交通事故・科学の教科書において定番の、「ビル落下時の衝撃」から説明しましょう。

 自動車が衝突したときの衝撃について、そのスピードから換算すると以下の図のようになります。<『図解 交通資料集』立花書房より >・・いつも、参考にさせて頂いています。

 例えば、時速60km/hで壁に激突した場合、ビル4階(およそ高さ14m)から地面に落下した衝撃と同程度の衝撃となります。高速道路で80kmを超えるような追突だったら、車ごと人間も潰れてしまいそうです。逆に渋滞中、ブレーキから足が離れたクリープ走行で追突された場合、せいぜい10km以下ですから、衝撃はバンパーで十分吸収できます。つまり、大したことない衝撃となるはずです。  

 計算式は以下の通り。時速36km(秒速10m/s)の場合です。40キロに満たなくとも、すごい衝撃となります。

※ 空気抵抗を無視した計算です。考慮すると衝撃は少し下がります。    空気抵抗を加えると文系の私では手に負えない計算式となりますので、大よそはこの計算から衝撃度を想定します。このような計算は、弁護士が裁判で事故の衝撃を立証する際、用いられる科学的根拠=理屈です。加害者側保険会社においても、物損損害でもめた場合(自動車がそんなにひどく壊れたのか?)、アジャスターの損害調査に加えて、科学鑑定を依頼する場面に登場します。

 被害者の医療調査を請け負う私達も、知っておくべき知識です。もっとも、自賠責保険側が考える”衝撃度”の検討は、被害車両の修理額から小破・中破・大破でおおまかに分類、判断していると推測しています。当然、「少破程度の被害から、むち打ちで後遺症になった」としても説得力は下がります。

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 むち打ち・打撲捻挫の類は、骨折などの明らかな人体の破壊がないので、通常、衝撃はそれほどでもない、だから大したケガではないと判断されます。

 相手保険会社は「打撲捻挫など腫れが引けば治るもの」と考え、3ヶ月を超えるような長期通院に理解など示しません。早期の治療費打切りに及ぶでしょう。さらに受傷時の衝撃具合は、後遺障害認定における14級9号の判定に絶大な影響を与えます。「その程度の衝撃で後遺症を残すほどの重傷なの?」・・・当たり前の疑問です。

 このような受傷時の衝撃を説明するものが「受傷機転」です。どのように接触・衝突、事故となったのか、です。バンパー交換程度の軽微な追突、交差点の出会い頭衝突でもバンパーの角がつぶれた程度、二車線道路で割り込み車とフェンダーがこすった程度、これらの衝撃で何日も病院に通うなど、誰がみても大げさにみられるのです。

 ところが、打撲捻挫でも症状が長引く被害者さんも一定数存在します。保険会社の冷たい対応を受けてのご相談を頂きます。ご依頼となれば、症状の証明に奔走、後の後遺障害立証についても全力でフォローすることになります。しかし、受傷機転だけは変えようがありません。私達の努力が及ばない部分なのです。

 かつて、すれ違いざまに対向車とドアミラーがこすっただけの接触事故ながら、頚椎捻挫で数ヶ月通っている被害者さんの相談を受けました。頚部痛のみならず、めまいと頭痛、不眠、肩こり、不安症も重なり、今でも過呼吸で倒れそう・・心療内科へ一直線です。さらに、視力低下、難聴、便秘、生理不順、夫婦仲の悪化や子供の教育問題まで、ほとんど更年期障害の症状はおろか、交通事故による家庭崩壊まで訴えるのです。そして、保険会社の(治療費打切りの)横暴を1時間以上まくしたてます。

 残念ながらいくら熱弁しようにも、受傷機転から訴える症状の信憑性を見出すことはできません。主治医も、もはや面倒な患者に関与せず、医学的な証明など程遠いところに行ってます。せいぜい心因性の関与しか診断できないでしょう。対応できるのは心療内科医か、はたまた心霊治療、悪魔祓いの選択です。保険会社の治療費打切りが至極当然に思えます。  

 連携弁護士も丁寧にお話を伺い、色々と対策を思案します。しかし、事故状況・衝撃から発症したその症状は、あらゆる自然科学、物理法則に逆らうスーパーナチュラル(超自然現象)なのです。治療費の請求など絶対に通りません。常識や科学に反した請求など、ダメなものはダメなのです。  

 大なり小なり、このような相談を何十件、いや何百件も受けてまいりました。当然、お力にはなれません。それでも、数件は真剣に検討したものです。    それは次回に ⇒ 受傷機転について、その衝撃を科学する ② 自動車事故の衝撃度  

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こんにちは、金澤です。

軽微な事故でもムチウチになり、手足の痺れや頭痛、めまいに悩まされている方が多くいます。

『そんな軽微な追突事故で大げさな!!』と言う方もいると思います。

 

実際、賠償金の為に詐病を使う詐欺師も多くいます。

そんな詐欺師は徹底的に排除する必要がありますが、中には事故から2週間後に症状が出始め、立てなくなるほどになる人もいます。

 

それはいったいなぜでしょう?

 

【目次】

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 骨折の後遺障害認定において、癒合後、元通りの形に戻らなかった「変形癒合」とするか、骨の位置がズレた「転位」と見るか、完全にくっつかなかった「癒合不良」か、まったくくっつかない=1本の骨として連続性が失われた「仮関節(偽関節)」とするか・・・    これらの判定は当然、医師が主にレントゲンやCT画像を観て判断するものです。治療を行った医師が臨床上の判断を下す場合、医師によって癒合状態の判断が分かれることがあります。例えば膝関節の「変形癒合」を判断する場合、関節機能としても通常の可動域に回復し、何より生活上問題ない場合、多少の変形があっても、直ちに「変形癒合」と断じないものです。それが微妙な変形であれば、医師の判断に違いがあって当然です。

 一方で、自賠責保険や労災の認定基準は細かく設定されています。長官骨は屈曲変形・回旋変形○度など、数値が設定されています。また、鎖骨や肋骨の場合、「裸体で目立つか?」で評価されます。この場合、人体がおよそ左右対称であることから、左右差なども重要な判定材料です。やはり、臨床上の判断とは同一視できないものです。ここでも、審査側医師の主観による判定が懸念されます。

 このような危惧、医師の主観も含め、臨床上の判断と保険上の基準の隔たりを埋めるべく、私たちは工夫をする毎日です。医師が「秋葉さん、この程度は変形じゃないよ」と言っても、丁寧に保険上の基準を説明して理解を得ます。例えば骨盤骨折の変形癒合の立証に際し、問題なく癒合を果たしたとして・・

1、骨折の癒合部、特に股関節部に骨棘形成(骨が尖ってしまう)はないか

2、骨盤の腸骨に左右のゆがみがないか

3、遊離骨片(骨のかけらが残ったもの)はないか

4、異所性骨化(骨癒合の際に、関係ない部分(筋肉等)に骨が生じる)はないか    ざっと、これらを確認して医師面談に臨み、診断書に癒合状態の記載を促します。加えて申請に際しても、自賠責の顧問医に対して該当画像に注目して頂くべく、変形等が顕著にわかる画像をピックアップして、その画像打出しを添付することがあります。

 申請後、自賠責保険の顧問医はそれらデータを参考にしつつ、提出画像から読影判断します。これはあたかも申請側と審査側の答え合わせの作業に思えます。  

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 膝の後遺障害では、主にひざ下の脛骨の骨折(高原骨折、プラトー骨折と呼ばれる)、ひざ上の大腿骨骨折(大腿骨遠位端骨折、大腿骨顆上骨折など)が多くを占めます。それらは半月板や膝の靱帯の損傷を併発することが多く、膝関節の可動域制限や動揺性といった機能障害を残します。予後の経過よく、リハビリ努力から機能障害を克服したとしても、やはり人体の関節部は精密な構造ですから、何かと不具合が残るものです。

 自賠責や労災では、関節に痛みや不具合が残った場合、神経症状で評価することになります。膝の神経症状を追う場合、まず、画像上明らかであれば12級13号、画像上不明瞭であっても受傷様態や治療過程から、症状の連続性や信憑性が認められれば14級9号となります。この考え方は頚椎捻挫(むち打ち等)と同じです。

 それらの後遺障害の立証計画は画像を観ることからスタートします。そして、審査側が迷うことなく確実に等級認定する為に、周到な準備が望まれます。経験上、膝の後遺障害は立証不足から等級を逃すか薄められる印象です。今日明日、それぞれ、12級と14級を抑えた典型例を紹介します。

膝の後遺障害立証こそ、その事務所の力量を示すと言っても過言ではないと思います  

11級相当:股関節脱臼骨折、脛骨高原骨折(40代男性・埼玉県)

【事案】

通勤でバイク運転中、交差点で左方からの一時停止無視の自動車と衝突したもの。両手首は粉砕骨折し、左股関節の後方脱臼を伴う骨折、さらに左高原骨折・内側側副靱帯損傷も重なり、まともな四肢は右脚のみとなった。長期のリハビリを余儀なくされた。 続きを読む »

 醜状痕の認定では数々のパターンを経験してきました。医師が診断書の該当欄に計測値を記載さえすればで済むものではなく、写真の添付や時には別紙に図示していただくこともあります。それでも、ほとんどのケースで自賠責調査事務所から”実際にキズを見て計測する”ための面接の要請が入ります。もちろん、即座に面接に応じ、連携弁護士が同席して計測を見守るなど万全を期します。

 しかし、全件に面接をしているわけではなく、面接を割愛することがあります。それは以下、4パターンを把握しています。   ① 高齢、重傷で外出不能、車イスなど、被害者さんの健康状態など事情によっては、自賠責側が面接を遠慮してくれる時があります。その場合、写真判定になりますから、角度を変えて数枚撮影するなど写真の充実と、写真からキズの大きさが計測できるようメジャーをあてた写真などの工夫を加えることになります。   ② 下腹部や臀部など、とくに女性の場合は写真もはばかられますので、これは、医師の図示から判定して頂きます。まさか、面接でパンツを下ろせとは言えません。   ③ 明らかに醜状痕の基準に満たないキズの場合。自賠責から念のため面接の打診が入りますが、申請者側から「非該当でいいですから面接はいいです」と断るケースです。   ④ 逆にキズが明らかで、容易に判定できるケース。意外と稀だと思います。本件実績はこれにあたります。    私も何度か面接に立ち会いました

9級16号:顔面線状痕(50代男性・埼玉県)

【事案】

自転車搭乗中、交差点で右折しようとしたところ、自動車が進入し衝突、受傷した。顔面挫創の診断。

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 交通事故で怪我をして、症状固定となり、腰痛が後遺症として残ったとします。    腰が痛いから整骨院で保険を使って通えるか?

 → 不可能です。

 ただし、何かをしていて急に痛みが増した。 その何をしていて痛めたかの具体的な原因があれば使うことは可能です。

 整骨院に来る患者様の中には慢性腰痛の患者様もいらっしゃいます。整骨院で保険適用になるのは、厚生労働省では現在の定義は外傷性が明らかな骨折、脱臼、打撲および捻挫であり、内科的原因による疾患は含まれない」「外傷性とは、関節等の可動域を超えた捻れや外力によって身体の組織が損傷を受けた状態を示すものであり、いずれの負傷も、身体の組織の損傷の状態が慢性に至っていないもの」と、されています。

 つまり慢性の腰痛などは一切保険適用とはなりません。私が以前働いていた整骨院では、自費診療に力を入れている整骨院でしたので、そのような慢性治療は完全自費で治療をしておりました。ですが世の中には慢性腰痛にも保険を適用している整骨院が80%以上だと思います。    その例 ⇒ 柔整師の健全化に僭越ながら提案    確かに、慢性的な痛みがある腰でも、捻る・かがむ等の動作で急激に痛みが強くなった場合はそれは急性の怪我として保険を使用することが出来ます。その治療を的確に行い、一刻も早い治癒を目指すのであれば立派だと思いますが、大体はだらだらと保険を引き延ばし、「次は肩で請求しておきますよ」等と言って、全身治療などと名目をうち、全身マッサージをしてあげているのです。整骨院に通う後期高齢のお年寄りを見ていると、内科に通い、使いもしない薬を大量に処方している医師もどうかと思いますが、柔道整復師業界もこのままでは困ったものだなと思います。

 では、実際に腰痛・慢性腰痛に対して、どのような基準で保険が効くのかを書いていきます。明らかな急性の腰痛であれば文句なしで保険が使えます。代表例としては、ぎっくり腰です。

 ぎっくり腰の中にも種類があり、

・筋肉を傷めたぎっくり腰

・関節を痛めたぎっくり腰

 等いろいろありますが、どちらも割と多いです。

 ただ保険を使えるか使えないかの線引きが難しいのが、慢性的に腰痛があるけれども、急に痛みが増したというパターンです。患者様が明らかに “何かをして痛めた” と訴えてきているのであれば保険は使えます。ただ、「いつも痛いけど“最近特に”○○日前位から特に痛い」と言われ、原因は?と聞いても具体的な原因が明らかではない。そんな場合は怪我としてみなすことが困難なので保険は使いません。(使えません)

 原因を一緒に見つけてあげられるなら〇だと思いますが、原因をでっちあげるのは×です。

 怪我をしているなら具体的な原因があるはずなんです。

・何かをしようと前かがみになってから痛みが増した

・掃除をした後から痛くなった

・朝起きて動き出そうとしたらピリッと痛みが走った

 等の原因がなければそれは慢性的な痛みの一つです。決して保険を使ってはいけません。まず今日はそんなところで!  

慰謝料を増額するためには続きを読む »

 こんにちは、金澤です    今日は交通事故被害に遭われた方にも多い、鎖骨の骨折について記事にしていこうと思います。

 整骨院では、鎖骨に限らず骨折直後に来院してくることは殆どありません。あったとしても、おばあちゃんが「さっき転んでから手が痛いの」 →コーレスじゃないですか!

 おばあちゃんが「朝起きて息したら痛い」 →おばあちゃんは寝返りや咳するだけで肋骨がイってしまう。 等々です。

 肋骨は、整形にいっても何もする事はないですが、一応は整形に送ります。ですので、整骨院に来る方としては、半年前に骨折をして治ったけど、どこどこが痛い。など訴えて来院されます。そして本題の「鎖骨骨折後、せおうことになる痛み」。鎖骨というのは、沢山の筋肉が着きます。 一つの骨につく筋肉の数で言うと上位です。

・三角筋  ・僧帽筋  ・大胸筋  ・胸鎖乳突筋  ・鎖骨下筋

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 「治っていないのだから、まだ治療費を出して下さい!」

 痛みや痺れの症状が残っているのに、相手保険会社から治療費の打切りを切り出されれば、被害者さんはこのように言うはずです。これは当然の被害者感情です。しかし、賠償金で考えると、受傷から半年関治療を続けても症状が残っているのなら、後遺障害14級9号「局部に神経症状を残すもの」の認定を得て、高額となる賠償金を得て解決させるべきです。仮に保険会社が治療費を打ち切っても、その後は健康保険を使って治療を続ければ、自己負担する3割の治療費など高が知れており、後遺障害のお金の方がずっと高額なのです。

 神経症状というものは、通常、受傷からどんどん軽減していくものです。さらに、極端に治療を延ばせば、心因性(心の病で痛いと感じる)、あるいは詐欺(休業損害や慰謝料など賠償金・保険金目当て)に思われるかも知れません。このような被害者さんはおよそ非該当になります。原則、症状がはっきりしている時期までに、後遺障害審査に付すべきなのです。

 つまり、交通事故被害者さんは、解決に向けての損得勘定をする必要があるのです。本件は相手保険会社の打切り後、さらに労災で治療を継続しました。症状は軽減傾向となりましたが、なんとか後遺障害14級9号を得ることができました。結果的に1年以上も治療費を確保した上の認定ですから、結果オーライです。それでも、私達はこのような危ない橋を渡らせることに眉を潜めてしまいます。

巻きの作業でした

併合14級:頚椎・腰椎捻挫(40代女性・静岡県)

【事案】

自動車搭乗中、直進道路で後続車の追突を受ける。直後から頚部痛、腰部痛等の神経症状に悩まされる。

【問題点】

受傷後半年まで保険会社から治療費を出して頂けたが、症状が続いていた。治療費打切り後、本件は労災事故だったらしく、遅れて労災申請、適用し、さらに治療を継続した。その後、労災からも治療費が打ち切られ、この段階で相談の連絡があった。事故から1年以上経過していた。 続きを読む »

佐藤、今日はバッターです。

 日本ハムファイターズの清宮幸太郎選手が怪我したことで一躍有名になった「有鉤骨」ですが、交通事故においては、傷病名として目にすることが少ないと感じています。手根骨の骨折は手関節機能に影響を及ぼしますが、有鉤骨についてはほとんど影響がありません。その為、14級9号を前提に進めていくことが望ましいと考えますが、様々なケースを考えてみましょう。

有鉤骨とは8つの手根骨の一つです 

 まず、有鉤骨とは手根骨と呼ばれる手首の8つの骨のうちの一つであり、薬指・小指の下に存在する骨です。主にスポーツで負傷してしまうことが多いでしょう。野球のバッティングやゴルフ、テニスのスイングで骨折することが多いようです。負傷の原因としては、外力によるものと、蓄積したダメージによるものに分かれます。交通事故は前者ですね。交通事故の場合には、バイクや自転車のグリップによって、転倒した際に地面に手を付いた等、骨折の可能性があります。症状は「腫れ」、「痛み」、「熱」が強くなると言われていますが、具体的には小指の痛みや痺れがひどくなるようです。ひどい場合には、握力低下や小指の可動域にも影響が出るとも言われています。

 治療法としては、他の骨折同様に「保存療法」と「手術」に分かれます。保存療法では、ギプス等で小指までしっかりと固定します。(有鉤骨には「短小指屈筋」と「小指対立筋」という小指を動かす筋肉がくっついているので)一方、手術では、「接合術」と「摘出術」に分かれます。「接合術」は、ネジを使って固定します。しかし、手根骨全般に言えますが有鉤骨は血流が悪い為、癒合がしにくいという点からこの手術はあまり一般的ではないようです。「摘出術」は、骨片を除去します。癒合を待つ必要が無い為、リハビリの開始時期も早めることが可能となります。    有鉤骨骨折により、小指に可動域制限が残存した場合には、13級6号「1手の小指の用を廃したもの」に該当する可能性がありますが、小指対立筋と短小指屈筋の損傷等を明らかにする必要があるでしょう。そうは言っても非常にハードルが高い為、14級9号認定となるケースが多いようです。    

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 最近の病院同行でのことです。膝の靱帯損傷による、動揺性(膝の関節がぐらぐら、階段を降りる際の膝崩れが怖い)について診断書に記載をお願いした際、主治医から計測基準に対する指摘がありました。    自賠責は、膝関節の動揺性の判断にまず画像所見を前提とします。相応の靱帯損傷、靱帯の部分断裂や伸びてしまった状態がなければなりません。装具の硬軟(堅い装具かサポーターのような装具か)なども、程度の判定に加味しているようです。そして、医師が徒手で行うラックマンテストや前方引き出しテストから、ぐらつき具合を、前方・後方・左右で「○cm」と計ります。医師は徒手検査の感触で○cmと判断します。また、ストレスXP画像に線を引いて、関節裂隙(かんせつれつげき・・・ 関節のすき間)を左右(健側・患測)比較して丁寧に計る医師もおりました。  動揺性、それが5mm前後であれば、多くは保存療法を選択します。リハビリでは、大腿四等筋を鍛えて弱くなった靱帯を助け、膝の安定性を確保することが目標となります。また、靱帯の完全断裂、又は1~2cmを越える高度な動揺性を示す場合、このレベルでは歩行に支障をきたすので手術(靱帯の再建術・・・膝蓋腱等から移植することもあります)の判断となります。

 しかし、医師によっては、「○cmとは、膝のどこを軸に計るのか」、「基準が曖昧で記載不可能」との声が上がります。これは実に正しい意見と思います。自賠責や労災では、具体的に等級判断の為の計測法や診断基準を公表しません、以下の表からでは、装具の使用状況のみです。労災は顧問医の診察から判断できますが、自賠責は画像と診断書から推察するのみ、医師に記載に必要なガイドを与えないのです。

 事前に示される基準は以下の通りてす。

 よく言えば「総合判断」、悪く言えば「曖昧」です。したがって、賠償上の判断基準と臨床上の計測・判断が繋がらない、または食い違うことが起きてしまいます。本例もその代表例です。これでは、明確な基準から正確な判断を求める、ある意味真面目な医師は記載に迷うと思います。一方、手で関節を引っ張って、なんとなく「前方1cm」と賠償上の目安に乗って記載して頂ける医師もおります。

 現場では、どちらが正しいか、議論の暇はありません。メディカルコーディネーターはどちらの医師であっても、審査側に明瞭な状態が伝わるよう、診断書の記載を誘う役割に徹します。原則、医師の判断に任せるも、等級基準に合致させる臨機応変な誘導をすることになります。それが、等級を取りこぼすレベルでなければ、医師との衝突は避けるべきです。本件の場合は12級確保が目的で、ストレスXP検査の了解を得たので、細かい数値にはこだわりませんでした。この調整力こそ大事で、単なる知識だけでは務まらないことが多いのです。  

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高次脳機能障害の性格変化については、医師が高次脳機能障害の専門的な知見を持たない限り、非常に見逃されやすい症状と前回述べました。

その理由として、以下の(1)~(3)等があげられます。   (1)かかりつけ医がいない限り、事故後病院に運ばれてからはじめて医師に会うことが多く、事故前の患者の性格を確認できないことが多いこと。   (2)事故後の患者を診て頂いても、現状の性格が事故前と違うのかどうかを確認することは、高次脳機能障害に知見の深い病院や医師でない限りあまりないこと。   (3)高次脳機能障害の患者は、性格変化の症状を自覚することはほぼ無く、患者自ら医師に訴えることはあまりないこと。また、不思議なことに、就労不能レベルではない程度の性格変化の場合、家族の前でしか症状が現れず、医師や近所の方々に会う場合には普通に接することができる患者もいます。よって、患者から医師に対して症状を訴えることはあまり期待できません。 そこで、性格変化の症状を必要になってくるのは、家族、特に同居している家族からの報告です。事故前と事故後の性格の違いを判断でき、さらに、医師や病院関係者、近所等の他人に対しては症状が出ないことがあるため、性格変化の症状を一番認識できるのは家族だけなのです。     高次脳機能障害によって性格が変わってしまった場合、これに対する治療方法は、投薬方法があげられますが、効き目は人によってバラバラです。また、投薬以外にできることはあまりありません。このことから、一部の医師は、性格変化について、日常生活に大きく影響しない場合は重く受け止めて頂けないことがあります。この点、性格変化が加齢等によるものであれば、やむを得ないこともあるかもしれません。

他方で、交通事故の場合ですと、保険会社に治療費を請求するため、あるいは後遺障害申請をするため、診断書に性格変化まとめて頂く必要があります。

しかし、短い診察時間で性格変化は表出しづらく、「臨床上大したことない」「診断書に書く必要がない」等、まじめに取り合ってもらえないことがあります。肝心の医師が高次脳機能障害に対して理解して頂かないと、意味がありません。このような医師にあたってしまった場合、性格変化について立証する手段としては、(1)専門医の紹介状を書いて頂き、専門医の診察を受けること、(2)家族からの「日常生活状況報告」として日常のエピソードと共に性格変化の内容についてまとめてから後遺障害申請をすること、の2点があげられます。

専門医や高次脳機能障害について知見の深い病院であれば、家族から性格が変わったことを報告されると、診断書やカルテにまとめてくれます。また、性格変化で日常に影響が出る場合も専門的なアドバイスももらえますので、保険手続面や後の裁判面だけではなく、今後の日常生活を送る上でも、症状をメモ等にしてまとめておくことをお勧めします。また、医師は診察中忙しく、逐一報告しても聞いて頂けないことが多いこと、本人の目の前で性格が変わったことを報告するのは躊躇いがあることが多く、これらの事情からも、メモにしておけば医師に渡して報告が出来ますので、その方面でもお勧めします。  

なお、弊所では専門医にお連れすることだけではなく、やはり家族からの本人の状態・症状を確認し、かつ、家族には常日頃、気付いた点をメモにまとめるようにアドバイスしています。というのも、上記(1)(2)はいずれも重要であるため、後遺障害申請時に使用する日常生活状況報告をまとめる際に極めて有効な手がかりになるといえるからです。

交通事故に遭われた方はご自身で治療努力することは当たり前のことですが、高次脳機能障害で自分ではどうしようもない状況になってしまった場合、最後に助けてくれるのは信頼できる家族である、と言えます。    

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高次脳機能障害の認定に必要な3要件として、① 事故後の意識障害、② 頭部外傷による脳挫傷等、脳外傷による画像所見があること、③ 事故後の症状、があげられます。

この内、③の要件は、記憶障害や言葉が出てこなくなった等のように一見してわかりやすい症状から、わずかに計算ミスしてしまうことや、少し注意力が落ちた等、注意深く確認しないとわからない症状まであり、様々です。

注意深く観察すれば専門の医師や専門の言語聴覚士の検査中に確認できるものもありますので、弊所では専門の検査ができる病院や専門医がいらっしゃる病院で診察を受けるために、紹介状を主治医に書いて頂いたり、通院先で検査が可能であれば、必要な検査のお願いをしたりすることがあります。

しかし、中には医者でも言語聴覚士でも気づきにくい症状もあります。

その一つとして、性格変化があげられます。

性格変化も内容は様々で、例として、易怒性、易疲労性、飽きっぽくなる(注意障害等)、幼児退行、等があげられます。

易怒性とは、性格が怒りやすくなることです。ひどい場合には、就労不能レベルになりますと、病院関係者まで怒鳴り散らして大暴れします。もっとひどい場合には、他者を殴ってしまうこともあります。   易疲労性とは、少し作業するだけであっという間に疲れ果ててしまうことです。事故前は活発で明るい人が、事故後、とても大人しくなり、外出もしなくなるケースもあります。

飽きっぽくなる(注意障害等)とは、家事や仕事の作業中に、全く別の作業をしてしまうこと等を指します。その結果、すべての作業が中途半端になってしまって、何も終わらなくなることもあります。わかりやすいのは、例えば、ある場所を掃除中に、途中で全く別の場所を掃除し始めてしまい、かえって散らかってしまうようなケースがありました。

幼児退行とは、性格が子供っぽくなったことを指します。成人女性が事故後、周りを気にせず(男性の前であっても)、服を着替えてしまうような羞恥心の欠如のケースや、わがままになって周囲を困らせる場合、面談中に飽きて遊んでしまう場合等、様々です。

上記した症状以外にも性格変化のバリエーションがあります。これら性格変化が事故後生じた場合、高次脳機能障害の症状として、等級認定を検討する必要があります。

しかし、この性格変化については、医師が高次脳機能障害の専門的な知見を持たない限り、非常に見逃されやすい症状といえます。詳しくは次回のブログで述べます。  

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  (4)外分泌機能と内分泌機能の両方に障害が認められる場合

 服することができる労務が相当な程度に制限されると考えられるところから、9級11号が認定されています。   (5)膵臓損傷では、膵臓の切除術が実施されることが一般的ですが、 術後は、腹部にドレーンが挿入され、膵液の漏出に対応しています。

 膵液は、脂肪、蛋白、炭水化物を分解するための消化酵素を含んだ液です。 重症の膵液瘻では、多量の膵液漏出があり、電解質バランスの異常、代謝性アシドーシス、蛋白喪失や局所の皮膚のただれ、びらんが生じ、膵液ドレナージと膵液漏出に伴う体液喪失に対しては、 補液、電解質を供給するなどの治療が必要となります。つまり、このレベルでは、治療が必要であり、症状固定にすることはできません。

 しかし、軽微な膵液瘻で、治療の必要性はないものの、難治性のものが存在しているのです。これが続くと、瘻孔から漏れ出た膵液により、皮膚のただれ、びらんを発症します。 軽度な膵液瘻により、皮膚にただれ、びらんがあり、痛みが生じているときは、局部の神経症状として12級13号、14級9号のいずれかが認定されています。  

※ 代謝性アシドーシス  ヒトが生存していくには、体内の酸性とアルカリ性を、良いバランスに保たなければなりません。 これを、酸塩基平衡と呼ぶのですが、具体的には、ph=水素イオン濃度が7.4の状態です。 酸は、酸性、塩基は、アルカリ性、平衡は、バランスをとることなのです。 pHの数値が7.4以下となると、酸性に傾く=アシドーシス、以上では、アルカリ性に傾く=アルカローシス状態となります。 酸性の物質が体内に増えればアシドーシスとなるのですが、アルカリ性の物質を大量に喪失しても、酸性に傾きます。

 ひどい下痢で、アルカリ性の腸消化液を大量に喪失すると、pHは酸性に傾く、アシドーシス状態となり、 ...

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(3)膵臓の内分泌機能の低下    経口糖負荷検査により判定します。

① 正常型 膵損傷後に障害を残さないものであって、

 空腹時血糖値<110mg/dlかつ75g OGTT 2時間値<140mg/dlであるもの

② 境界型 膵損傷後に軽微な耐糖能異常を残すもの

 空腹時血糖値≧110mg/dlまたは75g OGTT 2時間値≧140mg/dlであって、 糖尿病型に該当しないもの

③ 糖尿病型 膵損傷後に高度な耐糖能異常を残すもの

 空腹時血糖≧126mg/dlまたは75g OGTT 2時間値≧200mg/dlのいずれかの要件を満たすもの。要件を満たすとは、異なる日に行った検査により2回以上確認されたことを要します。

 内分泌機能の障害による後遺障害の認定基準

① 経口糖負荷検査で境界型または糖尿病型と判断されること。

 インスリン投与を必要とする者は除かれています。

② インスリン異常低値を示すこと。

 インスリン異常低値とは、空腹時血漿中のC-ペプチド=CPRが0.5ng/ml以下であるものを言います。

③ 2型糖尿病に該当しないこと。

 上記3つの要件を満たせば、内分泌機能の障害として、11級10号が認定されています。   ○ 経口糖負荷検査

空腹時血糖値および75gOGTTによる判定区分と判定基準 続きを読む »

 後遺障害は(1)切除、(2)部分切除、(3)内分泌機能の低下、と3分します。   (1)膵臓が切除されると、外分泌機能が障害され、低下することが通常とされています。 膵臓の部分切除がなされており、上腹部痛、脂肪便および頻回の下痢など、 外分泌機能の低下に起因する症状が認められるときは、 労務の遂行に相当程度の支障があるものとして11級10号が認定されています。

※ 脂肪便とは、消化されない脂肪が便と一緒にドロドロの状態で排出されるもので、 常食摂取で1日の糞便中、脂肪が6g以上であるものを言います。   (2)膵臓周囲のドレナージが実施されるも、部分切除が行われていないときは、

①  CT、MRI画像で、膵臓の損傷が確認できること、

②  上腹部痛、脂肪便および頻回の下痢など、外分泌機能の低下に起因する症状が認められ、かつ、PFD試験で70%未満または、糞便中キモトリプシン活性で24U/g未満の異常低値を示していること、

 上記の2つの要件を満たしているときは、11級10号が認められています。

 また、他覚的に外分泌機能の低下が認められる場合として、血液検査で血清アミラーゼまたは、血清エラスターゼの異常低値を認めれば、11級10号が認定されています。  

※ PFD試験=膵臓の外分泌機能検査

 膵臓は2つの異なる働きをしており、1つは、食物の消化に必要な消化酵素、炭水化物を分解するアミラーゼ、 蛋白を分解するトリプシン、脂肪を分解するリパーゼなどを含んだ膵液を12指腸に分泌する外分泌機能です。 2つ目の作用は、血糖を下げるインスリンと血糖を上げるグルカゴンを血液中へ分泌して、血糖を調節する内分泌機能です。

 PFDは、膵臓の外分泌機能検査法の1つです。薬剤を服用後、6時間尿を採取する方法ですので、体に負担はかかりません。 膵臓の外分泌機能が低下するような病気で、異常値、低値を示します。 この薬剤は小腸から吸収され、肝で化学変化を受けた後、腎から排泄されます。 したがって、膵外分泌機能の低下以外に、小腸における吸収低下のある場合、 肝機能や腎機能低下のある場合にも、尿中の値は低下します。

 早朝空腹時排尿後に、BT-PABAというPFD試薬500mgを水200mLとともに服用します。開始6時間後の尿を全部集め、尿量を測ります。 採取した尿の一部を使って、尿中PABA濃度を比色測定し、尿中PABA排泄率(%)を計算いたします。正常値は71%以上です。  

※糞便中キモトリプシン活性測定試験

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1、膵臓の働き

 膵臓はおたまじゃくしのような形で、胃の後ろに位置する長さ15cmの臓器で、消化液を分泌する外分泌機能とホルモンを分泌する内分泌機能の2つの機能を有しています。 膵液は、膵管を通して十二指腸内へ送られ、糖質を分解するアミラーゼ、たんぱく質を分解するトリプシン、脂肪を分解するリパーゼなどの消化酵素、核酸の分解酵素を含んでいます。また、膵臓のランゲルハンス島細胞からは、ブドウ糖の代謝に必要なインスリン、グルカゴン、ソマトスタチンなどのホルモンが分泌されています。

 インスリンは、血液中のブドウ糖によりエネルギーを作るのですが、インスリンの不足、働きが弱くなると肝臓・筋肉・脂肪組織などの臓器でブドウ糖の利用や取り込みが低下し、血中のブドウ糖が増えることになり、血液中の血糖値が高くなります。 逆に、血液中の糖が低下すると、グルカゴンが分泌され、肝臓に糖を作らせて血糖値を上昇させます。 インスリンとグルカゴンによって、血液中のブドウ糖の量が一定になるように調節されているのです。 膵臓は、食物を消化し、ホルモンによって糖をエネルギーに変えるという、2つの働きを調節する役割を果たしているのです。

 膵臓は胃の後面の後腹膜腔に位置しており、前方向からの外力では、損傷されにくい臓器です。 損傷を受けたとしても初期に診断することは難しく、膵臓液が腹腔内に漏れて激しい腹痛を訴えるようになってから膵臓損傷が疑われています。 とは言え、日本では、交通事故による膵臓の損傷が増加しています。 バイク、ワンボックスの軽四輪では、ダッシュボードやハンドルなどで腹部を強打することにより、損傷しているのです。 事故直後は、おへその上部に、軽度の痛みを訴えるのみですが、時間の経過で、痛みは強くなり、背部痛、吐き気を訴え、実際に嘔吐することもあります。

 血液検査により、膵臓の酵素の1つ、アミラーゼの血中濃度がチェックされています。 一度正常化した値が、再び上昇するときには、膵臓損傷が疑われます。主膵管損傷を伴う膵臓損傷は、造影CTにより診断されています。 所見が明確でないときは、12時間後に再度、造影CTを行うか、内視鏡的逆行性膵胆管造影が実施され、確定診断がなされています。 主膵管損傷を伴う膵臓損傷に対しては、膵臓摘除術が選択されています。  

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 膵臓損傷を語る前に、膵臓の病気で代表的な膵炎から基礎知識を学びたいと思います。膵臓だけではなく、他臓器の損傷後に発症した患者さんがおりました。(内容はメディックノート様より引用)  

1、膵炎とは?

 膵炎には、急性膵炎と慢性膵炎があり、急性膵炎は何らかの原因でアミラーゼなどの膵臓の酵素が活性化して膵臓の組織にダメージを与える病気のことです。一方、慢性膵炎は長い間、膵臓に小さな炎症が繰り返されたことで徐々に破壊され、膵臓の機能が著しく低下する病気です。

 急性膵炎と慢性膵炎はどちらも男性に多く発症し、発症の原因はほぼ共通していますが、症状や経過は大きく異なります。

2、発症の原因と症状

○ 急性膵炎

 もっとも多い原因はアルコールの多飲によるもので、全体の約40%を占めます。次に多いのは胆石が膵管と胆管の合流部にはまりこんだもので、女性の急性膵炎に多いです。原因不明のものも約20%あります。そのほかには、内視鏡検査や手術などが原因となる医原性のもの、腹部外傷、膵臓や胆道の奇形、高脂血症、感染症などが挙げられます。

 急性腹症のひとつであり、症状は重症度によって大きく異なります。みぞおちから背中にかけての断続的で強い痛みが起こり、吐き気や嘔吐、発熱などの症状が続きます。また、重症になると、腹膜炎を併発し、腸管の運動が麻痺するために高頻度で腸閉塞が起こり、ショック状態となるため、全身状態としては、頻脈や血圧低下、出血傾向、呼吸障害などがみられ、非常に重篤な状態へ移行します。また、膵臓の組織が壊死えしを起こすため、膵臓から遊離した脂肪と血中のカルシウムが結合して低カルシウム血症を呈することがあります。また、慢性膵炎が急激に悪化すると、急性膵炎のような症状が現れることもあります。   ○ 慢性膵炎

 もっとも多い原因は急性膵炎と同じくアルコールの多飲によるもので、男性では70%を占めています。原因不明のものが約20%で、女性の慢性膵炎の約半数は原因不明の特発性とされています。そのほかには、胆石などの胆道系疾患、高脂血症、腹部外傷、奇形など急性膵炎と共通した原因となります。

 症状は発症してからの時間によって異なります。発症してから10年ほどは、主な症状はみぞおちから背中にかけての痛みであり、飲酒や脂肪が多い食事を食べた後にひどくなるのが特徴です。また、発症後10年以降には腹痛は軽減しますが、膵臓の機能が低下し、消化酵素やインスリンなどのホルモンの分泌が次第に減少します。このため、脂肪が消化されず、脂肪便や下痢、体重減少などがみられ、インスリンが正常に分泌されないことで糖尿病を併発します。慢性膵炎はしばしば急激に悪化することがあり、その場合には急性膵炎と同様の症状が現れます。   3、検査・診断

 膵炎の診断にはCT検査が有用です。そのほかにも補助的な診断や全身状態を評価する目的で、血液検査や他の画像検査、消化酵素やホルモンの分泌能を評価する検査などが行われます。

○ 画像検査

 造影剤を用いたCT検査がもっとも有用な検査です。急性膵炎では、膵臓の腫れや周囲の炎症がみられ、慢性膵炎では膵管の拡張や膵石がみられます。腹部超音波検査やMRCP検査なども膵管や膵石の状態を確認することができますが、第一に選択されるのは造影CT検査でしょう。また、もっとも簡便に行えるレントゲン検査では、腸閉塞や膵石を確認することができ、急性腹症の場合には緊急的に消化管穿孔などとの鑑別が行える検査です。   続きを読む »

(1)一側の腎臓を失ったもの

①  一側の腎臓を失い、腎機能が高度低下していると認められるものは、7級5号が認定されます。

 腎機能が高度低下しているとは、糸球体濾過値(GFR)が31~50 ml/分であるものを言います。高度低下は、腎機能の低下が明らかであって、濾過機能の低下により、易疲労性、ホルモンの産生機能の低下により貧血を起こし、動悸、息切れを生じるような状態です。   ②  一側の腎臓を失い、腎機能が中等度低下していると認められるものは、9級11号が認定されます。

 腎機能が中等度低下しているとは、糸球体濾過値(GFR)が51~70 ml/分であるものを言います。中等度は、高度に至らないまでも同様の症状が生じる状態です。また、健常人と腎機能低下の者(血清クレアチニン1.5~2.4mg/dl)を比較すると、 前者に比べ後者は運動耐容能が有意に低く、嫌気性代謝閾値が約4.3METsという報告がなされています。この知見を踏まえると、おおむね高度低下では、やや早く歩くことは構わないが、 早足散歩などは回避すべきと考えられています。   ③  一側の腎臓を失い、腎機能が軽度低下していると認められるものは、11級10号が認定されます。

 腎機能が軽度低下しているとは、糸球体濾過値(GFR)が71~90 ...

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1、実質臓器 腎臓の働き

 腎臓は、腰のやや上部、胃や肝臓の後ろ側に位置する2つが一対の臓器で、主に、血液中の老廃物をろ過し、尿を作る身体の排水処理工場の役目を担っています。 拳よりもやや大きめで、130gの重さがあり、脾臓と同じくソラマメの形をしています。

 腎臓には、心臓から血液が1分間に200ml程度送り込まれます。腎臓に送られた血液は、腎臓の糸球体でろ過され、原尿=尿のもとが作られています。腎臓でろ過される原尿は、1日あたりドラム缶1杯、150lですが、 糸球体でろ過された原尿は膀胱へ尿として貯められるまでに、 尿細管、集合管で必要な電解質やたんぱくなどが再吸収され、水分量の調整も行われています。原尿の99%は体内に再吸収され、最終的には約1.5リットルが尿として体外に排泄されています。 尿を生成する腎臓の部位は、糸球体と尿細管をあわせてネフロンと呼ばれます。1つの腎臓には約100万個のネフロンがあります。

 尿細管は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、重炭酸イオンなどの内、身体に必要なものを取り込み、また、不要なものを尿中へ分泌して排泄しています。これにより、体内のイオンバランスを一定に保ち、血液を弱アルカリ性に保っています。

 腎臓のろ過機能が円滑に働くには、血液の流れが一定に保たれている必要があるのですが、腎臓では血流の流れが悪くなるとそれを感知し、レニンという酵素が分泌されます。レニンが血液中のたんぱく質と反応して血管を収縮させて血圧を上昇させます。腎臓は、レニンの分泌量を増減させて血圧の調整もしているのです。

 腎臓は、エリスロポエチンというホルモンを分泌し、赤血球の数を調整しています。ビタミンDは肝臓で蓄積され、腎臓に移ると活性型に変化し、さまざまな働きをしています。活性型ビタミンDは小腸からのカルシウムの吸収を促進し、利用を高める作用があります。   2、 腎挫傷、腎裂傷、腎破裂、腎茎断裂

 交通事故における腎臓損傷は、それなりの件数が発生しています。バイクの事故で、身体を壁、電柱、立木などに強く打ちつけることで、腎 臓が破裂することもあります。自動車VS自動車の事故では、シートベルトによる損傷も経験しています。

 腎外傷では、あざができる軽度な挫傷から、尿や血液が周辺組織に漏出する裂傷や破裂、腎動脈が切断される腎茎損傷まで、大雑把には1下の4つがあります。

     ①     ②      ③     ④

① 挫傷、打撲、被膜下血腫 ...

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