(1)病態

 交通事故との因果関係はありませんが、毎年大流行していますので、参考までに取り上げておきます。

 アレルギー性鼻炎とは、花粉やダニなどを原因として、鼻粘膜に生じるアレルギー疾患です。アレルギーは、免疫機能が過剰に反応することであり、蜂に刺されることで生じるアナフィラキシー、金属の接触で発症する金属アレルギーなど、広範囲にわたります。

 アレルギーは、Ⅰ~Ⅳ型の4つに分類され、アレルギー性鼻炎はⅠ型アレルギーの代表的疾患です。I型アレルギーは、IgE抗体という抗体によりアレルギー反応が起こります。体内に花粉やダニなどの原因物質が入るとIgE抗体が作られ、この抗体が白血球の一種である肥満細胞や好塩基球細胞膜に付着することでアレルギー性鼻炎が発症します。   (2)症状

 くしゃみ、鼻水、鼻づまりが3大症状です。その他に、頭痛、頭重感、食欲不振、耳・のど・目のかゆみなどの随伴症状が起こることもあります。また倦怠感や意欲の低下にもつながり、これらの症状は非常に不快なもので、QOLを著しく低下させます。生命に関わることはありませんが、学業や仕事に集中力を欠くことになります。   (3)検査・治療

 血液検査と鼻粘膜誘発テスト、皮膚反応をチェックするプリックテスト、皮内テストなどが行われます。

 治療には、薬物療法としては、抗ヒスタミン薬と抗ロイコトリエン薬の内服です。くしゃみ、鼻水が主症状のときは、抗ヒスタミン薬を使用されています。鼻づまりが主症状のときは、抗ロイコトリエン薬が使用、中等症以上になると、鼻噴霧用ステロイドホルモン剤も使用します。

 薬物療法で十分な結果が得られないときは、レーザー治療、後鼻神経切断術、粘膜下下鼻甲介骨切除術などが選択されています。アレルゲン免疫療法と呼ばれます。アレルギーの原因であるアレルゲン(抗原)を少量から体内に投与し、身体をアレルゲンに慣らすことで症状を和らげる免疫療法も実施されています。    次回から顔の後遺障害のシリーズに移行します ⇒ 顔面骨折  

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 嗅覚脱失(きゅうかくだっしつ)    ちなみに漢字を区別すると・・匂い(良いにおい)・臭い(悪いにおい)です。  

(1)病態

 嗅覚障害は、鼻本体の外傷ではなく、頭蓋的骨折と頭部外傷後の高次脳機能障害、特に、前頭葉の損傷で発症しています。これらは、嗅神経の損傷を原因としたものであり、治療で完治させることができません。    その実例(高次脳機能障害に併発)👉 12級相当:嗅覚障害(20代女性・東京都)    例外的に、追突を受けた外傷性頚部症候群の男性被害者に嗅覚と味覚の脱失を経験しています。頭部外傷がなく、絶望的な思いでしたが、事故受傷直後から自覚症状を訴えており、そのことは、カルテ開示においても確認できました。検査結果でも、嗅覚の脱失を立証でき、嘘ではないと確信し、被害者請求で申請したのです。自賠責・調査事務所は、7カ月を要して、嗅覚の脱失のみを12級相当として認定してくれたのです。    その実例 👉 12級相当:嗅覚障害(60代男性・長野県)    もう一つ 👉 12級相当:嗅覚障害(30代女性・東京都)   (2)後遺障害のポイント

Ⅰ. 

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 鼻欠損(びけっそん)   (1)病態

 ヒトの外貌は、眼瞼と鼻そして口唇で成り立っており、個人の個性を表しています。その鼻が欠損するのですから、被害者の精神的な苦痛も大きく、相当に深刻な外傷です。

 形成術は、日進月歩ですが、完全な回復は、とても期待できません。ところが、後遺障害としての評価は、意外に低いのです。    (2)後遺障害のポイント

Ⅰ.

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 鼻軟骨損傷(びなんこつそんしょう)    (1)病態

 鼻筋を指でつまむと、左右に動かすことができるのですが、それは、軟骨であるからです。鼻の根元、鼻骨は、しっかりとした骨であり、鼻軟骨の下に位置しています。

 鼻の軟骨々折でも、軽度なものは、出血もなく、薬だけで終わります。   (2)症状

 事故直後から、鼻筋が、大きく左右に曲がる、中央部が凹むことがありますが、鼻骨骨折を伴っていなければ、軟骨の弾力性で一時的な変形を来したものであり、それほど心配することもありません。しかし、現場で曲がった鼻を自分の手で矯正することはタブーで、絶対に行ってはなりません。   (3)治療

 大きく腫れてくるまでに、急いで、耳鼻咽喉科を受診します。尾骨骨折の有無を確認するために、XP検査が行われ、触診で、ズレや曲がりがチェックされます。

 骨折がなく、皮膚や粘膜の傷が開いていない、出血が止まっている、曲がりや陥没が少ないときは、ペンチ状の鉗子で整復し、鼻孔に詰め物をして固定します。   (4)後遺障害のポイント

 尾骨骨折を伴わない鼻軟骨の損傷であれば、通常、後遺障害を残すことなく治癒します。ケガ自体に過度な心配はいりません。ただし、痛みが受傷から半年も一貫して治療が続けば、神経症状の14級9号の余地を残すと思います。

 次回 ⇒ 鼻欠損  

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 鼻篩骨骨折(びしこつこっせつ)

 

(1)病態

 鼻骨々折に合併して、鼻骨の奥、裏側部分の両眼の間を骨折したときは、重症例となります。   (2)症状

 鼻篩骨には、瞼が付着している突起や涙を鼻に流している孔があり、先の鼻骨骨折の症状に加えて、

① 眼球陥没、目が窪む、 ② 眼角隔離、両目の距離が離れる、

③ 涙小管断裂、涙が止まらない、 ④ 鼻筋の強い凹みなどの症状が出現します。    (3)治療

 治療は、なるべく早期に骨折した骨を元の位置に戻し、必要なら骨を移植することです。

 しかし、頭蓋底骨折を合併していることも多く、個々のケースで形成術の時期や術式が異なります。   (4)後遺障害のポイント

 秋葉事務所では未経験の症例です。基本通り、諸症状を神経系統の障害で評価します。それと鼻に変形がないか、つまり醜状痕を確認します。

 交通事故110番では、原付を運転中に追突され、前方のトラックの荷台に鼻を打ちつけた事故で、鼻骨々折、および鼻篩骨々折の相談例がありました。

 眼球陥没、目が窪む、眼角隔離、両目の距離が離れる、涙小管断裂、涙が止まらない、鼻筋の強い凹みなどの症状が出現し、眼球陥没と眼角隔離は、なんとか目立たない程度に改善したのですが、右目の涙小管断裂と鞍鼻変形は改善が得られず、後遺障害を残したのです。

 涙小管断裂では14級相当、鞍鼻変形では、当初12級14号でした。未婚の女性であり、火の玉の異議申立を敢行、連携弁護士は自賠責・調査事務所の面接に立ち合い、7級12号に繰り上げ認定に成功、併合7級としました。    次回 ...

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○ 鼻の障害は、

 外貌の醜状(鼻の欠損、鼻が曲がった)と嗅覚障害 に大別できます。   ○ 口の障害は、

 咀嚼障害(食べ物を噛み砕けない)、嚥下障害(飲み込めない)

 言語障害(上手く話せない)

 歯牙の障害(抜けた、折れた、補綴(人工物を使って修理)した)

 味覚障害(味がしない)  このように、大きく5分類できます。

   例えば、顔面の多発骨折や脳損傷の場合、上記の障害が複数生じる可能性があります。しかし、顔面や脳の手術が優先され、その後のリハビリが続く中、徐々に上記の障害が確認されていくのです。鼻の醜状や言語障害は周囲が気付きますが、咀嚼や嚥下、味覚・嗅覚は注意深く観察する必要があります。とくに、高次脳機能障害の被害者さんの場合は、周囲がチェックしなければ、何かと見落とされるものです。

 本人が主張しない症状、家族が気付かない症状、そして、医師が見落とした症状は・・「障害はなかった」ことにされてしまいます。

 交通事故外傷による後遺障害の世界では、”病院にさえかかっていれば”、障害が自動的に認められるわけではありません。目耳鼻口の中でも感覚器の障害は、被害者側の医療調査・損害立証の必要性を強く感じる分野でもあります。    それでは、味覚障害が(そもそも、高次脳機能障害が)見落とされた実例をご参照下さい。   

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山本さんイラストsj

 はじめに述べました通り、味覚障害・嗅覚障害は交通事故で鼻や顔面の骨折、脳挫傷等の器質的損傷が認められていれば、神経や脳がやられている可能性があり、疑われることは少ないですが、器質的損傷が認められない場合には、保険会社は疑う可能性が高いです。

 さらに、器質的損傷が認められていない場合には特に大切ですが、いずれにしても症状が確認できたら直ちに医師や保険会社に相談する必要があります。何故なら、受傷直後の段階からでも、食事等をした際に気付くはずだからです。また、味覚・嗅覚の障害は交通事故外傷だけではなく、ストレスや病気、更年期障害等で発症することがあります。    c_n_6  事故から数カ月目で症状が現れた場合、仮に事故後すぐに発症しても相談するのが遅くなってしまった場合、交通事故によるものではなく、別の病気によるものではないかと保険会社は疑い、また病院も事故によるものかどうかを判断できなくなります。最悪、保険会社は通院治療費も出さない対応をすることもあります。症状を訴えることを遅れてしまった場合、後遺障害の申請の際にも影響が出ます。

 後遺障害申請では、自賠責調査事務所は醜状痕を除き、原則、書面のみで審査をします。発症したかどうかは、原則、診断書で判断することになります。事故から数カ月経過した診断書で傷病名や症状が書かれても、保険会社や調査事務所は事故によるものではないのではないかと疑いやすくなります。

 どうしても診断書のみでは受傷直後に発症したかどうかがわからい場合、最悪、受傷直後のカルテや看護記録等を開示請求して内容を確認することがあります。過去の案件で、受傷直後の看護記録に嗅覚についての記載がわずかに残っていたため、看護記録も申請時に提出したことがあります。なお、その案件では12級相当が認められました。

 しかし、カルテや看護記録の開示請求は、病院側はとても嫌がります。治療面でも後遺障害の申請面でも医師には協力して頂かなければなりません。なるべく医師の負担になるようなことは避けるべきです。   

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山本さんイラストsj シリーズ3回目です

 嗅覚についての必要な検査として、① アリナミン検査(P)、② T&Tオルファクトメーター検査、があげられます。    ①アリナミン検査(P)とは、においがする物質(アリナミン注射液、プロスルチアミン注射液)を静脈に注射して、肺から気化することで自分の呼気から自分でにおいを自覚できるかどうかを検査するものです。

 ここで感じるにおいは、甘い香=ニンニクに含まれる成分であり、市販の栄養剤、滋養強壮ドリンクに含まれているものです。

 この点、アリナミン検査には、もう一つ、フルスルチアミン塩酸塩を使用した、アリナミン検査(F)というものがあります。

 ここで注意が必要なのは、自賠責保険で重要視しているのは、前者のアリナミン検査(P)であり、後者のアリナミン検査(F)は参考にしか使われない点です。病院によってはFの検査しかやらない場合もあり、また、医師もどちらかがわからないで実施している場合もあります。よって、Pの方の検査をして頂くためには、慎重になる必要があり、紹介先や通院している病院で実施できるかどうかを調べる必要があります。   ②T&Tオルファクトメーター検査とは、ニオイ紙にあるにおいをつけて、鼻先約1cmに近付けてにおいを嗅ぐことで、何のにおいがするかを当てる検査です。

 においは5種類あり、バラのにおい、焦げたにおい、腐敗臭、甘いにおい、糞臭があり、さらに、においの濃さを、原則、5段階で分けて検査します。しかし、焦げたにおいの場合は検査液を作成できないため、例外的に、4段階で分けて検査することになります。

 検査結果を表に○と×でチェックを入れて記載されます。この点、○は検知域値(においを感じる所)、×は認知域値(どんなにおいかわかった所)であり、自賠責等級は×の方の数値を計算して決まります。

 数値は、5種類の×の各段階の数値を合計した数値を5で割ることで原則出します。しかし、チェックの下に下矢印が記載されている場合があります。これは、5段階で測定できなかった場合に記載するもので、その場合はその種類の数値に1を足して計算します。

 計算式:(A+B+C+D+E)÷5

 自賠責等級は、嗅覚を喪失した場合は12級相当が、脱失した場合には14級相当、がそれぞれ認められます。 具体的には数値が5,6以上であれば12級相当、2,6以上5,5以下は14級相当です。なお、上記数値の最大値は5,8です。

 c_n_26  

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山本さんイラストsj前回の続きです

 味覚について、保険手続上で代表的な検査として、①電気味覚検査、②ろ紙ディスク法検査、があげられる。

① 電気味覚検査とは、簡単に言ってしまうと、舌に電気を流して神経が正常に働いているかどうかを確認する検査です。

 手順は以下の通りです。

・首に極線の首輪をはめます。 ↓ ・舌の前後左右の表面に電極を当てて電気を流します。 ↓ ・びりびりと感じたら手持ちのスイッチを押して、その舌の部位の神経が働いていることがわかり、逆にびりびりと感じなかった場合、電気が流れていることがわからず、スイッチを押さないままとなり、舌の神経が働いていないことがわかります。

 なお、舌の後ろ部分の味覚を支配している神経は舌咽神経、舌の前の部分の味覚を支配している神経は鼓索神経です。検査表にはこれら2つの神経支配領域をさらに左右に分けて4部位で検査します。   c_g_m_3 ② ろ紙ディスク法検査とは、ある味のついたろ紙をピンセットでつまんで舌の左右にそれぞれ付けることで何の味かを当てる検査です。

 味は、基本となる、甘味・塩味・酸味・苦味の4種類にわけられます。

 味の濃さのレベルについては、薄い味から濃い味まで5段階あります。

 なお、検査で何も感じなければ、味がしない旨を伝えます。

 上記各検査で、味覚を減退したと認められれば14級相当が、味覚を脱失したと認められれば12級相当が認められる可能性があります。

 味覚の減退は、上記基本の4種類の味のうち、1つ以上を認知できない場合を指し、味覚の脱失は、4種類の味のうち、すべてが認知できない場合を指します。  

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山本さんイラストsj山本、今日は熱海へ

 交通事故でにおいがわからなくなった、あまりにおいを感じなくなった、または味がしなくなった、味がわかりにくくなった、と相談されることがあります。

 味覚障害の原因は、交通事故等の外傷によるものから、加齢による味蕾の機能低下や唾液分泌の低下、亜鉛不足、ストレス、その他病気によるもの等、様々な点があげられます。他方、嗅覚障害の原因も、交通事故等の外傷によるものから、単なる鼻づまり、加齢、ストレス、その他病気によるもの等、様々です。

 交通事故で鼻や顔面の骨折、脳挫傷等がされていれば、神経や脳がやられている可能性があり、疑われることは少ないですが、そうではない場合、保険会社は高い確率で疑います。

 相談者も整形外科の方の治療費は出してくれるが、味覚・嗅覚の方は治療費を出してくれないこと、後遺障害の申請で、嗅覚障害が認められないこと等で相談に来られることがあります。

 しかし、上記相談をした方々は、大抵の場合時間が経過しすぎたために認められない場合が多くあります。

 味覚・嗅覚障害は他の怪我の場合と同様、交通事故の後に発症した場合には、直ちに医師や保険会社に相談してください。症状を早く明らかにすることはどの怪我の場合でも同じですが、器質的損傷が認められない場合(鼻や口の怪我、脳、神経の損傷がない場合)の味覚・嗅覚障害は特に大切です。整形外科の医師に相談しても、大抵の場合はそのままにせず耳鼻咽喉科を紹介して頂けます。

 なお、味覚障害か嗅覚障害となった場合、双方を患っている場合があります。その場合、味覚、嗅覚それぞれの傷害を併せて治療・検査を耳鼻咽喉科で出来ますので、併せて紹介状を作成して頂くことができます。

 しかし、病院先によっては、治療はできても検査が出来ず、今後の立証に影響が出ることがあります。必要な検査ができる病院も抑える必要があります。  c_n_2 c_n_5続きを読む »

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