そしてMTBI裁判の決着は? MTBI編は最終回です。

③ 東京 高裁は、事故直後に強い意識障害がなくても脳外傷は生じうるとした。

 この点について加害者側は、”事故後にきちんと事故状況の説明をしているし、ましてや自分で車を運転して帰っているのだから、意識障害はないだろう”と主張したが、高裁は”だからといって脳外傷が生じていないとはいえない”と判断している。

 しかしながら、脳外傷の有無に関する東京高裁判決の論理展開は、「提出された診断・検査結果の内容と被害者側医師意見書を考えると器質性の脳幹損傷が起こった」というのみであり、他方、加害者側から出てきた意見書については単純に「採用できない」と否定するだけであって、脳外傷の判断における医学的意見の採否の理由は十分に説明されておらず、また、被害者に発生した神経症状や所見(被害者側が主張するもの)についても、どう評価すべきかの検討が十分ではないと思われえる。

(解説)  本判旨では証拠不十分(画像所見なし)でも実際の症状、治療経過、医師の診断によって脳損傷が推定できるとし、「事故直後、症状がなかった」から脳障害はないと主張する被告の反論を採用しなかった、に留めてています。したがってなんらMTBIの障害性に断定的な結論を出していません。

 原告は上告すると聞いています。最高裁で決着がつくのか?再逆転判決(やはり障害はない)となるのか?・・・注目が続きます。

以前MTBIの相談者が事務所にいらっしゃいました。その方はなんでも赤信号なのにぼーっとしてたため、道路を横断し始め、一歩踏みだしたところ、かするように通り過ぎる自動車と太ももが接触、よろけて転倒しました。そして直後、接触に気づかない自動車を怒鳴りながら走って追いかけて停車させたそうです。そして数日後、めまい、頭痛、内臓疾患、その他あらゆる不調、が起こり、MTBI患者であると…。こんな軽い衝撃で、なおかつこの元気でそのような重篤な障害となるのか?周囲からそう見られて困っているようです。

 実はMTBIを訴える患者はこのように軽いとケガと思われるケースが多数なのです。血を流して倒れていた、意識不明となった、であれば脳損傷の可能性が推察されます。しかし軽い捻挫、軽い追突によるむち打ちで脳障害を訴える場合、当然外傷性について疑いが生じます。画像上、脳損傷の所見がないのに治療が長期化する・・・その患者の中には既往症が原因である者、詐病者、心身症患者が含まれると指摘されています。

 MTBIは「言ったもん勝ち」、「心身症患者が自身をMTBIと思い込む」・・・このような懸念を常にはらんだ症状名なのです。

  (結論)

1、脳外傷の画像所見がなくても脳損傷はありうるのか?

2、意識障害がなくても脳損傷はありうるのか?

 これら2つの追求はいまだ解決されたわけではありません。画像所見・意識障害がなければ脳損傷はない、これが原則です。今回の高裁判決も極めて限定的な、被害者救済的な、判断をしたのだと思います。今後類似裁判が続くとしても認められるケースが頻発するとは思えないのです。

 やはり脳神経外科の新しい医学的検証、新しい臨床診断、新しい画像検査法、これらがなければ話は進みません。医学的な論拠がなければ弁護士も苦しい戦いが続きます。また、仮に整形外科医や歯科医など専門外の医師がこれらの研究を発表しても、労災や自賠責保険の認定基準を揺るがす力はありません。

 私たち立証側行政書士は常に言い続けています。

 「医証がすべて」。この言葉に帰結します。

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シリーズ再開します。

 新システムの検討委員会においても念入りにMTBIを定義し、結論しています。しかし昨年9月のMTBI裁判について触れないわけにはいかなかったのでしょう。以下抜粋、解説を加えます。  

【D委員、E委員による意見発表】

 明確な意識障害や画像所見のない場合に後遺障害9級(ただし30%の素因減額を適用)を認定した裁判例(東京高裁平成22年9月9日判決。平成22年(ネ)第1818号事件、同第2408号事件)にづいて、報告がなされた。

① 本件 事案について、一審の東京地裁は事故で脳外傷が生じたことを否定して後遺障害14級を認定したが、東京高裁はこれを認め後遺障害9級を認定したうえで、損害賠償額の算定において「心的要因の寄与」を理由として30%の素因減額を行っている。

(解説)  つまり、画像上明らかではないが、なんらかの脳外傷があったのだろう、と推論をもって障害の存在を認めています。しかしこの認め方も灰色で、心因性の影響も捨てきれず、損害額の70%だけを認めました。  これを「MTBIの障害認定に風穴が空いた!」と歓喜するか、「原因不明ではあるが現状の障害の重篤度を考慮した結果であって、MTBI自体の障害認定はしていない」と受け止めるかは各々の判断です。

  ② 東京 高裁は因果関係の判断にあたり、最高裁昭和50年10月24日判決(ルンバール事件判決)を引用している。同最高裁判決は、因果関係を判断するうえで”自然科学的な証明まで求めなくて良い”ことを述べたものである。東京高裁が因果関係の判断に関する最高裁判決を引用した上で判断した点と、損害額の算定において「心的要因の寄与」を理由とする素因減額(最高裁昭和63年4月21日判決参照)を行っている点とを考え合わせれば、東京高裁は、脳に器質的損傷が発生したか否かという点、被害者の訴える症状の全てが脳の器質的損傷によるものか否かという点の双方について、悩みながら判断したという印象を受ける。   (解説)  自然科学的な証明=画像所見と置き換えるなら、これは画期的な判断です。しかし引用した最高裁判例は35年前のルンバール事件で、これは医療過誤、医療事故における医師の治療行為の正当性が争われたものです。ここからの引用は苦し紛れ、強引さを否めないと思います。    「医学的な判断をする=裁判官の苦悩」は毎度のことなのです。

お医者さんがわからないものを判断しなければならないのですから。

 明日につづく  

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 年末です。交通事故は人身事故、物損事故問わずこの時期に多く発生します。

 私の事務所に相談に来る方も被害者、加害者双方おります。また任意保険のお客様からの事故報告も11~12月で大小8件対応中です。軽微な事故であれば保険会社との話し合いでサクサク解決していきます。しかし重大事故や事故状況に争いがあれば長期化となります。もちろん相応のケガによる治療の長期化は仕方ありません。  困るのは軽微な物損であっても、ぶつかったのぶつからないの、どっちが悪いだのもめにもめてしまうケースです。

 皆がクレバーに紳士的に話し合い・交渉を重ねれば良いのですが、そうもいかない人たちが存在します。  あきらかに詐欺、あきらかにゴネ得狙い、あきらかに心身症・・・これらの対応をしている保険会社担当者さんもキレ気味で業務を行っています。保険会社の支払担当部の方々は本当に大変なんです。

 最近も”話し合い続行不可能な極めて感情的な被害者さん”、”ぶつかっているか定かじゃないのに3カ所の被害を訴えてきている物損被害者”に関わっています。誠実な対応にも限界があります。保険会社には顧問弁護士なる存在が控えており、保険会社はいざとなったらこの顧問弁護士に対応を委託(法的には契約者が委任契約を結ぶ)をします。すると以下の流れになります。  

1、相手に「これからは交渉の窓口は保険会社でも加害者でもなく、私共が対応します」と数名の弁護士の署名が入った通知が届きます。

2、結果、被害者は委任契約を結んだ弁護士以外と話ができなくなります。

3、そしてこの弁護士に「○○円払わんかい!」と言っても、「これ以上払えません」。保険会社担当者よりもさらに厳しい提示もあり得ます。

4、それでも納得しないと、「債務不存在確認の訴え」※ で逆訴訟が待っています。

5、これを食らうと「それ以上の交渉は法廷で待つ」状態になります。

6、そして被害者は請求額を争って裁判するか、弁護士の提示に泣く泣く従うかの選択となります。

7、もちろん争っても勝つ見込みは薄いと思います。なぜならこの案件を受任してくれる弁護士を探すのは至難の業です。請求額も小さく、負ける見込みが大のケースが多い、つまり採算が合わない仕事だからです。  

 これは保険会社、最後の手段です。または伝家の宝刀です。これ(伝家の宝刀)を抜くときは保険会社担当者もスカッとします。

 そうならないよう被害者も賢く交渉を進めていかねばなりません。

 しかし感情的に過ぎてしまったり、悪意の請求者は弁護士対応を受けてしまいます。

 弁護士が入ってしまい、あわてて相談にいらしゃる被害者さんもいますが、保険会社との交渉解決はほぼゲームセットなんです。

現在私が関わっている保険案件に対しても「弁護士入れちゃおうか」と検討しているものがあります。・・・先ほど入れちゃうようリクエストしました。(スカッ!)

 被害者の皆さんには「くれぐれも保険会社を甘く見ないよう」にと警告しておきます。

     ← 「どこにキズがあるんよ?」                       細かい傷で大騒ぎするな!とは言いませんが・・・  

※ 債務不存在確認訴訟 (さいむふそんざいかくにんそしょう)

 ・・・権利の存否について紛争がある場合に,義務者とされている者が原告となり,権利者と主張している者を被告として,被告の主張する原告の債務が存在しないことの確認を求める訴訟です。  一般論としては原告(被害者)が債権(賠償)を主張するのがふつうと思いますが、債務不存在確認訴訟では原告(加害者)が債務の不存在(こっちが弁償するいわれはない!)を先に主張します。被告が応じた場合、被告は法廷にて債務の存在を主張することになります。

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 X’masイルミネーション輝く赤坂、12月の相談会も20名弱の相談者がやってきました。交通事故の岐路に立たされ、それぞれ解決を模索しています。相談者さん達に最良の道しるべを示すことができるのか?ガチンコ面談が続きます。

 人体模型もスタンバイOKです。

<今回のレポート>

1、山崎先生、高次脳機能障害等の神経心理学検査でおなじみのウェスコンシン・カード・ソーティング・テストに挑戦です。   結果は・・・遂行能力問題なし。前頭葉は大丈夫のようでした。  

2、スカイプ三者面談

 相談会の途中、都内の弁護士事務所より被害者面談のスカイプ中継を挟む。弁護士、行政書士、被害者の疑似三者面談を試行しました。離れていてもこの三者で打ち合わせができます。連携体制のダイナミズムを実感です。続きを読む »

続いてMTBIについて、今委員会における専門医の意見を見てみましょう。

【片山医師の意見陳述】

 片山医師は脳神経外科学が専門である。当委員会の検討対象となっている、1回限りの軽症頭部外傷により遷延する重篤な症状あるいは障害が発生することがあるかという点について説明を行った。

課題1:一度だけのMTBIにより、遷延(3か月以上)する重篤(社会生活が困難)な症状あるいは障害が発生することがあるか?

a.受傷直後から数日ないし数週間までは、頭痛やめまいなどの愁訴や、記憶障害および注意障害、不安および抑うつなどの症状が持続することがある。

b.これらの症状は、受傷後しばらく脳の機能的障害および器質的障害の影響を受けるために起きると考えられる。

c.

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 「 MTBIについて掘り下げたい」・・・

MTBIって言葉をご存知でしょうか?これは Mild traumatic brain injury=軽傷頭部外傷 の略語です。

 外傷性のない、もしくは希薄な頭部の受傷により、脳障害を残すものとしておおむね認識されています。高次脳機能障害は「脳の器質的損傷」が前提である以上、高次脳機能障害とは認めれていません。したがって高次脳機能障害が疑われる障害を残しながら脳外傷がない為、MTBIと位置づけられる患者が少なからず存在します。

 当然自賠責や労災の基準に満たないこれらMTBI患者は障害認定されません。昨年9月訴訟で障害を認めた?との判決がでましたが、判旨を読むとそうも言えないようです。高次脳機能障害に携わる者にとって、まさに奥歯に刺さったとげです。

 今回の委員会でもMTBIの定義と扱いについて相当のボリュームを割いています。この新システム検討の過程をなぞりながらMTBIについて正面切って意見展開したいと思います。    まずはWHOにおけるMTBIの定義についておさらいしましょう。  

【WHOにおけるMTBIの診断基準】  (WHO 共同特別専門委員会のMTBIの診断基準)                   

MTBIは、物理的外力による力学的エネルギーが頭部に作用した結果起こる急性脳外傷である。

  臨床診断のための運用上の基準は以下を含む:

(i)以下の一つか、それ以上:混乱や失見当識、30分あるいはそれ以下の意識喪失、24時間以下の外傷後健忘期間、そして、あるいは一過性の神経学的異常、たとえば局所神経徴候、けいれん、手術を要しない頭蓋内病変

(ii)外傷後30分の時点あるいはそれ以上経過している場合は急患室到着の時点で、グラスゴー昏睡尺度得点は13-15上記のMTBI所見は、薬物・酒・内服薬、他の外傷とか他の外傷治療(たとえば全身の系統的外傷、顔面外傷、挿管など)、他の問題(たとえば心理的外傷、言語の障壁、併存する医学的問題)あるいは穿通性脳外傷などによって起きたものであってはならない。  

(解説)  この定義が出発点です。WHOではこの臨床診断において高次脳機能障害とは区別しています。  いわゆる脳震盪 < MTBI < 高次脳機能障害 のような位置づけでしょうか。  ではこの定義、区別をもってして完全に臨床判断できるのか?委員会では慎重に意見を重ねています。

 明日に続きます。 

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 昨日は病院3軒はしごです。検査につぐ検査!その間も携帯は鳴りっぱなしです。

その電話でもっとも絶句した件を。なんと、主治医が捕まってしまった!の巻です。

その医師とは先日面談し、来月には症状固定し後遺障害診断書を書いていただくよう、打ち合わせは済んでいました。

被害者 Tさん 「先生大変です!」

秋葉 「どうしました?」

Tさん 「今病院に行ったら休診というか休院なんです、先生が捕まっちゃって!」

秋葉 「? えっ、何でですか?」

Tさん 「ひき逃げして警察に拘留されたみたいです。看護婦の話では今回2度目で、そもそも無免許・無車検みたいです」

秋葉 「(絶句)ダメだこりゃ・・・しょうがないです。転院して下さい。保険会社にはその旨連絡して下さい」

Tさん 「はい。 新聞にもでてましたし、朝のテレビでみのもんたさんに呆れられていました」 続きを読む »

委員会における確認事項から。 「脳機能の客観的把握」・・・つまり神経心理学検査について。

 高次脳機能障害の提出書類の中で、

日常生活報告書・・・・ご家族の観察を報告します。つまり患者側の申告と評価です。

神経心理学検査・・・・医師による客観的な判断のもとになる数値。

 この位置づけを理解して下さい。患者側の訴える日常生活での変化、困窮点が客観的な検査と一致してはじめてその障害が顕在化されたといえます。

 私が把握しいている検査を一覧表にしました。今委員会のレポートで触れられた検査名を赤字にしています。

検査名

結果

①スケール(HDS-R)

  長谷川式簡易知能評価       

各30点

HDS-R 20以下  

MMSE 23以下 

それぞれ認知症の疑い

② ミニ・メンタルステーツ

(MMSE)

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 スカイプって? 簡単に言うとパソコンを使ったテレビ電話です。相互にスカイプに登録すれば世界中どこでも通話0円です。

 近日、協力行政書士、弁護士間でスカイプのネットワークを構築します。 これにて行政書士→弁護士の連携について即時、相談者の目の前で3者の打ち合わせが可能になります。

 続いてスカイプによる交通事故相談を計画しています。交通事故の被害者さんもスカイプを使えば、訪問しなくても顔を見ながら無料交通事故相談が可能となります。

 スカイプ無料交通事故相談の実施について近日グループで一斉展開します。

          今日はこのお知らせだけで日誌を埋めます。明日から「高次脳機能障害の新認定システム」を再開します。

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 10月の山梨県 増富ラジウム温泉に続き、岐阜のラジウム泉へ。その名もローソク温泉。温泉マニアの中でも3大ラジウム泉と数えられます。(他は島根県の池田ラジウム温泉、山梨県の増富ラジウム温泉)

 木曽の坂下駅から県境を超え岐阜県へ、4つ目の停車駅 恵那駅からで送迎車で15分。夕暮れの中、木曽川を渡り冬枯れの山道へ入ります。送迎車の中では常連同志と思われる女性の方がひっきりなしにしゃべり続けています。「最近、咳がひどい、ぜんそくかも」、「私は足の痛みが悪化して」・・・(その割にはものすごく元気に見えるが、これからの療養宿泊にハイテンションといったところでしょうか。)「あの親子来てるらしいわよ、足を洗ってから湯船にはいるよう皆で注意しましょうよ」・・・(常連はマナーに厳しいようです。一見客の私にも緊張が走ります。)

 宿に着くと雨模様なのに日帰り客の車で一杯です。泊以外の療養者もひっきりなしにやってきます。  まず受付にて手続きをします。その際温泉の入り方の説明書きを渡されます。湯船に入る順番、回数、時間も5分と細かく決められています。  その後部屋に通され仲居さん(というより教官)の説明があり、「これから入浴時間、食事時間、その他注意を言いますのでメモを取って下さい」と。はいっ、ときびきび返事をしながらメモを取ります。ここは保養所、療養所となっており、一般的な温泉旅館と趣を異にします。

 さてその温泉ですが、まずは成分を見て納得。おそらく世界でも指折りの放射線量です。

 2020×10-10キュリー、マッヘ単位556(日本第1位)  (岐阜県衛生研究所測定公認)

 適用は・・・

 慢性関節リュウマチ、尿酸素質、慢性筋肉リュウマチ、神経痛、神経炎、創傷、通風、皮膚病、神経マヒ、貧血症、慢性婦人科疾患、尿路結石、打ち身、外傷性後遺症、動脈硬化症、高血圧症、美容、消化器病、慢性胆のう炎、胆道炎、胆石、更年期障害、冷え性、痔疾、五十肩、病後回復、健康増進、習慣病の予防 ・・・ほぼ万病にOK

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 早朝から新幹線で名古屋、続いてセントラルライナーに乗り換え1時間で中津川駅、そこから各駅で2つ目で坂下駅に到着です。どうしても決着をつけたい検査結果がありまして、先週池袋で検査した画像を追いかけての出張です。

 主治医は立証に理解のある先生で、画像から決定的な所見が得られず、共に肩を落とす結果となりました。しかしこのような医師にお会いできたので遠路の徒労感はありません。手法を切り替え、再度の協力を仰ぎ病院を後にしました。

             

 出張の恒例となりました温泉探訪は明日のレポートで。

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 ここ数日かなり熱のこもった業務日誌が続きました。朝は事務、昼間は病院回り、夜は業務日誌、合間に事故相談の電話・メールの対応、そして休日は保険の更新手続き、そして数々の忘年会・・・かなり激務の年末です。たまたま仕事が重なっただけですが、少々オーバーワークでしょうか。今日はこの時間で切り上げ、早上がりします。明日は早朝から頑張りますので、もろもろ対応待ちの皆様お許しを。

                 クリスマスまでには全部仕上げますよ!

              

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<井田医師の意見陳述>を続けます。

④ 拡散テンソル画像は脳内の神経線維に沿った水分子の拡散の動きを見ることによって神経線維の状態を推定しようとするものであり、病変の位置が特定できている場合には脳機能と病変の関係を見ることについて有益である。ただし、形態学的に異常がない微細な脳損傷の有無を拡散テンソルだけで判断することはできない。

      

(解説) ビジュアル的に裁判受けします。それがためにテンソール検査を求めて病院回りしたこともあります。しかし本意見でも断定されている通り、以前からも調査事務所では重視していない画像です。

⑦ fMRIは指を動かすなどの課題に対して脳の中枢が賦活化されて、相対的にデオキシヘモグロビン量が変動することにより、賦活化された脳をMRIで画像化するというものである。脳機能を科学的に見るという面では良い方法であるが、現時点では微細な脳機能の低下に対してはまだ使える段階にはない。

⑧ ...

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 前回、「高次脳機能障害認定システム」の改正前後を比べました。先に結論をもってきた形です。この「高次脳機能障害認定システムの充実」は現行システムの問題点について、専門家の委員会による合計9回の論議がもとになっています。そこから改正の骨子となった、医師の意見を具体的に取り上げていきます。    それでは前回の予告通り、「画像」について。最も重要な立証資料であることはかわりませんが、ではどの画像検査が必須なのか?臨床の医師も損害立証による画像はどれを要求しているか知りあぐねています。また立証する立場において、全国の弁護士も取りあえず撮ってあるものだけ提出し、あまたの行政書士も交通事故110番のマニュアル本を参考に進めるしか手段がありません。  必要な画像検査とは何か?読み取ってみましょう。

 井田医師の意見に対して解説を加えていきます。  

【井田医師の意見陳述】 

井田医師は画像診断学が専門である。当委員会の検討対象となっている、軽症頭部外傷後の後遺障害が器質性のものであるか否かについて、最新の画像診断技術によりどこまで判断が可能なのかについて、実際の画像を参考に説明を行った。   ① 現在の画像診断の主役はCT、MRIであるが、画像診断において重要なことは、適切な時期にきちんとした検査が行われるということである。    (解説)  どんな脳神経外科でも受傷直後にCTもしくはMRIで脳損傷を観察するはずです。そこで医師に「脳は異常ありません」と言われると家族は一安心です。しかしその後も意識障害や記憶障害が続くようなら、続けてこれらの検査を依頼すべきです。  高次脳機能障害をよく知らない医師に出くわしたばかりにそのまま画像所見なしとなってしまったケースを経験しています。  この時期の画像所見が症状固定、後遺障害認定までこの先ずっと付きまといます。

  硬膜下血腫、受傷1週間後。血腫に押された脳の様子がわかります。  

② 今後、微細な外傷の診断にあたっては、MRIの撮像法である拡散強調画像(diffusion-weighted imaging : DWI)および磁化率強調画像(Susceptibility- weighted imaging : SWI)が有用となると考えられる。   ③ DWIを用いることにより、続きを読む »

 急に寒くなりましたね。今日はコートを引っ張り出して柏市へ。よつば総合法律事務所の法律実務研究会に参加してきました。  シリーズ中の「高次脳機能障害の新認定システム」は明日から再開しますね。

     事務所エントランス。四葉のクローバーが迎えてくれます。

 秋から大澤先生はじめ、よつば事務所の弁護士の先生方と共に被害者救済業務にあたっています。交通事故業務に対する取り組みで千葉県下名前がとどろいている法人事務所です。今回は講師としてのお招きですので、まだまだ勉強の足りない身としては恐縮しきりです(焦、焦)。

 内容は・・

1、交通事故相談の初期対応

2、後遺障害12級獲得のチェックポイント

3、個別事例の報告、検証

 とくに初期対応、12級の立証については共に苦労している掲題なので話が弾みました。

 被害者は、まず「相談」にやってきます。入り口は電話、メール、訪問と分かれますが、その際に被害者のケガの程度や今後の展望についてある程度シミュレーションが必要です。業務経験が問われるところですが、毎度苦慮する部分は行政書士も弁護士も変わりません。それについてはテクニック的な部分、”法律家でもできる神経学的検査”に焦点を当ててみました。

 1時間半の楽しい勉強会となりました。また、よつば事務所の雰囲気や勉強熱心な諸先生方の人柄に触れ、温かい気持ちになりました。  

 さすが千葉で屈指の若手弁護士法人事務所です。今後も知識・情報の共有化を進め、よりよい被害者救済が果たせるよう務めていきたいと思います。

 大澤先生、川崎先生、藤原先生、前原先生 ありがとうございました。

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 本改定について、まず高次脳機能障害の入り口=認定基準から入ります。もっとも注目すべきところだからです。

旧基準をおさらいします。  ・・・青字に注目

【高次脳機能障害が問題となる事案】 (旧基準)   ① 診時に頭部外傷の診断があり、頭部外傷後の意識障害(半昏睡~昏睡で開眼・応答しない状態:JCSが3桁、GCSが8点以下)が少なくとも6時間以上、もしくは、健忘症あるいは軽度意識障害(JCS2桁~1桁、GCSが13~14点)が少なくとも1週間以上続いた症例   ② 経過の診断書または後遺障害診断書において、高次脳機能障害、脳挫傷(後遺症)、びまん性軸索損傷、びまん性脳損傷等の診断がなされている症例   ③ 経過の診断書または後遺障害診断書において、高次脳機能障害を示唆する具体的な症状     (注)あるいは失調性歩行、痙性片麻庫など高次脳機能障害に伴いやすい神経徴候が認め      られる症例、さらには知能検査など各種神経心理学的検査が施行されている症例     (注)具体的症状として、以下のようなものが挙げられる。      記憶・記銘力障害、失見当識、知能低下、判断力低下、注意力低下、性格変化、易怒性、      感情易変、多弁、攻撃性、暴言・暴力、幼稚性、病的嫉妬、被害妄想、意欲低下   ④ 頭部画像上、初診時の脳外傷が明らかで、少なくとも3か月以内に脳室拡大・脳萎縮が確認される症例   ⑤ その他、脳外傷による高次脳機能障害が疑われる症例

<解説>

この既存の5項目は以下、簡便に3要件とまとめています。

① 脳の外傷となる診断名

② 意識不明が6時間継続、もしくは軽度の意識不明、健忘症が1週間継続

③ 画像(CT、MRI)で脳の損傷が認められる

詳しくは「高次脳機能障害の認定で3つの関門」を参照して下さい。

     → 高次脳機能障害の立証 11 ~入口に3つの関門

 この要件にあたらなければ、審査せず門前払いです。特に意識障害と画像について、高次脳機能障害をよく知らない医師が診てしまった故にアウトとなったケースを経験しています。

<この要件ではねられた実例>

① Aさん  受傷時に脳挫傷が明らかではなく、脳震盪とされた。    最初に書かれた診断名が1年~後の後遺障害の申請時までずっと付きまといます。   ② Bさん  受傷時の意識の記録がいい加減。    受傷時意識不明であったのに、そのように書かれていない。健忘状態が数日続いたのに、意識清明になったのは1日と記載されている。   ③ Cさん  受傷時に頭蓋骨の骨折や脳内出血がなく安心されてしまった。    MRIで少なくとも3か月後まで適時検査を続け、丁寧に画像を診ていくべきでした。脳外傷を示す脳室拡大、脳萎縮、点状出血などの病変部が遅れて出現するケースもあります。

  では新システムではどう修正されたのでしょうか? ・・・赤字に注目

【高次脳機能障害審査の対象とする事案】 (改定案)   A.後遺障害診断書において、高次脳機能障害を示唆する症状の残存が認められるが高次脳機能障害または脳の器質的損傷の診断を行っている)場合    全件高次脳機能障害に関する調査を実施の上で、自賠責保険(共済)審査会において審査を行う。   B. 後進障害診断書において、高次脳機能障害を示唆する症状の残存が認められない(診療医が高次脳機能障害または脳の器質的損傷の診断を行っていない)場合    以下の①~⑤の条件のいずれかに該当する事案(上記A.に該当する事案は除く)は、高次脳機能障害(または脳の器質的損傷)の診断が行われていないとしても、見落とされいる可能性が高いため、慎重に調査を行う。   具体的には、続きを読む »

 平成23年3月に国土交通省が「高次脳機能障害認定システムの充実について」を発表しています。  この報告書により、認定基準の修正、新基準、医学的見地の整理が公表されました。以前から主張していますが、平成13年(15、19年修正)に認定基準がやっと形作られた分野なだけに、まだ確立しているとは言い難いのです。

 現実、明らかな症状を示しても、頭部外傷の画像所見が乏しいため入り口で非該当の患者が後を絶ちません。またMTBI(軽度外傷性脳損傷)との区別も医学的見地のばらつきから曖昧なままでした。                    続きを読む »

 前日に書いています。月曜は事務所を6時に出発、平塚の病院へ。その後横浜地方検察庁に寄って、夕方は事務所に来客2件です。ふぅ~。

 事故報告や相談など電話が殺到する月曜日ですが、なんとか対応していきます。移動中は携帯にでられない場合もありますので予めご了承下さい。

 先週の金曜日は行政書士会越谷支部の研修でした。講師は弁護士坂本先生です。行政書士の「代理」についての解釈は新鮮でした。

AさんとBさんで商談があるとします。

 Aさんの代理で行政書士がBさんに契約を持ちかけることは、民法でいう「意思表示」です。

しかし、Aさんの代わりに行政書士が自らの判断でBさんと契約してしまっては「代理権」行使です。

代理の意味も日常の言葉使いと民法上の定義では違いがあります。ここがまさに民法の勉強度が問われるところです。

 したがって、民法上の代理権行使でなければ、行政書士も相当の範囲で仕事ができるはず、との持論が続きます。    講義後の懇親会でも話は尽きません。「紛争性のある問題が仕事として利益性が高い。」、そして「しっかり民法を勉強するように」等々・・・。いろいろなヒントを与えてくださいました。    弁護士以外の各士業にはどこまでの「代理権」が許されるのか?学術上ではある程度整理できますが、実務上、法解釈はやっかいです。なぜなら3人いれば3通りの解釈が生まれる場合があります。商売上重なる部分があれば、例えば離婚業務や交通事故業務など、弁護士会としては代理権のない行政書士を排除する動きがあります。やはりこのような業際問題は全体的な働きかけ、行政書士会がきちんと有力学説を用い、理詰めで調整してくべきだと再認識しました。  まず個人としてできることは民法の勉強でしょうか。 

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 現在5名担当中です。症状は様々ですが、ご家族の協力のもと立証作業を進めています。

 とくに後遺障害診断書を作成する段階ですとやることがたくさんあるため、本人はもちろん、ご家族も大変です。  何かと行き詰ってしまうこともありますが、着実にクリアしていきましょう。  きちんとした医証を揃えば結果はついてきます。悔いのない申請をするために私も全力でサポートします。  

 少し息抜き・・・WCST(ウェスコンシン・カード・ソーティング・テスト)をやってみました。

 やべ、結構間違ってしまった・・・。

 これは高次脳機能障害や脳卒中患者に対してよく行われる検査です。神経心理学検査の一つとしておなじみです。

 内容はカードの共通点探しゲームです。色、形、並び方が一致している共通カードを4枚から選びます。要領がわかるまで少々苦戦します。

 これは前頭葉の働き、例えば変化に対応する力、固執性、遂行能力が試されます。 社会復帰はしたけれども仕事の算段、スピードが落ちた方などは決まってこの点数が悪いのです。とくに9級、7級レベルの障害で、知能検査や記憶検査での落ち込みが少ない患者でも低い数値がでます。軽度の方にとって必須検査の一つと思っています。

 2回連続して行います。所要時間は15~20分です。    もしご希望の方がいましたら当事務所でも実施が可能です。

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「交通事故被害者救済」がスローガン! 病院同行に日夜奔走しています。解決まで二人三脚、一緒に頑張りましょう。

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部位別解説 後遺障害等級認定実績(初回申請) 後遺障害等級認定実績(異議申立)

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