骨折した椎体はどこですか?   ⇒ 前回    主に圧迫骨折する椎体としてあげられるのは、頚椎、胸椎、腰椎、とあります。  頚椎はC1~7まで、腰椎はL1~L5までと見ればすぐに数えられる数しかない上、頚椎や腰椎は範囲が狭いため、どこが骨折していて、それが何番目の椎体なのかをすぐに判断できます。これに対して厄介なのが、胸椎です。

 胸椎はT1~12までと頚椎や腰椎に比べて、数が多いです。さらに、胸椎は首の根本あたりからみぞおちあたりまでありますので、範囲がとても広いです。以上から、胸椎を数えるのは、頚椎や腰椎に比べると大変な作業です。

 これは医学について素人ではもちろんですが、医学のプロである医師でも数え間違えたりします。例えば、胸椎の12番目と11番目を数え間違えたり、胸椎の12番目と腰椎の1番目とを数え間違えていたりしたことがあります。圧迫骨折は安静にして(保存療法)、骨の癒合を待つことが多いため、リハビリ等は通常せず、圧迫骨折の部位については、臨床上、痛みの部位と骨折箇所が一致していれば、大きな問題はなさそうです。しかし、圧迫骨折が交通事故によるものの場合、医師に診断書を書いて頂く必要があり、また、後遺障害の手続きがありますと、後遺障害診断書はもちろん、骨折部位の画像を保険会社や自賠責調査事務所に提出する必要があります。書いて頂いた診断書に誤りがあった場合、修正が必要になる場合もあります。

 椎体の番号を数え間違えている診断書や後遺障害診断書はこれまでたくさん見てきました。臨床上では大勢に影響はなくても、保険手続上では所々で大切になってきます(例えば、労災申請や保険申請時に傷病名がはっきりしないと書類が書けないという相談者が過去におりました)。  

 保険手続きをしっかりやるには、画像を見れることが必要です。交通事故や保険手続きに力を入れている事務所であるならば、もし相談者が診断書や画像を持参してきた場合には、画像をしっかり見てあげてください。  

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 鎖骨の変形が認められる条件は、外見でわかる変形です。

 肩鎖関節の脱臼で、鎖骨がポコッと飛び出てしまうことがあります。これは鎖骨と肩峰を繋ぐ靱帯が、引っ張られて伸びてしまったことから生じます。これをピアノキーサインと呼んでいます。その程度が深刻でなければ、手術をしてまで治しません。しかし、激痛はもちろん、肩関節の可動域制限が残ることもあります。変形については、鎖骨の左右差から判断します。

 ここでの問題は、ふくよかな人の場合、レントゲンでは鎖骨が上方に転位していながら、つまり、変形がありながら、外見に表れないことです。皮下脂肪で隠れてしまうのです。このような依頼者に対して秋葉事務所では、12級5号のためのダイエットを指導します。症状固定日まで、適時、電話で進捗を伺います。本件の依頼者さまも良く頑張りました。今までもきわどい例について、10人を越える鎖骨変形認定者=ダイエット成功者を輩出しています。

 かつて、このような等級認定への誘導に批判を頂いたことがあります。保険会社側にしてみれば、確かに恣意的に過ぎるかもしれません。しかし、よく考えて下さい、実際に事故外傷で鎖骨は上方転位しています。それが、たまたまその時点で太っている故に外見上目立たないだけです。将来、痩せて障害が外見上現れた場合、痩せたことを悔い、後遺症の泣き寝入りを容認すべきなのでしょうか?

 障害が改善するのか悪化するのか?先の事は誰もわかりません。だからこそ、後遺障害のジャッジは症状固定日の状態で決めているのです。反論もあるでしょうが、アキバ式ライザップは、障害の誇張ではなく、障害を可視化・顕在化しているのです。       治療中はストレスで太りやすいので、ケガの回復や健康の為にもよい事です  

併合11級:肩鎖関節脱臼(60代男性・福島県)

事案】

自転車に搭乗中、青信号で交差点に進入したところ、右方向から来た信号無視の車の衝突を受け受傷。

【問題点】

画像ではあまり分からなかったが、患部を触ってみると、確かに肩鎖関節の脱臼により肩鎖靭帯が伸びている可能性が伺えた。しかし、元々ふっくらとした体形であった為、鎖骨の変形が全く外見上に表れていなかった。可動域制限もあったが、早期の相談だったため回復の余地があった。また、主治医が鎖骨の変形を後遺症と思っておらず、診断書作成についても後ろ向きであった。 続きを読む »

 高次脳機能障害で、もっとも多く発症する障害は記憶障害です。その記憶障害も、2~3日前、数時間数分前など、直近の記憶が失われる短期記憶障害があります。これは、覚える機能自体が破壊されたと考えられます。パソコンで言えば、メモリーの故障です。

 また、日常の出来事・エピソードを「忘れた」=健忘と言う観点からですと、2種に別れます。逆向性健忘と前向性健忘です。簡単に説明しますと以下の通りです。   逆向性健忘・・・障害を受けた時点より、以前の記憶が失われる。よく物語にでてくる記憶喪失の類です。ひどいと、自らの名前、家族も忘れてしまいます。脳外傷による、脳実質への器質的損傷の他、精神的ショックなどでも発症します。この場合、一過性の症状であることも多いようです。   前向性健忘・・・障害を受けた時点より、以後の記憶が失われる。または、障害を受けた以降、数日・数分前の記憶が保てない。これは、記銘力障害になりますので、短期記憶障害と重なります。

 私が経験した高次脳機能障害の被害者さん数十例からみますと、逆向性健忘はほとんどいませんでした。もちろん、知能障害が顕著で、見当識(今日は何月何日?すら答えられない)が失われ、完全介護状態の重度な患者さんは恐らく、昔の記憶もある程度失われていると思います。やはり、脳外傷によるものの多くは前向性健忘です。

 初めて高次脳機能障害の被害者さんと面談する場合、記憶障害のカテゴライズ、つまり、どのタイプかを観察します。まず、本人に対し、「今朝食べたものは?」「昨夜の夕食の献立は?」と質問します。さらに、家族からの聞き取りから判断します。「昨夜、明日は秋葉事務所に行くよと言ったのに、今朝になると全然覚えていない」などと言ったエピソードがでてきます。

 このような前向性健忘がみられる場合は短期記憶障害と位置づけ、さらに、健忘の時間的尺度から、「数分前のことすら覚えていない」ワーキングメモリーの喪失(即時記憶ができなくなった)と判断します。このような重度は健忘は、先に言いました「覚える機能自体が破壊された」記銘力障害となります。 学術的にはもっと深い話になりますが、私達の仕事からはこのような整理で十分でしょう。これらの観察を後に、記憶・記銘に関する神経心理学検査の数値と専門医の診断に照らし合わせます。    前向性健忘は記銘力の低下ですので、以下の例がわかりやすく、よく研修でも引用します。    自らカップラーメンにお湯を入れて、10分経ってもそのままになっている。家族が、「忘れているよ」と指摘すると・・・

1、「えっ、誰がお湯を入れたの?」 ・・・ 前向性健忘

 10分前に、自分がお湯を入れたことを覚えていません。   2、「いけねぇ、忘れてた」 ・・・ ど忘れ

 これは、うっかりさんです。     2の方は障害ではなく、単なる忘れっぽい人です。通常、カップラーメンのお湯を入れてからの3分は、人生で最も長く感じられる3分のはずです(少なくとも私はそうです)。それ位、強い認識を持つはずですが、1の例はそもそも記憶に留める事すらできないのです。

 よく、エセ高次脳(障害を装う、または大袈裟)の相談者さんへは、このようなエピソード聴取で見破ることができます。    ちなみに、最近のエピソードですが、私が久々に高次脳機能障害の被害者さんとの打合せに、弁護士事務所に行った際、うっかりネクタイを忘れました。このうっかりに、記憶障害をもった被害者さんから笑われました。前向性健忘の被害者さんは、忘れたことすら自覚できない(つまり、覚えることすらできない)以上、自らの症状は決してうっかり忘れたものではないのです。私はすっかり、忘れっぽい人=うっかりさんに思われたことでしょう。   

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 春の重傷認定シリーズの③から⑤は同一案件です。この記事3つを書くことも大変ですが、実際の立証作業も、期間にして6ヶ月、病院同行8回、大変なボリュームでした。通常の3人分どころか、特殊性から5人分の作業に感じました。

 重傷と言うには12級は低目かもしれませんが、本件被害者さんは、事故と手術でずたずたになった腹部の形成のため、背中とお尻から広範囲に皮膚を採取しました。これだけも、被害者の苦しみがうかがわれます。

 本件は併合4級となり、後は十分な賠償金の獲得を連携弁護士に引き継ぎました。相手保険会社の反論はもちろん、裁判になっても、私が集めた医証で一蹴できると思います。

 

12級相当:背部+臀部の瘢痕(20代男性・東京都)

【事案】

歩行中、自動車の衝突を受け、骨盤を骨折した。自動車は逃走したが、後に逮捕され、幸い任意保険の存在を確認できた。

内臓損傷は数箇所に及び、大腸・小腸の切除と一時的な人工肛門の増設を含め、腹部に数度の手術を施行した。胸腹部の手術瘢に加えて、植皮のために背部・臀部の広範囲から皮膚採取を行った。

【問題点】

後遺障害診断書には書ききれないので、別紙記載が望まれる。

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 保険会社から治療費を打ち切られると、通院をやめてしまう被害者さんがおります。

 もう、通院しないのですから、「治ってよかった!」・・・とならなければなりません。

 逆に治ってなければ・・・治療費を出してくれない保険会社を呪いつつも、自腹で治療を続けるはずです。    ところが、相談者の一定数は・・・「打ち切られたので、それから病院に行ってません」なのです。    さらに、それでも後遺障害を申請したいと・・。打ち切りと同時に治療を中止すれば、だいたい良くなったと判断されます。

 お金をだしてくれるから(タダなら)病院に通うが、自費では通わない・・・これでは、後遺症どころか症状も軽いと自ら証明したことになります。

 本例は、症状の重さから迷わず健保で治療を継続し、当然に後遺障害認定につなげました。本当に辛ければ、普通に治療・リハビリを継続するものです。 打撲捻挫では、3ヶ月で打切りが普通です  

併合14級:頚椎・腰椎捻挫(30代女性・千葉県)

【事案】

自動車搭乗中、脇道から飛び出してきた車の衝突を受ける。直後から頚部痛、腰部痛のみならず、手足のしびれ、強烈な神経症状に悩まされる。   【問題点】

被害者側の方から保険会社に4ヶ月弱までしか一括依頼をしなかった為、残りの1ヶ月半弱の治療費を健康保険(自費)で対応しなければならなかった。最大の問題は、事故概要が極めて軽微に思われるであろう事案だった。   【立証ポイント】

すぐに病院へ同行して、健康保険対応でも診断書を記載いただけるのかを主治医と面談し、承諾を得た。後遺障害に関する知識と経験が乏しい医師だった為に診断書の内容は散々であったが、却って自然であると判断し、提出。狙い通り2部位で14級認定となった。  

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 死亡診断書には正式なフォームがあり、記載方法も毎年、厚労省がマニュアルを発行しています。医師はこのマニュアルに沿って記載をしています。国から記載要領が指示されているのです。自賠責保険もこのような診断書作成マニュアルを作成して医師に配れば、世の後遺障害申請者はどれだけ助かることでしょう。後遺障害診断書は毎度、医師の主観・独断で書かれますから、医師が保険や労災の基準を知らなければ、的外れな診断書が頻発することになります。私達もこれで苦労しているわけです。

 やはり、死亡診断書は重要かつ特殊な書類なのでしょう。マニュアルの記載と医師法に沿って確認してみましょう。     (1)死亡診断書、2つの意義

1、人間の死亡を医学的・法律的に証明するため

 客観的な証明書類でなければなりません。人の死亡を証明するに、証明者(医師)による偏見的・独創的な視点では困るわけです。

2、日本の死因統計作成の資料とする

 行政側にとって重要な統計データになります。国が記載方法を指示する理由はここにあります。医師法上も、死亡に限らず診断書の記載はまず、医師の義務であることがわかります。  

第19条2 診察若しくは検案をし、又は出産に立ち会つた医師は、診断書若しくは検案書又は出生証明書若しくは死産証書の交付の求があつた場合には、正当の事由がなければ、これを拒んではならない。

  (2)死亡診断書と死体検案書の使い分け

 死亡診断書と死体検案書、名前が違いますが、書式名もそれぞれ併記され、書式は全く同じです。では、どのように使い分けるのか?

○ 死亡診断書

 診療経過中の患者が亡くなり、そしてその死に立ち会った場合。

○ 死体検案書

 ・医師自らが診察していても死亡に立ち会わなかった場合

 ・医師が診察していた時の病気とは関係ない原因による場合

 ・医師自らが診療していなかった患者の死亡の場合続きを読む »

 脳が収まった頭蓋骨と顔面部の境に薄い骨があります。下図の赤い線の部分です。この頭蓋底骨は、頭部への強い衝撃で穴が開く(多くはひびが入る、亀裂骨折)ことがあります。ビール瓶で殴っても折れる可能性があるようです。

 頭蓋骨の底面である頭蓋底は、ちょうど眼の下に位置して、でこぼこで厚さの違う骨で構成され、 多くの孔が開き、視神経、嗅神経、聴神経、血管が走行している複雑な構造となっています。 したがって、この骨折によって、これらの神経の損傷が併発することがあります。

 交通事故受傷後のめまい、失調、平衡機能障害、眼では、視力や調整力の低下などの症状ですが、 傷病名が頚椎捻挫であれば、バレ・リュー症候群として、つまり、頚部神経症状として後遺障害が審査されます。先の諸症状を訴えても、多くは、14級9号が限界となります。視覚、嗅覚、聴覚の障害が交通事故の後遺障害として審査されるには器質的損傷、つまり、骨折があることを立証しなければなりません。ここで発生する最大の問題点が、頭蓋底骨折の見落としです。 続きを読む »

 もう一件も醜状痕です。本件は髪の毛に隠れる部分と、露出する部分の区分けが運命を左右しました。

 頭髪内の醜状痕は手のひらの面積を要します。つまり、頭髪で隠すことができない広さです。本件は、前髪をかき上げて、額部の陥没を主張しました。男性の場合、割と額を見せ易いのですが、女性の場合は生え際の醜状を表出させづらいものがあります。多くの方は髪の毛で隠して、何事もなく過ごすでしょう。過去に、自賠責から、「髪の毛で隠れるから後遺障害にはあたりません」と回答されたことがあります。まるで生え際の攻防、これも審査する人によってぶれる障害認定の一つです。

 髪型で何とか隠せる? それでも、醜状痕は存在するのです。 短髪にしたら目立ちますよ!  

7級12号:顔面陥没痕(20代男性・栃木県)

【事案】

自転車で横断歩道を直進中、左方から自動車が衝突、受傷した。救急搬送され、脳挫傷、頭蓋底骨折の診断となった。硬膜をはく離し、縫い付ける手術?を含む「前頭蓋底修復術」を行った。額に陥没痕を残したが、外傷的には予後順調であった。   【問題点】

面談当時、事故から6年近く経過していた。手術痕は大部分が頭髪内に隠れており、額に及ぶ陥没痕がやや確認できた。この陥没痕が基準上、認められるか。  続きを読む »

 醜状痕の判定も人の印象に左右されるものです。自賠責や労災では瘢痕(あざ)、陥没痕(へこみ)、線状痕(キズ)などから、それぞれ鶏卵大、10円硬貨代、○cmと基準を設けています。  ⇒ 醜状痕の基準

 しかし、キズの様態は様々です。醜状の「みにくさ」という印象も人によって違います。色の薄さ、形状、そこまで細かく基準化できません。医師の診断書の計測・記載内容はもちろん、写真や面接での確認も含め、最後は人が判断するしかありません。調査事務所での面接は必ず2人が担当し、医師の計測が間違いないかを確認します。本件は切り傷であり、線状痕での判定(つまり、瘢痕ではないので非該当)を覚悟していましたが、瘢痕に当てはめてくれたようです。自賠責の、実情を汲んだ柔軟な姿勢を評価したいと思います。

 相談会での宣言通り、切り傷で14級を立証しました! 

  

14級5号:下肢醜状痕(40代男性・千葉県)

【事案】

250ccバイクに搭乗中、左方向から来た車の衝突を受ける。転倒し、膝をざっくり切った。救急搬送され、50針以上の縫合となった。

【問題点】

主な治療先が整骨院であった。既に治療終了とされていた総合病院の主治医に診断書を打診するも、「後遺症はない」と断られていた。また、下肢の醜状痕は瘢痕の面積で判断されるが、裂傷の線状痕であるため、認定基準外か・・。  続きを読む »

 高次脳機能障害の立証における困難の一つに、”客観的データで判定できない症状”があります。とくに、若年層の高学歴者で学校成績が事故前後に差がなく、WaisのIQも高く、他の神経心理学検査の数値も標準以上のケースです。これら学力や検査数値に反映しない微妙な症状は、私達の立証作業上、困ります。また、数値に表れない障害の代表に、情動障害や性格変化、易疲労性が挙げられます。

 一方、本人の努力で障害のハンデを埋めている、ど根性被害者も経験しています。情動障害を抑えるために、精神が高ぶりそうになった場合は、その場を離れて深呼吸するよう指導を受け、それを守っている被害者さんがおりました。また、本例に同じく、記憶力の低下に対処するために以前の3倍の時間をかけて勉強、大学を好成績で卒業した被害者さんも忘れられません。いずれも、その障害が誰から見てもわかるような、明らかなものではありませんでした。いつも以上に、家族の観察を精密に聞き取り、集積する必要があります。まず、症状の訴えが第一歩であることには変わりありません。山本が徹底的に密着、認定まで漕ぎ着けました。

   きっと、私よりこの依頼者さま(7級)の方がIQ高いぞ(泣)  

7級4号:高次脳機能障害(20代女性・神奈川県)

【事案】

自転車信号のない横断歩道を走行中、右方から自動車が衝突、受傷した。救急搬送され、開頭術を実施、一命をとりとめた。診断名は急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫、脳挫傷。

【問題点】

依頼者は受傷当時学生で、復学後留学し、優秀な成績で卒業も果たしてした。そして、事故から3年近くが経過していた。外見上、まったく問題ないようにみえることから、受任した弁護士も障害の残存に懐疑的、秋葉への相談となった。

改めて、ご家族同席で綿密に聞き取ると、ご家族からは日々の日常でおかしいところがあるとのこと。これより、高次脳機能障害の追求が始まった。 続きを読む »

 知能検査、いわゆるIQの検査はWais(ウェイス)と呼ばれています。現在は改訂版のWaisⅢが主流です。waisは高次脳機能障害の知能検査でお馴染みですが、単にIQの高い低いを判定するものではなく、数値をどう解釈するかが重要です。

 まず、前提として、知能指数の優劣に個人差があります。元々、IQ140の人もいれば、IQ80の人もいます。さらに、検査値を二分する「言語性IQ」と「動作性IQ」、このどちらが得意で苦手か、これら項目ごとのIQも個人の能力・個性に依拠するものです。当然、他人との比較は意味を成しません。標準値(≒正常値・平均値)はIQ100と設定されており、比較上の参考になりますが、そもそも、事故前に検査をしたことがある人など希少で、事故前後を比較できません。

 単純比較できない数値ながら、自賠責の高次脳審査会はどのように読み解いているのでしょうか。審査上、被害者が訴える記憶障害、遂行能力、注意機能など、waisの項目ごとの成績の比較と日常の観察の整合性をみていると思います。例えば、読み書きや学習能力の低下がない人は「言語性IQ」が比較的高く、それに比べて、急な変化についていけない、段取りが悪い、判断が遅いなどの症状は「動作性IQ」が低いはずです。これは双方のIQの偏差が顕著な場合、どちらかの能力の低下をみる上で、うなずけるデータとなります。

 秋葉事務所では、waisの数値を見て、その偏差に注目、劣っている部分をより顕在化するために追加検査の依頼を検討します。ただし、本件の被害者さんの能力が回復傾向であり、症状も微妙であるが故、全般的に再検査の高得点が予想されました。そこで、自賠責がどのようなデータを要求するか?様子をみるようですが、自賠責からの再検査の要請を覚悟の申請としました。案の定、Waisのみですが、再検査のリクエストがきました。予想通り、総合IQは高い数値となりましたが、項目ごとの偏差から、かえって細かな症状・変化を裏付ける結果となりました。これにて、自賠責は迷いをふっきったと思います。またしても、申請側(秋葉)の思考と審査側(自賠責)の思考がシンクロしたと言えます。    現在、高次脳案件を9件受任中、事務所内研修でもwais検査を実施予定です。  

5級2号:高次脳機能障害(10代男性・宮城県)

【事案】

自転車走行中、交差点で自動車と出会頭衝突したもの。脳挫傷、頭蓋骨骨折、外傷性くも膜下出血の診断で救急搬送、その後、保存的加療で改善が進んだ。

まず、弁護士に相談があり、後遺障害の立証について協力の要請を受けた。

【問題点】

左半身に軽度の麻痺が残るも、リハビリでの改善は良好。学校成績もほぼ復調に。子供特有の回復力は何よりであるが、例によって、周囲から障害の残存が理解されない。しかし、親からのシビアな観察では、記憶力や注意力の低下、怒りっぽい(易怒性)、幼児低下があり、さらに、疲れやすく(易疲労性)、運動神経の低下、巧緻運動の低下がみられた。これら微細な症状、潜在的な症状を克明に立証する必要がある。

【立証ポイント】

仙台で2度、リハビリ科の主治医と打合せを行った。既に実施されたWaisⅢ(知能検査)のIQは正常どころか、むしろ高いレベルを維持しており、waisや他の再検査をしても正常値、高得点が予想された。これは医師の見解とも一致した。そこで、検査数値に表れない家族の観察・エピソードを徹底的に集積し、日常生活状況報告と学校生活状況報告の別紙にまとめた。これらの情報を積み重ねた上で、医師に診断書を記載頂き、提出した。自賠責も判定が難しくなったはず。

提出後、危惧してはいたが、やはり自賠責はWaisの再検査を要求してきた。医師に再検査の意味合いを説明した手紙を託し、実施に及んだ。高得点は予想通りであるが、本人の学力を反映する「言語性IQ」が高数値を維持するも、比して「動作性IQ」が低く、両者に極端な差が現れた。また、「言語理解IQ」が平均以上に高いにも関わらず、「作動記憶」や「処理速度」の低さが目立った。これは、注意機能の低下や易疲労性を裏付ける結果になったと思う。

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(3)秋葉事務所の場合

 最初から「脊髄損傷」の診断名に懐疑的です。相談会での経験上、診断名に脊髄損傷とあっても、70%は脊髄損傷ではなく、外傷性頚部症候群の範疇となる神経症状でした。そもそも、町の個人開業医の診断力にそれ程、期待していません。また、持参頂いたMRIから、損傷を思わせる高輝度所見を確認するまでは信用できません。

(脊髄損傷の依頼者さまから許可を得て掲載)

 そして、その場でホフマン・トレムナー検査を試み、脊髄損傷の陽性反応をみます。これらの所見が訴える自覚症状と一致して、初めて診断名を信じます。 続きを読む »

 交通事故の相談で、診断書を数千枚、拝見させていただいた経験からです。

 医師の書いた診断書は絶対的に正しく、記載された診断名は間違い無い・・そのような事はありません。何事も間違い・エラーは含まれます。それが医師であっても然りです。また、より問題をややこしくしている点は、臨床上の判断と賠償上の判断が一致しないことです。簡単に言いますと、治療者として患者を診た診断名と、後遺障害として自賠責や労災が基準を設定し、認定した診断名が食い違うことがあるのです。そのような診断名をシリーズでいくつか紹介したいと思います。    まず、経験上、多くみられるのは、「脊髄損傷」です。強烈な上肢のしびれがあり、めまいや頭痛等、重度の神経症状を訴える患者が町の整形外科医に行きました。さて、医師の診断は・・・。   1、手のしびれを訴え、歩行も辛そうだ。単なる、頚椎捻挫では症状が重過ぎる。

2、レントゲンを撮ったが、骨に異状はない。

3、(MRIの設備がないので軟部組織はレントゲンで写らないが)、神経になんらかの損傷があったのでは?

4、したがって、診断名は「(軽度の)頚髄損傷」。    診断名はこのようなプロセスで浮上します。以下、迷走を続けます。   5、そして、脊髄損傷(頚髄損傷)の診断名をゲットした患者さんは、紹介された大きい病院に入院してステロイド治療に進みます。

6、対して、保険会社は「むちうちで脊髄損傷?ふざけるな!」と入院先の患者に面会し、医師に症状を問いただします。

7、医師は「強烈な痺れを訴えています。頚部の神経に微細な損傷があると思います。正確に言えば頚髄不全損傷です」。しつこく画像所見を問いただすと、「う~ん、頚髄損傷の疑いでしょうか」と、だんだんトーンダウンしてきいきます。

8、確かにMRI検査の結果からも、脊髄損傷を示す明らかな所見がみつかりません。当然、保険会社は入院治療を拒否、その後の通院も3ヶ月を目処に打ち切りを打診してきます。

9、患者は、保険会社の攻勢に対して、「脊髄損傷なのに横暴な!」と弁護士に泣きつきます。そこからは、弁護士等受任者の経験・実力から、さらなる迷走か、軌道修正か、運命が分かれます。    以下、3パターンをみてみましょう。   (1)交通事故案件の経験少ない弁護士の場合

 診断書を見て、「脊髄損傷じゃないですか!」と最初から丸ごと信じます。「後遺障害は9級、7級が見込めます。少なくとも12級になります!」と息巻きます。今後、請求する慰謝料や逸失利益を計算して、「これは利益の大きな案件だ」と張り切ります。

 しかし、自賠責の等級は「非該当」もしくは「14級9号」となるはずです。そこで、期待させた依頼者から、散々責められて・・面目立たずに委任解除となります。または、引っ込みがつかなくなった先生は、軽薄な診断書一枚を持って裁判に持ち込みますが、有効な立証などできようもなく青色吐息、「この辺で手を打つよう」必死に依頼者の説得にかかります。毎度、脊髄損傷の診断名はうやむやとなり、低額の和解(実際はボロ負け)=最初から裁判の必要などない結果となります。

 交通事故に限らず、弁護士先生は、医師の診断書(その他の公文章)を信用し過ぎる傾向があります。イノセントとは言えますが、経験不足は否めません。このようなケースを何件もみてきました。   (2)交通事故にそこそこ経験ある弁護士の場合

 「ちょっと待って、診断書の診断名は置いておいて、MRIで脊髄損傷の所見は得られているのでしょうか?」からスタートします。そして、訴える症状を検証するために、現在の主治医だけではなく、専門医の診断を示唆します。臨床上の診断名が賠償上、維持できるか慎重になります。

 結局、自賠責の認定結果を待って、認定等級を前提に賠償交渉を計画します。問題は「脊髄損傷」の診断名にこだわる依頼者をどう説得するかでしょうか。    明日は、(3)秋葉事務所の対応 を披露します。  

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 違いが曖昧な用語について整理したいと思います。知っているつもりが、具体的な説明に窮してしまう専門用語はいっぱいあります。立ち止まって勉強する毎日です。  

脳死と植物状態

 脳死とは、呼吸・循環機能の調節や意識の伝達など、生きていくために必要な働きを司る脳幹を含む、脳全体の機能が失われた状態です。事故や脳卒中などが原因で脳幹が機能しなくなると、回復する可能性はなく二度と元に戻りません。薬剤や人工呼吸器などによってしばらくは心臓を動かし続けることはできますが、やがて(多くは数日以内)心臓も停止してしまいます(心停止までに、長時間を要する例も報告されています)。植物状態は、脳幹の機能が残っていて、自ら呼吸できる場合が多く、回復する可能性もあります。脳死と植物状態は、根本的に全く違うものなのです。

 ←脳全体  続きを読む »

 灰谷先生、大事無かったようですね。自殺未遂とまではいかないまでも、相当、精神的にまいっているようでしたけど。    冒頭、クラビクルバンドを装着して登場しました。 「それ、内側に着けるの!」と言われたシーンです。

  アマゾンでも、3000円位で買えます。

 クラビクルバンドとは・・・鎖骨骨折後、骨癒合まで胸を張るように姿勢を保持する必要があります。そのため、変形や転位を防ぐ(ほっておくと鎖骨の多くは上に出っ張る)ための固定具です。

 灰谷先生は鎖骨骨折で済んだのですね。すぐに仕事していた様子から、亀裂骨折(ひびが入った)程度かもしれません。軽傷でよかった・・雰囲気です。鎖骨骨折はちゃんとくっつきさえすれば、深刻な障害を残さないからでしょうか。手術の選択は、粉砕骨折などで保存療法では正常な癒合が望めないケースです。もしくは、癒合に長期間が見込まれるケースです。肩鎖靱帯・鳥口肩鎖靱帯の断裂を伴えば、折れた鎖骨が上に飛び上がったままになりますので、プレートやワイヤーでの固定術は必至となります。仮に、わずかな変形や転位が残っても、あえて手術で整復しません。鎖骨は肩関節の安定的な可動を助ける役目ですが、ある意味、鎖骨下の上腕神経などの内部組織を守ってくれるバンパーに思えます。 続きを読む »

 昨夜の放送では、患者を助けたい一心とはいえ、灰谷先生のミスが連発、最後にはホームに転落、意識不明で搬送されました。その際、毎度、救急救命科で飛び交うセリフ、「意識レベル3桁です!」と。 

 本日は意識障害についておさらいしたいと思います。高次脳機能障害における自賠責や労災審査の入り口部分で、非常に重要な記録となります。それとは関係なく、救命の現場では必須の初期所見です。GCSの運動1については、ドラマの救急搬送のシーンで毎度のごとく、医師が患者に「手を握って下さい」と言っていますね。

 最後に、劇中、処方箋に書かれた睡眠薬について、薬シリーズから復習します。   

ジャパン・コーマ・スケール(JCS) 日本で考案、医療機関、救急隊で広く使用されており、 3-3-9度方式とも説明します。  刺激なしで覚醒 1 清明とはいえない 2 見当識障害あり 3 名前、生年月日言えず 1 2 3  刺激すると覚醒 1 呼びかけで容易に開眼 2 疼痛刺激で開眼 3 疼痛・呼びかけでやっと開眼 10 20 30 続きを読む »

 前回の記事で予想した通りの展開が待っていました。山Pが脳外傷の患者を現場でオペするシーンで、脳内出血・脳圧上昇で危険な状態への対処を急ぎ、頭蓋にドリルで穴を開けて、血腫(出血が一箇所に溜まって固まってしまう状態)の排出を試みました。CTで脳内を観る暇もなく、一刻を争う場面です。当初は「硬膜外血腫」を疑い、次に「硬膜下血腫」と予断、しかし、血腫は見つかりません。ついに、脳腫脹(のうしゅちょう)による、脳圧の上昇を突き止め、看護師 比嘉 愛未さんの補助で脳脊髄液を簡易的なドレーンで排出、命を救いました。   まさに、脳外科医による救急救命を象徴するシーンでした。専門用語が飛び交いましたが、一つ、疑問が。脳圧上昇の原因を「脳腫脹」と。私はそこで「脳浮腫(のうふしゅ)」では?と思いました。どうも知識が曖昧です。そこで、早速調べてみました。   続きを読む »

 先日の研修で疑問点がありましたので、この機会にまとめ直しました。    以前にも本HPの記事で取り上げましたが、改めて表に整理しまた。このページがあれば、検査結果を読み取ることができます。非常にマニアックですが、高次脳を扱う者にとって欠かせない知識です。   <解説>  リバーミード行動記憶検査(RBMT=Rivermead Behavioural Memory Test)は、記憶障害の診断に1985年にバーバラ・ウィルソンらにより開発されました。名称は、イギリス・オックスフォード大学のリバーミードリハビリテーションセンターで開発されたことによります。1999年に拡張版、2003年に第2版が発売され、最新版は2008年発売の第3版になります。  

 検査時間は9つの質問で30分程度。従来の検査と比較して、より日常生活に近い状況を想定して、日常記憶の診断ができることが特徴です。私は過去2度ほど、この検査に立会いました。ウェクスラー(WMS-R)を科学的な考察とすれば、リバーミードは実験的な検証と位置づけています。

 医師、臨床心理士、作業療法士、言語聴覚士、理学療法士などによって、リハビリや障害評価の場面に利用されています。

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 高次脳機能障害では、毎回、難しいご依頼が続いていますが、本件も記録と記憶に残る立証作業となりました。    当たり前ですが、後遺障害とは、「ケガが治らず、症状が残存したもの」を対象としています。そして、それは現在、生きているか否かは関係ありません。しかし、死亡後は本人の診察も検査も出来ないわけですから、生前の記録しか頼れません。その点、本件ですが、自賠責は書面審査を原則としていますので、十分勝算ありと踏みました。    それでも、雲を掴むようなもどかしさの中、1年間、家族と共に奮闘しました。審査側も推認の部分が大きかったと思いますが、自賠責の好意的な調査・判断には感謝しています。

   タイムマシンと言えば、デロリアン(お台場ヴィーナスフォート)

 

死亡・非該当⇒別表Ⅰ 2級1号:高次脳機能障害(80代男性・東京都)

  【事案】

自転車で道路を横断中、自動車と衝突、救急搬送された。診断名は、頭蓋骨陥没骨折、脳挫傷、急性硬膜下血腫、くも膜下出血。脳出血は止まり、安定をみせるも嚥下障害があり、胃ろう(胃から管を通して栄養接収する)造設となる。

その後、体力の回復に従い、ひどいせん妄(脳のダメージで興奮状態となり、暴れや暴言)を発症した。

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