二分靱帯損傷(にぶんじんたいそんしょう)

(1)病態

 足関節捻挫は、腓骨と脛骨そして距骨が接する青○印部分で発生しています。ところが、足関節捻挫でも、直近の別の部位を捻挫することがあるのです。

 中でも、イラストのオレンジ色で示したY字型の二分靱帯が損傷することが多いのです。二分靭帯は、かかとを構成する踵骨(しょうこつ)、立方骨と舟状骨を固く締結する役目です。爪先立ちのような姿勢で、内返し捻挫となったとき、二分靱帯は損傷や断裂することがあります。バレーボールでジャンプ、着地で内返し捻挫となると、ほぼ確実に二分靱帯は損傷を受けるのです。   (2)症状

 踵骨前方と舟状骨との間に圧痛や腫れ、皮下出血、荷重歩行時の疼痛などが発現します。足関節の内反や底屈動作を行うと疼痛が誘発・増強されます。   (3)治療

 たかが捻挫と思っていても、二分靭帯が付着部分の骨、踵骨、立方骨、舟状骨で立方骨ごと剥がれることもあり、専門医であれば、○○骨剥離骨折もしくは裂離骨折と診断します。診断は、XP検査が中心ですが、小さな剥離骨折では、CTが効果的です。二分靱帯損傷で、損傷部が腫れ上がっているときは、足関節の捻挫と見分けがつきません。しかし、専門医が丁寧に触診すれば、足関節と二分靱帯は部位が違うので鑑別ができるのです。

 治療としては、最初はギプス固定、次に包帯固定に切り替えて2~3週間もすれば、腫脹や痛みは緩和され、後遺障害を残すことなく治癒します。剥離骨折の治療は約4~6週のギプス固定となりますが、骨片が大きければ固定術が選択されます。しかし、ここでのテーマは、足関節捻挫と診断され、パップ剤のみで放置されていることです。MRIで二分靱帯の損傷や断裂が確認されたときは、歩行時の疼痛が後遺障害の対象になります。   (4)後遺障害のポイント   Ⅰ.

続きを読む »

 立方骨圧迫骨折(りっぽうこつあっぱくこっせつ) = くるみ割り骨折

(1)病態

 立方骨は、足の甲の真ん中から、やや外側に位置しており、前は小指と薬指の根元の中足骨、後は、かかとの骨=踵骨と連結して関節を形成しています。強い外返し捻挫により、立方骨は、踵骨と第4、5中足骨でクルミのように挟まれ、踵骨・立方骨関節面の軟骨下骨が潰されて骨折するのです。立方骨は足のアーチの要となる骨で、体重が乗ったときに、他の骨とともに衝撃を吸収する役割を果たしています。立方骨にゆがみが生じると足全体の構造が崩れ、扁平足をきたします。

 交通事故110番の相談例では、自転車やバイクVS自動車の出合い頭衝突で、複数例を経験しています。最近では、駅構内の階段を1段踏み外し、左足を外側に捻挫、くるみ割り骨折となった被害者から相談を受けました。捻挫の瞬間、ボキボキって音が足から聞こえてきたそうで、手摺にしがみついて、なんとか転倒は免れたのですが、直後は、激痛で、一歩も歩き出すことができなかったとのことです。人身傷害保険の対応ですが、骨折部の疼痛で12級13号が認められました。   (2)症状

 足を外側に捻って、強く捻挫したときに、足の外側部が腫れ、強く痛み、歩くことができません。捻挫と診断され、放置されることが多く、痛みが長期間、継続します。   (3)治療

 XPでは、踵・立方骨関節面に沿って骨折線が認められます。初期のXPで発見できないときでも、骨萎縮が始まる3週間前後のXPで確認することができます。治療は、麻酔下で徒手整復後、ギプス固定、その後、硬性アーチサポートで外側縦アーチが保持されていれば、平均的には3カ月前後で骨癒合が得られ、骨折部に疼痛を残すことも扁平足に発展することもありません。    2013年9月、西武の 炭谷銀仁朗捕手は、本塁上で走者と交錯した際に左足の外側を痛め、左足立方骨亀裂骨折と診断されました。しかし、彼は1流のアスリートであり、優勝のかかった終盤戦で離脱することは困難な事情もあり、その後も捕手として休むことなく活躍しました。サッカー選手やマラソンランナーでも、立方骨の疲労骨折が複数例報告されています。疲労骨折であれば、交通事故外傷として後遺障害の対象にはなりません。主として外返し捻挫を解説してきましたが、内返し捻挫の受傷機転では、二分靭帯による立方骨剥離骨折を発症することがあります。   (4)後遺障害のポイント   Ⅰ.

続きを読む »

 有痛性外脛骨(ゆうつうせいがいけいこつ)

(1)病態

 外脛骨とは、足の内側にある過剰骨もしくは、種子骨の1つで、健常人の15~20%位に認められていますが、 骨の出っ張りが見られるだけで、痛みの症状がなければ、なんの問題もありません。

 なお、過剰骨とは、普通にはない、余分な骨と定義されています。上のイラストは、足の内側部で、内側の骨の端に外脛骨があります。舟状骨粗面という足の内側に、出っ張った部分があるのですが、その部分に後脛骨筋という筋肉がついており、この筋肉は、足の土踏まずを維持する上で重要な役割を果たしています。この筋肉が緊張することで、足のアーチが保たれているのです。

 有痛性外脛骨による疼痛は、捻挫や繰り返される後脛骨筋の引っ張り作用で、外脛骨部分が舟状骨の部分から剥がれ、その部分で炎症を起こしたことにより発症しています。   (2)症状

 繰り返す痛みと腫れで、女性に、とりわけ思春期の女性に、発症例が多いことが特徴です。   (3)治療

 局所の安静下で、鎮痛剤、温熱療法などの保存療法で疼痛の改善を目指します。症状が長期化するとき、繰り返し疼痛が出現するようなときは、ギプス固定や足底板=アーチサポートを装着させるリハビリ治療が行われます。

 大多数は保存療法で改善が得られていますが、4カ月以上の保存療法を行っても、症状の改善が得られない、また、なんども再発を繰り返し、日常生活に支障があるときは、手術が選択されています。手術は、外脛骨を摘出、舟状骨突出部も一部骨切りを行い、最後に支持組織である後𦙾骨筋腱と底側踵舟靱帯の再縫着を実施します。   (4)後遺障害のポイント

 常識的には、過度な運動や、足にフィットしない靴を履き続けることによって、外脛骨を有する人、主に女性に発症するもので、交通事故外傷で有痛性外脛骨は聞きません。また、手術により、運動痛は消失するので、後遺障害を残すことはありません。    次回 ⇒ 立方骨圧迫骨折  

続きを読む »

 昭和の昔と違い、セカンドオピニオンに難色を示す医師はいなくなったと思います。昔の頑固先生の中には、「俺の治療が気に食わないのかっ#」との反応があったのです。しかし、患者さんの治療の為に、広く他の医師の見解を聞くべきとの考え方が普通になっています。今までも、主治医の先生のご理解に助けられ、紹介状を持って他院で診てもらうことは度々でした。

 ただし、患者さんの中には、「治す」ことに偏執的になり、とにかく方々の病院に行きまくる、いわゆるドクターショッピングに陥る方も存在します。その多くは精神的なもので、治療効果など顧みず、あっちこっちの病院へ紹介状の記載を乞うものですから、主治医の先生にとって大変な迷惑になります。紹介状を書く以上、変な患者さんを紹介するわけにいきません。紹介先の医師は紹介元に返事を書くことが通例ですから、両者にとって本当に迷惑なのです。

 では、紹介状なしに飛び込みで病院に行った場合ですが・・・(傷病の種類にもよりますが)医師はこれまでの治療経過を知りませんし、問合せもできません。何より、「問題のある患者さんでは?」と思います。したがって、適当にあしらわれることが多いのです。

 そのような病的にドクターショッピングを繰り返す患者さんは別として、複数の医師の見解を聞きたい、または、わずかでも改善すべく根気よく治療を続けたい・・重傷者さんにとっては当然の心情だと思います。要は、主治医との信頼関係次第と思います。その点、交通事故患者さんは、治療費を支払う保険会社との賠償問題が絡み、およそ面倒な患者と思われがちです。交通事故被害者さんこそ、医師と良好な関係を築いていく必要があるのです。      紹介状一つお願いすることすら難易度が上がりますので、秋葉事務所でも、紹介状をお願いする為の病院同行が少なくありません。昨年暮れの病院同行でも、2度目の紹介状依頼に医師が難色を示され、何とか拝み倒して記載頂きました。主治医の先生には感謝しかありません。交通事故被害者さんは、治療一つをとっても面倒とされる立場、実に大変なのです。

 ちなみに紹介状の回数制限ですが、病院の内規にあるかどうか定かではありませんが、明文化されたルールはみたことがありません。医師の判断によるもの(ひょっとして気分次第)なのです。  

続きを読む »

 舟状骨裂離骨折(しゅうじょうこつれつりこっせつ)

  (1)病態

 足の舟状骨は、足の内側にあって、土踏まずの頂点に位置し、体重を支え、足の踏み出しでは重要な役目を担っています。

緑のカーブは、足の縦のアーチであり、その頂点には舟状骨があり、アーチを支えています。 続きを読む »

 舟状骨々折(しゅうじょうこつこっせつ)

(1)病態

 交通事故では、バイクの転倒時に、足関節の捻挫に伴い、舟状骨々折を合併することがあります。舟状骨々折では、30%程度に骨癒合が不良で偽関節化することがあります。   (2)症状

 痛みと腫れ、皮下出血、足関節内側部に変形が見られることもあります。   (3)治療

 骨癒合はCTで検証しますが、3週間のギプス固定でも骨癒合が得られず、偽関節化しているときは、小さなスクリューで、内固定術が選択されています。   (4)後遺障害のポイント   Ⅰ.

続きを読む »

楔状骨々折(けつじょうこつこっせつ)

(1)病態

 ネットでは、ほとんどが疲労骨折として質問されていますが、交通事故110番の相談例として、

 ① 自転車で走行中、軽四輪車の追突を受け、前方に飛ばされ、着地の際、右足関節を強く捻転し、足関節内果骨折に第1楔状骨々折を合併した経験則があります。

 ② トラックから荷物の積み降ろし中、荷物の足への落下で、第1楔状骨の単独骨折を経験しています。受傷時に、前足部を強制的に底屈された状態で第1楔状骨の直上に直達外力が加わると、同部に応力が集中し、単独骨折も予想されるのです。   (2)症状

 痛みと腫れ、皮下出血も見られ、直後は歩行困難です。   (3)治療

 XP、CTで確定診断できます。整復位を保持できないものは、小さなスクリューで内固定し、周囲の靱帯を縫合します。術後6週で、スクリューは抜釘し、アーチサポートを装着してリハビリが行われます。平均的には、術後10週でリハビリは終了します。   (4)後遺障害のポイント   Ⅰ.

続きを読む »

  (1)病態

 リスフラン関節部分を詳しく見ると、靱帯が、それぞれの骨をシッカリと締結しています。オレンジ色の靭帯が、リスフラン靭帯です。

 水色で囲んだ靭帯は、隣り合う骨どうしを互いに締結していますが、リスフラン靭帯だけは斜めに走行し、斜め下の第2中足骨と楔状骨を連結しています。

続きを読む »

(1)病態

 リスフラン関節は、足の甲の中央付近にある関節で、具体的には、第1、2、3楔状骨と立方骨と中足骨近位部で、この関節は構成されています。

 リスフラン関節脱臼骨折は、リスフラン関節に強い力が加わることで生じます。交通事故では、歩行者がタイヤに踏みつけられること、自転車・バイクを運転中の衝突で、転倒時に、足が石などを強く踏み抜いたときに発症しています。

 歩行者では、ハイヒールで歩行中の女性が自動車との接触で中足骨に強い力が加わり、その影響で、リスフラン関節が脱臼・骨折したことも経験しています。    (2)症状

 激痛と腫れ、足部の変形で、歩行不能となります。   (3)治療

 XPでは、前後、側面、斜位の方向から撮影されていますが、脱臼を見逃すことがあり、追加的に、CT、MRI検査が行われ、確定診断がなされています。

 多くで、第2中足骨の基部の脱臼・骨折ですが、転位が小さく、整復できれば、6週間のギプス固定、中足骨の多発脱臼・骨折で、転位が大きいときは内固定術、中足部の固定術が行われます。

 術後はギブスシーネ固定がなされ、8週でギプスはカット、リハビリが開始されます。予後の経過は良好で、リスフラン関節単独では、機能障害としての後遺障害を残すことはありません。   (4)後遺障害のポイント   Ⅰ.

続きを読む »

 ショパール関節脱臼骨折

  (1)病態

 ショパール関節とは、上記の関節で、横足根関節とも呼ばれています。

 交通事故110番では、①歩行中にトラックが接近し、足を踏まれた、②バイクで直進中、交差点で他車と出合い頭衝突してスピンした相手自動車の衝突を受け、道路脇のブロック塀に激突、左足を挟まれた、③工場内で積み降ろし中に、重量物が左足に落下した、④軽トラックを運転中、11トントラックとの衝突で、運転席部分が大きくクラッシュし、右足を挟まれた状況でショパール関節の脱臼骨折を経験しています。足を強く挟まれ、内側に捻挫したとき、つま先が足の裏を向く、内返しの力が加えられたときに、ショパール関節は脱臼骨折するのです。   (2)症状

 足の甲の激痛、腫れ、皮下出血、脱臼骨折では、変形が確認でき、歩くことができません。    (3)治療

 XP、CT、MRI検査で確定診断が行われています。ショパール関節の脱臼骨折では、立方骨、舟状骨、距骨、踵骨が影響を受けます。治療は、まず、徒手整復が試みられ、整復不能なときは、内固定による整復が行われています。

 後療法は6~8週のギプス固定後に、アーチサポートを装着し、歩行リハビリが開始されます。   (4)後遺障害のポイント   Ⅰ.

続きを読む »

 膝の関節面にある軟骨は、損傷すると自然に再生しません。軟骨は骨と違って、血管が通っていないからです。本件は難治性の骨折ながら、主治医は最善を尽くしたと思います。

 機能障害なく治ったことは良いのですが、画像上、軟骨損傷を示すことで、12級13号に収めました。また、長期間の治療には、少なからずコロナの影響もあったと思います。   難治性の膝関節、これもその一つです。  

12級13号:脛骨高原骨折(30代男性・神奈川県)

  【事案】

道路を横断中、右方から走行してきた自動車に衝突され、受傷した。脛骨(すね)の膝下部分を骨折し、プレート固定とした。直後から強烈な神経症状に悩まされる。   【問題点】

骨の欠損がひどく、骨折箇所に人工骨を埋めるなど、骨癒合に時間がかかり1年を要した。また、元々の体質としてX脚であり、そこへ今回の事故によって軟骨が欠損したため、将来膝関節症になることが予見されるとの説明を受け、交通事故としてX脚矯正手術と併行して軟骨培養術を勧められた。とにかく膝がボロボロであった。

続きを読む »

 本日はクリスマス前の金曜日でしたので、電車も道路も混雑、交通機関が乱れがちでした。それを覚悟の上で、夕方からの静岡行でしたが・・三島駅からのバスは渋滞の中、遅々と進んで15分遅れ、危うく医師面談に間に合わないところでした。

 無事、医師面談を終えたのですが、今度は復路の心配です。病院備え付けのタクシー専用電話を取りましたが、「すみません、タクシーは全部出はらっております」、「待ち時間は・・45分でしょうか」など、そんなに待ったら病院が閉まってしまいます。同じ寒空での待ちならと、バス停で待つことにしました。時刻表では、あと25分で来るはずですが・・やはりバスは来ない。午後7時ですから気温は一桁、富士山からの吹き下ろす風の冷たいこと。かじかむ手をさすりさすり、15分遅れ(待ち時間は結局40分)のバスに乗り込みました。

 久々に凍える病院同行となりました。こんなに寒かったのは、八戸以来です。

 👉 吹雪の中の病院同行    今年の夏は史上最高の酷暑でしたが、季節は巡るものです。冬場に備え、使い捨てカイロを鞄に入れて置こうと思います。  

続きを読む »

足根洞症候群(そっこんどうしょうこうぐん)

(1)病態

 足根洞は、外果(外くるぶし)の前方にあって、踵骨と距骨の窪みのことです。足根洞の中は、洞窟構造になっており、骨間距踵靱帯と血管が走行しています。また、骨間距踵靱帯の中には、固有知覚を司る神経自由終末が存在していて、歩くときには、安定性を保つ役割を果たしています。

 足首の捻挫は、大半が外くるぶしの靱帯損傷で、多くは手術なしで完治しています。ところが、痛みが続くこともあり、その1つが、足根洞症候群です。   (2)症状

 でこぼこ道の歩行、足関節の内返しや底屈で痛みが増強するとの訴えがなされます。また、足の後ろの方に不安定感や下腿の外側に、だるさや痺れを訴えることもあります。   (3)治療

 受傷機転は、重度の足関節捻挫によって、足根洞内の靭帯が部分断裂し、足根洞内で出血、その血が凝固し、変性することで、踵骨と距骨の間の滑らかな動きを妨げ、骨膜炎や浮腫を生じて、痛みが出ると考えられています。XP、CT、MRI撮影で検証しますが、確定診断には、MRIが有用です。

 治療は、保存療法で、足関節の内返しを制限するテーピングや足底挿板などで足根洞部分へかかる負荷を軽減します。痛みに対しては、局所麻酔剤とステロイドを混ぜて、注射すると効果が現れます。症状が安定すると、足関節の可動域の改善や筋力トレーニング、バランス訓練といったリハビリが行われます。これらの保存療法で改善が得られないときは、足根洞の瘢痕組織の郭清術を行いし、2、3週間のギプス固定を行います。   (4)後遺障害のポイント   Ⅰ.

続きを読む »

 本日の病院同行は太田市、ここ数年はめったに来ることがありません。    この地域へはJRより、東武線が便利です。北千住駅から特急りょうもう号に乗り換え、およそ1時間余りで到着しますので、そう遠方には感じません。 ↓ は太田駅のジオラマ。      この日は、日本全域に寒波が襲来していますが、関東は割と温暖、とくに群馬は東京より2~3度気温が高く、コート要らずで正解でした。むしろ、東京に戻って「おーっ寒っ!」でした。     年内の病院同行は、静岡と茨城の2か所を残すのみ。ラストスパートです。  

続きを読む »

 モートン病、MORTON病

  (1)病態

 人間は2本足で直立歩行する唯一の哺乳動物です。4本足で歩行する哺乳動物は、かかとの部分を浮かせて足の先だけで歩きますが、人間は足の裏全体を地面につけて歩いています。人間の体重は、股関節や膝関節でも支えてくれますが、なんといっても全体重を支えているのは地面に接している足なのです。全体重を支える必要から、足には衝撃を吸収するシステムが組み込まれています。

 三角の部分の3つのアーチがそれに該当します。アーチを弓に例えると、弦に相当するのが筋肉と靭帯です。足に体重がかかったときには、この弓と弦が伸びたり縮んだりして衝撃を吸収しているのです。

 さらに、足は第2の心臓とも呼ばれています。心臓はポンプの働きで全身に血液を巡らせていますが、足にたまった血液はふくらはぎや足の裏の筋肉の収縮によって心臓に送り返されているのです。

 足のむくみについては、コンパートメント症候群で解説していますが、人間は立ったままでも足の裏に刺激を受けていれば、足のポンプがうまく機能して血行を促進させるのです。近年、足の裏のつぼをマッサージすることが流行していますが、血行をよくすることによって自律神経やホルモンの働きを活性化させているのです。   (2)症状

 交通事故110番では、交通事故によるものは1例だけ経験があります。自動二輪を時速70kmで運転中に2トントラックの側面に激突し、右下腿骨の開放性粉砕骨折と右足関節果部の挫滅骨折等で、奇跡的に切断を逃れた被害者でした。

 受傷後1年7カ月目に症状固定、偽関節と足関節の運動障害で併合7級の後遺障害を獲得したのですが、右足指の3・4番目に疼痛を訴え、モートン病と診断されました。

 これは、先に説明した足根管症候群と同じ、絞扼性神経障害です。後𦙾骨神経から枝分かれした内側足底神経の外側に分岐した趾間神経が圧迫されたことによって発症します。調べてみると、ハイヒールを履く中年の女性に多い疾患です。2・3趾または3・4趾の痺れ感と灼熱感と疼痛を訴えることが多いのです。

続きを読む »

 足根骨 足底腱膜炎(そくていけんまくえん)   (1)病態

 足底腱膜炎は、先の足底腱膜断裂の前段階、足底筋の一部の断裂や炎症です。

 足底筋はアーチ状の構造を持つ足の骨に対して、弓の弦のように張られていて、ジャンプや走ることで、足が受ける衝撃を吸収する役目を担っています。足底筋膜炎は主に、踵の骨の周辺に発生し、痛みを引き起こします。   (2)症状

 足底腱膜炎の主な症状は、かかと周辺の痛みです。この痛みは、踵を地面に付けたときに、増強します。   (3)治療

 足底筋膜炎の治癒は、個人差、年齢差がありますが、早ければ3カ月、長くて2、3年です。

 非ステロイド性抗炎症剤、NSAIDsやステロイド剤の投与で炎症の悪化を抑え、マッサージ、ストレッチ運動などで痛みを緩和させるリハビリが続けられ、日常歩行には、アーチサポートやヒールカップといった、足の構造を支援する装具を装着することもあります。   (4)後遺障害のポイント   Ⅰ.

続きを読む »

 足底腱膜断裂(そくていけんまくだんれつ)   (1)病態

 ラグビー、サッカーなどのコンタクトスポーツで、足を強く蹴り出してダッシュしたときに発症しています。交通事故でも、バイクや自転車と自動車の出合い頭衝突で、足の裏に強い衝撃がかかったとき、道路から田畑や崖下に転落、着地の際に、大きな負荷がかかり、足底筋膜が断裂することがあります。

 ほとんどは、踵骨に近い位置の足底腱膜が断裂しています。また、足底筋膜断裂では、断裂した筋膜組織から出血し、内出血を起こし、内出血は、足裏の土踏まずの部分に拡がります。   (2)症状

 受傷直後は、激痛で歩くことができず、みるみるうちに、足裏の内出血が拡がり、腫れが増大、土踏まず部分が、広く平に見えるので、診断は容易です。足首の捻挫と見過ごされることは、ありません。   (3)診断と治療

 エコー検査やMRIの撮影で、足底腱膜断裂を確認することができ、診断は確定します。治療は、断裂部位の縫合術がなされ、その後、1カ月程度のギプス固定がなされます。ギプスカット後は、足底板を装用し、リハビリが始まります。   (4)後遺障害のポイント

 平均的には、受傷から2カ月で就労復帰でき、後遺障害を残すことはありません。    次回 ⇒ 足底腱膜炎  

続きを読む »

 足根管症候群(そっこんかんしょうこうぐん)

  (1)病態

 上肢の外傷に、よく似た傷病名で手根管症候群があります。これは、上肢を走行する正中神経が、手根管のトンネル部で圧迫、締め付けられたことにより、麻痺したもので、交通事故では、橈骨の遠位端骨折や月状骨の脱臼に合併して発症しています。

 足根管症候群も、手根管症候群と同じく、絞扼性(こうやくせい)神経障害で、後脛骨神経が麻痺する症状です。脛骨神経は、下腿から足の方へ向って走行、足の内くるぶしの付近で枝分かれをして、足の裏の感覚を支配しています。内くるぶし付近では、足根管というトンネルが存在して、後脛骨神経がその中を通り、交通事故では、脛骨内果・距骨・踵骨の骨折、脱臼に合併して発症しています。   (2)症状

 症状は、足指や足底部の痺れ感や疼痛を訴えるのですが、痛みの領域が足首以下に限定され、かかとや足関節、足裏に痛みが生じていること、足の親指の底屈不能、痛くて眠れないほど、夜間に痛みが増強するが、足の甲には痛みやしびれが出現しないのが典型的な症状です。   (3)診断と治療

 足根管部に圧痛や放散痛が認められ、皮膚の表面から軽く叩いただけで、極めて激しい痛みが放散するチネルサインも陽性となります。神経の障害ですから、後脛骨神経が支配している筋肉の筋電図をとると異常が認められます。

 治療としては、保存的に、ステロイド剤の局注、鎮痛消炎剤の内服、足底板の装用、安静で改善を見ることもありますが、効果が得られなければ、屈筋支帯を切離し、神経剥離術を実施します。神経剥離術は、整形外科・スポーツ外来、専門医の領域です。予後は良好であり、絞扼性神経障害では、後遺障害を残すことは稀な状況です。    (4)後遺障害のポイント

 交通事故では、脛骨内果・距骨・踵骨の骨折や脱臼に合併して、このトンネルが圧迫を受け、足根管症候群を発症しています。したがって、後遺障害は、脛骨、距骨、踵骨の骨折後の変形、疼痛、可動域制限となります。

 しかし、足根管症候群は、積極的な治療で、完治を目指します。軽度な足関節捻挫でも、足根管症候群を発症することがあります。ほとんどは、保存的な治療で完治しています。弊所の経験則でも、骨折後に足根管症候群の兆候を示す方も、ほとんどリハビリの過程で軽快したようでした。     次回 ⇒ 足底腱膜断裂  

続きを読む »

お問い合せはお気軽に!

事務所メンバー

「交通事故被害者救済」がスローガン! 病院同行に日夜奔走しています。解決まで二人三脚、一緒に頑張りましょう。

代表者略歴を見る!

部位別解説 後遺障害等級認定実績(初回申請) 後遺障害等級認定実績(異議申立)

今月の業務日誌

2024年4月
« 3月    
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

月別アーカイブ