(4)後遺障害のポイント
 
Ⅰ. 経験則では、医師にオペの自信がなく、保存療法に終始した被害者さんが少なくありません。つまり、膝関節に動揺性が認められ、日常や仕事上に大きな支障が認められる状況です。

 通常歩行に、常時、装具の必要性のある場合は、1関節の用廃で8級7号が認定されます。現在、靭帯再建術の向上から、8級はほとんどみなくなりました。多くは手術の改善により、10級か12級に下がります。
   
Ⅱ. 受傷から時間が経過し、陳旧性損傷となっているときは、手術で改善できる保証がありません。

 半腱様筋腱、薄筋腱、膝蓋腱の中央3分の1を採取して編み込んで移植する再建術では、さらに、8カ月以上の休業が必要となり、仕事のことを考えると、現実的な選択肢となりません。もちろん、損保が古傷化した再建術の治療費を負担することも考えられません。

 用廃のレベルでは、まず症状固定、後遺障害の申請を行います。再建術は、仕事の都合と勤務先の了解を得て、示談解決後に選択することになります。私達が、先に後遺障害を確定させると主張すると、保険金目当てを指摘する方もおりますが、決してそうではなく、これしか選択肢がないのです。正しい理解をお願いします。
 
Ⅲ. 常時、固定装具を装着する必要性のないものは、10級11号が、重激な労働に限って、固定装具の必要性のあるものは、12級7号が認定されます。

 10級も手術レベルですので、改善が見込めます。手術後、なお動揺性が残る場合は12級7号と読み替えても良いと思います。12級レベルの動揺性では、手術を迷う被害者さんが多いようです。
 
 セカンドオピニオンで専門医の見解を得て、ようやく10級の例 👉 12級7号⇒10級11号:前十字靭帯損傷 異議申立(30代男性・埼玉県)
  
 程度に応じて、下表のように定められています。


 
★ 労災の場合は、顧問医の面接がありますので、装具の使用状況が実態通りか? 装具に見合った症状か? 実際に確認できます。一方、自賠責保険は書類審査なので、装具の使用状況は参考程度、必ず画像所見で判断します。画像判定が自賠責の鉄則です。
 
 逆に、画像所見で12級13号を得たが、装具の使用状況から7号に変更させた例 👉 12級13号⇒12級7号:前十字靭帯付着部骨折 異議申立(20代男性・埼玉県)
 
Ⅳ. 後遺障害の立証には、必ず、ストレスXP撮影が必要となります。ストレス撮影で、5mm~10㎜の動揺性が認められれば、12級7号、10~20mmで10級11号、それ以上で8級7号、これらの数字はあくまで経験則による目安です。
 
★ ストレス撮影で動揺が立証されない限り、12級以上の認定はなされないと、承知しておくことです。

 その典型例 👉 非該当⇒12級7号:前十字靭帯損傷 異議申立(10代男性・埼玉県)
 
Ⅴ. 画像所見は微妙、動揺性まで至らないレベルの損傷では、最後は痛みの認定、おなじみの14級9号の余地を残します。

 画像所見でギリ認定の例 👉 14級9号:前十字靭帯損傷(30代男性・神奈川県)
  
 
 実績が示す通り、専門医にたどり着かず、必要な検査を漏らし、担当した弁護士すら有効な手を打てず、結果として低い等級に甘んじているケースが多いようです。ご依頼も、異議申立てがどうしても多くなってしまうのです。
 
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