皆さま、1年のご精勤まことにお疲れさまでした。
年内、散々コロナの話題でしたので、ここでは言いますまい。普通に業界を絡めて2つのテーマから、今年を振り返りたいと思います。 【1】自賠責保険の審査精度について まず、最初にアジりたいのは、自賠責保険の審査精度です。誤変換ではありません。制度ではなく精度です。この10年、700件を超える申請をしてきましたが、毎度、書面審査だけでよくここまで障害の実態を掴むものだと、審査結果に納得することが大半でした。それでも、どうしても一定数は異議申立、いわゆる再請求に駆られます。その原因の多くは、自賠責保険の審査ミスではなく、初回申請の提出内容に不足・不正確があり、少々厳しい言い方ですが、申請者側の落ち度でした。それを覆す為に、私達のような業者が存在するわけですが、異議申立ての成功率はここ10年で6%程度なのです。できれば、初回で認定を得ないと大変です。
そのような前提は承知ながら、今年は異議申立の件数が多かった。異議申立のご依頼だけでなく、初回から私達が受任したもので、2度、3度の申請を繰り返す案件が10数件ありました。むち打ちの14級9号の再申請は毎年一定数ありますが、秋葉事務所ならではのレアな障害がむしろ多かった。これは推測ですが、以前なら上部審査に上がるべき案件を地区審査で決定するよう、近年、運用面で変化があったのではないかと思います。
例えば、診断名を間違って認定票が帰ってきた案件がありました。1か所程度の誤字なら、気にも留めませんが、全文に渡って5か所、なんと骨折名からして違う。これは、単なるミスでは済まされません。認定票の記載に、ひな形をコピペばかりして手を抜いた様子がうかがえます。以前なら、この骨折部位の12級審査は上部(本部審査)に上がるはず、その間にこの手のミスは直されるはずです。ある担当者一人のミスがそのまま通る、これは、審査の怠慢を指摘されても仕方ないと思います。
また、珍しい障害(守秘義務で明かせませんが)申請のいくつか、これは本部審査に上がるはずと踏んでいたものが、あっさり40日で認定結果が・・。当然に慎重に審議されたとは言い難い、低等級の回答です。これも、運用の変化を感じさせます。もしや、コロナの影響でテレワークで審査を?とまで疑ってしまいます。確かに、この10年間、交通事故数の低下の一途ながら、何故か後遺障害申請数が微増しているという反比例状態、これは審査側の負担が増えることを意味します。さらに、コロナ時短の追い打ち、これらが審査精度の低下を裏付けると、私どものような小事務所ですら感じているのです。
ムチ打ちの再請求は数も多く、提出書類も定型化していますから、それなりのルーチンワークで負担は少ないと言えます。ただし、高次脳機能障害、膝関節の機能障害、嗅覚障害、耳鳴り、排尿障害、臓器の障害など、特殊案件の再請求は大変に骨が折れます。正直、着手金と高い成功報酬を頂かないとやる気が出ません。あるいは、可能性の低いものは事前に諦めるよう諭します。
そのような珍しい障害の異議申立が重なった1年でした。自賠責保険の等級審査のルールにまで噛みついた案件もありました。結果は、全体としての勝率はおよそ50:50のイーブンでしたでしょうか。再認定=上位等級へ変更したものは、最初からそう思っていたので驚きはありません。しかし、変更なし=負けの結果から、新たな発見もあり、自賠責保険の奥の深さを知った案件もありました。いずれにしても、個々の障害の状態を、老若男女一律の基準で評価する制度ですから、実態より「甘い」、逆に「厳しい」等級となることもしばしば起きます。
自賠責保険の後遺障害認定は、被害者さんの窮状を数字(○級⇒賠償金○○円)に換算する最も効果的な作業です。そこで等級を取りこぼせば、後は勝ち負け定かならぬ訴訟しかないのです。審査の精度がどうであれ、被害者さんの障害の事実証明と、問題点の追求を止めることはありません。 【2】士業間の連携・提携について 来年は、マニアックな症状で窮地に陥っている被害者さんにより声が届くよう、弁護士はじめ他士業事務所への働きかけに力を入れたいと思います。残念ながら、マニアック案件の救済は手間がかかってお金にならない、費用対効果の悪さから放置される傾向です。その被害者さん達に気づいて、秋葉へつないでもらう、これこそ、私が提唱するまでもありませんが、士業間のネットワークです。ところが、今年、弁護士⇒行政書士の連携で、非弁提携の指摘・懲戒を受けた件がいくつか耳に入りました。どういうことでしょうか? 普通に業際を分けて分担すれば法律に触れることなどなく、それこそ依頼者にとってワンストップサービスが実現するはずです。 例えば、相続案件を例にとります。 1、行政書士が相続関係を調査、戸籍謄本を収集して、分割協議書をまとめました。 2、土地建物の名義変更が必要で、その手続きのために司法書士を紹介しました。 3、また、相続税の申告が必要となり、その手続きのために税理士を紹介しました。 4、相続人間の協議が整わず、弁護士を紹介するに至った。 この流れの、どこに問題があるのでしょうか? 交通時事故業務でも、同じように調査事務・諸手続きと、法律事務を分ければ済む話です。 違法を指摘される原因は2つに大別されます。
① その士業間で、業際を超えて法律行為をする・させているケース
② その士業間で、紹介料の授受があるケース
これが令和2年、いくつかの事務所が懲戒を食らった理由です。どこかに、ズルが入っています。繰り返しますが、先の1~4の紹介体制、ネットワークそのものに問題はありません。その行間に①、②のルール違反があるのです。残念ながら、とりわけ行政書士がルールを守らない。こればかりは、各士業会の取り締まり、綱紀委員会の指導を期待するしかありません。なにより、個々の倫理観が大事ではありますが・・。 士業に限らず、どの業界にも不届き者、確信犯はいるものです。根絶は無理ですが、減らす努力はしたいものです。それには、業際の明確化、連携のルール等、各士業間の申し合わせ、ガイドライン作成が必要かと思います。しかしそうなる気配もなく、個々の訴訟で争っているのが現状です。そして、これも行政書士に多いのですが、ほとんど敗訴で、(行政書士にとって)不利な判例だけを残しています。絶対に勝つ裁判じゃなきゃやっちゃダメです。これは、他の行政書士はおろか、(士業間の連携業務で助かるはずの)依頼者さんの迷惑につながるからです。 間違いなく、業界は縮小傾向にあります。その中で生き残る者は、やはり確かな技術・経験を持ったものです。そして、変化に合わせられる柔軟な者ではないでしょうか。前述の【1】自賠責保険の変化、【2】業界の動向に対しても、鋭敏に対処していきたいと思います。そして、望むらくはわずかでも成長をしていきたいと思います。なぜなら、このマニアックな「被害者側の医療調査業」を交通事故業務の1ジャンルとして残すこと、できればブランド化すること、そのために後進を育てること、これらを自分の財布の中身など気にせず、引退まで続けると決めているからです。
年の瀬に暑苦しい文章ですみません。 毎年が背水の陣の秋葉事務所ですが、一層のご指導ご愛顧をよろしくお願いいたします。 皆様も良いお年をお迎え下さい。

獺祭だワン!
指1本1本の計測は大変です


最近は、その保険金の詐取方法をレクチャーし、共犯者として呼び込む、新手の組織が現れました。コロナ対策の持続化給付金の詐欺に代表されるように、あらゆる補助金・保険制度の穴をついて、お金を不正に得る元締めみないな組織が増えているのです。彼ら、給付制度や保険約款を本当によく勉強しています。これら不正によって、払われる保険金の額は膨大です。業界ではこの全体像を「モラルリスク」と呼んでいます。
自宅でも、電話とパソコンがあれば、多くの仕事をすることは可能です。今年の緊急事態宣言以降、コロナ休としてスタッフを数日休ませることにしましたが、お客様の情報を持ち帰ることはできませんので、単なる休みとしました。その分、お国から雇用調整助成金を頂きました。もちろん、助成金は無いより良いですが、計画していた仕事ができなかった損害に見合うものではありません。営業企画などは最たるもので、来年の売り上げに響く事は間違いないでしょう。
今日のテーマは医療
近年、体内吸収性の固定プレートやスクリュー等を使用した手術が増えてきておりますが、今後、交通事故外傷においても、様々な部位で使用されるケースが増えてくるのではないかと思い、まとめてみました。

何事も2択の判断は難しいものです。今年のマスク論争に似ているな、と思います。
「マスクは効果が有るのか、無いのか」・・・これも二択で判断できるほど、単純ではありません。
マスクは、完全に防疫の効果があるとは言えないが、自身からの飛沫の量を減らすので、一定の効果はある・・このような分析で、ひとまず落ち着いていると思います。つまり、しないよりした方が良い。また、ひねくれた発想ですと、「私はコロナ対策してます」との表札になり、同調圧力の高い日本では欠かせない免罪符と言えます。
世相をみれば、後手を踏みまくっている政府のコロナ対策について、マスコミが毎日のように非難しています。マスコミ以外でも、緊急事態宣言下の自粛警察などは、より攻撃的で行き過ぎた反応です。未知のウィルスに対し、現状、誰もが絶対の正解を持っていないのですから、結果論で非難する、違う意見の他者を罰するような行為は、ちょっと厳し過ぎではないでしょうか。アーティストの山下 達郎さんは、コロナ下、寛容さが必要と、早くから訴えておりました。
94年サッカーワールドカップ決勝、PKを外したロベルト・バッジオ選手は、後にこうコメントしました。
「PKを外すことができるのは、PKを蹴る勇気を持った者だけだ」
このPK失敗でイタリアは敗退しました。勝負事の結果ですから仕方ありませんが、彼を戦犯にする心無い論調も多かったのです。
12級14号は諦めか・・と私達は意気消沈、重苦しい空気が流れました。
するとその時、この被害者さん、なんと「それなら、眉を剃ります!」と宣言。
その想像図は以下の通り、
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どこぶつけたの?
一人でゆっくりがいい!
もしかしたら後年の評価で、今年がその完全転換の年になるかもしれません。なんとなく伝統的に継続してきた団体行事が、コロナ下での中止をきっかけに、いつの間にか廃止となる会社も多いのではないでしょうか。昭和の終身雇用時代、会社は家族に次ぐ第2の共同体、社員は皆家族でした。今や非正規、契約社員の比率が増えて組織が分断・階層化し、経営の効率化・合理化の流れは止めようもなく、給与も出来高評価が進んで所得格差が拡大、そして、このコロナ下、テレワークや自宅業務でもほとんど問題ないことが実証されてしまいました。会社括りの人のつながりが希薄になって当然です。
それは、かつて会社行事大嫌いの者にとって、ついに到来した理想的な社会かもしれません。しかし、昭和の郷愁を知る私の世代は、すべて自由では却って面白くない。付き合いだから仕方なく嫌々参加する行事がたまにあっても、それも一興と思います。かつて、会社行事に文句たらたら参加ながら、数々のドラマがあったような気がします。上司や後輩、同僚の、仕事中とは違った顔を見る機会でもあります。何事も有意義な時間とするか、無駄な時間とするかは本人次第なのです。
逆説的ですが、その面倒な人間関係があって初めて、会社・組織から解放された自由を強く感じるものと思います。令和以降の世代にとっても、罰ゲームのような会社付合いが一つ位残ればいいなと思う次第です。

それから5年後、縁あって地元のビートルズ専門ライブハウスでのステージに、毎週のように立っていました。ビートルズのナンバー150曲ほどレパートリーに、延べ数百回のステージをこなしたものです。もはや、下手の横好きでは済まされません。結構、大変でした。
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本件依頼者さんは、依頼した弁護士が秋葉と連携していたので助かりました。しかし、セカンドオピニオンのご相談者さまの多くは、既に交通事故専門を謳う弁護士や行政書士に依頼又は相談中ながら、困り果てて秋葉を訪ねてきます。事情を伺うと、「ストレスXPが必要です、主治医にお願いして下さい」と、弁護士(行政書士)からの指示ですが、主治医から「できない」と言われ、立ち往生しているようです。依頼している交通事故専門家はアドバイスだけなのです。つまり、検査先を確保していない。知識だけで実動と実力が伴わない、まるで絵に描いた餅です。
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交通事故外傷の実に60%はむち打ちです。正式には、頚椎捻挫、外傷性頚部症候群、頚椎症などの診断名になります。これは、歩行中、自転車・バイク搭乗中でも頻発しますが、何と言っても代表的なケースは追突です。追突の衝撃によって、首が急激に前後に振られて痛めます。多くは、捻挫ですから、安静と消炎鎮痛処置を続ければ、痛みは軽減します。通常の捻挫であれば、後遺症などは残りません。しかし、頚椎は体幹部でも細く脆弱ながら、脊髄の神経を中心に、神経根~末梢神経など神経のターミナルです。これらに衝撃が加わると、しつこい神経症状を惹起することがあります。神経症状となれば、捻挫の腫れが引いても、上肢へのしびれ、頭痛、めまい、耳鳴り、不定愁訴、諸症状が長引く原因とされています。
しかし、保険会社はそれら目に見えない症状に、いつまでも耳を傾けてはくれません。打撲・捻挫の症状は、せいぜい3か月と基準しています。したがって、治療費支払いの延長には、単なる捻挫ではない神経症状を信じてもらうしかありません。それには、医師によるジャクソン・スパーリングテスト、腱反射など、またはMRI画像における神経圧迫所見など、他覚的所見を示さなければなりません。経験上、それらが明確であれば、自賠責の後遺障害認定にも有利に働きます。ところが、それら他覚的所見がほとんどみられない被害者さんが大多数なのです。つまり、本人が痛いと言っているだけで証拠がない。これが、交通事故外傷・むち打ちにおける最大の問題となるのです。



