win  人身傷害特約の支払額は、ある損保会社の約款によれば、以下のようになります(基本的に保険会社はこの内容で共通しています)。

A、まず、その任意保険会社が定めた額を支払うこと。

B、そして、賠償義務者がいて、しかも判決・裁判上の和解で出された損害賠償額が上記額を超えていた場合、その基準が社会通念上妥当(常識的)であれば、その基準により算出された額とすること。

 つまり保険会社は、消費者と契約をして、なるべく安い金額で済ませようとしますが、裁判所の出した金額であれば、その額を尊重するため、裁判等で出た基準での金額にしようとしているのです。早い話、知らなければそれまでなのです。

sanma  もちろん、任意保険会社が定めた人身傷害特約の額の方が裁判等で出てくる金額よりも低いものです。保険会社は営利企業ですので、損しないよう、まず相場よりも低い額で提示し、その額で交通事故の被害者がOKした場合には、示談されたので、その額で交通事故は解決したものとされてしまいます。そこで、皆様は弁護士を依頼して交渉してもらい、裁判等での解決を望むと思います。実際には、弁護士が裁判基準の額を請求すれば、保険会社は無駄な裁判等を嫌うので、交渉による解決で終わり、実際に裁判等を行わないケースもあります。

 ただし、被害者ご自身に交通事故の発生について過失があった場合、その分は損害賠償額から引かれます。人身傷害特約は過失があっても支払われるのですが、上記それぞれの支払額から、以下のように算出できます。

(例) ...

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win メリット2:被害者に過失がある交通事故でも契約した金額の範囲内で補償される。    皆様が交通事故に遭われた場合、相手方加害者やその加害者が加入している保険会社に損害賠償を請求します。

 例えば、頸椎捻挫により、首を痛めたり、腕に痺れが出たりした等の後遺症が残ったとします。症状固定後、後遺障害の申請をしたところ、14級9号の等級が認められたとします。後遺障害等級が認められた場合、自賠責保険の基準では75万円回収できますが、弁護士に依頼すれば、交通事故紛争処理センターを利用すれば、約300万円回収できます。しかし、これは被害者に交通事故での過失(不注意)が全くなかった場合です。

 交通事故での過失は、意外なところで出てきます。  何故なら、皆様がいつも100%交通ルールを守って自動車を運転することはほぼ100%無いといえるからです。皆様はこれを聞いて「そんなわけないだろう!ちゃんと交通ルールを守って安全運転しているよ!」と激怒するかもしれません。ただ、皆様やその周囲の人の運転をよく思い出してみてください。

 例えば、  「交差点の信号が黄色だけど、ちょっとスピードを出せば赤になってもギリギリ他の信号が青にならないうちに交差点を通り抜けられそうだ」と思ってスピード違反と信号無視をしたこと、  「制限速度は時速50キロだけど、前に自動車がいないし、すぐ後ろに自動車が走っているから、もう少しスピードを出して、車間距離を稼いでゆったり運転しようかな」と思ってスピード違反をしたこと、  等々を、皆様は絶対にしたことはないと言い切れますか。

 私は決してこのような運転をするなとか、このような運転を非難しているわけではありません。ただ事実としてありえることを申しているのです。

 仮にこれらのような運転をしたとしても、ネズミ取りに捕まるぐらいで交通事故にまで発展するようなことは少ないとみています。

 しかし相談者の中には、これらの運転をたまたましていた時に、たまたま運が悪くて、もっとひどい運転をした加害者が現れてしまい、たまたま自分も交通事故に巻き込まれた方もいらっしゃいます。

※ もちろんこれらの運転をした方が加害者になることも往々にしてありますが、ここではそれについては置いておきましょう。

 誰もがしてしまっている「普通」の運転で交通事故に遭ってしまい、あろうことか自分に過失(10%)が認められてしまい、上記した約300万円から、過失分(-30万円)が減額された金額(270万円)になってしまうことがあります。皆様はこのようなことがあると理不尽に感じませんか。    c_b_k_5  しかし、人身傷害特約に加入しておけば全額が賠償請求できなくても、過失分の差額を回収できます。以前のブログでも説明した通り、人身傷害特約は、支払限度額(最多契約額は5000万円)の範囲内で補償され、上記した内容の場合、30万円分回収できることになります。

 賠償金の額が300万円程度であれば、これで解決できます。

 しかし、損害賠償額がもっと多く、しかも人身傷害特約を使うタイミングを間違えますと、全額回収することが出来なくなることがあります。

 そのタイミングについては次回に説明させて頂きます。  

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 今月、行政書士の交通事故業務について、その線引きを示す一つの判断が届きました。

 大阪高裁平成26年6月12日判決(判例時報2252号の61頁)

 この裁判は行政書士が依頼者に対して報酬を請求したところ、「その業務が弁護士法72条に違反するから無効」と依頼者が支払いを拒否、対して行政書士が報酬の請求訴訟を起こしたものです。結果は、行政書士の訴えが退けられたのですが、その過程で業務内容の適否にいくつかの判断がされました。

 有償で賠償交渉に関わる事が弁護士法72条違反であることは明白として、この高裁判決では興味深い論点が示されました。行政書士の交通事故業務でグレーゾーンであった業務が弁護士法72条に違反するか否かについて・・・   ① 「自賠責保険の請求業務」は(本件一連の契約内容・業務は全体として非弁行為だから、自賠責部分のみ適法を認めず)法律事務とされた   ② 交通事故に関する事務は「将来、紛争が予想されれば法律事務となる」   ③ 報酬設定で経済的利益の○%は72条違反の根拠    まず、周囲の弁護士によると、やや驚きだったのは「自賠責保険の請求までは行政書士も可能」と解釈していたところ、①で否定された点です。今までも、この違法・適法の線引きについて弁護士間でも意見が分かれていました。

 しかし、本件の場合は前提があります・・・本件行政書士は賠償請求行為まで包括的に契約していいました。1審で非弁行為を断じられた後、控訴審になって「少なくとも自賠責保険の業務までは適法と認められるべき、だからそこまでの報酬は認めて」との、未練がましい主張を追加して臨んだのです。高裁判事は「契約全体として、法律事務との線引きができようもないのでダメ!」と断じたに過ぎません。    その後、サイトで拝見したいくつかの弁護士はこの判例を受けて、この行政書士による自賠責保険の請求で作成した「有利な等級を得るために必要な事実や法的判断を含む意見が記載されている文章」は、「一般の法律事件に関して法律事務を取り扱う過程で作成されたもの」だから、

 ”行政書士の行う自賠責保険業務は非弁行為となった”、と断定しています。    やや論理の飛躍に思えます。これは、”この行政書士の「契約内容・業務全般が非弁行為と認定済」との前提があってこその見解ではないでしょうか。    限定的に解釈すれば、「自賠責保険業務自体、あるいは自賠責保険業務のすべてにおいて、その違法性について直接的な判断まではしていない」、と秋葉は読み取ります。    本判例は、読み手の立場(職域確保の弁護士か、自賠責業務に進出した行政書士か)によって解釈が分かれるようです。しかしながら、HPを見回すと、前者:弁護士の意見はいくつも目にしますが、肝心の行政書士は私くらいしか見当たりません。自らの業務の根幹に関わる重大事ながら、行政書士側はぐうの音も出ないのでしょうか・・・実に寂しい限りです。    今後、自賠責保険の請求業務が真っ向から争われる裁判が起これば、違う判決も出る可能性がありますので、予断を許さないと思います。自賠責業務に関する事務の線引きについて議論は続きそうですが、少なくとも自賠責保険の被害者請求(の代理請求≒代理行為)を行っている行政書士は、この判例から非弁行為(の疑い)を指摘される宿命を負ったと思います。    ②について、交通事故はほとんどのケースで紛争が予想されます。紛争が予想される事務をすべて72条違反とすれば線の引きようのない解釈となります。例えば離婚業務で有責配偶者の証拠(ラブホテルの前で写真を撮る等)を収集、レポートを作成した探偵業務は紛争が予想される法律事務に当たってしまい、探偵さんは非弁者となってしまいます。これも絶対的な解釈までは及ばず、調査業務か法律事務か、個別に判断が求められると思います。    ③は、「報酬自由の原則<72条違反を構成する根拠?」とかなり乱暴な解釈と思います。これはこの行政書士のあやしい?業務内容から、その違法性の根拠を示す報酬計算とされました。やはり個別判断に留まるように思います。    訴えを起こしたのは、書面による賠償交渉を業務としたバリバリの赤本書士です。

(赤(青)本書士とは・・・賠償交渉を被害者の裏に回って書面作成によりフォロー、「賠償交渉はしていません、書面作成しただけですよ」と、”とんち”で72条違反を回避したつもりの行政書士)

 この赤本書士に対して一罰百戒、その主張すべてにNOが突きつけられました。最初から堂々と賠償交渉と代理行為を契約し、業務遂行していたのですから、結局、何を言っても説得力がなかったのでしょう。本裁判は依頼者と報酬額を巡るトラブルが発端です。少なくとも依頼者の納得が得られない業務と報酬内容なのでしょう。関西の行政書士・弁護士から聞くと、この先生は平素から疑義・問題のある業務と報酬請求をしており、懲戒の申立ても受けているようです。行政書士の性質によっては、つまり、72条に遵法、真面目な先生であったら・・もっと慎重な議論が展開されたと思います。

 これが一民事事件に対する個別判断であるとしても、判例が一つの規範であることは変わりません。業界全体はもちろん、交通事故に係る行政書士は厳粛に受け止めるべきでしょう。今後、弁護士・行政書士の両会が業際問題について申し合わせを行い、グレーゾーンの線引きが進むことを望みます。

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win メリット1:加害者がいない場合や支払能力が無い場合の事故でも治療費等を回収できる。

 自分の身は自分で守るというのは、古今東西いわれ続けいている原則です。これは交通事故でもいえることです。文字通りであれば、交通事故に遭わないようにするために様々な対策をすることを思い浮かべるかもしれません。これは間違ってはいませんが、それでも交通事故に遭ってしまうこともあります。  以下では、交通事故に遭うことを前提とした、自分の身を守る方法について、人身傷害特約の上記メリットと併せて述べさせていただきます。

 交通事故の被害者は、まず、治療するために費用が掛かりますが、そのために仕事を休む場合があり、また、交通事故によって怪我・死亡したことで本来健康に働いていれば得られたであろう給料・ボーナスが減少・無くなった場合の損害(逸失利益)が生じます。  これらについては、損害賠償請求できます。さらに、怪我そのものを負わされたことに対する慰謝料請求もできます。

 通常、これらの損害賠償請求は交通事故の加害者に対してするものです。しかし、交通事故の加害者がすべての賠償責任を負うことは現実的に不可能です。そこで、強制加入式の自賠責保険は勿論、交通事故に備えて任意保険に入るのです。これらのことは、保険に加入している方々にとってはあまりにも当たり前のことすぎて、つまらないかもしれません。しかし、皆様にはある意味ホットな話題かもしれませんので、もう少々お付き合いください。

 最近の交通事故で皆様の記憶にあるものは何でしょうか。  交通事故に遭われた方はご自身の交通事故を思い浮かべるかもしれませんが、私は某S川で起きた家族4人が死亡し、子供1人が生き残ったものの意識不明状態が継続している事件を思い浮かべます。ネットやニュースを見てみると、加害者は若く、しかも任意保険は未加入とのことです。

 このような者は例外であるとみてしまえばそれまでですが、実際に任意保険未加入の加害者は派手な事故をしていなくても現実に存在しております。弊所の相談者の中には、加害者が任意保険に加入していなかった方もいらっしゃいました。このような方は全体的にみて多いとは言い切れませんが、決して少ないとも言い切れませんでした。

 皆様は当たり前と思っているかもしれませんが、実際に任意保険に加入していないのに自動車を運転し、交通事故を引き起こしてしまう加害者は存在します。もちろん強制加入の保険である自賠責保険は皆様加入されていると思いますが、実際に交通事故が生じたとしても自賠責で補償される額は最低基準であり、100%賄えません。

※知り合いが交通事故に遭った際、加害者が外国人(加害者曰く、ブラジル系?)の人で日本に出稼ぎできた者でした。その者は交通事故当日に高跳びされたそうです。もう察しの良い方はお気づきかもしれませんが、任意保険は勿論、自賠責にも未加入でした。幸い知り合いは怪我が軽くて済みましたが、治療費等は結局泣き寝入りです。

c_y_164  加害者が任意保険未加入であった場合、被害者は泣き寝入りするしかないのでしょうか。それとも、一生かけてでも加害者を追い続けて何年かかってでも全額支払わせますか?それとも、(某団体に)債権譲渡して少額でもいいから回収しますか?

 どれも非現実的です。

 またこれらと違って、加害者がひき逃げをしてしまうこともあります。  ひき逃げ加害者がその後捕まればいいですが、捕まらずにいる場合もありますので、加害者はおろか、自賠責、加害者の任意保険会社にも請求できません。

 この点、ご自身で契約された人身傷害特約は現実的な解決ができます。冒頭で述べましたように、人身傷害特約に入っていれば約款上定められている支払限度額(加入額の3000万円~無制限、最多契約額は5000万円)の範囲内で、実際にかかった治療費、休業損害、慰謝料、逸失利益、その他費用が支払われます。

※前回述べた支払額で、裁判所基準等との差が出てくるのは慰謝料と逸失利益の額であり、その他については差がありません。

※死亡や大怪我の場合、上記した支払限度額の範囲内では賄いきれないことがありますので、この場合は無保険車傷害特約が活躍します。

 結局、冒頭でも述べましたが、自分の身は自分で守るしかないのです。

 加害者の保険会社におんぶにだっこの状態で安心するよりも、まずご自身の保険会社で安心した方がより安心すると思いますが、皆様は如何でしょうか。  

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 もう一つの本音にも触れておきましょう。

 成功報酬の請求の局面において、事前認定の場合、賠償総額がまとまって報酬が計算しやすくなります。示談前に自賠責保険を受け取ると、賠償総額が減ってしまい、その分の報酬を取ることに議論が生じます。特に弁護士費用特約を請求する際、弁特社(保険会社)から理解を得ずらい、面倒な議論なのです。

  <被害者請求の憂鬱> 「被害者請求は無駄だからやらない」だけの理由ながら、(被害者請求を希望する)依頼者を必死に説得している事務所があり、この弁護士の意図が謎でした。看板(HP)の通り、等級認定からしっかり取り組んでいるのなら、おのずと診断書や検査データが手元に集まるはずです。行きがけの駄賃ではないですが、そのまま被害者請求としてもよいような気がします。

 これについてある弁護士先生から裏事情を聞き、うなずけました。流れで説明します。

 まず、相手保険会社に事前認定で等級を確定させます。続いて賠償金の請求書を突きつけます。その計算は、まだ自賠責保険金を受け取っていないので、自賠分を含んだ請求書が作れます。結果として獲得額が増大、報酬を高額にできるという仕組みです。

 さらに、後に弁護士費用特約を請求する際、報酬計算上、自賠責保険金分の控除を防ぐ効果もあります。もし、被害者請求等で先に自賠責保険を確保したら・・弁特社から「被害者請求は弁護士が医師から診断書を預かり、自賠に提出するだけですよね、だから自賠責保険金分は獲得した賠償金から引いて下さいよ」と言われ易くなります。    benngosi  もっとも、被害者請求のプロセスでしっかりとした立証作業を行っている弁護士は自信を持って、「自賠責の等級認定においても被害者請求を選択、これこれの作業を行いました。これも獲得した賠償金の一部です」と弁特社に力強く主張、理解を得ています。ところが、「事前認定も被害者請求も同じ」と被害者請求の効果を否定している先生は・・このような抗弁が出来なくなってしまうのです。

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 相変わらず「事前認定と被害者請求、どちらがいいのか?」が質問されます。被害者はネット情報や各相談先の回答によって、迷っているようです。特に多いパターンですが・・

 「依頼した弁護士が「被害者請求など無駄、相手保険会社に任せるべき!」と言って被害者請求してくれません。ネットでは絶対に被害者請求にすべき!と書いてあるのですが・・」

 加害者側の保険会社と戦うためにせっかく依頼した弁護士が、「相手保険会社を通して審査を任せるべき」と依頼者を説得している姿に違和感を覚えます。逆に被害者請求を煽る業者の論調も、商売上に立脚した胡散臭いものに感じます。まさにネット情報の功罪ですね。

c_g_a_5-118x300 まず、弊事務所の姿勢ですが、基本方針は被害者請求です。誤解しないで欲しいのは、等級申請は医療調査を主体とした立証作業が本質であって、事前認定か、被害者請求とするかなど、形式上・手続上の手段でしかない、と捉えている点です。大事なことは障害の立証作業、つまり遺漏なき検査データと間違いのない診断書を収集することです。これを漫然と医師任せ、相手保険会社任せにすると・・正確な後遺障害等級が認定されず、大変なことになりますよ、と注意喚起しています。

 しかし、両派それぞれ主張が分かれます。

  <被害者請求派>  事前認定は相手保険会社の妨害がある等、危機感を煽ります。それに比べ被害者請求は自ら書類を精査して申請できる点、先に自賠責保険金を確保できるメリットを訴えています。  自賠責保険の被害者請求を推進しているのは、ほぼ100%が行政書士です。なぜなら、この手続きを仕事として報酬を得ている以上、絶対に譲れない手続きなのでしょう。

  <事前認定派>  対して、事前認定で十分と主張するのは弁護士でも保険会社の顧問・協力弁護士を兼務、もしくは経験者に多くみられます。理由は審査先はどちらも一緒であること、審査はあくまで定型書類を対象としていること、したがって、せっかく一括社が事前認定してくれるのであれば、被害者請求など無駄な労力でしかない、となります。

   どちらもそれなりに納得できる意見です。それでも私はそれぞれの立場に立脚した極論と思っています。まして、双方の単純な優劣を語る時点で不毛な議論に陥ります。目的はあくまで前述の通り、被害者の障害立証です。そのために決め手となるのは医証収集・医療調査であって、申請方法ではありません。

 私は被害者請求を基本としつつ、実は被害者請求の代理請求をほとんどやっていません。事情によりどうしても必要なケースは年に1件あるかないかです。では、手続きはどうしているか?ですが、多くのケースは集めた医証を弁護士に託し、弁護士が代理請求します。もしくは、被害者が自ら請求を行います。医証を集める作業で私の立証作業は完了しているのです。  提出書類を託した弁護士や被害者に、形上、どちらの請求とするか選択を任せていることになります。結果として、ほぼ全件、被害者請求で提出しているようです。 

 行政書士の資格で自賠責保険の代理請求ができるか?と言った、法律上の解釈・争いはひとまず置いておくとして、私は被害者請求を是としながら、行政書士が自賠責に代理請求をする必要性を特段に感じていません。

 したがって、私は商売上の理由からこの問題を談じているわけではないのです。

 つづく  

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win  人身傷害特約とは、端的に言ってしまうと、保険契約した車に乗っているときに自動車事故で死亡、受傷した場合に補償される保険です。

 支払額は、原則として、以下のように決められます。これは、とある保険会社の約款内容を要約したものですが、全保険会社が、以下の内容とほぼ同様です。

 「我が社が支払う保険金額は、被保険者が傷害・後遺障害・死亡のいずれかに該当した場合、それぞれ定めた算定基準に従って出した金額です。」

 この算定基準で導き出される金額は、どのぐらいなのでしょうか。

 興味のある方は、ご自身の保険約款や保険証券で確認していただいても結構ですが、結論を先に申し上げますと、自賠責保険での金額よりも高額ではありますが、裁判所基準での金額よりも低額です。

裁判所基準とは、簡単に言ってしまえば弁護士が訴訟や交渉解決する際に持ち出す基準です。保険会社は、弁護士が入っているか否かで支払う金額に差を設けております。弁護士が入っていなければ、契約者様と保険会社との間で契約した保険契約に基づいて金額を算出しますが、仮に弁護士が入っている場合、諸事情により裁判所基準での金額を算出します。 ※ この諸事情については、次回にご説明いたします。

 これのみでみると、人身傷害特約そのものに意味がないように思う方がいらっしゃると思います。何故なら、はじめから弁護士に等級を基準に、裁判所基準での金額分を加害者や相手方が契約している保険会社に請求して頂ければ十分であるといえるからです。

 では、わざわざ高いお金を支払ってまで人身傷害特約に加入するメリットとはいったい何なのでしょうか。

 人身傷害特約に加入していた場合、代表的なメリットとして、以下の3つが挙げられます。

メリット1:加害者がいない場合や支払能力が無い場合の事故でも治療費を回収できる。 メリット2:被害者に過失がある交通事故でも契約した金額の範囲内で補償される。 メリット3:後遺障害を申請していなくても、または申請中であっても請求できる。 c_y_101続きを読む »

win

 交通事故の発生件数は、警視庁の発表によれば、平成24年は66万5,138件、25年は62万9,021件、26年は57万3,842件、と減少傾向にあります。

 そして、損害保険損率算定機構(平成25年度の事業概況)によれば、交通事故による死亡者、それによる自賠責保険死亡支払件、が年々減少してきています。また、交通事故の負傷者も年々減少しています。これらのことから、交通事故の発生だけではなく、交通事故による重傷者及び重傷になるレベルの大きな交通事故が減少してきているといえます。

 しかし、支払われる保険金は、平成23年度では8,054億円、24年度では8,000億円、25年度では8075億円、とほぼ変化がありません。また、これに対し、自賠責保険傷害支払件数は、平成23年度では1,155,536件、24年度では1,154,370件と若干減少しましたが、25年度では1,185,334と増加しております。なお、平成21年度では1,117,373件、22年度では1,136,876件であったことから、全体的にみて年々増加傾向にあるといえます。

 交通事故発生数と交通事故による死亡者・重傷者が減少しているにもかかわらず、他方で保険金の支払件数が増加し、支払保険金に変化がありません。なぜこのようなことが起きたのでしょうか。   (1)後遺障害認定の増加について

 上記した自賠責保険傷害支払件数には、後遺障害が含まれています。 この点、損害保険損率算定機構(平成25年度の事業概況)の後遺障害支払件数の推移によれば、後遺障害支払件数は年々減少しております。また、年間の後遺障害認定件数は、全体の傷害交通事故のうち約5%であり、この数値に大きな変化はありません。

 したがって、後遺障害認定が原因で支払保険金が増加したわけではなさそうです。   (2)治療費や施術費の増加について

 損害保険損率算定機構(平成25年度の事業概況)によれば、総治療費及び総施術費の増加及び件数が増加しております。ただ一方で、平均治療費、施術費の変化はほぼありません。 よって、治療費・施術費の値上げは起きていないようです。   ※ 平均施術費については、平成24年度では315,683円なのに対し、平成25年度では311,168円と減少しておりますが、平成21年度から全体的にみてあまり変化がないと考えます。    上記した通り、交通事故の負傷者が減少しているにもかかわらず、総治療費及び総施術費の増加及び件数が増加しているのは、交通事故負傷者の内、多くの病院や接骨院等へ通院する者の数が増加していると考えます。   ※ なお、治療期間・施術期間が少しずつ増加しており、通院慰謝料等の支払数が多くなるともいえますが、平均して1日ずつしか増加しておらず、少数といえるので、これが直接的な原因と解することは出来ません。    交通事故の負傷者は、多く通院する必要のある者から、軽傷で、数回通院すればいいような者まで様々です。昔では、交通事故負傷者は後遺障害の申請をする以前に、多くの通院をしていませんでした。通院する者が増加しているのは、本来多く通院する必要のない者まで多く通院するようになってきているといえます。何故なら、交通事故の負傷者数そのものが減少すれば、その分通院が必要な者も減少するはずなのに、損害保険損率算定機構(平成25年度の事業概況)によれば、上記した通り交通事故の負傷者数が減少しているにもかかわらず、病院や施術所へ通う人数が増加しているからです。

 なお、最近になって、交通事故の負傷者のすべてが多く通院する必要のある者であった可能性が全くないわけではありませんが、非常に低く、現実的ではありません。では、なぜ交通事故負傷者が全体的に多く通院するようになったのでしょうか。    結論として、交通事故の負傷者が後遺障害の申請の方法をインターネットや書籍等で簡単に知ることが出来たことにあるとみています。  特に、交通事故負傷者の診断名のうち、約60%がムチウチであり、ムチウチの後遺障害申請について調べた者は、大抵、通院日数を増やそうと考えます。この点、ここ最近の相談会でもそのような者が増加しているようにみえます。

 しかし、本来後遺障害というのは生涯にわたって治らないレベルの者に認められるのであって、軽傷者に認められるものではありません。上記した通り、交通事故による重傷者は減少しています。このことから、軽傷者があえて後遺障害を狙っているようなケースが増加しているようにみえます。

 私達(連携しているNPO法人や弁護士事務所を含む)は、すべての交通事故被害者に対して、後遺障害の申請をアドバイスしておりません。後遺障害が認められる者とそうでない者とを見分けた上で、それぞれの被害者に対して最もよいと思われる交通事故の解決の道筋を模索し、アドバイスをさせて頂いております。そして、後遺障害が残存しないような者については、契約を結ぶことは原則致しません。何故なら、必要ないからです。

 無駄に契約を締結して無駄にお金の支払わせて無駄に保険金を使うようなことは、個人レベルでも、社会レベルでも損失にしかなりません。

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 行政書士の請求に対する各社の動向ですが、かつて「行政書士への費用は明確に制限規定を設けた」件について書いたと思います。詳しくは ⇒ エトセトラ⑧

 以前から国内社の対応は「法律相談費用(10万円限度)の範囲でなんとかしたい」意向がありました。最近は約款まで記載せずとも、重要事項説明書やパンフレットに行政書士への支払い制限を書くようになっています。外資系は元々、”支払い対象は弁護士のみ”が多数であったのですが、近年、行政書士へ対象範囲を広げています。しかし、支払い内容は当然に渋いものでしょう。

 久々に某通販系の担当者と弁護士費用(以下、弁特)について、電話でお話をする機会がありました。その会社はLAC基準を前面とし、小額案件は弁護士でも着手金は10万円まで、行政書士は「着手金・報酬」などそもそも発生せず、「文章作成料金」の費用について10万円限度と徹底した対応をしています。元来、弁特は各社、各支払い課、担当者によって支払い基準・解釈がばらばらの対応ですが、この会社は珍しく全国的に支払い基準が統一しているようです。

   第三者的な分析が多いこのシリーズですが、今回は私(弊事務所)の姿勢を明確にしておきましょう。

 最初に言いますが、”保険会社が事前に支払い基準を示すこと”について、私は賛成です。それさえクリアにしているなら弁特社を横暴と思いませんし、担当者と喧嘩になることもありません。会話の応酬は以下の通り・・ tel13 (担当者)  行政書士は資格上、文章作成の費用しか発生しないはずです。したがって、着手金・報酬は弁護士のみで、行政書士には10万円の費用までです。

(秋葉)  確かに文章作成料としての代書代・手間賃は5万円程度です。弊事務所ではそれに調査費用が上乗せされます。そちらの費用がはるかにかさみます。その初期経費は着手金でまかなっています。また、その調査の成果に応じて報酬を決めますので、「着手金&報酬」制度は依頼者の理解が得られやすいのです。  弁護士のみ「着手金&報酬」が発生する?といった概念は単に御社のお考えでしょう。

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 それでは、お待たせしました。各社、最新の動向について発表しましょう。

 この各社の約款をトレースする作業に10時間要しました。これは出版を予定して調査したものです。後日、加筆・修正した「保険約款」の解説本の出版を予定しています。

   この特約はおおむね2つのタイプに分かれます。ここではAタイプBタイプと区分します。3年前の約款から変化が見られるようです。  

A:『年齢条件特約の不適用に関する特約』

1.「年齢条件に違反」して被保険自動車を運転して起した事故を補償します。 2.『対人賠償』と『対物賠償』のみ補償 3.「家族か否か」、「免許を取ってからの期間」などの条件はありません。 4.年齢条件に適合した本来負担すべき保険料と、実際に負担した保険料との差額に応じて保険金は減額されます。(全年齢 と 35歳未満不担保 の掛金差はおよそ 100 : 50 ) 5.最初から「記名被保険者・本人が年齢条件を満たしていない」契約の場合は、そもそも適用できません。

<主な適用社>

富士火災 全労災 セコム  ・・・この3社はAタイプBタイプを併存させています。適用上、Bタイプが優先です。

  B:『運転免許取得者に対する「賠償損害」自動担保特約』

1.「新たに免許を取得した家族」が「年齢条件に違反」して被保険自動車を運転して起した事故を補償します。適用には保険会社の承認が必要です。 2.補償の対象となるのは、 続きを読む »

 3年前に「隠れ特約」として記事にした「年齢条件不適用特約」を再度取り上げます。この特約は(例)から説明しないといけません。

(例)「35歳未満不担保」のお父さんが契約していた自動車に、18歳になって免許を取った息子さんが年齢条件の変更をしないまま運転、人身事故を起こしました。この場合は契約ルール上、年齢条件違反となり、保険は使えません。しかし、この車に被害に遭った被害者にとって保険の契約違反など関係なく、補償が得られず困ってしまいます。そこで、一定の条件下、保険会社が対人・対物について支払いをOKとするものです。

 過去記事 ⇒ 「隠れ特約」 c_y_170 この記事を書いたのは3年前のゴールデンウィークでした。この特約、相変わらず周知されていません。元々、掟破りの特約であるゆえ、保険会社の隠しておきたい心情も理解できます。しかし、実務上、被害者が強く主張しないと黙っているような対応がみられるのです。いくら表面化したくなくても「バレるまでしらばっくれる」姿勢に非難は避けられないでしょう。そもそも被害者救済の措置ですから。  

 この特約の解説前に、年齢条件について復習しましょう。

○ 全年齢担保    = 免許があれば何歳でもOK

○ 21歳未満不担保 = 21歳以上が保険の対象     ・・・ 18~20歳の運転事故は保険が出ない

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 福井地裁判決の判旨が待たれるところですが、最後に私の注目点について触れます。  

3、司法はこの民事事件の判決の根拠を自賠法にのみ置いたのか?

  20saibannkann 自賠法第3条により有責!

 新聞によると「無過失が証明されなければ賠償責任があると定める自動車損害賠償保障法(自賠法)に基づき「賠償する義務を負う」と認定。対向車側に4000万円余りの損害賠償を命じた。」とのことです。何が問題かといいますと、判断を自賠法に置いたことです。通常、不法行為を問う民事裁判では民法を根拠に考えます。もちろん、他の法律が検討されないわけではありませんが、まずは対向車の運転手に責任があるかないかについて判断して欲しいところです。

 例えば、「時速○kmでセンターラインを超えて来た自動車を回避することは不可能である。したがって責任はなし。原告の訴えを棄却する。」もしくは、「○m前からセンターラインオーバーの車両を認めることができたはずであるから回避の可能性があった。したがって1割の責任がある(10:90)。被告は賠償金○円の10%を支払え。」とします。つまり、物の筋から言えば、まず、責任関係を明らかにすべきでしょう。

 しかし、これまで解説したように自賠責保険が適用されれば、被害者に大変有利な救済的支払いが成されます。今回の例でも4000万円の支払い判決です。少なくとも自賠責から死亡限度額3000万円が支払われるでしょう。では残り1000万円を対向車の任意保険会社が支払うのか?と疑問が残ります。もし、対向車に過失があったしても仮に10%とすれば、自賠内で支払いが済むはずです。よって、任意保険は支払いを免れます。過失割合はこの裁判で判断されたのでしょうか?この謎は追って確認したいと思います。

 それはさておき、裁判官は民法の不法行為の判断を無視して自賠法のみを根拠に判断したのでしょうか?それとも2つの判断をそれぞれした上で、結論で自賠法を用いたのでしょうか?  

 これは、実は今後の交通事故裁判で重要な分岐点になると思います。

・被害者に有利な自賠法を民法の特別法(優先適用する法律)と位置づけるのか?

 それとも、

・一応は民法で過失の有無が判断されたが、あたかも事情判決のようにそれは適用せず、自賠法にて解決を図りなさい、との判断か?

   前者の考え方であれば、今後の人身事故裁判で、原告側は常に「自賠法に基いた」主張をするようになってしまいます。後者なら私的には納得です。  これから何人かの弁護士先生に意見を聞いてみようと思います。  

 人身事故解決の実際、ほとんどが自賠責保険の支払いで解決しています。任意社は自賠限度額(傷害:120万円、死亡3000万、後遺障害4000万)までなら自賠責保険(自賠法)か任意保険の(被害者にとって)有利な方を適用し、超えれば任意保険(約款)、もめたら民事交渉・司法判断(民法)となります。そのような流れである中、被害者にもっとも有利である自賠法を最後の司法判断まで優先的に通せば、過失責任の判断がすっ飛んでしまうように思うのです。

 この地裁判決はあくまで、被害者救済に則った特別な判断で、実は民事上の責任の有無はしっかり決着されていることを願います。そうでなければ、対人・対物賠償を支払う立場の相手の任意保険会社、人身傷害保険、車両保険を支払う自身契約の保険会社、求償する立場の健保や労災、その他、自賠責保険金を超えた額を請求する立場の人達は困ってしまうはずです。     c_s_j_1

 

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 本判決は自賠責保険の勉強に大変役立つケーススタディとなります。

(注)現在、福井地裁の判決内容を精査していませんので、推測含みな解説となることをご了承下さい。

  2、わずかでも責任がある可能性があれば賠償責任を負う?

 一見、責任がないかに見えた対向車は、「自分にまったく責任がないと証明できない限りは自賠法上、賠償責任を負うべき」と司法判断されました。

 この点、まずは自賠法第3条を復習しましょう。  

第三条 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

   この条文から自賠責が支払われる3要件が規定されています。  

① 自動車の運行について過失がなかったこと   ② 被害者または第三者(運転者を除く)に故意・過失がなかったこと   ③ 自動車に欠陥がなかったこと    損害賠償を法律面で論じるなら、民法の不法行為から「被害者が立証責任を負う」こと(過失責任主義)が原則となります。つまり、「証拠は被害者が探して突きつけなければ、加害者は弁償しないで済む」ことを意味します。しかし、自賠法では逆で上の3要件=「加害者が自分に責任がないことを証明しなければ、賠償義務を負う」ことになり、立証責任が被害者から加害者へ転換されています。これは自賠責保険の理念である被害者救済の精神が反映されたもので、ほとんど無過失責任(≒無条件で責任を追う)に近いものです。

 したがって、本判決は一見、非のない対向車であっても、「クラクションやハンドル操作で衝突回避ができた可能性がまったくなかったとまでは証明できない⇒わずかながら責任の余地が存在する」と判断されたのです。   c_y_21  常識で考えると勝手にセンターラインを越えて突っ込んできた自動車に対して、「避けないほうが悪い」となれば納得のいかないものです。また、民法上も過失割合に応じた責任を負うこと(仮に回避措置の可能性があったとして、おそらく10:90程度)になり、責任は10%以下となるでしょう。しかし、自賠責保険(自賠法)では被害者を手厚く保護するのです。

 「過失減額」から如実に表れています。

  被害者の過失割合   後遺障害・死亡    傷害 7割未満 ⇒ 減額なし ⇒ 減額なし 7割以上8割未満 ⇒ 2割減額 ⇒ 2割減額 8割以上9割未満 ⇒ 3割減額 ⇒ 2割減額 9割以上10割未満 ⇒ 5割減額 ⇒ 2割減額

   実際、わずか10%程度の責任でも自賠責が支払われて助かった経験が少なくありません。

 実例⇒ほとんど自分が悪い事故ながら、自賠責保険から補償を得た

 この実例は過失減額すらなく、相手の自賠責から100%(4000万円)が支払われました。

 自賠責保険を熟知している私からすれば、福井地裁の判断は決して特異な判決ではないのです。しかし、尚、意見があります。それは次週に・・

 つづく  

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 被害者に手厚い自賠責ですが、手厚すぎる?との批判が起こりそうな判例がでました。本件、自動車保険(任意保険、自賠責保険)について、非常に勉強になる論点が含蓄されています。

 まずは以下、福井新聞の記事(引用)をご覧下さい。  

「もらい事故」でも賠償義務負う 福井地裁判決、無過失の証明ない

 車同士が衝突し、センターラインをはみ出した側の助手席の男性が死亡した事故について、直進してきた対向車側にも責任があるとして、遺族が対向車側を相手に損害賠償を求めた訴訟の判決言い渡しが13日、福井地裁であった。原島麻由裁判官は「対向車側に過失がないともあるとも認められない」とした上で、無過失が証明されなければ賠償責任があると定める自動車損害賠償保障法(自賠法)に基づき「賠償する義務を負う」と認定。対向車側に4000万円余りの損害賠償を命じた。

 遺族側の弁護士によると、同様の事故で直進対向車の責任を認めたのは全国で初めてという。

 死亡した男性は自身が所有する車の助手席に乗り、他人に運転させていた。車の任意保険は、家族以外の運転者を補償しない契約だったため、遺族への損害賠償がされない状態だった。対向車側は一方的に衝突された事故で、責任はないと主張していた。

 自賠法は、運転者が自動車の運行によって他人の生命、身体を害したときは、損害賠償するよう定めているが、責任がない場合を「注意を怠らなかったこと、第三者の故意、過失があったこと、自動車の欠陥がなかったことを証明したとき」と規定。判決では、対向車側が無過失と証明できなかったことから賠償責任を認めた。

 判決によると事故は2012年4月、福井県あわら市の国道8号で発生。死亡した男性が所有する車を運転していた大学生が、居眠りで運転操作を誤り、センターラインを越え対向車に衝突した。

 判決では「対向車の運転手が、どの時点でセンターラインを越えた車を発見できたか認定できず、過失があったと認められない」とした一方、「仮に早い段階で相手の車の動向を発見していれば、クラクションを鳴らすなどでき、前方不注視の過失がなかったはいえない」と、過失が全くないとの証明ができないとした。  (福井新聞社)

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 原発事故で被害を受けた被害者の皆さんは怒り心頭で東電側弁護士の反証を聞いたことでしょう。では、法律以前の非常識論理が交渉材料となり、加害者側に有利に働くのでしょうか?かえって被害者の態度を硬化させ交渉が長引き、訴訟上では裁判官の心証すら害する・・つまり、逆に加害者側に不利に働くことはないのでしょうか?法律家ではないど素人の私はそう心配してしまうのです。

 これは交通事故でもよく聞く話です。それでは、加害者側(保険会社の)弁護士の「とんでも反証・交通事故編」を紹介します。全部実話です。

  〇 片目を失明した被害者の損害賠償請求に対し、相手弁護士は・・ とんでも反証 「片目が残っているから大丈夫、ちゃんと見えるので逸失利益はない」

 これに対し、被害者は「じゃ、今から(その弁護士の)片目を潰してやる!」と当然に激怒、裁判官もこの反証は一切取り上げず、怒気を示したそうです。  ハムラビ法典がしっくりきますね。 20061121

  〇 横断歩道上の歩行者をスピード超過(およそ60km)の自動車ではねた加害者の弁護士は・・

  とんでも反証 「自動車が来たらよけるべき、したがって歩行者に過失20%ある」

 この弁護士は70代の高齢者である被害者にアスリートを超越した運動神経を要求しています。  刑事裁判でもこの加害者は「被害者は後ろ歩きで横断していた」などと供述しました。被害者はマイケル・ジャクソンのようにムーンウォークで横断したようです。結果は、裁判官「そんなわけないでしょ!」と激怒。民事裁判と同じ弁護士でしたがこれを言わせちゃまずいでしょ。 mj続きを読む »

 連携弁護士さんからよく苦言を聞きます。「相手には(実態上、保険会社の)弁護士が介入しています。今後はその弁護士と交渉します。それ自体は問題ないのですが、めちゃくちゃな反論をしてきてイラっとしています・・」 i-b_1  加害者側が弁護士を立てることは正当な権利です。そこで、双方の主張をぶつけ合うこと、その結果で解決が導かれることは自然な流れです。今日、問題として挙げるのはその主張内容です。

 私の場合、連携弁護士に被害者の窮状を「自賠責の認定等級」という形で託します。これは、それなりに権威のある審査機関での審査結果として重きをなします。また、認定等級の過程で得た、医師の診断書や検査結果も重要な証拠です。これらに被害者自ら語る陳述書を添えます。対して、加害者(保険金を払う立場の保険会社)の弁護士も保険会社の顧問医の意見書や自ら検索した判例、医学的な文献を根拠に反論します。

 繰り返しますが、その結果、双方が歩み寄る示談や訴訟上の和解、または判決が下ることによって、損害の真実、もしくはより双方が納得できる賠償金に近づくわけです。しかし、中にはどう考えても非常識、法律以前のめちゃくちゃな論理展開をする弁護士がいるのです。  

 震災・原発事故に関するニュースから引用します。震災による原発事故の補償問題で東電と被災者の交渉が続いています。以前、放射能の被害について、東電の弁護団からとんでも論理が飛び出しました。(以下、要約)

 「放射性物質のようなもの(セシウム他)がそもそも民法上の「物」として独立した物権の客体となり得るのか?仮にその点が肯定されたとしても、債務者として放射性物質を所有しているとは観念していないことに鑑みると、もともと無主物であったと考えるのが実態に即している。」  つまり、放射性物質は東電がそれをコントロールし、支配している所有物ではない。したがって、責任を取って取り除けと言われても困る。飛んで行った放射能、およびその被害に責任など持てない、ということです。

 これは小学生が聞いても「おかしい(怒)!」と思います。民法上の「無主物」にすり替えるなど、どう考えても通る話ではありません。  直接には自然災害による事故・被害であるから東電の過失はないのか? だとすれば東電の安全措置、災害予見に瑕疵はなかったのか?・・これがすべての争点と思っていました。しかし、呆れたことに「そもそも拡散された放射能など知ったこっちゃない、責任がまったくない」との主張もされていたのです。

 この弁護士団は有名な先生方です。頭が悪いわけはありません。敢えて交渉上の戦略なのでしょうが、無茶な論理を恥や外聞もなく持ち込んだのです。おかげで東電はマスコミから大バッシング、「東電は悪」という風評に拍車をかけました。この論陣は東電の擁護になったのでしょうか?

 つづく

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 重傷事案です。立証作業は丁寧に進めれば目標等級に届くものの、本件最大の問題は労災の不使用です。さらに運転者は同僚なので自動車任意保険の対人賠償は「同僚災害免責」となってしまいます。まず基本通り、全画像を確保・精査し、可動域計測を正確に実施した。続いて自賠責に被害者請求、等級を固めた。その後は以下の文章通り。加害者や保険からの賠償金より、労災の年金支給が最大のターゲットとなります。被害者救済業とは「等級認定」と「賠償金の獲得」だけでは終わらないのです。

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7級相当:脛骨・腓骨・第2~5趾リスフラン関節脱臼骨折(60代男性・千葉県)

【事案】

現場への移動で自動車に同乗中、高速道路で追突事故となった。自動車の前部は潰れ、しばらく自動車から脱出できない状態になってしまった。腰椎は破裂骨折、右下肢はダッシュボードに挟まれ、脛骨骨幹部、腓骨骨頭を骨折した。さらに、第2~5中足骨を骨折、リスフラン関節部脱臼を伴った。 緊急入院し、それぞれ手術で骨折部を固定した。1年にわたるリハビリでなんとか杖をついて歩けるようになった。

【問題点】

本人は「治るまで症状固定はしない」と、仕事へ復帰する執念をもっていた。しかし、腰の可動は失われ、右足へ全体重の荷重は困難であれば現場仕事は無理である。後遺障害の認定へ向けて切り替えるよう説得を続け、納得した上で依頼を受けた。 続きを読む »

 いくつか非接触事故の受任経験があります。相手を避けるために転倒した場合、相手がそのまま行ってしまえば最悪、自爆事故とされます。また、相手がそれなりに責任を感じていた場合でも20:80の事故であれば、非接触を考慮し10%の修正が加わって30:70となることが多いようです。まして、相手が歩行者や自転車の場合は大変です。相手に個人賠償責任保険の加入があるかないかがポイントとなります。

 最近、兵庫県で自転車の賠償保険加入が義務となったニュースがありました。義務化について是非の議論はありますが、自転車の賠償能力が担保されることは良いことです。

 本例は後遺障害の立証が主役ではありません。相手自転車の個人賠償保険から賠償金を勝ち取った好取組です。  

12級13号:足関節外顆骨折 訴訟認定(30代男性・埼玉県)

【事案】

バイクで交差点を青信号で直進中、信号無視の自転車が横断してきた。それを避けようと転倒し、右足関節の外顆を剥離骨折、後距腓靭帯を損傷、手関節もTFCC損傷の疑いがあった。

【問題点】

相手は自転車で、なおかつ非接触の事故であり、まったく賠償交渉の進展がないまま相談会に参加された。外傷についてはCTやMRIを撮っておらず、診断名があやふやで後遺障害が絞りきれなかった。まして、自賠責保険のような申請先がなく、そのまま相手加入の個人賠償責任保険への請求なので難航が予想された。

【立証ポイント】

同時並行して連携弁護士に個人賠償保険社への交渉を依頼した。非接触による過失減額が争点となったが、それ以上に後遺障害の残存が問題となった。それについては主治医と面談し、MRIの追加検査とリハビリ記録を精査するなど進めたが、微妙な所見に留まり、医証をまとめるのに苦慮した。

結局、訴訟に発展し、足関節は12級13号の賠償となった。後遺障害の立証は今一つであったが、非接触事故で相手自転車から1000万円超の賠償金を取ったことは評価できると思う。  

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 今日の新聞記事から・・民法改正案が来月提出されます。

 今まで法の不備が指摘されていた分野にテコ入れです。交通事故に関係する具体的な項目は、まず遅延利息5%の改定です。市場金利の変動に対応すべく、一定期間(3年ごと)で見直しすべきとの声は以前からありました。おそらく、今改定で3%に変更と思います。

 また、約款についても法律で規制、もしくは無効とできる条項が加わります。ちょうど先日の実務講座にて、「消費者の権利を害する保険約款の問題」について指摘したところです。弁護士が保険会社に約款を曲げた保険金請求をする際、今回新設される民法条文が主張の根拠となるはずです。

 内容を以下、抜粋しました。(2月10日 時事通信)    法制審議会(法相の諮問機関)の民法部会は10日、契約ルールなど債権に関する規定を見直す民法改正要綱案を決めた。事業者が消費者に示す「約款」をめぐる規定を新たに設け、消費者の利益を一方的に害するような約款は無効とする。法制審は24日に要綱案を上川陽子法相に答申。これを受け、法務省は3月下旬に民法改正案を国会に提出する見通しだ。  今回の改正項目は約200に及び、法制審はそのほとんどを昨年8月に固めたが、約款の規制については経済界が反発し、調整が続いていた。民法の債権規定の大幅改正は1896年の制定以来初めてとなる。  約款は、保険や公共交通機関、インターネットサイトなどの利用規約として使われる。消費者が約款の内容や存在を知らずに事業者とトラブルになるケースが多く、消費者保護の観点から検討を進めていた。

 要綱案によると、 (1)事業者が約款を契約内容とすることを明示していれば、消費者が理解していなくても有効 (2)消費者の利益を一方的に害し、信義則に反する約款の条項は無効 (3)契約後の約款の変更は、消費者の利益になる場合などに限定―との原則を明記する。   

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 毎回、相談会で相談者へ弁護士費用特約(以下、弁特と略)の加入有無を確認しています。国内損保は画一的でほぼ同じ約款です。東海さんは法律相談費用(10万円限度)が自動付帯(最初から保険に含まれている)であること(⇒過去記事②)、これは心配ありませんが、三井住友さんは特約を日常生活全般への事故と自動車事故に分けていること(⇒過去記事①)、労災事故を免責としていること(昨日の⑩)、これについては注意が必要です。

 それでは各社、独自色を強めている通販系の弁特はどうなっているのでしょう。毎度、内容を調べるのも面倒なので、各社の最新約款を確認、一覧表にしてみました。赤丸は昨年以降(2014~15の改定)で修正された点です。やはり、国内社のように画一化傾向です。

 何かと支払いが辛い印象のアクサさんとチューリヒさんは対象を弁護士だけではなく、行政書士に広げましたね。でも、「行政書士には10万円までですよ!」と厳しいんだろうな。別にいいけど。  

会社名

法律相談費用(10万円)

司法・行政書士への適用

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