win

 健康管理手帳を交付されて、いざアフターケア制度を利用するためには、対象者(要件)にあてはまらないとなりません。対象者は傷病名によって異なります。以下では、人工関節・人工骨頭置換に係るアフターケアを中心に説明させていただきます。

 対象者についての具体的な記載は、労災のHPに載っています。人工関節・人工骨頭置換に係るアフターケアの場合では、労災のHPの文章を引用しますが、「業務災害又は通勤災害により、人工関節及び人工骨頭を置換した方で、労災保険法に よる障害(補償)給付を受けている方又は受けると見込まれる方(症状固定した方に限 ります。)のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方」とされています。

 簡単に述べてさせていただきますと、

①労災の事故等で、 ②人工関節・人工骨頭置換の手術をして、 ③労災の障害等級が認められたか、認められる見込みがある場合で、 ④医学的に早めにアフターケアを受ける必要がある者が受けられます。

 上記の場合、②のように、一度人工関節等の手術をした後でなければ受けられません。 c_g_l_11  しかし、例えば、膝関節の前十字靭帯を損傷した場合、医師によっては人工関節を入れないで「治ゆ」(症状固定)とする場合があります。

 もし、膝をけがして人工関節を入れないで「治ゆ」とした後に人工関節を入れる必要が出てきた場合(半月板も損傷してきた等)、その治療費などはどうすればいいのでしょうか?

 その場合、以前に述べました「再発」で治療、手術を受けた後に、新たに「治ゆ」と医師が判断してから、その後の検査等を受けられるようにアフターケア制度を利用するために健康管理手帳の交付を申請することになります。

 なお、その場合の健康管理手帳の申請は、新たな「治ゆ」の日を基準とします。  

続きを読む »

winアフターケアを受けるための手続きについて

 アフターケアを受けるためには、管轄の都道府県の労働局長に健康管理手帳交付申請書を提出し、その手帳の交付を受ける必要があります。

 申請は、治ゆ日の翌日からできますが、傷病名によって申請期間が異なりますので、注意が必要です。

 申請期間は、基本3年間ですが、前回あげた傷病名のうち、以下の傷病名の場合、2年間またはいつでも可能となっています。

(1)申請期間が2年間の傷病名

 ・頭頸部外傷症候群

 ・白内障等の眼疾患

 ・振動障害

 ・脳の器質性障害のうち、外傷による脳の器質的損傷、一酸化炭素中毒(炭鉱災害によるものを除く)、減圧症   (2)申請がいつでも可能の傷病名

 ・せき髄損傷

 ・人工関節、人工骨頭置換

 ・ペースメーカ等を植え込んだ場合(虚血性心疾患等の欄)

 ・循環器障害のうち、人工弁又は人工血管に置換した場合    申請後、健康管理手帳が交付されたとしても、有効期間があります。こちらも申請期間と同様、有効期間は交付日から3年間が基本ですが、上記(1)の傷病名の場合は2年間です。

 有効期間が経過する前に更新手続きをとる必要があります。ただし、頭頸部外傷症候群の場合は、更新はできません。頭頸部外傷症候群以外で有効期間の更新が認められたとしても、はじめの有効期間と異なり、更新されると有効期間は基本、1年間となります。ただし、上記(2)の傷病名のみ、5年間となります。

 なお、更新手続きの後、更新後の有効期間が満了となる前に、再度更新手続きができます。  

続きを読む »

 残念ながら相談者さまのすべてが正当な障害認定、補償を受けるべき被害者ではありません。交通事故被害者の中で一定数に必ず、保険金目当ての詐病者(うそ偽りのけが人)、もしくは過大に損害を主張する者が存在します。    それら不心得者は詐病者とまではいかないものの、自らの症状をできるだけ過剰に装います。医師はそれをある程度見抜きますが、それをかいくぐり、診断書を確保してくる、なかなかに巧妙な詐病者が相談にやってきます。ここで、交通事故外傷に不慣れな法律家は診断書と訴える症状を信じて受任してしまいます。依頼者を信じることが第一歩ですので、その法律家を責めることはできません。しかし、騙されたとはいえ、不当な主張をすることは詐欺のほう助になります。やはり、責任は免れないでしょう。

 したがって、相談を受ける私達も詐病者を見抜く目を持たねばなりません。それにはあらゆる傷病に精通すること、交通事故外傷の経験を多く積むことが必要です。そして、何と言っても”人を見る目”も肝要と思います。これは人生経験がものを言うので、なかなかに難しい。保険金目当てに不届き者も日々ネットで知識を得て、勉強をしているのです。依頼者を信じることが基本・スタートである以上、常に騙されそうになります。

 しかし、私が見抜いて依頼を断ったものの、その相談者は別の弁護士に相談に行って契約すると思います。その弁護士がおかしな請求をすることによって、保険会社がより頑なになる悪循環・・。そして、支払われる保険金は全保険契約者の支払っている掛金なのです。

 被害者の一番の敵は加害者でも保険会社でもなく、このような詐病者、保険金詐欺の連中ではないでしょうか。 c_g_ne_77

続きを読む »

win

 アフターケア制度とは、労災での怪我や病気が「治ゆ」した後に、再発や後遺障害による新しい発症を防止するために診察や検査等を行えるようにする制度を言います。

 再発との違いは、対象となる傷病の種類によって使えるものと使えないものがある点、再発の場合では治療を行うためのものであるが、アフターケア制度の場合では、診察や検査等、いわゆるメンテナンスに近いことを行うためのもの、等様々な点で異なります。

 対象となる傷病名は、以下の20種類です。   ① せき髄損傷、 ② 頭頸部外傷症候群等、 ③ 尿路系障害、 ④ 慢性肝炎、 ⑤ 白内障等の眼疾患、 ⑥ 振動障害、 ⑦ 大腿骨頸部骨折及び股関節脱臼・脱臼骨折、 ⑧ 人工関節・人工骨頭置換、 ⑨ 慢性化膿性骨髄炎、 ⑩ 虚血性心疾患等、 ⑪ 尿路系腫瘍、 ⑫ 脳の器質性障害、 ⑬ 外傷による末梢神経損傷、 ⑭ 熱傷、 ⑮ サリン中毒、 ⑯ 精神障害、 ⑰ 循環器障害、 ⑱ 呼吸機能障害、 ⑲ ...

続きを読む »

win  労災で療養(補償)給付により、怪我を治療し、残存した症状について障害(補償)給付を受けた後、症状が悪化することもあります。

 症状が悪化した場合に備えて、労災では「再発」という制度が整備されています。

 再発として認められるためには、以下の3つの要件をすべて満たす必要がります。   ① 症状の悪化が、当初の業務上・通院による傷病と相当因果関係があると認められること、

② 症状固定(治ゆ)時の状態からみて明らかに症状が悪化していること、

③ 療養を行えば、症状の改善が期待できると医学的に認められること、    例えば、通勤中に交通事故に遭い、膝の前十靱帯を損傷して、治療から半年した後、治ゆとなったが、その怪我が悪化して半月板までも損傷してしまった場合に、人工関節に置き換える手術を行う必要があった場合に、再発として認められることがあります。

 再発の手続きとしては、療養給付たる療養の請求書を管轄の労働基準監督署に提出する必要があります。業務中での怪我の場合であれば、様式第5号、通勤中の怪我の場合であれば、様式第16号の3の書類になります。 c_h_32  

続きを読む »

 熊本、周辺地域で罹災された皆様、お見舞い申し上げます。また、熊本のご依頼者さまの安全を確認できて、ほっとしております。

 しばらくは「地震保険」に関する検索が多いと予想します。5年前の震災の時にUpした記事を再び掲載します。少し古い情報ですが、基本的な事ですので参考になるかと思います。まずは急ぎUPします。変更点は追って修正します。    地震保険の基礎知識

○ 契約方法

・ 火災保険を加入し、それに付帯して契約します。地震保険単独の契約は全保険・共済を通じてできません。

・ すでに加入の火災保険に中途付帯は可能です。

・ 居住用建物、店舗併用住宅が対象で、工場や専用店舗、施設は付帯できません。

・ 補償額は火災保険金額の半分まで、さらに上限が建物5000万円、家財1000万円です。→そもそも全額掛けられないのです。   ※ 損保ジャパンでは地震火災費用特約の拡張が可能で、その特約付帯により地震による火災で全焼した場合(あくまで火災のみ)100%の補償が可能です。   ○ 補償内容

 地震・噴火による損壊、火災、津波 による家屋・家財の損害に対して支払われます。

 全損で保険金額の100%、半損50%、一部損5% の3段階で査定されます。   ○ 注意点

 通常の火災保険では地震による火災の補償は対象外です。毎回地震で火災となった後に問題となる規定です。阪神大震災の際も何件か契約者対保険会社の訴訟となりました。

※ たとえば地震の揺れが収まって11時間後の火災は?・・・暖を取るためにたき火をした不始末?放火?残り火の出火? いろいろな原因が考えられますが、地震保険ではすべて免責です。裁判判旨では「それらは地震災害を原因とするものとはいえない」とはっきり「通常の火事」であることを否定しています。

※ このような問題が多発するのも、加入率が低いからです。地域差もありますが多くて30%台、低い地域は5%前後です。東北の震災後は加入率が上がりましたが、喉もと過ぎれば・・徐々に元の加入率に下がっていきました。    ○ 掛金例  1000万円の補償(火災保険2000契約)埼玉県の場合

・鉄筋コンクリート造/鉄骨造  10500円 / 1年間

・木造             18800円 / 1年間

※ 平成23年3月当時。 地域・密集度によって料率を設定していますので県によって掛け金は違います。

※ 7年前の改正で地震保険の掛け金が課税所得から全額控除となりました。その替わり火災保険の控除は廃止となりました。   ○ 最新情報

 現在、罹災地域は引き受け謝絶です。当然といえば当然ですが、徐々に引受謝絶は解除されていくはずです。この時期・地域については気象庁の終結宣言が目安ですが、各社の判断のようです。

 cjisin  

続きを読む »

win

 労災での怪我を治療し、「治ゆ」となった場合、療養(補償)給付として支給は終わります。それでも症状が緩和せず残存している場合には、健康保険に切り替えて通院を考えることになります。

しかし他方で、残存した障害(症状)が労災の障害等級表に該当する場合、障害(補償)給付を受けられます。

 給付方法は、障害の等級が1~7級の場合は年金給付、8~14級の場合は一時金給付、にそれぞれ分かれます。また、等級に応じて障害特別支給金が給付されます。 c_h_2888 業務中の場合は様式10号、通勤中の場合は様式第16号の7の各診断書を病院に提出し、その後、会社や労働基準監督署に提出することになります。

 障害(補償)給付についての手続きが終わりましたら、基本的に労災からの給付はここで終わりです。しかし、「治ゆ」の後に症状が残存するだけではなく、悪化したり、悪化を防ぐために検査を受けたい場合等、給付が終わった後も治療費や検査費用が掛かる場合があります。

 そのような場合、労災は再び療養(補償)給付を受けられたり、検査等を無料にしたりする制度があります。

 前者を「再発」、後者を「アフターケア制度」といいます。

 つづく  

続きを読む »

 脊髄損傷は重傷です。相談数自体は少ないものですが、年に数件の受任があります。ここ半年の認定、3件を紹介します。それぞれ、テクニカルな作業、悪戦苦闘の記録をご覧下さい。

 重傷案件は当然ですが、おざなりな作業ですと大変な損失となります。それは金銭の損失であり、被害者の残りの人生がかかったものです。

20140626

別表Ⅰ 1級1号・加重障害:脊髄損傷(40代男性・埼玉県)

【事案】

後縦靱帯骨化症で頚椎を手術(椎弓形成術)後、リハビリを継続していた被害者が、車イスで道路を横断中、駐車場からバックしてきた自動車の衝突を受けて受傷した。回復期にあった上肢・下肢の機能障害が悪化し、起立・歩行は不能となり、日常生活の介助状態はより深刻となった。

【問題点】

既往症で既に車イス状態であり、上肢・下肢共に相当なしびれや機能障害があった為、本件事故での障害とは捉えられず、どの事務所でも断られていた。先に相談した仲間の行政書士もお手上げで、諦めて連携弁護士に投げつけた。もちろん、訴訟上でも困難であるが、あらゆる可能性を模索すべく、まず医療調査を開始した。

【立証ポイント】

新たな障害はあるのか・・・肩腱板損傷の可能性は?直腸・膀胱に障害が起きたか?視聴覚に問題はないか?、病院同行を重ね、医師を交え、検討を進めた。そして、ある光明を見出した。それは、後縦靱帯骨化症を手術した医師と本件事故の医師の診断・観察では、前後の症状が微妙に異なっていること。そこで、事故前後の医師、それぞれに後遺障害診断書、脊髄損傷に関する意見書等を記載頂いた。また、カルテを開示し、症状の変化を丹念に抜粋、症状の差を明らかにした。

結果、加重障害の判断を引き出す。現存障害(1級)4000万円-既往障害(2級)3000万円=1000万円として等級認定、保険金を受領した。その後の賠償交渉でも既往症との差額が1000万円を超えないと判断して、弁護士の交渉は終了、自賠責保険の加重ルールがすべてを解決した。 続きを読む »

win  業務中の事故もしくは通勤中の事故の場合、労災を適用して治療することができます。

 交通事故の場合は、第三者行為災害届出、念書(兼同意書)(3枚)、交通事故証明書、をそれぞれ提出する必要があります。

 労災適用された場合、業務中の場合は、様式第5号を、通勤中の場合は様式第16号の3を、労災指定病院に提出した後、管轄の労働局に出すことになります。すると、病院でかかる治療費を療養(補償)給付として支給されます。

 ※ もし通院先が労災指定病院でない場合、業務中の場合は、様式第7号(1)を、通勤中の場合は様式第16号の5(1)を提出することになります。

 交通事故の場合、保険会社(多くは加害者側)が治療費を出しますが、労災適用の場合、保険会社が負担した分を労災に求償することになります。

 この治療費(療養給付)は、いつまでも支給されるわけではありません。支給されるのは、症状が安定し、医学上一般に認められる医療を行っても、回復・改善の効果が期待できなくなるまでです。これを「治ゆ」といいます。自賠責でいう「症状固定」と基本的には同じです。

※ 医学上一般に認められた医療とは、ここでは労災保険の療養の範囲で認められた医療を指します→実験や研究中の治療方法は含まれません。

(例1)打撲で3カ月通院して痛みがなくなった場合には、「治ゆ」となります。

(例2)ムチウチでリハビリ治療等を半年継続しても手のしびれ等の神経症状が残存してしまった場合に、医師と相談して「治ゆ」となります。

 上記例2のように、症状が改善されていないのに労災での治療ができなくなってしまう場合があります。  もし「治ゆ」となってもまだ症状が残存している場合、障害(補償)給付を受けられる可能性があります。また、健康保険に切り替えて通院を継続できます。

c_h_13

続きを読む »

rousai 労災の『障害認定必携』から抜粋します。改定は平成23年3月の第15版からの改定です。大変に遅ればせながら、内容を確認してみましょう。

 まず、7級の認定基準から線状痕(5cm以上)が消えました。5cm以上の線状痕は「9級11号の2」として新設されたことになります。

 自賠責は近時の認定例から、ほぼ間違いなく、そのまま労災の変更に合わせて変更・準用しているようです。興味深い点は労災は9級の場合、「9級11号の2」としているのに対し、自賠は「9級16号」としています。号の整理で相違が見られるようです。

 

旧基準

(1)外ぼうの醜状障害 

イ 「外ぼう」とは、頭部,顔面部,頸部のごとく、上肢及び下肢以外の日常露出する部分をいう。

ロ  外ぼうにおける「著しい醜状を残すもの」(=7級12号)とは、原則として、次のいずれかに該当する場合で、人目につく程度以上のものをいう。

(イ) 頭部にあっては、手のひら大(指の部分は含まない。以下同じ。)以上の瘢痕又は頭蓋骨の手のひら大以上の欠損

...

続きを読む »

mikurasu

 最近、労災事故であるのにも関わらず、「健康保険を使って通院しています。」という相談をよく耳にします。実はこの行動、健康保険法違反だということをご存知でしょうか?   第一章 総則

第一条 この法律は、労働者又はその被扶養者の業務災害以外の疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関して保険給付を行い、もって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。

第四章 保険給付

第五十五条 被保険者に係る療養の給付又は入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、療養費、訪問看護療養費、移送費、傷病手当金、埋葬料、家族療養費、家族訪問看護療養費、家族移送費若しくは家族埋葬料の支給は、同一の疾病、負傷又は死亡について、労働者災害補償保険法、国家公務員災害補償法又は地方公務員災害補償法若しくは同法に基づく条例の規定により、これらに相当する給付を受けることが出来る場合には、行わない。    要約すると、労災事故に関しては労災を使いなさいということです。

 労災を適用することによって、会社が不利益を被ることはないのですが、進んで労災を適用してくれる会社が少ないことも事実です。通常、労災は届出だけで使用できます。しかし、会社での立場等を考えて、自ら労災を適用しない被害者の方も多いようです。 c_h_22続きを読む »

 前回まで3メガ損保の約款を精査しました。その他の会社に目を移しましょう。

 あいおいニッセイ同和さんは損保J日興に同じく、「人身傷害は裁判基準」と潔くなっています。また、同じく掛金の安い、人身傷害が付いていない保険の場合は無保険車傷害特約の適用になります。その無保険車傷害の支払基準は三井住友のように、「当社との協議、それでまとまらなければ当社と裁判か調停をして下さい」ときました。加害者と裁判して、地裁で審議が終わっているのに、再び人身傷害の請求で裁判させる気でしょうか?なんたる不毛感、契約者を愚弄していると言っても言い過ぎではないような気がします。

 この、あいおいニッセイ同和型も1つのパターンとしましょう。これは「人身傷害は裁判基準、無保険車は原則・人傷基準&自社との交渉・裁判」型と呼ぶしかありません。そもそも数年前は全社、無保険車傷害は相手との裁判での判決額、つまり、裁判基準を認めていたのです。

 このように会社ごとに約款改定が進み、細部が違っています。面倒ですが、それぞれの会社の約款も確認しなければなりません。小さいに字に眼がしょぼしょぼ、おかげで老眼が進みます。

 まずは人身傷害、5年前のアンケート結果を確認します。平成23年6月、北海道の消費者団体がこの問題について、「訴訟基準差額説」or「人傷基準差額説」のどちらで支払うのか損保各社に質問状を送りました。回答は以下の通りです。

 今日の内容がわからない方⇒訴訟基準差額説、人傷基準差額説   

会社名

賠償義務者への 訴訟が先行した場合

人身傷害保険の 支払が先行した場合

改訂時期

回答

回答

あいニッセ同和

H22.10.1

訴訟基準

訴訟基準

アクサ

H22.4.1

人傷基準

訴訟基準

イーデザイン

H23.4.1

その他

訴訟基準

共栄火災

H23.4.1

その他

その他

セコム

H23.4.1

続きを読む »

 次に三井住友さんの約款です。損J日興、東海日動とも違う、微妙かつ独自の内容です。  

<人身傷害> 第5条 損害額の決定

  (1)次の①~③区分ごとに、自社基準で算定します。

① ケガの損害 ② 後遺障害の損害 ③ 死亡      (かなり略しました)   (2)(1)の規定に関わらず賠償義務者がある場合には、保険金請求権者は、(1)の区分ごとに<別紙>に定める基準により算定された金額のうち、賠償義務者に損害請求すべき損害に係る額を除いた金額のみを当社が人身傷害保険金を支払うべき損害の額として、当社に請求することができます。  この場合における、賠償義務者に損害賠償請求すべき損害に係る額とは、(1)①から③までの区分ごとに算定された金額に対し、次の手順に基づいて決定した賠償義務者の責任割合を乗じた額(賠償義務者がある場合において、自賠責保険等によって支払われる金額を下回る場合には、自賠責保険等によって支払われる金額とします。)の合計額とします。

① 当社と保険金請求者との間の協議

② ①の協議が成立しない場合は、当社と保険金請求者との間における訴訟、裁判上の和解または調停。     相変わらず難解な文章です。弁護士の先生ですら「訳わからん」と言っています。訳します・・

 「まず、人身傷害の保険金は当社の基準で計算します。それで納得できなければ話し合いましょう。それでもダメなら、うちと裁判して決めようや。」    何とまぁ、三井住友さんの約款は関西っぽいノリを感じます。続いて無保険車傷害ですが、人身傷害約款の(2)とほぼ同じ意味です。あえて全文を対比してみましょう。  

<無保険車傷害> 第6条 損害額の決定

  当社が無保険車傷害を支払うべき損害の額は、賠償義務者が被保険者またはその父母配偶者もしくは子が被った損害に対して法律上負担すべきものと認められる損害賠償責任の額によって定めます。この場合における損害のは、保険金請求者と賠償義務者との間で損害賠償責任の額が定められているといないにかかわらず、次の手続きによって決定します。

① 当社と保険金請求者との間の協議

続きを読む »

 人身傷害を日本で初めて開発・発売した、まさにリーディングカンパニーを冠する東京海上さん。しかし、人身傷害の支払い問題となると、国内損保では一番遅れていると言わざるを得ません。

 もちろん、平成24年2月最高裁”人身傷害の求償額を巡る判決”で、「差額説」と決まった以降は人傷先行の場合は、裁判基準にて総損害額を算定することは約款上、約束されました。(その部分は約款の色を赤にしました)    まずは他社に比して細かく丁寧に規定されている約款を確認してみましょう。例によってわかりやすく、言い直し、省略=( )を加えています。  

<人身傷害>  第4条  お支払いする保険金 <無保険車傷害> 第6条 お支払いする保険金

 (無保険車傷害の約款は人身傷害の(1)(2)(3)(6)をほぼ踏襲、その他、多くの規定は人身傷害を準用しています)    (1)1回の人身傷害事故について、当会社は、被保険者1名について次の算式によって算出される額をを保険金として支払います。ただし、1回の人身傷害事故について当会社の支払う保険金の額は、被保険者1名について、保険証券記載の保険金額を限度とします。

 (2)の規定により決定された損害の額 - (5)の表の費用の額の合計額 = 保険金の額

  (2) ① 傷害      ② 後遺障害 続きを読む »

 損保ジャパンは1度、無保険車傷害特約を人身傷害・約款に吸収させて、算定基準を人身傷害と同一にしました。結果、裁判基準を認める無保険車傷害特約・約款の改悪、不合理の感が否めませんでした。その後、また分離させましたが、肝心の支払い基準はどうなったのでしょうか。これに関して旧損保ジャパンは、26年7月改定から先進的かつフェアな約款に改定済みです。    先に人身傷害を請求し、後に賠償請求を行った場合の求償に関しては、裁判基準で総損害額をみます。これは最高裁判例以来、全社認めて約款改定しました。残った問題である、先に加害者に賠償請求した場合、保険金算定の基となる総損害額を裁判で決まった額とするのか、あくまで自社の算定基準とするのか・・(「人傷基準差額vs裁判基準差額説」の対立で問題となっています)。

 これについて、以下の約款で明確に回答しています。つまり、人身傷害を先に請求しようが、相手から賠償金を先にとろうが、請求の順番に関わらず、「裁判で決まった額なのか否か」で支払い基準を合わせる事にしたのです。

 ここでは説明しきれないので、わからない方は過去記事を ⇒ すべては約款で準備されていた

 では、約款ですが、人身傷害も無保険車傷害もほぼ同じです。  

<人身傷害特約> 第6条(損害額の決定) <無保険車傷害特約> 第8条(損害額の決定)

  (1)損害額は、被保険者が第2章(保険金を支払う場合)(1)のいずれかに該当した場合の、次の区分(①~③)ごとの、それぞれ普通保険約款別表3に定める損害額算定基準に従い算出した金額と自賠責保険等によって支払われる金額(注1)のいずれか高い金額の合計額とします。

① ケガの損害 ② 後遺障害 ③ 死亡   (2)加重障害に関すること(省略)   (3)(1)および(2)の定に関わらず、賠償義務者が負担すべき法律上の損害賠償責任の額を決定するにあたって、判決または裁判上の和解において(1)および(2)の規定により決定される損害額を超える損害額(注2)が認められた場合に限り、賠償義務者が負担すべき法律上の損害賠償責任の額を決定するにあたって認められた損害額(注2)をこの特約における損害額とします。ただし、その損害額(注2)が社会通念上妥当であると認められる場合に限ります。

(注1)自賠責保険が無い場合、政府の保障事業からの補償も対象 (省略)

(注2)訴訟費用、弁護士報酬、遅延利息、その他費用は損害額に含みませんので、差し引きます(省略)

  (解説)相変わらず、持って回った言い回しですが、つまり、「まずは(1)の自社基準で払います」「裁判できまった額なら(1)の自社基準ではなく、裁判基準で払います」とのことです。  

 この約款タイプは他に朝日、セゾン、セコム、そんぽ24、ソニーさんです。全社調べる時間があったら頑張ってみます。

 明日はこの問題に、頑固な東海日動さん  

続きを読む »

 前回から少し空きましたが、続けます。     無保険車傷害と人身傷害の(補償が)被る問題は約款上、一定の決着をみています。東海日動、三井住友の「吸収型」か、損保ジャパンの「人身傷害を先に請求、足りなければ無保険車」とした「序列型」に大別できます。

 整合性がついてすっきりと思いきや、一つだけ気持ち悪いことが残りました。それは、無保険車傷害が人身傷害の算定基準で計算されてしまうことです。もちろん、両者の支払い基準は(どの会社も)同じです。しかし、任意保険発売以来、「加害者と裁判をして、和解や判決で決まった額なら支払い額と認めましょう」とする無保険車傷害に対し、人身傷害は「あくまで保険会社の基準でしか払わない」と約款を盾に、裁判で決まった損害額を無視することです。既に数件、各地の弁護士先生から耳に入っています(怒)。

 裁判で決まった額を認めるのは、先に人身傷害から支払いを受けて、次に加害者から判決や和解で勝ち取った額に対する「既払い人身傷害保険の求償額を計算する時の全損害額」に対してのみです。これは平成24年2月「差額説」判決を受けてのことです。難しい論点ですが、あえて復習したい方は・・参照⇒差額説

 これでは、無保険車によって後遺障害や死亡となった、気の毒な契約者さんはせっかく裁判で勝っても、自身の保険会社にその額を請求したら・・「当社の基準額で払います」の一点張り、人身傷害基準の低い額しか支払われません。それが、掛金の高い人身傷害付き保険での結果です。

 対して、人身傷害の付いていない、かつてのPAP(現在、各社、別の名称)の場合、東海さん、損Jさん、三井さん他各社、無保険車傷害の適用になりますので、交渉次第で判決額が支払われることになります。つまり、無保険車傷害は長らく裁判での和解・判決の額を認めていたのです。

 後遺障害が残るような大ケガの場合、人身傷害の算定額よりも、裁判での判決・和解額が2倍以上も高額となることが多いのです。計算例から比較しましょう。一番軽い14級の被害者(主婦)さんを例にとっても以下の通りです。

費目 判決額 3246200円を 人身傷害に請求したら・・ 判決額 3246200円を 無保険車傷害続きを読む »

 過去、何度も自賠責の「加重」によって、煮え湯を飲まされ、時には救済されたものです。自賠責保険や労災の独自ルールながら、裁判でも同じ計算が踏襲される傾向でした。しかし、今年、加重ルールを否定する高裁判決がでました。遅ればせながら取り上げます。   「神経障害は同一」覆す  自賠責保険適用認める事故で新たに後遺症・東京高裁     脊髄損傷で車いす生活となった50代男性が、新たに車との接触事故で腕のしびれなどが生じたとして、運転女性と自動車損害賠償責任(自賠責)保険の加入先だった東京海上日動火災保険に約460万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が20日、東京高裁であった。杉原則彦裁判長は「事故前と事故後の障害は、一体的に評価されるべき同一の部位とは言えない」と述べ、約410万円の支払いを命じた一審さいたま地裁判決を支持し、女性側の控訴を棄却した。  男性側の弁護士は「神経系統は同一部位だとして新たに生じた障害への賠償を認めてこなかった自賠責保険の運用ルールを否定した画期的な判決。高裁レベルでは初めてではないか」と評価している。(時事通信社)

   加重とは・・同じケガが同一部位に加算されても、「元々の障害があるから、今回の障害は相殺ね」、もしくは「元々の障害を上回る障害が加わったら、新しい障害の保険金-元々の障害の保険金=支払い保険金としますね」との制度です。まず、公平、合理的なルールと思います。しかし何事も例外はあるもので、一部の被害者さんいとっては理不尽なルールとなります。

 この機に少し復習してみましょう。  

後遺障害等級における加重とは? 自賠法施行令2条2項では加重障害を規定しており、すでに後遺障害のある者が、自動車事故により同一の部位について後遺障害の程度を重くしたときは、加重した限度で保険金額を認定する、と記載されています。

すでに後遺障害がある者とは、本件事故の発生前に、すでに後遺障害のあった者のことです。 その後遺障害については、先天性、後天性、自動車事故によるもの、賠償を受けたか受けないかに関係なく、後遺障害等級表に定める程度の後遺障害が存在していた者をいいます。

加重とは、自動車事故により新たな傷害が加わった結果、後遺障害等級表上、既存障害よりも重くなった場合をいいます。 自然的経過や既存障害の原因である疾病の再発等、新たな自動車事故以外の事由で後遺障害の程度を重くしても、加重と判断されません。 同一部位に新たな傷害が加わったとしても、既存障害以上の後遺障害が発生しなければ、加重とはなりません。 1)受傷前の手指用廃、受傷後切断 Q事故前の業務中の受傷で右人差し指の用を廃していた被害者が、今回の事故で右人差し指を切断するに至りました。 自賠責保険の認定等級と保険金の支払額はいくらになるでしょうか?

右人差し指の用廃は12級10号、右人差し指の切断は11級8号です。 等級は、右手人差し指を亡失したものとして11級8号が認定されますが、保険金支払では、11級、331万円から12級224万円が差し引かれ、331万円-224万円=107万円の支払となります。 続きを読む »

 「人身傷害」と「無保険車傷害」の併存問題、続いて東京海上日動の整理を見てみましょう。   (3)東京海上日動

人身傷害条項 第5条(支払い限度額に関する特則)

(1)第4条(お支払いする保険金)(1)ただし書の規定にかかわらず、下表のすべてに該当する場合は、1回の人身傷害事故について当会社の支払う保険金の額は、被保険者1名について2億円を限度とします。

① 第1条(この条項の補償内容)(2)の表の①に該当する事故のうち、無保険車の運行に起因する事故により人身傷害事故が生じ、その直接の結果として、第4条(お支払いする保険金)(2)の表の②または同表の③に該当すること。 ② 賠償義務者があること。 ③ 保険証券記載の保険金額が無制限以外であること。    ①は読みづらいですが、従来の無保険車による傷害事故を指しています。②は事故の相手がいること、つまり、自爆事故ではないとの意味です。③は人身傷害の限度額が無制限であれれば、無保険車による被害は2億円ではなく無制限とします。

 要するに内容は三井住友と同じです。人身傷害約款に無保険車傷害を吸収させました。すると、三井住友同様、人身傷害を付保していない契約はどうなるのか?東海日動はしつこく?、いえ、論理的に整理しています。   18  無保険車事故傷害特約

第1条 (この特約の適用条件)  この特約は、この保険契約に対人賠償保険が適用され、かつ、人身傷害保険が適用されていない場合に適用されます。

19  無保険車事故傷害特約不適用に関する特約 第1条 (この特約の適用条件) 続きを読む »

 それでは人身傷害と無保険車傷害の競合問題について、3メガ損保の現約款を確認してみましょう。

 いずれも「27年10月改定」版からです。(最近は毎年のように約款改定が続き、追いかけるのが大変です!) c_y_1

(1)損保ジャパン日本興亜

4-5 無保険車傷害特約  第10条 支払い保険金の計算

⑦ 普通保険約款人身傷害条項第8条(支払い保険金の決定)の保険金が支払われる場合は、その保険金額 ・・を無保険車傷害の保険金から差し引きますよ。    つまり、無保険の自動車にケガをさせられた場合、多くは人身傷害で治療費や休業損害を賄っているはずです。続いて後遺障害が生じた場合も「まず人身傷害で支払い、足りなければ無保険車傷害から払います」、との意味になります。これは実務的な流れを裏付けるものです。

 損保ジャパンは日本興亜との合併前、一時期、人身傷害の約款に無保険車傷害を組み込みましたが、すぐに無保険車傷害を独立した約款に戻しました。結局、両者の約款を併存させたまま、被り問題をこの約款条文で調整しました。

 最初からこうすればよかったのにね。

★ 限度額は人身傷害付き契約(THEクルマの保険)、人身傷害がない契約(SGP)共に、限度額の記載がありません。2年前の改定から「2億円」⇒「無制限」に統一したようです。保険証券には「無制限」ときっぱり記載されています。

  (2)三井住友

続きを読む »

mikurasu  会社で働く方たちは協会けんぽと組合けんぽという言葉をきいたことがありますよね?

 全国健康保険協会(通称=協会けんぽ)と健康保険組合(通称=組合健保)があります。    協会けんぽは適用事業所である中小企業等で働く従業員やそのご家族が加入している保険です。保険料率は各都道府県や標準報酬によって決まり、事業主と被保険者の負担割合は折半になっています。

 組合健保は政府に代わって健康保険事業を行う公法人であり、厚生労働大臣の許可を得て設立されます。1つの会社で700人以上の従業員がいる場合か、同じ業種の会社または同じ地域の会社が集まって3000人以上の従業員がいる場合に設立できます。    1、協会けんぽの場合、協会けんぽのサイトに「協会けんぽについて」→「個人情報保護」→「保有個人情報の開示請求について」→「診療報酬明細書(レセプト)の開示について(ご本人用)」をクリックすると、必要書類の欄に請求書のPDFデータがありますので、それをダウンロードして記入します。具体的には全国健康保険協会支部長の欄には、所属する支部を記入します。お手元の保険証の下の保険者名称の欄に支部名が記載されています。診療年月には開示を希望する期間を、診療報酬明細書等区分には病院の名称、所在地を記載し、必要な区分に〇をつけます。開示する書類は年度ごと(毎年4月1日から翌年3月31日まで)によって手数料300円(収入印紙)がかかります。

2、請求は窓口・郵送どちらでも可能ですが必要書類が多少異なるので、注意が必要です。窓口であれば、「診療報酬明細書等開示請求書」、「身分証明書」を、郵送であれば「診療報酬明細書等開示請求書」、「身分証明書のコピー」、「住民票(請求の30日以内のもの)」を用意し、全国健康保険協会の所属する支部に提出します。

3、その後、開示請求手数料の納付書が届きますので、その金額を納付し、領収書の写しをFAXで送信するとスムーズに進みます。その後決定の書類が届きますので、開示請求の意思と方法(閲覧かコピー請求)を示します。コピー請求の場合、開示書類の枚数によって該当金額を切手同封で支払うと、無事にレセプトが届きます。

 組合健保の場合は、協会けんぽと流れはほぼ一緒ですが、申請書類様式が各組合よって異なりますので、ご自身が所属されている組合のホームページ又は会社の事務の方に聞くことが望ましいと思います。    

続きを読む »

お問い合せはお気軽に!

事務所メンバー

「交通事故被害者救済」がスローガン! 病院同行に日夜奔走しています。解決まで二人三脚、一緒に頑張りましょう。

代表者略歴を見る!

部位別解説 保険の百科事典 後遺障害等級認定実績(初回申請) 後遺障害等級認定実績(異議申立)

今月の業務日誌

2025年10月
« 9月    
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

月別アーカイブ