交通事故を契機に、肩関節の不調を訴える被害者が後を絶ちません。むち打ち・腰痛の次に多い症状かもしれません。    多くの場合、むち打ちを契機とした、いわゆる頚肩腕症候群の範ちゅうに入ると思います。40~50代が圧倒的に多く、若年層はほとんどいません。中高年ともなれば、体が硬く、頚椎にも年齢変性がみられ、首から肩にかけて過緊張の状態になっています。交通事故外傷以前に、中高年の4人に1人は何等かの症状を持っていると言えます。

 さて、毎度、賠償問題となるのは、これらの症状が事故を原因とするものか否かです。保険会社は受傷の状況に不自然がなければ、およそ3か月の治療は容認します。しかし、それ以上となると・・「打撲・捻挫でいつまで通っているの(怒)」とは言いませんが、治療費打切りを切り出してきます。通常、打撲捻挫の類は消炎・鎮痛処置をすれば、1か月もすれば軽快するものです。3か月でも十分、それ以上は長過ぎると思うわけです。これは、単なる”保険会社の払い渋り”とは言えません。

 しかし、3か月でも症状が治まらない被害者さんは、確かに一定数存在します。さらに、その一定数からも大きく2つに分かれると思います。一つは、頚椎捻挫から頚部の神経症状が発症したタイプです。これは単なる捻挫を通り越して、上肢のしびれを代表に、様々な不定愁訴(頭痛や吐き気、肩の重だるさ、その他不調でなんだか調子悪い)が半年から数年続くことになります。肩関節も痛みから動かさないので、関節が拘縮し可動域制限が残る方も含みます。これを、「90°までしか肩が挙がらない! 肩腱板不全断裂ですから!」と、10級10号の診断書を提出したら・・自賠責保険の怒り(非該当)を買うこと必至です。絶対に10級を認めないと思います。    このような被害者さんは、痛みの継続をもって、後遺障害14級9号「局部に神経症状を残すもの」の認定を受け、その賠償金を得て、長期間の治療・リハビリに備えるべきと思います。この程度(と言っても200万円~)で手を打つべきなのです。治らないからと言って、いつまでも保険会社と戦争すべきではありません。この解決の流れを作ることが私達の仕事でもあります。    もう一つのケースは、事故受傷を契機に頚部や肩の痛みは当然として、肩にそれ程のダメージがないであろう受傷状況から、「どんどん肩が挙がらなくなった」人です。先の説明、神経症状の一環とも思えず、いわゆる四十肩・五十肩、老化による自然な肩関節周囲炎の症状そのままです。この場合、事故受傷により、その衝撃から発症してしまう不幸なケースもあれば、実は事故前から不調だった、あるいは事故後から拘縮が進むケースですから、ケガと言うより年齢変性・運動不足による疾病に近づきます。事故との因果関係について、保険会社は当然に否定します。肝心の医師も判断に困ります。それがわかるほど、現代の医学は進歩していません。そして、賠償問題に関わりたくないので、患者と距離を置きます(逃げ出します)。

 単なる打撲・捻挫、挫傷の類で、「肩が半分までしか挙がらなくなったのは事故のせいだ!」と保険会社と対峙しても、その争いは自賠責保険の後遺障害審査はもちろん、裁判でも負けると思います。骨折や脱臼、棘上筋断裂で手術でもしていれば別ですが、ズバリ、証拠がありません。その点、この問題をさらに複雑にするのが、医師の診断名です。半分も肩が挙がらないことのみをもって、「肩腱板断裂(損傷)」の診断を下してしまうのです。画像検査もなしに確定診断?は軽率に過ぎますが、そもそも町医者の先生に、MRI画像を正確に読影して頂くことなど高望みなのです。

   独り歩きを始めた診断名(診断書)ですが、賠償問題で保険会社と争う段階になれば、「肩腱板断裂」→「肩腱板不全断裂」→「肩腱板損傷の疑い」と、だんだん自信喪失、薄まっていきます。本来、慎重な医師であれば、予想的な診断名を口にしません。肩関節の専門医にコンサル(紹介)します。その専門医も安易に断定しません。問診・徒手検査を経て、MRIやエコー検査の画像を基に丁寧に診断を下します。そして、たいてい「年齢変性による肩関節の拘縮ですね」となりますが。    このように、中高年にとって、事故外傷と(年齢変性による)諸症状の切り分けこそ、交通事故解決の宿命と思います。私達は日夜、被害者さん・保険会社・医師の3者の交通整理をしているようなものです。    かく言う、私も肩の痛みに悩まされています。私には無縁と思っていた(根拠のない自信)五十肩になったのでしょうか? この件はまた、後日レポートしたいと思います。  

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 次に、指を曲げることができなくなった、または伸びたまま硬直した状態、伸展拘縮も検討します。曲がらなくなった理由は一つではありませんが、屈筋腱損傷を前提に考えます。これも基本知識から。

 

(2)屈筋腱損傷の基礎解説 手の掌側にある屈筋腱が断裂すると、筋が収縮しても、その力が骨に伝達されないので、手指を曲げることができなくなります。切創や挫創による開放性損傷、創のない閉鎖性損傷、皮下断裂がありますが、圧倒的に前者です。屈筋腱の損傷では、同時に神経の断裂を伴うことが高頻度で、そんなときは、屈筋腱と神経の修復を同時に行うことになり、専門医が登場する領域です。

手指の屈筋腱は、親指は1つですが、親指以外では、深指屈筋腱と浅指屈筋腱の2つです。親指以外で、両方が断裂すると、手指が伸びた状態となり、まったく曲げることができなくなります。

深指屈筋腱のみが断裂したときは、DIP関節だけが伸びた状態となり、曲げることができません。しかし、PIP関節は、曲げることができるのです。

屈筋腱損傷の治療は、手の外傷の治療のなかで最も難しいものの1つで、腱縫合術が必要です。年齢、受傷様式、受傷から手術までの期間、オペの技術、オペ後の後療法、リハビリなどにより治療成績が左右されます。治療が難しい理由には、再断裂と癒着の2つの問題があります。オペでは、正確かつ丁寧な技術が求められ、オペ後の後療法も非常に重要となります。

(3)DIP関節の伸展拘縮と屈曲拘縮、どちらかで14級7号は認められるのか?

 労災の認定基準では、以下の通りです。

 14級7号:1手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの

 MCP(指の根元)やPIP(第2関節)は1/2までしか曲がらなくなった場合で用廃と、労災・自賠責共に基準とされています。

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 多くの指の認定例を誇る秋葉事務所でも、まだ未経験の部位・症状があります。今後、それらの受任と実績を待つとして、自賠責・労災の認定基準を明確に把握しきれないケースについて、最新の認例実績をもとに解明していきたいと思います。

 指のケガを検索、秋葉事務所に引っかかった方は、どしどしご相談下さい。初の相談例であっても、指にまつわる経験則は抜きんでていると思いますので。     【1】 DIP関節における機能障害の等級認定は?

 DIP関節は指の一番先の関節です。根本の関節(MP)、中間の第二関節(PIP)、親指の場合は(IP)・・これらの機能障害、欠損の認定基準は上の一覧表を見れば、容易に判断できます。しかし、細かい症状で悩むことがあります。最初に取り上げるのは、第1関節(DIP)の障害です。機能障害としての認定基準、例えば可動域制限などは明記なく、14級7号が唯一明記されています。   「14級7号:1手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの」    このような障害の代表は、いわゆる「突き指」で第一関節が曲がったまま固まった状態でしょうか。多くは、伸筋腱か屈筋腱の損傷を原因に、そのまま長期間装具固定した、あるいは放置した結果、関節が拘縮してしまった状態です。こうなると、手術での改善も時すでに遅しに感じます。

 この後遺障害で秋葉が感じる謎は、「屈伸できなない=硬直」は当然として、では、「伸ばすことはできるが曲げることはできない(伸びたまま)=伸展拘縮」、逆に「曲げることはできるが、伸ばすことはできない(曲がったまま)=屈曲拘縮」、これらも14級7号に該当するのか?です。 まずは、基礎解説から(交通事故110番より)。   (1)伸筋腱損傷の基礎解説   指を上から見たときの解剖図

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 というのも、10年前位は、診断書の数値通りの認定が容易だったと思います。しかし、近年、後遺障害申請数は増加の一途、また、ネット情報の伝搬から可動域を装う詐病者や、それを示唆する業者の影響からか、より厳しく可動域制限を審査するようになったと感じます。

 そもそも昔も今も、審査基準に照らせば、関節の機能障害における可動域制限は、骨折部位・様態と症状固定時の癒合状態から、「物理的に曲がりが悪くなった」原因を必要としています。つまり、画像所見で判断しています。また、計測の正確性も見ています。医師の書いた診断書の記載内容は絶対ではなく、常に審査側の判断・解釈に委ねられているのです。

 本例の骨折箇所と骨折様態から、癒合状態が良好ながら、それ程可動域の数値は疑われないものでした。すると、後は正確な計測だけです。関節可動域の回復のために一生懸命な理学療法士先生には頭が下がる思いですが、ケガの苦しみに見合った等級を残したいものです。シビアに計測をして頂きました。

理学療法士先生の気持ちはわかります   

12級6号:上腕骨頸部骨折(60代女性・埼玉県)

【事案】

自転車で道路を走行中、後方から前方不注意の車に追突を受ける。肩関節内で上腕骨を骨折し、救急搬送された。6ヵ月間のリハビリに励むも、可動域制限が残った状態で症状固定となった。

【問題点】

今回の件では、症状固定前に何度か病院へ同行、リハビリにも立ち会っていた。理学療法士の技術と尽力から可動域は回復傾向に。改善は何よりではあるが、毎回一生懸命に可動域拡大訓練の後に計測をするので、12級6号の基準「4分の3」を超えてしまう懸念があった。

もう一点は、幸い良好な骨癒合から、可動域制限を否定される可能性があった。

上記2点を対策しなければ、機能障害を否定される。 続きを読む »

 手首には8つの手根骨があります。よく折れるのは決まって舟状骨で、転倒で手をついた際に折れるケースを数例経験しています。しかし、他の骨は初です。

 この手の骨折はレントゲンでは不明瞭で、CTやMRIで判明することが多くなります。もしくは、橈骨や尺骨、中手骨が折れた際に、ついでに発見される傾向です。舟状骨はじめ、単独の手根骨骨折は、確定診断が遅れるのです。

 本日は埼玉へ病院同行、その画像を主治医医と一緒に観ることができました。確かに珍しい部位かつ、微細な病変部でした。レントゲンでは済まない、精密な画像検査が望まれます。普通は見逃すか、発見に時間がかかりますが、なんとご自身で調べてCT・MRI検査を依頼・・結果、珍しい骨折を発見しました。本来、秋葉事務所がやるべき仕事を先に進めて下さったのです。

 実は、本件依頼者さんはベテランの損保代理店さまでした。目の付け所と検査手配はさすがです。    毎度、骨折を予想して検査を促す立場としては、(残念ながら?)楽をさせて頂きました。後遺障害につながるかは、今後の骨癒合と回復具合ですが、解決までしっかりフォローしていこうと思います。

 

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 本件では、珍しく認定等級の見通しを外しました。もちろん、すべての障害を漏らさず網羅した申請なので、等級を取りこぼすことはありませんが・・。

 人体の関節の機能障害では、その可動域制限が認められるには、医学的に(物理的にと言った方が?)関節が曲がらなくなる理由が必要です。最たるものが関節内骨折です。変形の具合によっては、関節の動きを邪魔するからです。ですので、関節部から離れた骨折、その関節の可動に影響ない癒合状態では、可動域制限は疑われるのです。

 また、骨折が関節に直接及ばなくても、腕や脚の骨折でその骨癒合を待つ間、関節を動かさないでいると、やはり、曲がりが悪くなります。しかし、その可動域制限は2次的な症状と判断され、「リハビリ不足」のレッテルから、後遺障害と認めないのです。例外として、関節を動かす神経が断絶した場合、その神経麻痺を原因に認める場合があります。    頚椎はじめ脊椎の可動域制限は、その可動をつかさどる部位でなければ否定されます。例えば、腰椎破裂骨折の場合、第4~5腰椎がひどく破壊されれば、もしくは3椎体以上にまたがる固定術で固定されたら、腰椎の可動域制限があって然りとなります。それが、第1~2腰椎では、”腰の曲がりに影響しない”と判断されます。横突起が折れた程度では、これも同じです。

 以上が、非公表ながら自賠責の認定基準であると把握しています。

 本例の場合、基準通り、頚椎の横突起は頚部の可動に影響しません。では、椎間関節は可動域に影響するのか?・・これが本例から判明しました。文字から椎間関節は、関節内骨折の響きがありますが、「頚椎部の運動障害」の根拠となる部位としては重要視していませんでした。神経症状狙いのところ、普通に可動域を主治医に記載頂き、審査に付しました。結果は以下の通りです。   これも貴重な認定例になりました  

8級2号:第7頚椎横突起・椎間関節内骨折(40代男性・東京都)

  【事案】

自動車の後部座席に搭乗中、交差点で信号無視の自動車の側突を受け、自動車が横転したもの。頚椎、鎖骨を骨折、頭部は硬膜下出血、顔面は切創、以後、強度の神経症状が続いた。

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 秋葉事務所がもし「他事務所との違いは何ですか?」と聞かれたら、こう答えるでしょう。  

 「画像を観てから提出しています」

   後遺障害の仕事は、単に診断書などの書類を集めるだけではありません。等級認定を決めるのは画像です。審査側の自賠責調査事務所は、とりわけ受傷時と症状固定時の骨や靭帯の状態に注視しています。私共、申請側もそれに倣っています。まさに、本件は癒合状態が等級認定の決め手となりました。

 秋葉事務所では、これまで医師が見落とした画像所見を指摘、診断書に追記頂くことが何度もありました。これは、決して医師に勝るなどと自慢しているわけではありません。医師は限られた時間で患者に接し、治療上に影響のない骨片程度の確認の為に、画像を隅から隅まで観る時間などありません。何より、自賠責や労災の認定基準など守備範囲の外、あくまで治療に尽くすのが医師の役割だからです。その点、医師任せでは等級を取りこぼす危険性が潜んでいると言えます。

 また、画像を観ない、理屈ばかりで後遺障害等級の経験少ない事務所に任せてしまうと・・本件のようなケガでは、その障害は無かったことにされるかもしれません。   お手柄の金澤 「レントゲン再検査して良かった!」  

14級6号:第5指PIP関節脱臼骨折(30代女性・静岡県) 

【事案】

交差点にて横断道路を歩行中、前方不注意の右折車に衝突を受ける。転倒した際、小指を脱臼し負傷。事故から6ヵ月目、相手保険から打切り打診があった段階での相談となった。

【問題点】

受傷した小指は、可動域制限あるも、13級6号「1手のこ指の用を廃したもの」に届かない数値だった。残るは靭帯損傷か神経症状の残存か・・選択は厳しくなった。

【立証ポイント】

左小指の軟部組織状態を精査する為、急遽主治医にMRIの紹介状を貰うよう手配。MRI撮影後、本人から画像のコピーを速達で送って頂き確認。軟部組織に異常が無いと判断し、症状固定の日取りを調整した。

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 普通、ホームページでは華々しい成功の記録を誇示するものです。集客・宣伝ですから、それは当然のことです。しかし、秋葉事務所の姿勢は異なります。

 HPで実績をUPして10年を超えますが、そのアクセスを分析すると、全国の交通事故被害者さんはもちろん、弁護士・関連業者のアクセスが半数を超えると思われます。ネット情報とは言え、一定の信頼から秋葉事務所の実績を参考にして下さっているようです。多少なりとも被害者さんや同業者さんの役に立っていること、これは人助けに通じる名誉なことだと思います。

 このシリーズ、あえて人には見られたくない認定例も隠さず紹介してきました。失敗例もきっと誰かの役に立つはずです。

多くの経験値を誇るも、まだ未経験の症例や知らない事も多いのです  

12級5号:肩峰骨折・肩鎖関節脱臼(10代男性・千葉県)

  【事案】

自転車で交差点右折の際、左方よりの自動車と衝突、転倒したもの。右肩の激痛から、レントゲン検査したところ、肩甲骨の肩峰が骨折、数日後、転院先で手術(鋼線での固定)となった。  

【問題点】

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 多発骨折と言っても、癒合さえすれば問題を残さない部位があれば、深刻な後遺症となる部位もあります。傷病名が複数の場合、その整理をしながらの作業になります。症状固定時に残る後遺障害等級を想定した設計図を描くこと、これが専門家の仕事です。

 本件は、諸事情から回復が進まず、症状固定まで時間がかかりました。2年を待ちましたが、なんとか取りこぼしなく、設計図通りの認定を得て、弁護士に引き継ぎました。十分な逸失利益獲得へ準備は整いました。

 症状固定まで2年、大過なく認定へ   10級10号、12級5号:鎖骨骨折(30代女性・千葉県)   10級11号:足関節脱臼骨折(30代女性・千葉県)   続きを読む »

 本件は、降車の際の転倒ですから、自損事故と言えます。それを助けてくれた人身傷害保険様々です。ですから、普通に傷害保険に請求する感覚となります。しかし、妥協できないのは、後遺障害です。この等級次第で、保険金が桁違いとなることがあります。したがって、基本通りに立証作業を進めます。その点、本件は秋葉事務所にご依頼下さって正解でした。

 また、保険金提示に対しても注意が必要です。人身傷害保険の特徴は、治療費や休業損害の実額だけでなく、慰謝料と逸失利益が計算・支払われます。約款上、慰謝料は入通院日数からの計算式、等級ごとの定額が明記されています。これは約款通りの提示となります。しかし、逸失利益は自由度が高いもので、年収または平均賃金から計算され、喪失率や喪失期間も担当者判断です。この計算で、いかようにも調整が可能なのです。

 本件の場合も、比較的高齢から、「もう隠居でしょ」と勝手に判断されて、最初は低い提示でした。しかし、復職を果たしている事実、まだ数年は労働が見込める点から、ご家族が交渉しました。結果、数十万円も増額しました。もっとも、加害者のいない事故で、助けてくれた保険会社相手にゴリ押しは遠慮したいところ、それなりの交渉で手を打つよう、アドバイスしました。   人身傷害も丁寧に申請すべきです  

人身傷害12級6号 :橈骨遠位端骨折(60代女性・神奈川県)

【事案】

停車後、降車の際に転倒し、手をついて手首を骨折したもの。

【問題点】

骨折後にわずか変形癒合があり、手首の動きがギリギリ12級の数値を示していた。ただし今回は相手がいない事故なので、相手保険会社や自賠責は使えない。相手がいる事故であれば自信をもって12級を狙いに行くのだが、相手のいない事故で自身の保険会社に請求する上で、強交渉は遠慮がち。

【立証ポイント】

まずは手首の状態を確認する為3DCTを撮影、次に本人の診察時に病院へ同行し、レントゲン記録や治療記録等も確認した結果、14級を確実に抑えつつ、12級も狙える内容にする方針を固める。2回目の病院同行前にその3DCTの打出しを作成した。その打ち出しを主治医に提示したものの、変形癒合の判断までは難色を示す。あくまでも本人は治療結果に満足をしている意思を伝え、対保険請求としての意見を求めなんとか記入頂けた。

その他、診断書に12級妥当となる情報をカルテから引っ張って記入頂いた結果、12級の判断を頂いた。

ちなみに、人身傷害の保険金提示では、毎度のことだが逸失利益の少額示など、支払い渋り、否、厳しい査定が続いた。納得のいかないご家族の粘り強い交渉から、70万円近く増額となった。場合によりますが、人身傷害保険も交渉次第なのです。

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 慣れない用語が含まれますので、先に解説します。    ○ 肩関節炎・・・中後年の肩の痛み、腕が挙がらないなどの症状の多くは、いわゆる「50肩」、加齢による肩関節周囲炎の診断が多くを占めます。処置として、最近ではヒアルロン酸注射が多いようです。本件の場合は、肩にケナコルト注射を打ちました。これはステロイド系に属し、肩関節腔内に注射して炎症を抑える効果を期待します。   ○ 医療過誤・・・(いりょうかご、 Medical malpractice)とは、治療行為における誤りによって患者に被害が発生すること。医療ミスともいう。   ○ 医療賠償責任保険(医師賠)・・・医師が加入する、医療過誤など患者に賠償責任を負った場合、その賠償金を肩代わりする保険です。主な支払い項目は以下の通り。   ① 法律上の損害賠償金

法律上の損害賠償責任が発生した場合において、被保険者が被害者に対して支払責任を負う損害賠償金

※ 賠償責任の承認、賠償金額の決定についてはあらかじめ保険会社の同意が必要となりますのでご注意ください。   続きを読む »

 自賠責保険の後遺障害認定基準は、労災の制度から派生したもので、公表されている文言を見ると、その基準はほとんど同じです。ただし、基準はあくまで労災基準に「準じたもの」で、「まったく同じもの」ではありません。公表されてはいませんが、労災と違う自賠責保険のルールは諸々存在しています。

 以前、TFCC損傷で14級9号を取った後、労災で12級13号が認められた件で、弁護士から「自賠責も12級にならないかな?」との相談を受けました。よくある論点なので、「またか・・」と思いつつも、診断書・画像を預かり検証しました。画像所見上、TFCC損傷は微妙で弱く、手術もしていない。また、手首を酷使する仕事上、経年性の疑いも残る。この場合、労災は甘く12級、自賠責は14級どまりが結論なのです。結局、依頼者の希望に抗しがたく、その弁護士さんは再請求するも14級は変わりませんでした。

 このように、自賠責と労災の基準の違いは存在します。逆に、自賠責が有利で12級も、労災では14級となる件もあるのです。経験を重ねた事務所はそれを知っています。   これも自賠責と労災の認定基準の違いの一つです  

労災12級6号:TFCC損傷(30代男性・山梨県)

  【事案】

原付バイクにて一時停止中、左方から早回り右折してきた車に衝突され受傷した。直後から右手のしびれ、強烈な神経症状に悩まされる。

【問題点】

手術を受けたものの、症状が改善しないとのご相談を受けた。詳細を伺うと、既に事前認定にて14級9号が認定されており、その結果に納得していないご様子であった。後遺障害診断書、診断書・診療報酬明細書を確認すると、可動域も12級を逃しており、手術の内容も関節滑膜切除術で、理屈上は改善しているはず。12級への異議申立が通る可能性はほとんど無かった。

【立証ポイント】

よくよく事故の詳細を伺うと、通勤災害であることが分かった。自賠責は難しいが、労災で12級認定を獲得する方針で進めることとなった。

基本、12級にするためには、画像所から立証が必要なので、画像鑑定を依頼し、鑑定書とともに自賠責に申立てたが、結果は想定通り14級9号のままであった。

その後、労災にも全ての資料を提出し、労災顧問医の面談に臨んだところ、治癒日(自賠責の症状固定日に合わせたため、面談よりも1年以上前)よりも手関節が拘縮しており、可動域の数値は左右差3/4となった。労災では、現状の数値と診断書上の数値、どちらを採用するのか結果を待っていたところ、面談時の可動域制限を認めた12級6号認定となった。通常、症状固定日よりも数値が悪くなることはほとんどないが、本件では、自賠責の後遺障害診断時に、痛みをこらえて可動域計測に応じたため、正しい数値の計測ができなかった事情が存在する。 続きを読む »

 医師は後遺症、つまり、治せなかった症状について、じっくり時間を割いて診断書を書いてくれるものでしょうか?    普通、医師は後の賠償問題に興味はありません。立場上、治すことが仕事です。本音を言えば、目の前の患者さんを診ることが優先、診断書に時間を割けないのです。その後遺障害診断で、もっとも面倒なのが関節の計測、それも手指・足指の計測程、時間がかかるものはありません。自ら丁寧に計測して頂ける先生に出会えたら幸運です。また、理学療法士さんに計測を指示する先生も多いものです。理学療法士さんも、医師の指示とあれば、せっせと計測してくれます。ただし、リハビリの場面で、指を対象とするものは圧倒的に少なく、慣れない手つきとなります。

 指を丁寧に計測して機能障害の等級を確実にする、これこそ私達の出番です。かつて、相談会で手首や肩の関節で等級認定を得ながら、指を取り漏らしている診断書を何枚も見ました。それも、交通事故専門を謳う弁護士先生に任せていながら、です。

 やはり、後遺障害の仕事は「経験」です。手指・足指の障害を受任したことのある事務所を選んで頂きたいものです。     指1本1本の計測は大変です  

6級相当:浅指・深指屈筋腱断裂、手根筋腱断裂、皮膚欠損(60代男性・埼玉県)

【事案】

信号のない交差点の出合い頭、一時停止無視の車に側面衝突される。被害車両は横転し、右腕が車の下敷きになり受傷。利き腕に腱断裂を伴う広範囲のデグロービング損傷により、用廃レベルの状態に。

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 いくらホームページで、「我こそは交通事故の専門家」と標榜しても、その実力は結局、依頼してみなければわかりません。商売上の呼び込みですから、これは仕方ないと思います。かつて、我こそラーメン日本一のテレビ企画があり、参加した全国のラーメン屋さんが腕を競いました、もちろんTVショーですから、全国すべてのラーメン屋さんの参加など無理で、本当の日本一かどうかわかりません。それでも、上位のお店はそれなりに箔が付くと思います。

 翻って、交通事故の被害者の代理人となって、賠償交渉を担う弁護士さんの優劣はどうでしょう。弁護士さんの実力はHPで誇る受任数より、裁判判例を取っているか否かに尽きると思います。裁判を数多くこなし、その中で後の事件に影響、指針を与えるような判例を取っている事務所は、まず間違いなく力量ありと言えます。

 私たちの業務である医療調査・保険手続きですが・・事務所の能力を数値化することは無理です。ミシュランのように★★★格付けなら可能かもしれませんが、まさか、交通事故被害者が覆面審査員として依頼者になることなど・・ないと思います。実力を数字にしずらく、比較・競争の機会もまずありません。しかし、本件では図らずも”違い”を見せることができました。

 先の2事務所ではまったく歯が立たなかった案件ですが、以下の通りに見事クリアしました。この成功の蓄積こそ、多くの弁護士事務所からの信頼・依頼に繋がっているものと思います。弁護士事務所からの評価・紹介数こそ、事務所の実力のバロメーターではないでしょうか。   知識・経験で勝っているだけではありません。それ以上に気合の差です!  

12級6号:橈骨・尺骨骨折(50代女性・茨城県)

  【事案】

自動車運転中、対向自動車が別の自動車と衝突、その反動でセンターラインを越えて衝突したもの。まったくのとばっちり事故。その衝突で、鎖骨、胸骨、肋骨、左橈尺骨、仙骨、腸骨を骨折、以後、長い治療とリハビリの日々となる。

【問題点】

折れ方から当然に手関節の可動域制限が残存した。しかし、症状固定時期に主治医に左手関節の計測をして頂いたところ、不正確な計測で機能障害の等級がつかないレベルに。

本件委任を受けた弁護士事務所は、医師面談に外注スタッフを2度にわたって派遣したが、いずれもこの主治医に再計測・修正を拒否された。もう1院のリハビリ先に出向くも、この主治医に遠慮したのか、どうしても診断書を書いてもらえない。2事務所のスタッフさん、まったく役に立たず。

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 基本的に、患者以外の付き添いや面談は医師から敬遠されるものです。

 ただ、稀に本例のようなケースもあります。医師と患者間では上手くいかない関係でしたが、佐藤の介入後、スムーズに進みました。ケガを治す治療者と、ケガが治らなかったことを調査・立証する立場は、それなりに深い溝があります。それでも、何度か私達の仕事に触れた医師は、私達の業務に対して、その目的・姿勢を理解して下さります。 誠意は届くもので、いずれは医師の警戒感は薄れ、それなりに信頼関係に発展するのです。   別件で何度かお会いしていたので  

12級5号:鎖骨骨幹部骨折(70代男性・長野県)

【事案】

自動車から降りて、お店に入ろうと道路を横断していたところ、後方から走行してきた車に衝突され受傷。鎖骨を骨折したもの。

 

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 医師は診断権を持っています。医師が黒と言えば黒、患者は馬も鹿と言わなければなりません。    私達も最大限に医師の診断権を尊重しますが、患者が症状を訴えても、「後遺症などない」、「診断書は書けない」と医師が診断権に基づいて判断することがあります。その場合、別の病院・医師に転院すれば良いのですが、初診からの医師が後遺障害を否定することは、仮に新しい医師に後遺障害の診断を受けたとしても、自賠責保険の審査上、当然に不利な履歴として残ってしまいます。

 私たちは年間200件を超える病院同行を10年以上続けています。病院同行の数はもちろん、その造詣は他事務所の追随を許さないと自負するところです。本件の病院でも、医師より事務方が頼りになることを事前に把握していました。そこで、医師との掛け合いはスルー、婦長・医事課に話を通して、診断書の確保に至りました。

 付け焼刃の病院同行ではありません。まるで、製薬会社のMRさんのように、病院内外の様々な情報を把握するようにしています。病院に限らず、どの組織・会社でも内部の力関係や派閥、独特の関係があるものです。その点、毎日のように病院に出入りしているMRさんと話が合います。先日、最終回を迎えたドラマ「私の家政夫ナギサさん」でのMRの活躍に、「ある、ある」を感じた次第です。

※ MR(Medical Representativ=続きを読む »

 事務所開設以来、何度も説明していますが、関節の可動域制限、つまり、上肢下肢の機能障害で12級や10級をとるためには、単に関節の可動域の数値が3/4や1/2になっているだけではダメです。そのような制限が起こる、物理的な理由が必要です。それは、まさに画像から判断されます。

 例外的に神経の断裂や絞扼(締め付けられている状態)から、関節の自動運動が制限されることがあります。そのような例外を除くと、骨折後の癒合状態に問題がなければ、「極端な可動域制限は起きない」ことが医学的な常識です。

 ネットで交通事故・後遺障害の情報が氾濫して以後、関節の計測を大げさに装う輩が少なからず発生しました。自賠責保険・調査事務所は当然に数値を疑います。名前はだせませんが、ある行政書士・弁護士事務所から、「あまり関節を曲げるな」との指示を受けた被害者さんもおりました。これは、立派な詐病教唆です。

 その点、私たちは事前にレントゲンやMRI画像を精査していますから、申請前から自賠責の判断を予想しています。常に、機能障害をとるべくギリギリまで詰めますが、結果的に正しい認定に誘導します。本件も、神経症状の14級を確実に取り込みました。

 ただし、画像からでは判断できないが、演技ではなく、リハビリをサボったわけでもなく、実際に曲がりの悪いケースも稀に存在します。原因を究明、審査側にその事情を伝える立証作業こそ、難易度は高くなりますが、私たちの挑戦すべきテーマとなります。   神経麻痺など難しい案件、どんと来い!  

14級9号:鎖骨遠位端骨折(50代男性・神奈川県)

【事案】

バイクで直進中、左方脇道よりの自動車と衝突、鎖骨骨折したもの。鎖骨は肩に近い方、遠位端であるが亀裂骨折レベル。治療は、クラビクルバンドを着用、保存療法とした。

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 下肢の後遺障害の最高等級は、両脚切断です。一覧表は以下の通りです。

 本件は切断肢に及びませんが、機能障害が膝、足首、足指に渡るものです。相当の障害が加算されますが、上限は6級、足首以上の切断肢:5級5号より下位となります。つまり、「切断よりは、まし」との判定です。

 本件の立証作業は、受任が受傷初期だった為、計画的に進めることができました。その点は確実でしたが、治療面において被害者さまと苦労が続きました。後遺障害の立証だけが私達の仕事ではありません。私達の持つ病院情報とネットワークは、より良い治療法の選択、セカンドオピニオンのお力にもなります。 続きを読む »

 昨日の記事になぞらえて、その代表的な実例を紹介します。

 一度、「90度しか曲がりません(10級を下さい)」と申請しておいて、疑われて可動域制限が否定されました。続いて、「やっぱり、130度でした(12級でいいです)」と申請し直すのですから、それなりに説得力のある言い訳、否、治療経過と可動域制限の理由を説明する必要があります。大変難しい異議申立になってしまうのです。

非常に苦しい申請です  

14級9号⇒12級6号 異議申立:上腕骨頸部骨折(30代女性・埼玉県)

【事案】

自動車搭乗中、停車していたところ、後方から自動車の追突を受ける。救急搬送され、左上腕骨頸部骨折の診断となった。

【問題点】

受傷から半年後、左肩の可動域制限が残存したため、後遺障害・被害者請求を実施したよう。しかし、結果は神経症状の14級9号のみ認められた。本人は納得できず、弊所に相談に来た。後遺障害診断書と画像を確認したところ、診断書の可動域の数値が10級レベルになっているのに対し、画像上、髄内釘は入ったままだが骨の癒合自体は良好であった。つまり、可動域制限は信用されなかったのである。

【立証ポイント】

可動域制限で等級が認定されるには、怪我をした箇所に画像上明確な証拠が認められ、関節が曲がらないことが理論上説明できる状態である場合であることが大原則である。しかし、本件では10級レベルの可動域制限(約180度中90度以下)で診断書がまとまっていた。画像上、12級レベル(約180度中120度以下)の可動域制限であれば、ギリギリ等級が狙えそうではあるが、10級など大げさに取られたと考えられる。実際、相談中に可動域を事務所で計測してみたところ、症状固定後、肩をあまり動かさなかった故の筋拘縮の影響あるも、本人が頑張れば12級レベルまでいけそうであった。

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 なぜなら、骨折の癒合さえ果たせば、わずかな変形など日常生活にほとんど支障がないからです。折れた部分が肩関節に近ければ、肩の可動域に影響がありますが、骨幹部(骨の中ほど)の亀裂骨折程度であれば影響少なく、粉砕骨折や開放骨折でもない限り深刻度は下がります。さらに、昔と違って現在はプレート固定術としますので、きれいに癒合しますから変形もわずかに抑えることができます。

 そんなことから、臨床上、医師は「鎖骨が変形してしまった」と認識しませんし、普通は診断書に記載するものでもありません。自賠責保険の認定基準では、裸体で変形が確認できることが条件です。それがわずかでも、視認できれば認定する傾向です。本件は医師に改めて記載を促して再申請で認定を得ましたが、鎖骨の認定漏れは、全国の鎖骨骨折者にとって常態的なものと思います。

 また、仮に変形なく治癒を果たしたとして、骨折ほどの高エネルーギー(外傷)が加わったのですから、癒合後も痛みや痺れ、なにかと不具合は残るものです。その残った症状は「神経症状」として14級9号「局部に神経症状を残すもの」の余地を残します。私達はそれを見逃さないので、過去10年、鎖骨骨折で100%の後遺障害認定実績を記録しています。  

 ⇒ 上肢・鎖骨の認定実績

 

 ⇒ 上肢・鎖骨の異議申立・認定実績

  継続治療のついでに膝の等級も上げときました  

12級5号:鎖骨骨折 異議申立(60代女性・埼玉県)

【事案】

原付搭乗中、交差点で左方から自動車が進入し、衝突した。救急搬送され、鎖骨骨折と上腕骨骨折、他に大腿骨折、膝蓋骨骨折の診断となった。

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部位別解説 後遺障害等級認定実績(初回申請) 後遺障害等級認定実績(異議申立)

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