騒音性難聴(そうおんせいなんちょう)

長時間の連続する音響暴露が有毛細胞を障害します。

 
 音の大きさの目安は以下の通りです。

120dB:ジェット機のエンジン、苦痛の限界、痛覚域、
100dB:電車のガード下
  80dB:騒々しい工場、大声
  60dB:普通の会話
  30dB:ささやき声
    0dB:最小可聴音

 60dB以下が望ましい環境とされ、100dB以上の音の長時間暴露は、難聴の危険性が高まります。
 
(1)病態

 交通事故外傷ではありませんが、労災保険では職業病として、後遺障害の対象となっています。騒音の中に長時間晒されることで、内耳の蝸牛に存在する有毛細胞が損傷を受け、感音性難聴を発症するのです。

 有毛細胞は、損傷すると再生することがなく、治療により難聴が改善することはありません。騒音性難聴は、85dB以上の騒音を1日に8時間以上、通算で10年間聴き続けると難聴が生じることがあると報告されています。
 
(2)症状

 発症の初期では、自覚症のないことが普通で、会社の健康診断における聴力検査で4000Hzの聴力が低下していることを指摘され、初めて、気がつくことになります。進行すると、他の周波数も聞こえにくくなり、難聴を自覚し、耳鳴を伴うこともあります。

 治療で改善は得られませんが、騒音を聞かなくなったときから、難聴が進行することはありません。したがって、騒音性難聴は、なるべく早期に発見、以後はなるべく騒音の曝露に晒されないように、耳栓をするなど、工夫していく必要があります。 騒音性難聴では、大多数で、両耳が同程度の難聴となります。
 
(3)後遺障害のポイント

 騒音性難聴を指摘されて以降は、毎年、耳鼻科で聴力検査を受けておかなければなりません。労働安全衛生法で決められている職場の定期健診では、騒音性難聴を早期に発見する目的で、1000Hzと4000Hzの2つの周波数についての聴こえをチェックしています。

 騒音性難聴の初期では、4000Hz付近の聴力が低下しますが、この時点では自覚症状はありません。しかし、騒音性難聴は早期発見が重要なので、職場の健康診断で異常を指摘されたときには、早期に耳鼻咽喉科を受診しなければなりません。

 騒音性難聴と診断されたときは、必ず、毎年、耳鼻咽喉科を受診して、正式な聴力検査を受けます。騒音性難聴は、労災保険で後遺障害の対象となりますが、判定は離職するときに行われます。離職するときの判定では、年々の聴力の変化が重要視されているのです。したがって、毎年の正式な聴力検査を受けていないと、離職するときに労災の対象となるほどの難聴があったとしても、認定されないことが予想されますので、注意が必要です。
 
  肝心の等級は?(自賠責≒労災、同基準での判定と思います) 👉 ⑤ 難聴 Ⅰ
 
※ 余談ですが、身近なところでは、電車内で音楽を長時間聞いている若者を目にします。電車内の騒音が70dB位であり、気づくと、100dB以上の音量で音楽を聴いていることが殆どです。

 80dB以上の音を長時間連続で聴いていると、難聴が生じやすいと報告されており、電車内で音楽を聴くときは注意が必要です。どうしても、電車内で音楽を聴きたいときは、周りの環境騒音を最小限に防いでくれる、ノイズ・キャンセリング機能がついたイヤホンやヘッドホンを使用することです。これで騒音性難聴となって、通勤災害を主張しても、労災保険は知らん顔ですから・・。
 
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