護士の交渉で獲得した金額ではない」と念を押されそうです。

 b.の内容は、「依頼者側がすでに相手の保険会社から受け取ったお金や、自身が加入している人身傷害特約から受け取った保険金は報酬計算の対象から引いて下さい」との意味です。これらは弁護士の介入に関わらず支払いが受けられたお金なので、弁護士の仕事の成果ではなく当然に差し引くことになります。

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支給される期間

   傷病手当金が支給される期間は、支給開始した日から最長1年6ヵ月です。これは、1年6ヵ月分支給されるということではなく、1年6ヵ月の間に仕事に復帰した期間があり、その後再び同じ病気やケガにより仕事に就けなくなった場合でも、復帰期間も1年6ヵ月に算入されます。支給開始後1年6ヵ月を超えた場合は、仕事に就くことができない場合であっても、傷病手当金は支給されません。  

支給される傷病手当金の額

 傷病手当金は、1日につき被保険者の標準報酬日額の3分の2に相当する額(1円未満四捨五入)が支給されます。標準報酬日額は、標準報酬月額の30分の1に相当する額(10円未満四捨五入)です。給与の支払があって、その給与が傷病手当金の額より少ない場合は、傷病手当金と給与の差額が支給されます。

(例)標準報酬月額300,000円(標準報酬日額=10,000円)の場合 1日につき10,000円×3分の2=6,667円(50銭未満の端数は切り捨て、50銭以上1円未満の端数は切り上げる)  

資格喪失後の継続給付について

 資格喪失の日の前日(退職日等)まで被保険者期間が継続して1年以上あり、被保険者資格喪失日の前日に、現に傷病手当金を受けているか、受けられる状態[(1)(2)(3)の条件を満たしている]であれば、資格喪失後も引き続き支給を受けることができます。ただし、一旦仕事に就くことができる状態になった場合、その後更に仕事に就くことができない状態になっても、傷病手当金は支給されません。  

傷病手当金が支給停止(支給調整)される場合

(1)傷病手当金と出産手当金が受けられるとき

 傷病手当金と出産手当金を同時に受けられるときは、出産手当金を優先して支給し、その間、傷病手当金は支給されません。ただし、すでに傷病手当金を受けているときは、その支給額分だけ出産手当金から差し引いて支給されます。

(2)資格喪失後に老齢(退職)年金が受けられるとき

 資格喪失後に傷病手当金の継続給付を受けている方が老齢(退職)年金を受けているときは、傷病手当金は支給されません。ただし、老齢(退職)年金の額の360分の1が傷病手当金の日額より低いときは、その差額が支給されます。

(3)障害厚生年金または障害手当金が受けられるとき

 傷病手当金を受ける期間が残っていた場合でも、同じ病気やケガで障害厚生年金を受けることになったときは、傷病手当金は支給されません。ただし、障害厚生年金の額(同時に障害基礎年金を受けられるときはその合計額)の360分の1が傷病手当金の日額より低いときは、その差額が支給されます。また、厚生年金保険法による障害手当金が受けられる場合は、傷病手当金の額の合計額が、障害手当金の額に達する日まで傷病手当金は支給されません。

(4)労災保険の休業補償給付が受けられるとき

 労災保険から休業補償給付を受けている期間に、業務外の病気やケガで仕事に就けなくなった場合は、その期間中、傷病手当金は支給されません。ただし、休業補償給付の日額が傷病手当金の日額より低いときは、その差額が支給されます。  

参考文献:全国健保協会パンフレットより抜粋  

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 病気やケガで会社を休んだとき、病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、被保険者が病気やケガのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。現在、依頼者さんの傷病手当手続きをお手伝いしています。せっかくの機会ですので、勉強がてら数回にわたり続けます。    被害者に給付される様々な制度を漏らさず活用することが大事です。交通事故の解決とは、専門家とは、利用できる制度すべてに精通していなければなりません。

 

支給される条件

 傷病手当金は、次の(1)から(4)の条件をすべて満たしたときに支給されます。

  (1) 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること

 健康保険給付として受ける療養に限らず、自費で診療を受けた場合でも、仕事に就くことができないことについての証明があるときは支給対象となります。また、自宅療養の期間についても支給対象となります。ただし、業務上・通勤災害によるもの(労災保険の給付対象)や病気と見なされないもの(美容整形など)は支給対象外です。  

(2) 仕事に就くことができないこと

 仕事に就くことができない状態の判定は、療養担当者の意見等を基に、被保険者の仕事の内容を考慮して判断されます。  

(3) 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと

 業務外の事由による病気やケガの療養のため仕事を休んだ日から連続して3日間(待期)の後、4日目以降の仕事に就けなかった日に対して支給されます。待期には、有給休暇、土日・祝日等の公休日も含まれるため、給与の支払いがあったかどうかは関係ありません。また、就労時間中に業務外の事由で発生した病気やケガについて仕事に就くことができない状態となった場合には、その日を待期の初日として起算されます。

※「待期3日間」とは?

 待期3日間の考え方は会社を休んだ日が連続して3日間なければ成立しません。 連続して2日間会社を休んだ後、3日目に仕事を行った場合には、「待期3日間」は成立しません。  

(4) 休業した期間について給与の支払いがないこと

 業務外の事由による病気やケガで休業している期間について生活保障を行う制度のため、給与が支払われている間は、傷病手当金は支給されません。ただし、給与の支払いがあっても、傷病手当金の額よりも少ない場合は、その差額が支給されます。  任意継続被保険者である期間中に発生した病気・ケガについては、傷病手当金は支給されません。  

参考文献:全国健保協会パンフレットより抜粋  

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c_g_a_5-118x300 16条請求とは自賠法(強制保険である自賠責保険のルール、被害者に有利な内容です)16条の定めによった保険請求の方法のことで、一般には「被害者請求」と呼ばれています。交通事故で後遺障害が残るようなケガの場合、被害者にとって絶対に検討すべき手続きです。最近は交通事故に力を入れている弁護士も被害者請求を推進するようになってきました。しかし、後遺障害の認定は相手の保険会社に任せる「事前認定」がまだ多くを占めています。受任しながら「事前認定」を看過している弁護士もまだ多数派です。    何度も双方のメリット・デメリットを語ってきました。

 ⇒ 事前認定 or 被害者請求

   この記事を読んでいただければ、双方のメリット、デメリットがご理解いただけると思います。被害者の立場とすれば、できれば16条請求が望ましいはずです。しかし楽なケースとやたら面倒なケースに分かれます。    治療費などを加害者側保険会社が「自由診療で一括払い」(病院に直接、自由診療の治療費で払ってくれる)してくれれば、その損保会社の担当者は自賠責に求償する必要から診断書・診療報酬明細書を病院から取得、所持しています。被害者はそれら申請に必要な診断書類、および事故証明書のコピーをもらうことによって、ほぼ書類は揃います。(画像の貸出しは微妙、拒否されることがあります)  しかし健保、労災が絡む件、一括払いを拒否された件は絶望的に面倒な手続きを強いられます。その労苦とは・・・  

1、健保、労災で治療費を確保した場合、あらためて病院に通院期間の自賠責用診断書・診療報酬明細書をお願いしなければなりません。  診療報酬明細書については病院はすでに健保・労災に発行しており、2重発行はできないと拒むケースが多くなります。診療報酬明細書とは病院にとって治療費の請求書なので、すでに健保・労災に提出して費用が精算されていれば、再び発行はできない・・・これは筋が通っています。ちなみに健保・労災は受け取ったこの明細書に従って病院に支払い後、被害者に過失がない、もしくは少なければ自賠責保険に求償することがあります。

 この書類の流れを説明できる法律家は少なく、病院の医事課の事務員や健保・労災の担当者も自分の所管する事務以外は把握していません。損保の人身担当者が一番詳しいと思います。

  2、従って、1で診療報酬明細書が入手できねば、健保・労災に診療報酬明細書の開示請求を行う必要が生じます。開示請求には開示申請、開示決定、謄写請求など、数段階の手続きが必要です。手間となにより時間がかかります。通院期間が長く、量が多いと開示決定に2~3か月待たされることがあります。  

3、病院によっては、健保・労災で治療した患者に対して、1の自賠責用の診断書の記載すら拒みます。その場合、病院の事務方、医師へ説得が必要です。  

4、画像の収集。病院によっては極度に画像の貸し出しを嫌います。またCD等の買取なら500円~2000円で済みますが、なかにはXPフィルム(レントゲン)のコピーを1枚1000円で売る病院も存在します。最近も骨折が多かった被害者さんは220枚も買わされるはめになり、22万円+消費税を支払いました。CDに焼ける設備がありながら、院内のルールだそうです。こうなると病院の悪意を感じます。

  5、これらの手続きに際し、患者本人ではない場合、同意書(しかも期限3か月以内を要求されることも!)が必要であることはもちろん、病院によっては「郵送不可」「患者本人のみ対応」「文書料金の振込み不可、窓口で現金払いのみ」など無駄に厳しいルールを盾に非協力的な対応も珍しくありません。なにより、事情をよく解っていない医事課(文書課)の事務員に説明、理解を得なければ進みません。

  

 このように書類・画像の収集が複数の病院に及べば、被害者はヘトヘトになります。交通事故被害者は複数の病院に行きやすく、先月は9か所!も通院した被害者がおりました。もしこれらの手続きを弁護士が受任したら、弁護士だけでなく事務所の事務員も事務の洪水と、病院はじめ健保、労災との折衝で消耗してしまいます。やはり「事前認定」を是認する弁護士の本音は「楽したい」ではないでしょうか?

 秋葉事務所ではこれらの手続きを弁護士から依頼され、ぶつぶつ愚痴を言いながら収集を進めています。6月はなんと病院16か所、労災開示1、健保開示2、そこから診断書、画像類で毎日大型事務所並の文章が行きかっています。(いつかその事務処理方法をマニュアルにしようと思っています。)

 医証収集のプロである以上、避けられない事務、ここで泣き言を言っては保険会社の人身担当者に笑われてしまいます。彼らも日々、自賠責への求償のため、医証の収集に忙殺されています。頑張らねばなりません!  

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自転車に衝突され負傷した時の慰謝料請求先は個人賠か施設賠償保険

 

近年、自転車による加害事故のニュースが目立つようになり、自転車事故の被害者からの依頼が多くなってきました。

 

秋葉事務所は自転車事故によるケガの場合も後遺症の等級をキッチリ獲得します

 

その後はキッチリ裁判基準満額の慰謝料を獲得できる弁護士へ引継ぎます。

 

 

自転車は道路交通法上、軽車両とされており、自転車での加害事故でも自動車と同じく損害賠償責任を負います。

当然ですが自動車には自賠責保険の加入義務があり、ほとんどに自賠責保険がついています。また走っている車の80%は任意保険が付保されています。

 

しかし、続きを読む »

 先月の代理店内研修から、質問と回答を取り上げたいと思います。  私自身、長く損保業界におりまして代理店経営を通してそれなりに経験を積んできました。しかし交通事故外傷に深く関わる現在の仕事になって初めて知ったことがたくさんあります。損害保険のプロである代理店さんと言えど知らないことが実に多いのです。特に後遺障害の知識については、意図的と思えるほど保険会社は隠匿して代理店や社員に教えていないと感じています。  そのような中、研修会では活発な質疑応答が展開します。おなじみのQ&A方式でいくつか紹介します。

  (質問)  相手が任意保険に入っていません。しかし被害者請求しなくても契約者さんに人身傷害特約が付いています。人身傷害の対応で問題ないでしょうか?

(回答)  確かに治療費の確保が出来て一安心です。しかし慰謝料はあくまで任意保険会社基準です。特に後遺障害が残るような重傷では、最終的に弁護士の請求する金額の半分以下(注)で解決となり、大変残念です。その場合はまず治療費・休業損害は人身傷害で確保します。そして後遺障害についてはあくまで相手を訴え、判決をとってから、判決額を自身の保険会社の人身傷害特約と無保険車傷害特約に請求します。人傷社はその判決額をそれなりに尊重します。これでもらえる金額が14級でも100万以上差がつきます。

 人身傷害特約ですべて解決では大損します。

c_y_164 謝るよりちゃんと補償せい!

(注)高齢者や被害者に過失割合が大きい場合はその限りではありません。  

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 さて、昨日の試算から軽傷案件は費用倒れすれすれであることがわかりました。「弁護士先生、なんとか報酬20万円以下でお願いします!」の状態です。方々の交通事故相談に出向きましたが、なかなか引き受けてくれる先生が見つかりません。どうしましょうか?  

保険会社マターとするか弁護士マターとするか

 以上から軽傷案件の場合、保険会社と争わずに速やかな解決を目指すなら、慰謝料は少ないですが直接交渉でも良いような気がします。このような案件を私は「保険会社マター」と呼んでいます。

c_y_79 保険会社は支払額が自賠責保険以内なら自腹が痛みませんので、提示に対して印鑑を押すだけで解決が可能です。保険会社は3か月程度の捻挫・打撲では常に自賠責保険の範囲での解決を目指しています。治療費や休業損害で交渉余地が少なく、経済的利益がわずかしか見込めないなら、妥協的な解決でも仕方ありません。実際、ほとんどの軽傷事案は保険会社マターで解決しています。

 しかし感情的になってしまい、保険会社と上手く交渉できない被害者や弁護士の交渉で増額が見込める余地が相当にあれば、弁護士に依頼することも一考です。問題は引き受けてくれる弁護士をみつけることででしょうか。  

そうだ、弁護士費用特約があるじゃないか

 弁護士費用特約(以下 弁特)に加入している被害者であれば、弁護士への報酬は保険で賄えます。試算ではおよそ20万円前後に損得の判断がかかっていますが、その心配はなくなります。    弁護士事務所の多くが弁護士費用特約がある場合、旧日弁連基準とほぼ同じ報酬体系を打ち出しています。仮に弁特社(自身が弁特に加入している保険会社)に20万円の増額に対して、その基準で報酬を計算しますと・・・

(計算) 着手金  8% 成功報酬 16%

合計 200000円×(8%+16%)=48000円+消費税8%=51840円 ...

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 中断していましたが、再開します。  

 人身事故で95%を占める、後遺障害のない、どちらかと言えば軽傷事故。それでも多くの場合に争点となるのが、

① 治療の継続による治療費請求

② 休業損害の証明

③ 慰謝料の妥当性

 前回は被害者が相手保険会社と交渉するケースを検証しました。それでは、この煩わし交渉を弁護士に依頼した場合をシミュレーションしてみましょう。

 

2、弁護士に依頼

① 治療費

 治療期間が3か月に及ぶ頃、相手保険会社が「そろそろいかがでしょうか?」と電話がかかってくるようになりました。まだ痛むと言って治療を伸ばしても担当者はだんだん強硬になってきました。そこで知人の紹介で弁護士の紹介を受け、相談したところ、「むち打ち」程度の軽傷では受任しないそうです。そこでホームページで交通事故に強いとある弁護士に相談しましたが、「後遺障害の等級が取れてからまた連絡を」との対応です。さらに検索してようやく数件目で受任してくれる弁護士事務所を見つけました。  その弁護士さんは治療の延長を交渉し、なんとかあと1か月の延長を取り付けました。代理人・弁護士のおかげで少しの間、一心地です。  

② 休業損害

 しかし休業損害の延長については弁護士もあきらめムードです。なぜなら、むち打ちで何か月も会社を休むなどそれ相当の医師の診断がなければ難しいと言われました。

 もっとも問題となっていたのは休業日額です。自営業者で所得は実態より少な目に申告していますが、その申告書の数字から相手保険会社は譲りません。現状、1日=5700円の最低補償(自賠責)基準の算定額しかくれません。

 弁護士は「売上-経費=所得」の計算を少し修正しました。売り上げから引かれている経費の項目で水道光熱費、損害保険料(自動車保険の掛け金、個人事業税)など、被害者本人が休業していても待ったなしにかかってしまう経費を所得に加算しました。これで相手保険会社の5700円から7000円にアップしました。これ以上の金額は総勘定元帳などを作成して交渉することになります。弁護士は税理士にお金をかけてまで立証書類を作成する増額効果が少ないこと、倫理的には申告書を基とすべきことから、これ以上は断念するようにとのことです。  

③ 慰謝料

〇 自賠責保険の慰謝料計算 通院1日4200円、3か月間:2日に1回ペースで通院 ⇒ 378000円

〇 任意保険の3か月慰謝料は 上と同じ頻度で通って ⇒ 378000円

〇 赤い本基準のでは 同条件で ⇒ 530000円

 (別表Ⅱ⇒むち打ちはここでみます)

 慰謝料はズバリ以下の表をみて検討してみましょう。

 傷害部分の慰謝料比較(単位 万円)

傷害部分慰謝料

治療期間

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 昨日の例の他、弁護士の仕事について等級認定後の賠償交渉によって獲得した金額のみを成果とし、「自賠責保険の金額を成功報酬の対象計算から控除して下さい」とする保険会社が少なくないようです。実例から説明します。(やはり仮名)  

後遺障害等級は自然に決まるもの?

 大島先生率いるAKB法律事務所は本格的に交通事故業務に力を入れています。

『これからの交通事故は等級認定前から受任して、しっかり等級認定からお手伝いすること、初期対応することです。これこそ被害者救済であり、「等級が認定されてからまた来てください」などと言う旧来の事務所の姿勢ではダメです!』  大島弁護士はこのような交通事故対応を掲げて、受傷直後から被害者に寄り添い、物損の解決、休業損害の請求、労災の手続きなど手続きはもちろん、病院同行を繰り返した末に後遺障害・被害者請求を行いました。そして12級を獲得、その後は紛争センターに持ち込み、あっさり赤本満額で解決を果たしました。  依頼者は想像以上の高額の賠償額でびっくりです。何より大島先生は受傷直後から色々な手続きをしてくれた上、病院にまで一緒に来てくれ、一生懸命、等級の認定に尽くしてくれたので大満足です。

 大島弁護士は最後に弁特社(被害者側の保険会社)に弁護士費用特約を請求しました。後遺障害12級(自賠責で先に224万円獲得)に加えて最終受取額が700万円です。合計924万円に対して成功報酬を計算、1656000円の請求額です。  

 しかし弁特社の担当者の支払い回答は・・・  

担当者:「大島先生、自賠責の224万は報酬計算から引いて下さいよ」  

大島弁護士:「えっ?うちは受傷直後から等級認定も含めて仕事をしているのですよ」  

担当者:「いえ、等級認定は医師が書いた診断書を出すだけなので先生の仕事ではないですよね?」  

大島弁護士:「失礼な!本件は病院同行して、検査先に誘致して、陳述書を添えて・・・大変な作業で乾坤一擲、12級認定を勝ち取ったのですよ!」  

担当者:「それなら事前認定(相手保険会社に認定業務を任す)すればよかったのではないですか」   

大島弁護士:「キーッ!」

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 等級認定後の受任ならば当然として、確かに等級認定作業を「事前認定」つまり加害者側保険会社に任せれば、その事務所は立証作業を放棄しているのですから報酬計算に自賠責保険金額を含めないことは正当な考えです。しかし本件のように等級認定に関する立証作業と書類集積作業が代理人の腕の見せ所であり、むしろ賠償交渉より大変な作業となることもあります。

 後遺障害は被害者請求を基本とし、交通事故の初期対応を売りとしているAKB事務所のような弁護士事務所も増えてきました。さらに私のように「後遺障害の立証作業が事故解決の勝負どころ」と捉えている業者も存在します。「後遺障害の立証など無用、何もしなくても自然に等級が決まる」など、保険会社のあまりにも建前的、独善的な発想と思います。もちろん立証作業の効果薄い案件(足の切断のように見たままの障害)は除きますが。

   このように、なんとしても保険金支払いを削減したい保険会社と法律家の弁護士費用特約をめぐる争いは続きます。いい加減な仕事で多額の弁護士費用を請求する弁護士、行政書士が大勢存在するのが問題の根底です。それらの困った先生が存在する以上、保険会社の意地悪な支払い対応はなくなりません。真面目な大島先生の苦労は絶えないのです。  

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 弁護士費用特約は交通事故で代理人を雇う場合、被害者にとって重宝する特約です。しかし普及率は上昇するも使用率は低く、まだ一般的な印象は受けません。しかも保険会社の支払い基準は不明瞭で、各社、各担当者、案件ごとにまったく統一的な運用が成されていません。また、依頼を受けた弁護士・行政書士が費用を依頼者からではなく、直接、保険会社に請求することから、保険会社ともめることが多いようです。

 さて、最近の払い渋り、いえ、支払額提示で面白い対応をした保険会社をある弁護士先生から聞きました。今回はそれを紹介します。(仮名とします)  

弁護士に支払う報酬は人身傷害特約の支払い基準を超えた額から計算します

 AKB法律事務所の前田先生は被害者の後遺障害の申請を代理し、被害者請求にて等級獲得後、賠償交渉を経て解決させました。最終的な賠償獲得額は1500万円です。ここから着手金と成功報酬を合わせて252万円(旧日弁連基準報酬)を保険会社に報酬を請求したところ、請求額全額に応じられないとの返答です。その保険会社の計算とは・・・  

担当者:「本件の場合、弊社の契約に付帯していただいている人身傷害特約に先に請求して下されば700万円を支払うことができました。したがって弊社の特約を使わずに相手から獲得した賠償額は実質800万円と考えます。よって800万円に対する報酬を旧日弁連基準で計算します・・・

 800万円×(5%+10%)+9万円+18万円= 147万円 をお支払いします。  

前田弁護士:「えーっ! 頑張って後遺障害認定業務も行ったのですよ!」  

担当者:「いえ、頑張ってもらわなくても弊社の人身傷害特約を使っていただければ、700万まではお支払できたのです。それを敢えて被害者請求を行ったので、弊社としては700万円を超えた額である800万円を対象として計算します。」

  前田弁護士:「そりゃないよ~」

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 この担当者の払い渋り、いえ、報酬計算には思わず「座布団一枚!」、一休さんのとんちを見るようです。このような鮮やかな(へ)理屈を持ち出す保険会社、さすがとしか言いようがありません。

 しかし本例の場合、契約者(代理人 弁護士)の意向は、あえて人身傷害特約を請求せずに相手に賠償請求をすることです。契約者の代理人が行った一連の作業とその成果を尊重しない保険会社の姿勢はやはり問題があると言えます。これを弁護士費用特約のスタンダードな報酬計算とすれば、金融庁だけではなく契約者からも非難は避けられないと思います。   

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 前日より続きます。

 人身事故で95%を占める、後遺障害のない、どちらかと言えば軽傷事故。それでも多くの場合に争点となるのが、

① 治療の継続による治療費請求

② 休業損害の証明

③ 慰謝料の妥当性  でしょうか。  

 通院交通費や雑費は実際にかかった額を明示するだけで、非常識な額を請求しないことが前提となるので割愛します。また物損にまつわる争点はテーマを違えますので、別の機会に。

 まず弁護士に依頼する前に自力交渉を検討してみましょう。

 

1、自力交渉

① 治療費

c_s_t_1 骨折のない打撲・捻挫では受傷直後に鎮痛消炎処置を施し、あとは保存療法、疼痛緩和処置です。したがって靭帯や軟骨の損傷、神経症状(による痛み、しびれ、その他)が起きない限り3か月を超える治療期間を保険会社に認めさせるのは困難でしょう。「まだ痛い」と訴えても最悪、治療費打切りが待っています。自力交渉では自身の訴える「痛い」ではなく、疼痛が長期化する他覚的所見、つまり医師の診断を示す必要があります。しかしむち打ちや腰椎捻挫の場合は明確な所見がないことの方が多いものです。交渉むなしく保険会社が治療費を切り上げた場合、健康保険を使って治療継続することが現実的と思います。  それでも長々と通院を続ければ弁護士対応が待っています。やはり治療が長引いている証拠がなければ、無駄な抵抗は止めるべきです。もちろん打ち切り後の治療費を自分で負担すれば問題ありません。相手に出してもらう以上、何かと軋轢が生じるのです。  

② 休業損害

c_s_t_20 源泉徴収票で証明されるサラリーマン、公務員の休業損害は明確です。実際の休業日の請求の場合、交渉の余地は薄いと言えます。問題は自営業者です。実際の収入より過少申告となっている方が少なくありません。所得税の申告書が一級の証明書です。その数字が収入の根拠とされます。これは自らが招いたことなので仕方ありません。しかし実態収入を総勘定元帳、賃金台帳、入金口座の通帳などで明らかにすることができないわけではありません。これらを誠実に提示し、保険会社担当者に訴えるしかありません。やはり苦しい交渉となります。  

③ 慰謝料 続きを読む »

 人身事故と言っても後遺障害が残るような大ケガは少ないもので、損保協会のデータは以下の通りです。  

 平成23年 被害者内訳

ケガをした人  jinnsinnjiko ][  およそ 116万人

後遺障害となった方 およそ 6万人

亡くなった方    およそ 4700人

 

 近年の死亡者数の減少は好ましい傾向です。ではケガについてですが、私は後遺障害に特化した仕事をしていますので、いつも後遺障害のことばかり、年がら年中、重傷者と対峙しています。しかし統計のように現実には後遺障害を残すような方は、交通事故でケガを負った被害者の5%ほどなのです。やはり重傷は少ないようです。

 今日から取りあげるのは後遺障害のない軽傷被害者(便宜的に軽傷とします)の解決についてです。

 

軽傷者の解決の実際

 まず軽傷者を「打撲・捻挫の診断名で、後遺症とならずに治った」と定義します。ここでは後遺症があるのに後遺障害等級が認められずに解決した被害者は除きます。

 相手に任意保険会社があれば、その一括払い(保険会社が病院に直接、治療費支払い)で治るまで治療費を負担し、その後は傷害慰謝料や休業損害などを支払って解決となります。ここで問題になるのは治療内容の妥当性、休業損害金額の適否、慰謝料の金額でしょうか。これらの金額について、95%ほど(保険会社資料)が保険会社と被害者との直接交渉で示談となります。もちろん、「ある病院での治療費が認められない!」、「休業損害が実際より少ない!」、「慰謝料が少ない!」などの争点はありますが、保険会社は提出書類にもとづいて常識的な判断・数字を提示をすることが多いので、交渉してもなかなか思い通りの金額は取れません。

 この軽傷者のほとんどが通院3か月で治療費の打ち切りを迫られます。「まだ痛い、通院を続けたい」と言っても打撲・捻挫では説得力がありませんし、事実、多くの被害者は治っているはずです。

 休業損害の金額も提出した源泉徴収票や所得税申告書などの証明書から算出します。ここで所得を過少申告していた自営業者は少々痛い目にあいます。実際の所得で請求できないことが、おなじみの争点と言えます。

 慰謝料についても3か月以内の通院ではどの保険会社も自賠責保険の基準である、1日=4200円の計算とほぼ同じ金額を提示してきます。  

 そしてこれらの争点について、被害者はそもそも請求金額が少ないことから法的手段や調停などの斡旋機関を利用することなく、「まぁ、しぶしぶ従って」示談といったところでしょうか。

 では、ここで弁護士など業者の力を使って解決を図るケースを検討してみたいと思います。

 つづく

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 昨日は自賠責保険の請求形態を復習しました。いずれも請求者本人で手続をすることになりますが代理人による手続も可能です。つまり法的な代理権をもつ弁護士に代行してもらうことが可能です。ちなみに行政書士の代理請求も認められています(「行政書士はできない」という学説、見解もあり)。あまりケースはありませんが①保険会社の一括払い後の求償も理論的には弁護士等に委任ができます。

 さて、問題提起です。一昨日の話では委任請求は報酬の「取りっぱぐれ」を防ぐ手段であることを解説しました。もちろんこれは本音であって、建て前上は「プロによる委任請求なので安心です!」ということになります。もちろん委任された法律家の名前で保険金を受け取ることは代理権を持つ以上、不自然ではありません。が、しかし・・・請求を受けた自賠責にとっては受け取り方が違います。そもそも人身事故では請求の80%以上が①の保険会社による一括払い後の求償であって、当事者もしくはその代理人による請求は圧倒的に少なく、とても目立つのです。例えば被害者請求とした理由は「加害者側に任意保険がない」、もしくは「被害者に責任が大きい事故」である理由から加害者側保険会社の一括払いとならなったケースしかない・・・と自賠責側は思っています。したがって不自然な被害者請求は厳しくチェックされています。それが代理人によるものであれば尚更です。

 私は委任請求をまったくやならいわけではありませんが、原則しません。なぜなら後遺障害の立証を仕事をしている以上、このような自賠責側のチェックを避けたいと思っています。もちろん不正に障害を誇張したり、法的、道徳的に問題のあるような申請は絶対にしていません。しかし自賠責調査事務所は常に詐病者(うそのケガ)など不正請求や大袈裟な被害者の訴えに騙されないよう、厳しく審査しているのです。後遺障害等級を獲ってあげたい業者(からの申請)は調査事務所にとってまったく逆の立場、ある意味「敵」なのです。であれば、業者はなるべく目立たないようにする方が恣意的な審査を避けられると考えています。特に全申請の60%を超える「むち打ち」による14級は、被害者が「痛い」と言っているだけで、他覚的な症状が乏しいケースが圧倒的です。この場合、審査側は「症状の一貫性」「治療過程」等からしか判断できず、最終的には被害者の訴えている「痛い、しびれる」を”信じるか否か”で決定します。だからこそ業者による委任請求という緊張を与えず、フラットに審査していただきたいのです。  しかし被害者側に弁護士が早期に介入した事故であれば、弁護士が委任請求することはむしろ自然なので、余計な予断は与えないと思います。やはり問題なのは行政書士やその他の業者でしょう。

 昨年からむち打ちの認定は厳格化の傾向と聞きます。理由は単に業者による(認定に満たない)請求数が増えた結果かもしれません。それでも私のむち打ち認定は80%以上を確保しています。その全件、行政書士名による委任請求ではありません。委任請求を行い、私の名前を出すことで認定率が上がればそうしますが、保険会社のいらぬ予断を与える弁護士以外の委任請求は、特別な理由がなければ抑制すべきです。少なくとも保険会社出身の私はそう思っています。

 着手金無料を掲げる業者はほぼ全件、委任請求をしているはずです。しかし委任請求すべきか否かについて、案件ごとに判断する慎重さが必要かと思います。後遺障害審査で被害者の運命はほぼ決まります。決して神経質なことではないと思います。

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