(1)病態

 椎体に圧迫骨折がなく、棘突起から椎弓根を経て椎体上縁までの水平な骨折を発表した放射線技師の名前からチャンス骨折と呼ばれています。イラストにあるように、脊椎骨の前柱、中央柱、後柱の3カ所すべてが骨折する不安定型です。

 腰部だけを締め付ける旧2点式シートベルトの時代、交通事故の衝撃で、同乗者が胸・腰椎を骨折することがあり、俗に、シートベルト骨折と呼ばれていました。シートベルトを支点として屈曲牽引力が加わり、脊椎に水平に骨折線が生じるもので、腰椎、T12・L1・2・3で好発していました。今は、3点式シートベルトであり、同乗者のシートベルト骨折は激減しています。

 チャンス骨折は、脊椎の過剰な屈曲により生じる脊椎骨折であり、50%では、脾臓破裂、小腸損傷、腎臓損傷、腸間膜の破裂など、腹部外傷を合併しています。交通事故では、自動車同士の正面衝突、電柱や樹木などに激 突、転落などによる腹部への衝撃がチャンス骨折の原因になることも報告されています。
 
(2)症状

 腰部の激痛で歩くことができません。骨折部の殴打で痛みが増強します。
 
(3)治療

 チャンス骨折そのものは、XPで確認できますが、腹部損傷の検査では、CTが有用です。椎体の3カ所におよぶ不安定骨折であり、早期離床を目指し、後方固定術が行われています。術後2週目から体幹コルセットの装用で離床が促され、骨癒合が良好であれば、術後10週でコルセットは除去されています。
 
(4)後遺障害のポイント
 
 「脊柱の変形」の認定基準から判定されます。 
 
Ⅰ. 変形癒合を残したもの、後方固定術が行われたものは、脊柱の変形で11級7号が認定されます。
 
Ⅱ. L4~5など、部位によっては腰椎に2分の1を超える運動制限を残すことがあります。ただし、1椎体のみの骨折の場合や、固定術等が施行されない限りは、可動域制限の認定はありません。可動域制限は起きない前提から、後遺障害は「脊柱の変形」、あるいは「神経症状」の判定になるはずです。
 
◆  圧迫骨折、破裂骨折、チャンス骨折を区分しますと・・

① 椎体前柱部分の楔状骨折を ⇒ 圧迫骨折
 
② 前柱部分に加え、椎体中央柱・後柱部分におよぶ骨折 ⇒ 破裂骨折
 
③ 水平骨折で椎体から椎弓部分にまで骨折線がおよぶ ⇒ チャンス骨折
 
 次回 ⇒ 腰椎横突起骨折