行政書士の主要な仕事、それは商売や事業を始める為に役所に許認可申請をする書類を収集・作成、代理提出をすることです。ひな形を写して、マニュアル通りに書類を揃えて申請すれば、普通に許認可はおりるものです。その点、士業の仕事の中では比較的容易と言えます。

 しかし、何事も例外があるもので、許認可を得るに紙一重、書類作成の難度が高い、手間暇が膨大など、素人には荷が重い案件もあります。ここはプロの出番です。歴戦のプロは実践のノウハウが豊富で臨機応変な作業ができます。また、蛇の道は蛇のような裏の手も知っているはずです。それこそ、お金を払う価値のある依頼となります。
 
 前置きが長くなりました。弊所は一般的な許認可の申請業務ではなく、あらゆる保険関連の書類作成・収集、その申請を担っております。とくに自賠責保険の申請数(代理申請を除きます)は弁護士事務所を含めても、業界トップクラスの数と、人体あらゆる部位・症例種数を誇っています。手前味噌が並びますが、専門家を名乗るに恥ずかしいくない知見を持っていると自負するところです。
 
 今日はそのプロから、「誰でもできる書類申請の奥義」を一つ伝授しましょう。
 
 最近の実例、労災の障害給付を例にします。

 依頼者さんご自身で、ある労働基準監督署に申請書類の提出を指示しました。そこで、あるベテラン職員が対応したのですが、賠償請求と並行した申請から、つべこべと理屈をこねられ、挙句、賠償問題が決着ついてからの提出にするよう説得されました。これは、賠償金と二重取りを防ぐべく、支給調整をしなければならない労災側の面倒が理由になります。ところが、労災の法令では、「示談後じゃないと申請できない」ルールは存在しません。しかし、内部規定というか運用基準の存在はあるようです。いずれにしても、どちらかの職員が間違った理解・運用をしているのか、あるいは、知っていながら面倒な手続きを回避する為なのか、知る由はありませんが・・。

 結局、依頼者さんは諦めて、すごすごと帰りました。
 
 そこで、私の指示ですが・・・
 
 「もう一度、窓口に行って申請して下さい」です。
 
 また同じ職員なら、その場で電話で私が説明して、受理するよう逆に説得します。

 それで解決する場合もありますが、実はもう一つの期待があります。
 
 それは、”違う職員なら受理してくれることがある”です。
 
 再度窓口にいきましたところ、その期待通り別の職員が対応、問題なく受理されました(先の職員は何だったのか?)。
 
 お役所の手続きは、職員によって解釈が違い、往々に担当者によって対応が変わることがあります。複雑な案件こそ、そのような傾向なのです。
 
 手慣れた行政書士は、「○○市役所のA職員は厳しいんだよなぁ~」と経験則をもっていますから、その職員が休みの時や、席を外している時を狙うことがあります。または、最初の職員が受付けない場合、その場は素直に諦めて帰りますが、しれっと後日、違う職員に提出することをやってのけます。
 
 この辺の機微は、やはり専門家でもそれなりの知見が必要です。それでも、この奥義を覚えておいて下さい。
 
 ダメなら、違う担当者にあたってみる。