交通事故の被害者さんによく見かけることの一つに、「甘え」があります。この甘えは、事故に遭った気の毒な自分を、周囲が好意的に助けてくれるはず・・との期待です。それは、多くの場面で裏切られることになります。   1、救急車

 自分の希望する病院へ運んでくれません。ケガの症状に対応できる、至近の病院を目指してくれますが、患者の希望はまず通りません。重傷者にとっては、病院を選ぶほどの余裕がないものですが、仮に希望する病院を言っても、希望通りになることは稀です。救急車はタクシーではないのです。   2、警察

 被害者の力になってくれることを期待したいところです。しかし、原則、警察は民事不介入です。加害者に刑罰を問う場合、刑事事件として、その第一次調査を担っているに過ぎません。民事に絡む、過失割合など警察が決めることではありません。どちらの肩を持つことはありません。

 また、ケガをしているにも関わらず、「物件事故扱い」を勧められることも珍しくありません。「人身事故扱い」となれば、司法警察官の現場検証と、より精密な実況見分調書の作成、双方へ供述調書を作成する必要があります。物件事故の何倍も面倒なのです。よく、被害者側にも過失がある場合、「あなたも刑罰に問われる可能性がありすよ(だから物件のままにしよう)」と、まるで脅し文句のように迫ってきます。実際は、加害者に相当のケガがない限り、被害者が刑罰に問われることはほとんどありません。ただし、その可能性としては0ではないことを根拠に、「物件事故扱い」を迫る脅しが常套句になっています。    3、病院

 病院はお金をもらって治療する場所です。そこまでは救済機関と言えます。しかし、事故との因果関係が問われる症状について、責任をもって証明する立場ではありません。具体的には、”その症状は事故によって起きたかどうか”など、保険会社の支払いに関して疑義が生じた場合、その問題には立ち入りたくないのです。病院は淡々と治療するだけ、事故との因果関係など知ったこっちゃないのです。その証明は患者自身で動かなければならないのです。      4、加害者

 詫びの電話でも一本入れば良い方で、保険会社に対応を任せ、それっきり消えてしまうのが加害者です。当初、「物件事故扱いにして」と泣きつくときは、それはそれは謝罪・反省の態度です。ところが、刑事処分が決まったら、梨のつぶてとなり・・多くの被害者さんは憤慨することになります。

 交通事故での加害者は、しばらくすれば外野になります。1年後の解決時期には、事故のことすら忘れていることでしょう。   5、そして保険会社

 加害者側・保険会社の対応に、激怒している被害者さんをよく見かけます。もちろん、態度の悪い担当者もいないわけではありませんが、多くの場合、被害者さんの「俺は被害者なんだぞ!」との態度に原因があります。保険会社は加害者に代わって、事故対応の代行をしているに過ぎません。被害者に対して贖罪する立場ではないのです。被害者の態度から、担当者は写し鏡の対応になっているのです。

 淡々と保険会社の決めた基準額で解決を迫ってきますが、それは当然の姿勢です。被害者さんは紳士的な態度で、理路整然と損害を主張し、その証拠となる資料を丁寧に提出する必要があります。よく、これら書類提出に際して、「そんなの加害者がやるべきだ!」と言う被害者さんがいますが、それは逆です。法律上、被害者が証拠を集めて突きつける立場なのです。それが社会・大人のルールです。自分(被害者)は相手保険会社の契約者=お客様ではないのです。よくよく自身の立場を理解をして、対応していかなくてはなりません。    このように、皆、それぞれの立場で仕事をしているだけです。被害者だけの為に働く味方はいません。被害者さんは、自動的に救われる理想郷を夢見ている場合ではありません。自ら動くしかないのです。それが困難であれば、弁護士や秋葉を雇うことになります。お金を頂く私達だけが味方になりうるのです。  

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 毎日、色々な被害者さんの相談がありますが、被害者さんのよくある勘違いを一つ挙げます。     長く治療すること     「私は完全に治るまで示談しない! 相手に最後まで治療費を支払わせる!」姿勢、その気持ちはわかりますが、損得勘定も必要です。    誤解の無きよう補足しますと、

 適切な治療が済めば、速やかに症状固定 → 後遺障害申請 → 賠償交渉 → 解決 へ さっさと進めることです。打切り後の治療費は健保を使えばわずか、自己負担でよいのです。     様々な治療を試したい・・、リハビリに長く取り組みたい・・、交渉事は来年に・・など、 解決を先延ばしすることに利はありません。

 とくに、後遺症が残るようなケガであれば、早めに症状固定して等級を取るべきです。なぜなら、時間が経てばたつほど、中途半端に治っていきますから、等級がどんどん薄まってしまうのです。一部の例外を除き、平均的な治療期間で治療の目途をつける方が良いのです。

 後遺障害の賠償金は高額です。だらだら続けた治療費、それが健保なら、完全に後遺障害の賠償金を下回ります。後遺障害等級を取りこぼすことが最も損なのです。    一方、早期に治療費打ち切りや解決を迫る保険会社も、症状固定は大歓迎です。後遺障害の審査は別機関である自賠責保険の仕事、そこで何級がつこうが、担当者の責任ではありません。それが、賠償金の高騰につながったとしても、処理スピードこそ保険会社が望んでいることなのです。    何より、いつまでも交通事故を引きずる事こそ、被害者さんにとって人生の損害です。事故とは一早く決別し、仕事のキャリアを、生活の平穏を、取り戻すべきなのです。      このような情報を謳うネット情報は少ないと思います。    被害者さんは、交通事故で費やす時間の無駄を意識し、賢く実利ある解決を図るべきと思います。

   

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 治療を担う病院、自動車の修理をする工場、金銭賠償を代行する保険会社と、それに対して代理人として賠償請求をする弁護士・・・様々な業者が入り乱れるのが交通事故業界です。その中で、私どものような医療調査や諸手続きを担う存在は、目立たない存在です。しかし、その目立たない存在である私達ですが、受傷直後にご依頼を受けると、解決までかなり濃密に被害者さんに付き添うことになります。     交通事故解決の最大の目的は、もちろん、治療→完治、損害→回復ではありますが、ある意味、究極的には金銭の確保かもしれません。しかし、その金銭賠償の目的より、加害者、あるいは加害者を代行する保険会社への憎しみを前面に据える被害者さんも少なくありません。具体的には、交渉相手にケンカ腰、加害者への直接請求・脅し、執拗な謝罪要求などの感情面です。

 ある日突然、交通事故被害に遭うことは、まったくの理不尽です。相手を憎む気持ちは当然です。しかし、交通事故の解決とは、繰り返しますが金銭賠償に帰結します。損害の回復は、自動車を修理する、ケガを治療するだけで完全に果たせないことが多々あります。また、事故による精神的な負担は慰謝料として、お金に換算するしかないのです。加害者に代わって賠償支払いを担う保険会社、その担当社員に怒りをぶつけて、それで賠償金が上がれば良いでしょう。しかし、多くは担当者の反発を買うだけです。担当者も人間です。ケンカ腰や過度な賠償請求には、それなりの対処を講じます。それは、加害者側からの弁護士介入です。被害者さんへは、さらに塩対応となるでしょう。

 また、加害者が丁寧に謝罪に来ることも稀です。賠償交渉を担う保険会社としては、被害者さんと勝手な約束をされる心配があるので、被害者との接触を控えるよう指導するケースが普通です。また、保険会社を通して謝罪を要求したとしても、保険会社の指示(「謝らないと示談しずらいので、頼みます」)で渋々謝罪文を書かれて、それで被害者さんの溜飲は下がるのでしょうか。    つまり、交渉事に感情を持ち込んでも、成果は得られません。しっかり証拠を提出してクールに交渉を重ね、自らの損害に見合った金銭を受け取る戦いなのです。ことわざに「人を呪わば穴二つ」とあり、怒りの感情こそ、自らを焼き焦がす刃(やいば)です。感情的な態度は「諸刃の剣」どころか、「自滅の刃」なのです。    被害者に寄り添う立場の私達こそ、被害者さん達の気持ちを汲みつつも、冷静さを促し、納得できる解決に導きたいものです。「自滅の刃を抜かせない」・・今年は、これを新しい標語としたいと思います(ブームは今年もまだいけそう)。

 

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 被害者さんの被った被害を回復する為には、お金を少しでも多く取るしかないと思っています。法律の世界の損害賠償の実現とは、現状回復、あるいは金銭賠償に二分します。しかし、実際のところ原状回復が難しいケースが多く、お金で解決するしかない事ばかりです。修理できない程に壊れた自動車(物理的全損)や、自動車の価値を上回る修理費の場合(経済的全損)のケースがそれに該当します。  

 また、被害者の負う精神的損害などは、そもそもどうやって償うのでしょうか。 謝罪?誠意?、土下座すれば満足? もちろん。慰謝料としてお金で償うこととなります。

 

 一方、被害者さんの経済的事情、性格や心情から、必ずしもお金にこだわらない方も存在します。二つ挙げますと・・   1、経済的に豊かで、自身の収入に比してわずかばかりの賠償金の為に、時間や手間、神経を割く事が得策ではないと考える人。まさに、金持ちケンカせず。   2、加害者に対してお金を請求する行為自体をためらう方。加害者を気の毒と考える、もめ事を大きくしたくない、聖人君子を超える、”いい人”。  神様?

 これらの(数少ない)被害者さん達には、私達のメッセージ「しっかり、賠償金・保険金を確保しましょう」は、空虚なセリフに聞こえると思います。

 もちろん、被害者さんの希望が第一優先ですから、お手伝いすることは限られます。弁護士を含め、ほぼ、受任にはならないでしょう。

 しかし、これが、重度の後遺障害を負った被害者さんのご家族であれば、話は別です。本人はそれでいいかもしれませんが、障害の介護をする、あるいは、様々な助力を課せられるご家族に対し、負担ばかりで報いるものがありません。その場合、いかに今後、家族に経済的・時間的・肉体的負担を強いることになるか、現実的な労苦と費用を説明しないわけにはいきません。

 将来の損害・費用について、たいてい相手の保険会社は少なく見積もります。ですので、将来的にいくら必要か、しっかり想定される経費額を示すことが大事です。そのような説明、いえ、説得に、努力は惜しまないつもりです。    本日は希少例ですが、そのような被害者さんが存在することを書きました。  

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 諸々の費用で保険会社と争ってきましたが、その最終的な目的は、ご自身の損害に似合った金銭賠償を確保することに異存はないはずです。最終的に「なんぼもらったか」ですね。    もし、半年以上治療して、症状が残っているのであれば、治療費の延長でぐずぐず交渉せずに、さっさと症状固定し、後遺障害申請すべきです。症状固定とは、一定期間の治療の結果、症状が劇的に良くならない、悪くもならない安定した状態で、一旦、治療の中止とすることです。これは、本当に治療をやめることではなく、もちろん自費での通院継続は自由です。ただし、保険会社に治療費を負担させる事故治療は中止するという意味で、賠償上の区切りとされています。    後遺障害保険金・賠償金は、大きく分けて、後遺症による慰謝料(精神的損害)と、後遺症による逸失利益(将来失われるであろう利益)の二つです。   (1)後遺障害・慰謝料

 表を見て頂いた方が早いです。

 

 このように、一番軽い後遺障害14級であっても、自賠責保険の基準で32万円、任意保険では32~40万円、弁護士に依頼して交渉すれば、最高110万円まで伸びる可能性があります。

 骨折があれば、治療結果にもよりますが、12級以上も望めます。その慰謝料、なんと290万円です。   (2)後遺障害・逸失利益    事故前年の年収 × 等級に応じた喪失率 ...

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 前回までのように、一々保険会社にかみつくと・・・どうのような反応が返ってくるのでしょうか?    当然ですが、担当者は「こん畜生(怒)」と思うでしょう。SC(保険金支払い部門)の職員は、対人で一年でおよそ100件の処理に当たります。対物の担当はもっと多いはずです。入院3か月に及ぶような重傷案件や死亡案件ならまだしも、むち打ちなど軽傷に多くの時間を割いていられません。

 初期対応(病院への治療費一括払い手続き)→休業損害の支払い→3か月で治療打ち切り→さっさと示談、このサイクルを事務的に管理していきます。この流れで、一々争ってくると・・面倒な被害者の烙印を押されます。もちろん、揺るぎない証拠を示して、紳士的に理路整然と交渉してくる被害者さんには、相応の対応をします。請求内容が常識的で、正当であれば、多少の融通はしてくれるものです。

 もし、不正な書類を提出したり、非常識な請求を言い続ければ、担当者は弁護士介入を検討します。弁護士を立てられたら、「今後の話し合いは、私共の法律事務所が対応します」と弁護士名と印鑑がずらーっと並んだ書面が届きます。今後一切、加害者はもちろん。保険会社担当者との直接の連絡はできなくなります。そして、その法律事務所に電話しても、「その請求にはお支払いしかねます」と、さらに塩対応、いえ、タバスコ対応となります。納得できる証拠書類を提出しなければ、びた一文払いません。

 それでも、ごねると、「債務不存在確認訴訟」をうたれます。これは。「これ以上、払う言われはない。お金が欲しくば法廷で決着しよう」との裁判です。その結果、被害者さんは、屈するか戦うかの選択になります。私の経験した限りでは、裁判で争っても被害者さん側が勝った試しがありません。保険会社と弁護士は、負ける戦いなど挑むはずがありませんので。負けるくらいなら、とっくに保険金を支払っています。

 そのような、不利な戦いに臨むべきではありません。交渉で取れるもの、裁判で決着をつけるもの、請求すべき項目・金額を見極める必要があります。問題は、常識的で正当な請求なのか否か、被害者さんがわからない時です。その場合、弁護士や交通事故相談を利用して、意見を聞いてみればよいと思います。周囲からの雑音に迷わされるべきではありません。無責任な周囲は、「保険会社にはガツンと強気で言わなきゃダメ」、「むち打ちは後からでるので、長く治療すべき」、「保険会社が払わなければ、加害者に直接、請求すべき」等々・・これで保険会社を怒らせて、悪い結果になっても、誰も責任を取ってくれないでしょう。  そして、最も厄介なものは、「感情」です。ある日、交通事故被害で理不尽な目にあった被害者さんの怒りは、事故以来、詫びにも来ない加害者ではなく、保険会社にぶつけるしかありません。担当者の電話での口調や態度で、その怒りは心頭に達します。ついつい、激しい口調になるのが人間です。しかし、相手も人間です。よく、被害者さんの相談から、「保険会社担当者の態度が悪い」との相談を聞きますが、実は、その原因は被害者さんの口調にあることが多いようです。担当者を、「お前」呼ばわり、「ふざけるな!」などのライト暴言、「あんたじゃ話にならない、上の者をだせ」、「女じゃだめだ、担当者代われ」・・・これを言われた担当者は、紳士路線を捨てて、合わせ鏡の対応に切り替えるでしょう。担当者だってアウトレイジ化するのです。

 私が研修でSCにいた時、このような被害者に憤慨している担当者さんとよく飲みに行きました。毎日、被害者さん達に暴言を言われて、大変な職業です。もちろん、彼らはプロですから、理性的に交渉できない被害者さんであっても、慣れた対応で進めます。しかし、何度も言いますが、彼らも人間です。ストレスが高じれば、絶対に意地悪をしたくなります。もちろん、憎たらしいからと言って、被害者相手に違法や不正など働きません。後でバレて、失職や査定が下がるような事をするわけありません。できる範囲で、合法的に、スマートに、より厳しい対応をするでしょう。あるいは、あっさり、弁護士介入とするかもしれません。 やはり、  

 払う側が強いのです。

   被害者さん側は、このような視点がどうしても欠けてしまうのです。だからと言って、保険会社の言いなりにしろ、保険会社に逆らうな、このような卑屈な事を延々と解説しているのではありません。戦うべき時はしっかり戦うべきです。ただし、戦う時を誤るなと言っているのです。そして、自分は頭に血が上るタイプ、冷静に交渉などできるか!と思われたら、お金はかかりますが、迷わずプロに相談すべきです。その代金が見合えば、早めに弁護士を雇うのも好判断に思います。    では、戦うべき時はいつか、そして、冷静に交渉した結果は、それは明日、最終回にて。  

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 さて、昨日の物損交渉で憤慨中の被害者さん、今度は人損(人身被害の請求)でさらに、ヒートアップです。  

1、休業損害

  ① サラリーマンの方は、

 保険会社から送られてきた休業損害証明を会社に書いてもらい、源泉徴収票をつけて提出すれば足ります。一日当たりの給与の計算は・・・

 事故前3か月の給与の合計÷90日で算出します。この90日は、ほぼカレンダー通りの暦日数なります。したがって、土日祝日を含めた日数で割るので、1日あたりの給与は少なめになる問題があります。これも、ここであれこれ争って振込が止まるより、ひとまず飲んで、補償してもらう方が良いです。

 詳しくは ⇒ 休業損害の算定方法に風穴!

  ② それでは、自営業の方は? 

 前年の申告書(控、ただし税務署の印あり)の写しを提出します。ここで問題は、自営業者は書面上、経費を多く計上して、自分への収入を圧縮する傾向があるので、そのまま計算されると、休業補償が少なくなります。これは節税(脱税?)の為に自らしたことですから、相手保険会社に文句を言っても始まりません。保険会社は公的な証明を基に支払うしかありません。だって、被害者が自筆でノートの切れ端に書いた金額など、「お手盛り」と言われても反論できないでしょう。

 では、ここで、保険会社に不正な証明を提出したらどうなるでしょうか?    ⇒ 休業損害請求で被害者の正邪が判断される~被害者に対する無責任なアドバイスについて ④     つまり、サラリーマンも自営業も、ひとまず、算定・支払い可能な額を受け取って、最終的な賠償交渉で差額交渉、決着すればよいと思います。それとも初っ端から、相手保険会社と大戦争を始めますか?   続きを読む »

 ある日突然、痛い思いをして、日常を奪われる交通事故被害・・・その怒りと理不尽さは十分わかっているつもりです。それが0:100の一方的な被害事故であればなおさら、怒りは加害者、あるいは加害者側の保険会社にぶつけるしかありません。

 しかし、加害者側に自動車保険の加入がある場合、加害者の存在は徐々に消えていき、相手保険会社だけが残ります。その保険会社担当者に、自動車の修理代、治療費、休業損害などの請求をしていきます。そこで、被害者さんはその事務的な対応や消極的な支払い態度に、さらに怒りを覚えます。確かに、保険会社は被害者さん達の言いなりに、何でもかんでも支払うものではありません。支払い条件があります。それは、保険会社が支払わざるを得ない証拠書類に尽きます。加えて、その金額が妥当か否か、査定もクリアしなければなりません。。

 それは、仕方のない事だと思います。すべての被害者さんが真っ正直で、正当な権利を主張するわけではなく、明らかに過剰請求であったり、中には嘘の損害を織り交ぜてくる輩が存在するからです。やはり、きちんと書類を揃えて、紳士的に交渉するべきです。被害者側にとって、この面倒な立証作業抜きに、保険会社のお財布は開かないと理解すべきです。

 それでも、保険会社と交渉が難航する、よくあるケースは以下の通りです。今日は物損交渉のあるあるです。  

1、自動車の査定額

   保険会社はレッドブックと言った、中古自動車市場の平均価格・相場価額を基に賠償額を提示します。たとえ1年でも乗っていれば中古車です。新車の価格からは当然下がります。ただし、特別に付けた装備などから、実際の価値は高いこともしばしばです。その場合、増額交渉の余地はあります。丁寧にその装備や改造の額を示して交渉することになります。

 また、よくある問題として、「修理してさえくれればよいのに」と思う被害者さんであっても、修理費が車の価値・時価額を上回るケースです。保険会社は、民法の損害賠償の原則である「原状回復」まで責任を取ればよいと考えています。現在の中古価額が20万円なら、修理費が60万円であっても、時価20万円しか払ってくれないのです。一応、法律に則った正当な理由とは思います。しかし、納得できない被害者さんvs保険会社のバトル第1弾となります。

 20年ほど前に、「対物全損差額費用」(対物超過費用など)特約ができたおかげで、加害者がその特約に加入していれば、どうしても修理して乗りたい被害者さんには、50万円を限度に時価額を超えてかかる修理費を出してくれます。法律の原則を特約でカバーする、この柔軟な特約のおかげで先のバトルは減ったと思います。  

2、被害者にも過失がある場合は・・代車代はだしません。

   思わず、「その理由は?」と聞きたくなります。自動車の修理費は直接損害と呼びます。対して、代車代や企業の場合の休車損害、買替費用、格落ち(評価損)など、これら事故によって二次的に生じる損害を間接損害と呼びます。保険会社は直接損害と間接損害を明確に区分し、間接損害は基本支払わない態度です。それでも、正当な理由(通勤で毎日、自動車を使っているなど)と証拠書類があれば、相談に応じます。これも、なかなかに厄介な交渉を強いられます。

 さらに、20:80など、被害者側にも過失がある場合は、より硬直した態度です。各社口をそろえて、「過失がある場合は代車代を支払いません」と言います。これは、業界で口を合わせていることは明確です。普通に考えて、「修理費で相手の責任分(例えば過失80%)しか出さないのはわかる。だったら、代車代だって過失分だけでいいからもらえないの?」と言いたくなります。

 損保時代、私は担当者に理由を聞いてみました。すると、教科書通りの口調で、「損害の拡大を防ぐためです」と。

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 昨日の実績投稿の解説に付随して、保険会社が定める治療期間について、意見を加えたいと思います。

 

90日後に打ち切られる被害者

   交通事故で被害者となりました。診断名は頚椎捻挫、いわゆる、むち打ちの類です。相手の保険会社は治療費を病院に直接払ってくれます。これを「一括払い」と呼んでいます。被害者さんは治療費の立替なく、安心して通院できます。そして、2か月を超えた頃、「症状はいかがですか?」⇒「そろそろ、治療は終わりませんか?」⇒「弊社としては3か月をもって治療費の対応を終わりたいと思います」・・このように、3か月の治療費打ち切りを徐々に切り出してきます。

 一方、被害者さんがそれまでに治れば、何ら問題はありません。しかし、中には神経症状がしつこく残り、理学療法を継続したい方もおります。そこで、「ふざけるな!治っていないのに打ち切りとは何事だ!」とケンカになります。治るまで治療費を払わせることは、被害者の当然の権利だと思っているのです。しかし、それは当然の権利ではありません。保険会社にしてみれば、便宜上、一括払いをしているに過ぎません。これは、裁判できっちり白黒ついています。保険会社は独自の判断で、いつ治療費を打ち切ってもなんら罪はないのです。

 もちろん、治療費支払いの継続を巡って争うことはできます。しかし、勝ち負け定かではなく、半年以上かかるかであろう裁判へ・・現実的ではありません(現実にやる被害者さんもおりますが)。その間、決着がつくまで、当然に治療費は自腹です。ここで、被害者さん達は、「100日後に死ぬワニ」ならぬ、「90日後に打ち切られる被害者」となります。

 

打撲捻挫は3か月間! ...

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 保険会社は無制限に治療費を払ってくれるわけではありません。被害者さんのケガの診断名や受傷機転(どのようにケガをしたのか)など、客観的な事実から、相当する治療期間を判断をしています。私は、この保険会社の姿勢を直ちに批判する気はありません。医者でもない保険会社社員こそ、平均値から判断せざるを得ないと思います。しかし、物事は平均的な基準では測れないことが多々あるものです。交通事故での典型例は、何と言っても「むち打ち」です。

 同じような受傷機転(どのように受傷したのか)、医師の下す同じ診断名でも、症状の個人差は絶大にあります。ある人はまったく病院に行くこともなく無症状です。また、仕事が忙しく通院できないと、湿布を貼って治す方もいます。そして、頚部の神経症状が惹起され、上肢~手指のしびれが収まらず、それこそ、半年から数年にわたって症状に悩まされる方も存在するのです。一方、大げさに症状を訴えて、慰謝料増額を期してか長期治療を画策する悪い人も少なくありません。そもそも、傷病そのものに対して、年齢、性別、体質、既往歴など、個人差があって当たり前です。

 このように千差万別の患者さんは、同じ程度の衝撃でも生まれるのですから、個々にその治療期間を断定するなど、端から難しいのです。

 それでも、治療費を払う側の保険会社は、むち打ち患者全員に一定の基準を押し付けてきます。打撲・捻挫の平均的な治療期間はおよそ3か月とみています(この3か月説に関するよもやま話は、明日の記事で追補しようと思います)。この治療費打ち切りの打診に、症状が残っている患者さんは大パニックです。でも、決して慌てる必要はないのです。本例のように、健保に切り替えて粛々と治療を続け、自賠責保険の後遺障害審査に付して、ここで症状を認めてもらい、後遺障害慰謝料と逸失利益(10年以上通えるほどの治療費に匹敵します)を確保すれば良いのです。

 さらに、14級認定となれば、途中から自腹だった治療費も取り戻すことが容易です。弁護士が、「後遺障害が認められたのに治療費を打ち切って・・保険会社(担当者)の判断ミスでしたね」と言えば足りす。まさに、大逆転の解決になります。

 治療費を巡って保険会社とケンカするなど、時間の無駄、愚の骨頂なのです。      治療費など些細な金額です。後の賠償金で取り返せばよいのです  

併合14級:頚椎・腰椎捻挫(50代男性・神奈川県)

【事案】

信号のない交差点で、一時停止無視の自動車と出会い頭衝突、首と腰を痛め通院するも、事故から三か月目に保険会社から治療の打切りをされる。

【問題点】

事故車の損傷度合いから、軽度な事故と判断されてもおかしくはなかった。保険会社から早めに治療の打切りを打診される予想から、早めに弁護士を介入する必要があり、契約を急ぐも、本人の都合が合わずになかなか弁護士介入が出来なかった。

そうこうしている内に、3ヶ月目で治療費一括対応の打切りを宣告され、ご本人から慌てて連絡が入った。

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 交通事故の解決において、”多くの場面”で弁護士の活躍は欠かせません。しかし、”すべての場面”ではありません。必ずしも賠償交渉が必要ではないケースも存在します。

 本例の場合も、受傷初期の段階で賠償金を十分に勝ち取れるか否か、法律の専門家である弁護士ですら判断するのは難しく、受任はある意味ギャンブルとなります。仮に弁護士費用特約があったら、受任はしてくれますが、恐らく「等級が取れるまで」待っているだけで、それまでは、女性事務員が電話対応のみ、ほとんど放置は目に見えています。

 これは、「細かいことは自分でやって下さい」「弁護士の仕事は賠償交渉だけ」と考える法律事務所が多いからです。しかし、自分ですいすい諸事務を進めていける被害者さんばかりではありません。こうして、多くの被害者さんは難渋の日々を送ることになるのです。

 弁護士以外の活躍が望まれる場面、本例はその典型だと思います。   私達に任せて!  

11級7号:胸椎圧迫骨折(40代男性・神奈川県)

【事案】

原付バイクで走行中、交差点で左折の際に転倒し、さらに後続車にひかれて受傷した。顔面や肋骨を骨折、第11胸椎を圧迫骨折した。

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前回 ⇒ 診断書さえ書いてもらえば治療費がでる?~被害者に対する無責任なアドバイスについて ③     被害者さんは、交通事故による不法行為の損害を回復するために、(完全に支払ってくれるかどうかわからない)加害者に請求しなければならない、大変に不利な立場です。加害者や相手保険担当者を怒鳴りつけても、相手が容易にお財布を開いてくれるものではありません。むしろ、意地悪されるかもしれません。不正な書類ではない公正な証拠書類を揃え、クールに交渉、実利ある解決を目指すべきです。このシリーズは被害者さん達への警鐘です。耳の痛い話であってもお付き合い下さい。    さて、保険会社を怒らせる請求の中で、最も悪意が込められているもの一つとして休業損害を挙げます。サラリーマンで源泉徴収票がでる方の不正はほとんどありません。大手の会社の書く休業損害証明も信用されます。およそ、高収入の会社員がむち打ち程度の軽傷で、高収入を捨ててまで、むしろキャリアを損ねてまで長期間休むことはないと推論されるからです。つまり、会社規模や収入の多寡で信用度が変わると言えます。

 やはり、自営業者さんの提出する収入証明書類は常に問題となります。基本、税務署への申告書の提出が公的な証明になります。しかしながら、多くの自営業者さんは経費を大きく積み上げますから、実態収入はもっとあるだろうに申告書の利益(年収)はかなり少ない。休業損害の請求に際して「実際はもっと多い、実はこれだけある」と主張しても、保険会社側が飲むはずがありません。そこは支払う側として、杓子定規に書類通り計算するしかありません。

 あまりにも少ない利益=収入額をここで正確に計算し直します。テナントの家賃や水道光熱費、自動車・火災保険などの損害保険料、これら交通事故での休業が無くても待ったなしにかかる経費は利益に戻し入れます。このように一部経費の合算で正確な年収を割り出すことが基本です。

 さらに余すところなく正確な年収を提示する場合は、通帳や領収書他収支の書類を全て揃え、総勘定元帳を作成します。実際は、どんぶり勘定の自営業者がこれらを作成・集積することはハードルが高いものです。そもそも収入を過少申告している場合(つまり脱税という犯罪)は書類を偽造するしかなく、そこまでやると保険金詐欺と言う犯罪になります。

 中小企業、家族経営の会社はお手盛りの収入証明書類を常に警戒されます。「なんでこんなに高収入で申告していない?」例を何度も目にしました。恐らく社長とグルで、賃金台帳を改ざん、大盛り収入にしたのでしょう。「こんなの提出しちゃだめ!」と、かつて被害者を叱ったことがあります。

 また、申告すらしていない一人親方、自由業の方も往々にして難儀します。申告書がなければ納税証明書になりますが、そもそも納税もしていないのでは話になりません。よくあるケースですが、自由業の人がノートに自分で書き上げた収入表を提出してきます。第3者の証明のない「The お手盛り」など信用されるわけがありません。保険会社は証明なく払える自賠責の限度額である5700円しか認めないでしょう。

 これらのやり取りを通して、被害者さんの信用は致命傷となります。証明書の無い被害者さんの提示する収入額は大抵、盛り盛りです。保険担当者も正直な申告額など、見たことがないのではないかと思います。「俺は被害者(様)だぞ」という歪んだ権利意識がそうさせるのでしょうか。しかし、この盛った提示額によって、保険会社からの信用は0になります。今後、治療費含め何を請求しても疑いの目で見られます。最終的にも厳しい賠償金提示が予想されます。それで文句を言えば、保険会社はためらい無く弁護士対応としてくるはずです。

 いくらかわいそうな被害者であっても不正請求は許されません。休業損害の請求では、会社や自営業者などのちょい悪気分のほう助(不正・犯罪を助ける)によって、無責任なアドバイスを超えた十字架を被害者に背負わすことになります。公正に戦わなければ、ゴルゴダを丘を登らされるような保険会社の厳しい対応が続きます。  

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 過去記事:たくさん通えば慰謝料が増える?~被害者に対する無責任なアドバイスについて ②、その第三弾を書きます。

 前回は、「3ヶ月以内の通院なら、慰謝料は毎日通院しても2日に1回以上増えない。」ことを解説しました。今回は掲題について検証します。  交通事故被害にあってケガをした場合、入院や通院の費用を加害者に請求することになります。支払いは多くの場合、加害者加入の保険会社になりますが、その費用が妥当か否か、つまり、過大請求ではないかを当然に検証します。その検証すべき根拠は第一に診断書になります。細かい費用項目は診療報酬明細書を確認します。これらの診断内容から支払いに移りますが、素直に支払われないことが往々にあります。

 医師は患者の状態を診察して診断書を記載します。それは、交通事故の届出の為に警察へ、あるいは休業届けの為に職場へ、そして治療費請求の為に相手保険会社へ提出します。医師はあくまで患者の状態から判断・記載しますが、さらに踏み込んだ「事故との因果関係を証明して下さい」とのリクエストには常に慎重です。例えば、むち打ちで首を痛めたことは記載しますが、事故の衝撃など計りようもなく、原因には深く言及せず、その時の患者の訴えや症状から診断します。

 対して、保険会社は事故の衝撃によってある程度、症状を推測します。自動車の追突事故では、コツンとぶつけられた程度、修理費が10~20万、保険会社の査定で「小破」と判断されるもの、これらの衝撃から軽傷が限度、長期の通院になるような重傷とは思いません。回りくどい言い方が続きますが、要するに、「その程度の事故・衝撃でそんなに症状が重いのか?」と疑りの目を持つのです。もちろん、”事故で少し痛めて心配だから数日通った”程度では疑りません。数ヶ月も通院が続くような場合や、むち打ち程度で即入院する被害者さんに対して、です。

 軽度の衝突で病院通い? 治療費を支払う側は「大げさな!」と思うのはごく自然なことです。そのような場合、被害者さん達は医師の書いた診断書を盾に、治療費・その他費用の支払いを要求することになります。確かに診断書は専門家の証明書ですから、第1級の証拠に違いありません。それでも保険会社を甘くみないことです。保険会社は医師の書いた診断書など無視して、支払を拒絶することがあります。そして、争いが激化すれば、保険会社は弁護士を立ててきます(一応、加害者が雇った体で)。その弁護士は文章で、「これからは私どもが窓口です」、次いで、「これ以上、治療費が欲しくば、法廷で待とう(債務不存在確認訴訟)」と。

 その攻勢に、診断書一枚で対抗できるでしょうか? 追加的に、主治医に「100%事故のせいで、働けなくなったと証明して下さい!」とお願いしても無駄でしょう。そのような証明など医学上限界があり、何より、裁判沙汰・紛争となった場合、巻き込まれたくない医師は逃げの一手です。それでも法廷で戦った場合、追突事故で自動車の修理費が10万円ちょっと・・その程度の衝撃で、入院した、何ヶ月も通院した、半年も仕事を休んだと訴えても、裁判官は”診断書”だけで、被害者の訴えを認めるでしょうか。やはり、常識的に考えて「大げさ」と判断し、保険会社の反論を支持して被害者の負けとするはずです。医学的・科学的に症状をいくら立証しようと、常識が勝つ場面です。

 どこまで行っても、資本主義では”払う側”が強いのです。ごく稀に、軽度の衝撃で重い症状となってしまった被害者さんは、(大げさと判断されるであろう)常識を越える立証が課されれます。それは、絶望的とは言わないまでも、大変な苦労を覚悟しなければなりません。時には、ある程度の治療費・慰謝料で手を打つべきかもしれません。そのような判断の為にも、早期に弁護士など専門家に相談すべきです。巷の無責任なアドバイスに乗って、非常識な請求をすべきではありません。「この請求は非常識か否か」、この判断を間違えると、保険会社との大戦争が待っています。    

弁護士による交通事故慰謝料の増額は、後遺障害の等級で決まります

 

【実績】後遺障害 初回認定率84% 【実績】異議申立の認定率55%(全国平均5%)

 

後遺障害を立証する方法を下記ページで一度お読みください →交通事故被害者の皆さまへ

 

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 過去記事:被害者の矜持について、反響がありましたので、その第二弾を書きます。

 前回は、保険会社と過度にやり合う愚を説きました。今回は掲題の通り、慰謝料の積み上げに関する勘違いについて検証します。    最初に言いますが、本来、治療日数・頻度は治療効果から検討すべきで、医師等の指導が第一です。慰謝料の増額を期しての通院など、はしたないことです。ところが先日、整骨院に通っていた軽傷の被害者さんが、整骨院の先生(柔道整復師)さんから、「毎日通うと慰謝料が増えるよ」と言われたそうです。単純にそうとは言い切れません。毎日通わせて儲かるのは整骨院です。治療者としての資質を疑いますね。

基本計算

 総治療日数の範囲内で、実治療日数× 2 × 4200 円

  ・総治療日数・・・初診日から、治癒・中止(症状固定日を含む)・死亡までの日数

・実治療日数・・・入院日数+実際に病院に通院した日数。 午前・午後にそれぞれ2回、ダブルヘッダーで通院しても1日とします。    これは自賠責保険の慰謝料の計算式です。3ヶ月以内の治療期間では、任意保険も約款上この計算結果とほぼ同じです。したがって、3ヶ月程度の治療期間の場合で考えてみましょう。    ・総治療期間はちょうど3ヶ月=90日。

・実治療日数は、2日に1回のペースで通ったとして45日。

 先の計算式の通り、総治療期間90日の範囲内で、実治療日数45日×2=90日ですから、結局45日以上通っても90日で頭打ちとなります。    「たくさん通うと慰謝料が増えるよ」とのアドバイスで毎日通っても、隔日通院=2日に1回以上通っても慰謝料は増えないことになります。    では、3ヶ月(90日)を超えるような通院期間の場合ですが、任意保険は慰謝料計算の対象日数を徐々に逓減させる計算(総治療期間に応じて→75%、45%、25%、15%)に切替えます。2日に1回ペース以上に慰謝料の対象日数は減っていくのです。以下、損保ジャパン日本興亜さんの約款から抜粋。

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 交通事故被害者さんに対する無責任なアドバイス・・「弱気ではダメ、保険屋には強気でガンガン言うべき」・・・元保険会社側の秋葉が検証します。    あくまで、保険会社側からの視線ですが、生意気な被害者、具体的には被害者感情丸出しの態度、乱暴な口調、過大・増長した請求や滅茶苦茶な請求、あるいは、「担当者を代えてくれ」、「会社のお客様相談に陳情」・・・これらは、絶対に自身に不利に跳ね返ってくると思います。

 弱気の態度では保険会社に舐められる?・・確かに一理ありますが、賠償請求とは、証拠書類を揃えて紳士的に理路整然と交渉することで果たせばよいのであって、ケンカ腰で口論することではありません。保険会社の担当者も人間ですから、当然、「俺は被害者様だぞ!」との態度では頭にきます。恨みを買えば、露骨な意地悪はしないにせよ、今後、良い対応は望めません。100件もの案件を抱える担当者にとって、「よく吼える犬だなぁ」位にしか思わないのです。

 仮に担当者を変えても、それは口調が柔らかくなるだけ、もらえる賠償金など大して変わりません。彼らは同じ穴の狢(ムジナ・・・穴熊のことらしいです)です。ケンカ上等の交渉態度では、いずれどこかで足を引っ張られます。また、最悪は弁護士対応となって突き放されます。 続きを読む »

 これが保険会社の声です。

 骨折等ない、打撲・捻挫・挫傷・・・これらは普通、軽傷と判断されます。湿布貼って数日安静にしていれば大抵、治るものです。むち打ちも然りです。一定数は頚部の神経症状が起きて長引くこともありますが、それなりに少数例のはずです。しかし、こと交通事故の被害者となれば、被害者感情から長引くもので、保険会社は賠償病と揶揄しているわけです。保険会社が示す一つの例として、自分でぶつけた事故と誰かにぶつけられた事故、同じような衝撃と傷病名であっても、後者は3倍の治療期間を覚悟しなければならないそうです。だいたい、被害者さんの人生で、打撲捻挫の類で何ヶ月も通院した経験などあるのでしょうか。    本人の苦しみは本人しかわかりませんが、他人からみれば、際立って大げさにみられているのです。    また、過去の相談例からですが・・・その程度の衝撃でそんなに大ケガになるものか?、と疑問をもたれたケースは以下の通りです。

・交差点で信号待ち停車中、後続車がブレーキペダルから足を離してしまい、いわゆるクリープ走行・時速5kmでの追突。コツン程度の衝撃にも関わらず、むち打ちで長期通院、後遺障害も申請したいと・・。

・対向車とすれ違う際、お互いのサイドミラーが接触し、その衝撃で頚椎捻挫となって通院?・・誰が考えてもケガにならないはずです。

・自動車走行中、道路の反射板(デコボコしたやつ)を踏み、その衝撃で腰痛捻挫となって長期休業?・・そんなガラスの腰を持つ人は、そもそも車の運転などしない方がいいのでは?あるいは、元々痛めていたのでは?

・後部座席に搭乗中、急ブレーキによって脚を踏ん張った為、膝を痛めた。同じく程度問題ですが、そのような弱い膝で外出は危険なのでは?      これらも、本人の苦しみは本人しかわかりませんが、他人からみれば、際立って大げさにみられているのです。    保険会社のみならず、警察も病院も「大げさでは?」と思うものです。治療費を払う立場の保険会社は、まず常識判断をします。そして、間違いなく早期の治療終了を迫ってくるでしょう。運悪く、軽い事故状況や軽い診断名に比べて、通常ありえないほどの症状に陥ってしまった被害者さんは、(その疑いの目の中)茨の道を進むことになります。

 私達の立場は被害者さんを助ける側です。明らかな詐病者、保険金詐欺の類は除外するとして、依頼者さまの訴える症状を信じ、医師の診断はもちろん、出来るだけ前後関係の状況説明をもって、ある程度の治療費を確保したいと思っています。そして、欲張らず相応の慰謝料で我慢、解決まで軟着陸を目指します。それでも、前もって限界があることを伝えています。どんなに頑張っても、医学的・物理的常識を超えるほどの言い訳が出来ないことも多いのです。    

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 交通事故被害者さまのご相談を頂く中で、もっともご回答に窮することは、被害者感情の持っていきどころです。

 車の修理費など物損の場合、被害者さんにとって、その修理費を相手から取ることで全てOKとはいきません。純粋に修理費は直接損害と呼ばれ、まともな見積もりを突きつければ、大抵の損保は支払いに応じます。しかしながら、細かいことになりますが、車の修理に出す手間や様々な書類や交渉ごとに割く時間、これらの損害・対価は法律上、認められません。また、買って間もない新車などは「修理ではなく、取り替えてくれ!」と言いたくなります。高級車となれば、「格落ち」も発生しているかもしれません。これらは間接損害と呼ばれ、これを相手保険会社に請求しても、すんなり支払いを受ける事は困難です。それこそ、裁判などで白黒をつけない限り取れないものです。もっとも、裁判でも負ければ取れません。

 つまり、自動的にすべての損害を回収することなど、そもそも無理なのです。手間暇・金銭をかけて、苦労を重ね、自ら戦わなければ実現できません。この原則をすんなり理解できるか?一般的に欧米人と日本人の意識の違いを感じるところです。とくにアメリカ人の場合、歴史やメンタリティから、他人に対する信頼は大変に薄いものです。交通事故の相手があっさり「すみません」と非を認めて、即座に賠償してくれる期待など持っていないのです。明らかに自分が悪い追突事故でさえ、加害者は「I’m sorry」とは言わないことが普通です。また、お金がなく、任意保険に加入していないかもしれません。一方の被害者も、相手の誠意と賠償資力を期待していませんから、しっかり車両保険・人身傷害保険に加入、あるいは弁護士を雇うのです。言葉さえ通じない多種多様の民族の合衆国ですから、自分が受けた被害は自助努力や戦いで回復することが身に染みているのです。

 その点、日本はほぼ単一民族、全国的に日本語が通じ法律も統一、島国ならではのご近所関係・相互扶助もあり、他人に対する信頼は世界一のレベルではないでしょうか。その証拠に、落とした財布が届く率は63%との統計があります。ちなみに他国の統計は目にしたことがありません。他国にとって、ほとんど0%のことなど数えないからだと思います。これは世界に誇るべき日本人と美徳と同時に、被害者感情に大きく作用しているのではないかと私は考えるのです。交通事故の被害にあったのだから、「(信用すべき他人が)すべて弁償してくれるはず・・これって普通でしょ!」と。

 残念ながら、こと交通事故の争いとなれば日本人の美徳は薄れます。相手保険会社はさながらアメリカ人になります。グローバルスタンダードを高圧的に押し付ける存在ですから、法律に従って決して甘くない対応となります。基本、被害者側が証拠を集めて突きつけなければ払いません。間接損害の請求など、端から拒否します。

 それでも、直接損害の支払ならかなり信頼できる存在です。また、ケガをすれば、治療費の一括払い(病院に直接、治療費支払い)など、アメリカ人のくせに、似合わないサービスをしてくれます。また、強制保険(自賠責保険)により、任意保険以前に被害者に多少の過失があっても、一定額まで100%の治療費が確保できます。ヨーロッパの福祉国家さながら、健保・労災・自賠責と、社会保障制度が確立しています。これらは、発展途上国が目標としている社会保障制度:3種の神器で、世界的にあたり前に実現しているものでありません。国民国家としての努力の賜物です。実に、世界の半分以上の国は自賠責保険がないのです。そして、任意保険の会社があっても、肝心の加入率は30%程度が普通なのです。日本は80%のようです。すると、5台に1台は無保険になりますが、80%以上は世界的に優秀な加入率なのです。これらの比較から、いかに他人から被った被害の回復は大変なことで、当たり前に助けてもらえる事ではない世界基準を知ることになります。

 落ちていた財布を拾って届ける優しく気高い精神の人が、ある日交通事故被害にあったとして、対する他人(加害者側)が決して優しくも道徳的でもないことに直面します。当然、感情的にすんなり受け入れられるものではありません。連携弁護士を含む私達はその意を汲み、できるだけ損害を回復するように働くことになります。それには、被害者さんの自助努力や費用負担も当然に必要です。そして、私達は被害者の皆様の怒りや失望を、戦いへ切り替えさせることから着手します。損害回復は当たり前のことではない、戦いであると理解することからのスタートなのです。    ちなみに、私は過去4度財布を拾い、届け出て無事に持ち主に届きましたが ・・・ 逆に、自身2度財布を落とすも、まったく届きませんでした。日本も信用できませんわ(怒)!  

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 被害者請求の方法について、復習したいと思います。(先月の山梨代協セミナーから抜粋)

後遺障害部分の損害が、重度の障害になると、 賠償金全体の平均85%・・・逃した魚は、本当に大きいのです。

   損害賠償を氷山に例えると、眼に見える部分が傷害部分=治療を完了するまでの損害です。後遺障害部分の損害は、海の中で見えませんが、総損害額に占める割合は、12級以上ともなれば、85%となります。 赤本基準で、ムチウチで非該当、14級9号、12級13号を比較してみましょう。

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 ここ数年の業務日誌で、常にアクセス数が上位の記事はこれです。

弁護士対応とされた被害者は交渉失敗です    事故で大変な目にあったのに、相手保険会社の無感情な対応に、かっとする気持ちはよくわかります。しかし、感情に任せてケンカをすれば、益々、不利な状況に追いやられます。その中でもむち打ちなどの14級9号認定こそ、後遺障害審査への影響が大きくなります。それを示す1例をご紹介しましょう。私が保険会社のSC(サービスセンター=保険金支払い部門)に配属された時の電話です。   秋葉:「はい、○○火災 埼玉第1SCです。」

自賠責:「大宮の調査事務所の○○だけど、いつもお世話になっています。対人担当の山本さんをお願いします。」 

秋葉:「はい、おつなぎします。」 (以下、会話内容を横耳で聞き取り)   山本:「はい、山本です。○○さんご無沙汰しております(※)。」 

 ※ 自賠責・調査事務所には一定数、損保会社からの出向社員がおります。   自賠責:「先日、佐藤さんという被害者の後遺障害請求を受けて、審査中だけど・・担当は山本さんでしたね。」

山本:「ええ、あの佐藤ですね。何か?」

自賠責:「通院日数もけっこうあって、14級とするか検討中だけど・・どんな人?」

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 交通事故の相談で「相手の保険会社に弁護士が付いたのですが、どうすれば良いでしょうか?」が少なくありません。これは加害者側の保険会社と被害者が交渉を進めていく中で、相手の保険会社担当者がブチ切れて弁護士対応としたケースです。

 まず、被害者の元に弁護士名のずらーっと並んだ文章が届きます。「今後の交渉は弊所が担当します」と書かれています。被害者はびっくり、今後は加害者や相手の保険会社ではなく、弁護士と交渉しなければなりません。この弁護士に治療費の延長や、自動車の格落ち代金を請求しても、今までの担当者よりさらに冷たい返答が返ってきます。

 それでも強交渉を続ければ、弁護士から「法廷で会いましょう」と返答がきます。これは「債務不存在確認訴訟」と言って、「これ以上を支払ういわれはない!」との訴えで、「払わないで良い」ことを裁判で決めましょうと逆に訴えられている状態です。ここに至り被害者は崖っぷちに追い詰められます。選択は裁判で争うか相手の主張を飲むかになります。

 債務不存在確認訴訟をされるまでもなく、保険会社担当者から弁護士に交渉相手が代わった状態で泣きついてこられる被害者さんに対して、被害者側の相談を受ける弁護士も苦慮します。なぜなら争点となっている請求の多くが、長期にわたる治療費や過大な物損の請求であったり、どうも被害者の主張に無理があるようなケースが多いのです。本来、被害者側の請求が常識的な金額であれば、相手保険会社は弁護士を立ててまで拒まず、少ないながらそれなりの金額を提示してきます。普通に交渉の余地があります。

 もちろん慰謝料や逸失利益など保険会社の基準額は一様に少ないのですが、これを争う場合、保険会社が弁護士を立てるのではなく、被害者側が弁護士を立てて交渉することが自然な流れです。

 つまり、保険会社が先んじて弁護士を立てるケースは、圧倒的に被害者側の請求内容、交渉態度に問題があると言えます。以下が代表的な例です。

  1、乱暴・非紳士的な口調、担当者を罵倒

2、加害者に直接連絡を取る、怖い人が登場する、人間性に問題のある被害者

3、打撲・捻挫の類で長期間、通院を止めない。

4、どう考えても事故の症状ではなく、既往症(元々の病気・けが)や心身症(心の病)での通院が続く。

5、判例や常識であり得ないような自動車の格落ち代、自営業者が過少申告した結果の休業損害額、慰謝料の過大請求。

6、詐病(けがを装う)、詐欺(実は高額の時計が事故で壊れていた)が疑われる怪しい請求。   c_y_28  c_h_76続きを読む »

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