(2)画像所見
3要件の二つ目は画像所見です。自賠責保険認定の鉄則は、脳障害に関わらず「画像所見」です。脳に器質的な損傷が無ければ、単なる脳震盪ですから、後遺障害の認定はありません。ところがMTBIのように明らかな画像所見がなくとも、深刻な神経症状を示す被害者さんもわずかに存在します。画像に写らない微細な損傷があるのかもしれませんが、その場合、意識障害の有無をみるしかありません。
MTBIについて 👉 頭部外傷 ⑪ MTBI ~ 前編
ここではMTBIなど例外的なものは除外します。脳挫傷や血種「硬膜下血腫、硬膜外血種」はCTで容易に確認できます。それらの診断名に併発する「クモ膜下出血(SAH)」も比較的良く観ることができます。これらは局在性脳損傷に分類されます。
一方、画像に写りづらい「びまん性」の損傷があります。診断名としては、「びまん性軸索損傷(DAI)」となります。これはMRI、しかも時期によってMRIの写し方を変えて描出させる必要があります。びまん性の画像の描出は、難易度が上がると言えます。
どのような損傷に対して、どの時期に、どのようなMRIが有効か、脳神経外科医はその観点から画像検査をしています。医学的には、もっと深い話になりますが、ざっくり基本的なMRIの選択は以下の通りです。
① 受傷初期の微細な損傷は、DWI(ディフュージョン)が有効です。10年前はDWIは少なかったのですが、最近の救急先ではよく撮っています。
② 経過的の脳の変化を追うには、脂肪抑制のMRI、とりわけフレアなどを経過的に撮影します。脳にダメージがあると、脳腫脹(脳が腫れて膨らむ)、逆に脳委縮(脳が痩せる)、脳室拡大(脳の中心「脳室」には脳脊髄液で満たされていますが、通常より広がる)が生じます。それを経過的に捉えるにはフレアが最適です。と言うか、脳外科医から指示されます。
参考 👉 MRIの撮影法 ②
③ まれに医師から画像所見が見逃され、”後になって大慌て”を何度も経験しています。事故から何年も経ってしまった場合、医師に必死に懇願してMRIのT2スターを撮っていただきます。陳旧性の出血痕を発見すれば、事務所で飛び上がって喜ぶことになります。

上図はT2スターで描出された「びまん性軸索損傷」。矢印の黒い点は古い出血痕で、点状出血と言っています。
(3)診断名
画像所見より医師は診断名を定めます。それら診断名は以下の通りです。3要件の一つではありますが、画像所見が前提と言えます。

診断名は、画像所見や意識障害の裏付けによって決まるものです。被害者さんは、診断名で一喜一憂する傾向ですが、弊所では診断名はさておき、まず画像所見や意識障害に注目しています。
高次脳機能障害の症状、「記憶喪失、記憶回路の損傷、遂行機能の障害、失語、聴覚、嗅覚の脱失、言語理解や認知の低下など」は上記の傷病名以上に、その画像所見と推移、そして意識障害の有無・程度を出発点として立証計画を策定します。次回からは、その代表的な診断名ごとに解説を進めます。
次回 ⇒ 急性硬膜下血腫





