今日は朝から小田原へ病院同行。昼過ぎ東京に戻り、2件の電話・事故相談に対応。その後、東京駅から千葉の四街道へ医師面談。これは先月、先々月にもあったパターン。何故か西へ東へ往復が続きます。これも東京の真ん中にいるからできる芸当です。  今日の業務日誌は手抜きですが、先月から圧倒的な質量を続けてきたのでお許しを。

2014120110190000 方々の病院にクリスマスツリーが出現。近日、事務所のツリーもUPしますね。  

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     膝の靭帯、ACL(前十字靭帯)とMCL(内側側副靭帯)はペアで痛めやすい部位です。サッカー選手のケガでも1、2を争う好発部位です。交通事故でプラトー(高原)骨折や半月板損傷した場合も、併発の予断を持たねばなりません。しかし軽微な損傷であれば、医師は特別な検査をせずに保存療法とします。したがって、手術をするような高度な損傷、多くは膝が崩れる動揺性が生じますが、それが顕著でなければ痛みや不具合が残ってもそのまま、つまり後遺障害が見逃されます。 hiza6 今日は膝の靭帯の障害について、診断から立証までを3つの段階に整理します。膝の主要4つの靭帯すべてに応用できますが、最近受任が多いMCL損傷を例にとりましょう。     

    ステップ1:MRI

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 血腫の残存は外見上の障害として醜条痕のカテゴリーに入ります。下肢部には大きさによって14級、12級の選択となります。本件のように血腫が消失し、瘢痕も薄れれば、醜状痕の対象にはなりません。しかし、1年以上経っても訴える痛み等から「神経症状の残存」にあてはめて頂いた。このように診断名からややズレた認定もあるのが14級9号の妙味。  もちろん後遺障害審査は画像、検査数値など証拠が重要です。それでもまず”自覚症状ありき”なのです。  

14級9号:太ももの血腫

【事案】

原付バイクで走行中、交差点で左方よりの自動車と出合頭衝突したもの。その際、左太ももを強打した。初期診断名は左膝大腿四頭筋不全断裂。

【問題点】

事故当初から血腫の瘢痕があり、痛み、感覚低下が1年経っても残存した。治療も終了し、完治をみずにそのまま放置状態となり、相談会に参加された。瘢痕もほとんど目立たなくなっていた。

【立証ポイント】

とにかく症状固定し、後遺障害の審査に進めねばならない。治療終了から10か月後となるが病院に同行し、MRIの再検査を行った。結果、「血腫の消失」が診断された。側副靭帯損傷を観察するマクマーレーテストも陰性。諦めムードでの申請だったが、”推測サンキュー14級”が認定された。受傷時の筋断裂と血腫が評価されたことに加え、血腫は消えてしまったが、自覚症状を神経症状として評価、つまり、痛み、感覚低下の残存を信じて頂いたよう。

本件は弊事務所ルーキーの山本が初めて単独担当した案件。決して諦めず、心を込めた立証作業から誠心が調査事務所に伝わったのだと思う。後遺障害の立証作業にビギナーズラックはない。訴えに真実があるのみ。

   今後も14級9号の味な認定例を取り上げていきたいと思います。  

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pics378 多くの中高年の悩み、それは四十肩・五十肩です。私も最近、右肩が痛いときがあります。老化現象なので根治法はないと言っても過言ではなく、手術は稀、ひどい痛みはステロイド、軽いのは最近はやりのヒアルロン酸を注射です。

 正式な傷病名は「肩関節周囲炎」です。肩の周辺組織が老化したため、肩関節の動きをよくする袋である肩峰下滑液包(けんぽうかかつえきほう)、または関節を包む関節包内、特に肩腱板疎部(棘上筋と肩甲下筋の隙間)に炎症が起こります。また肩の靭帯が上腕骨頭付くところである肩腱板、もしくは腕の筋肉が肩甲骨に付くところ上腕二頭筋長頭腱なども、老化によりささくれだってくると肩の動きに引っ掛かりが生じ、炎症を起こします。 20141127_2続きを読む »

 整形外科医は痛みを訴える部位に対し、必ずXP(レントゲン)を撮ります。骨折を見逃すことは、二次的に重大な病変を引き起こし、医療過誤の問題に発展する可能性があるからです。しかし、残念ながら医師でも見落とすことがあります。私は医師の見逃した骨折を発見したことが過去4回ほどあります。これは私の読影力を自慢しているのではありません。多忙な医師は軽傷(と見える)患者のXPを長々と診ている時間がありませんが、逆に私は「骨折はないかね~後遺障害はないかね~」と常に血眼になって画像とにらめっこだからです。

 本例は医師が「踵骨骨折」と診断し、それに私も調査事務所も振り回された案件です。その顛末を。

 

14級9号:骨折はあったのか?

【事案】

T字路で自動車停車中、右方より自動車が左折してきたため正面衝突した。その際、ペダルに掛けていた右足を骨折した。

【問題点】

骨折の診断だが、私から見ても骨折部が見当たらない。骨挫傷レベルも皆無。自覚症状も踵に体重をかけると痛む程度。

【立証ポイント】

CT検査も検討したが、骨折がないという「逆証明」をしてしまうようで怖い。また、MRIを撮れば内部に骨傷を発見できるかもしれない。でも、それならただ事じゃない痛みとなるはず。もやもやっとしたまま主治医の診断名と、残存する症状を丁寧に説明した診断書で申請をかけた。案の定、調査事務所の方から「骨折はどこ?」の問い合わせがきた。そこで、主治医に再度、レントゲンに骨折箇所をペンで記載(〇印)頂き、追加提出する。そして調査事務所の方と電話で、「まぁ、よくわからないけど14級をお願いできないかな?」と談判し、「しょうがないですね・・」と認定。 残存する症状にウソがなければ、推測で認めてくれるのが14級9号。でも、むち打ちではこのような談判は通用しませんよ。

   私は骨折があったとは思っていません。それでも医師が診断し、本人がそれなりに痛みを抱えているのですから・・  

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 14級9号は頚椎捻挫、腰痛捻挫が多くを占めています。しかし、むち打ちに限らず他の部位でも多くの認定実績をもっています。中途半端な損傷?、癒合状態が良い骨折後の不具合?、痛みがずっと続いている?・・このような医学的に証明されたとまでは言えない症状でも、訴えにウソがなければ調査事務所は認定してくれます。画像所見や検査数値が微妙でも、丁寧な申請で訴えの信ぴょう性を向上させることが私達の仕事です。逆に言えば調査事務所は本当に良く見てくれています。感謝すること度々です。

 では、そのような”推定サンキュー14級”を列挙してみましょう。おなじみ「実績一覧」へも同時にUPします。  

14級9号:かかとの裂傷

【事案】

バイクで直進中、交差点で対抗右折自動車と衝突、転倒したもの。その際、右足中指の末節骨の開放骨折と踵(かかと)にざっくりと裂傷を負う。

【問題点】

末節骨の癒合経過は良かったが、踵の裂傷は抜糸まで時間がかかった。そもそも末節骨骨折も裂傷も後遺障害等級の対象から遠い。しかし、踵については痛み、しびれ、無感覚などの自覚症状が受傷6か月経っても治らなかった。

【立証ポイント】

幸い早くから受任していたので、適時、写真を残し、残存する症状を丁寧に説明した別紙を添えて申請することができた。医師にも無駄とわかっていながら診断書に線条痕の計測、神経症状(チネルサイン:陽性)の記載を促した。 結果、痛み、しびれ等の窮状を汲んでいただき14級9号の認定となった。

 中指の末節骨に骨折があったものの、普通、切り傷は治るもので後遺障害とはなりません。しかし、例外的にひどい裂傷は対象にしてくれるのです。器質的損傷がない、もしくは明らかではないけど14級・・を数例続けます。   

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搭乗者傷害保険の合流

 シリーズのおまけに搭乗者傷害保険の合流に触れます。これは約款を確認するまでもなく、証券で一目瞭然です。(↓ クリック) 26.7証券 kai3

 このように搭乗者傷害保険が人身傷害特約に組み込まれました。しかし、2年前に無保険車傷害特約が組み込まれた時のように、支払い基準の問題は生じません。搭乗者傷害保険は「1日通院5000円」(日額払い)や「捻挫が1部位で50000円」(部位症状別払い)と最初から明確に金額が約束された「傷害保険」だからです。今回も約款上、人身傷害の特約として、傷害(入通院)と死亡・後遺障害について、それぞれ約款で支払い額が明記されています。そして人身傷害に重ねて付保するか否か、選択可能な特約となっています。 続きを読む »

 編集後記ではないですが・・毎日更新のはずのブログが数日停滞してしまいました。一回に平均2時間かかりましたので無理もないのです。まるで本一冊書き終えた気分です。  しかし、このシリーズに入ってからホームページのアクセス数が落ちました(ガーン!)。この問題に直面していない被害者さんにとって、引いてしまう内容だったのでしょう。まったく営業的には失策です。昔から要領の悪い人間と言われていますが、気質は治りませんね。しかし、損得勘定抜きにどうしてもまとめておきたかったテーマだったのです。保険金請求の現場から異論を上げたかった。できるだけ易しく解説したかった。昨年の研修会で取り上げた内容が不十分だったので、ようやく宿題を果たしたと思います。

 保険約款に没頭していたら、あっという間に12月!(数日遅れてUPしていますので)。この2か月、ブログの記事出しだけではなく、日常業務の病院同行、文章作成に追われまくりました。へとへとに疲れていますが、お正月までラストスパートです!

2014112611340000

 今週も、山梨、長野と遠征が続きました。 写真は雨に霞む石和温泉。  

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【事案】

高速道路を走行中、後ろからトラックにひっかけられ、スピンしたところ後続車に追突される。

【問題点】

保険会社からは後遺障害など残ってないので申請しても無駄と言われ、主治医からも後遺障害診断書は書かないと言われたため、後遺障害の申請をあきらめ、固定後数ヵ月が経過。提示された損害賠償額が妥当かどうかの相談に見える。

【立証のポイント】

診断書などの資料や自覚症状から、申請すれば認定の可能性があると判断。さっそく後遺障害診断書作成拒否の主治医に面談。丁寧に説明し、後遺障害診断書を書いていただくことに成功。何とか14級9号の認定を得る。     (平成26年2月)

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c_y_1 長いシリーズで語ってきたように、人身傷害は完成された保険とは言い難く、発売以来、約款をこまめに修正してきたものです。今後も裁判の判例を受けて改正される可能性があります。また、各社が独自色を強めて補償内容のオプションを増やすことも予想されます。

 それでも今夏~秋の約款改定で、訴訟基準と人傷基準の運用区別が定まったように思います。「裁判をすれば裁判基準で保険金を算定します。訴外交渉、斡旋、調停で決まった金額ならば、それが赤い本・青い本などで計算された金額であってもそれは採用せず、人傷基準で算定、支払い金額を決めます」・・これが保険会社のスタンダードな見解となるようです。これにて約款の整合性は高まったかもしれません。

 しかし、

 日本では交通事故で裁判をすることは稀で、損保会社の統計を見ると、交通事故の96%が訴外交渉による解決なのです。裁判をしなければ裁判基準の恩恵に預かれないことは道理として、被害者が裁判外で相当の金額を勝ち取るためには艱難辛苦を避けて通れません。それは直接交渉に限らず、紛争センターの斡旋や調停において、自らの時間とエネルギーを犠牲にして臨むこともあるでしょう。もしくは弁護士を利用すれば軍資金の出費が伴います。そのような苦労や犠牲、出費を避ければ、保険会社の計算する賠償金で納得しなければならい構造です。  それが被害者と加害者(側保険会社)の交渉による結果であれば、お互いが納得したこと、つまり民事上、何ら問題はありません。しかし、「安心の実額補償」「夢の全額保障」と謳われ、自ら掛金を払って加入した保険の場合はいかがでしょう。相手との交渉で納得のいく金額を勝ち取ろうとも、いざ過失分の請求では、自分が加入していた保険の基準に縛られる・・これは決して筋の通った話ではないと思います。また、それを回避するために、わざわざ人傷へ先に請求する、裁判を強行する、保険会社に約款を曲げて支払いさせる・・実に気持ち悪い。  自己の損害を補てんすべき保険金が、裁判基準か保険会社基準のどちらに成るのか?ダブルスタンダードの問題は、もはや「対相手保険会社」だけではなく、「対自分の加入している保険」となってしまったのです。

 やはり、保険商品は契約者にとって納得感があるもの、公平性のあるもの、でなければならないと思います。個人的には約款『保険金の決定』に(2)の規定を加えることで、約款に遊びを持たせ、契約者・人傷社間の公平性をキープすべきと思います。これが理想の約款です。↓  

第6条 損害額の決定 (理想)

(1)損害の総額は当社の基準で算定します。

(2)相手からの回収金、もしくは相手との交渉で決まった総損額が(1)の金額を上回る場合、弊社と相談の上、(1)の規定に関わらず、その金額を総損害額とみなします。  ただし、自損事故の場合、相手からの回収金がない場合は、この限りではない。

(3)裁判での判決や和解の場合、(1)(2)の規定に関わらず、その金額を総損害額とみなします。    これであれば、難しいこと抜きに「契約者の権利を害さない=損害の全額回収」が果たせます。まさに「夢の全額補償」の達成です。これは私の考えたオリジナルのアイデアではありません。かつて無保険車傷害特約:支払い保険金の算定の条項で書かれていたことです。無保険車傷害保険の支払い保険金を決定するにあたっては、(1)当社の基準 ⇒(2)契約者と話し合い ⇒(3)裁判の結果、保険金はこの3段階の算定方法で規定されていたのです。最新の約款から(2)”話合い”が無くなってしまったのはいかにも寂しい限りですが・・。

 (2)の後段、但し書きは「自分で事故ったら人傷基準でね」という意味です。人身傷害に助けてもらう立場としては、「自爆事故のケガも裁判基準でちょうだい!」はさすがに図々しいと思いました。 続きを読む »

 このシリーズ、ようやく核心にたどり着きましたが、もう少しお付き合い下さい。

 前回のように、保険会社は自ら人身傷害の約款を破った支払い運用をする時があります。人身傷害は発売以来「あらかじめ保険会社が支払い金額を決めた傷害保険」としていますが、この建前はぐらつくことがあるのです。

 最近の例でも・・自転車搭乗中、自動車にひき逃げにあった被害者さんの例

 この被害者さんはS〇Iさんの自動車保険に加入していました。その人身傷害から治療費、休業損害が支払われたので大助かりです。さらに腰椎捻挫で12級の後遺障害となったので、その慰謝料・逸失利益を請求しましたが、提示された保険金が少なく不満でした。そこで、連携弁護士に依頼、保険会社に請求したところ、ほぼ赤い本の金額を払ってきました。無保険車傷害保険からならまだしも、人身傷害から(人身傷害基準で支払うといった)約款を無視して大盤振る舞いです。(この担当者さん、大丈夫かぁ?)このようなことがたまにおきます。   c_s_seikyu_12 だから、前回の裁判基準をゲットするための策(3)「駄々っ子作戦」を推奨するのです。もちろん、「絶対に自社基準でしか払いません!」と対応され、まったく折れない担当者もおります。しかし、物わかりのよい優等生ではだめです。保険金請求、時には「気合」が必要です。

   約款の支払い基準を強硬しない、約款もちょこちょこ修正する・・どうして人身傷害はこのように支払いが曖昧なのでしょうか?それはアメリカ生まれの輸入品を日本向けに加工した、人身傷害の誕生に遡ります。原因を分析してみましょう。  

Born in the USA

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 裁判で解決すれば裁判基準、交渉で解決では人傷基準、約款通りこれをスタンダードとされるわけにいきません。いくら約款で定めても、おかしいものはおかしいのです!3策目は駄々をこねると保険会社が折れる、言わば「駄々っ子作戦」です。この例から約款が絶対でないことを感じ取って下さい。  

3、過失分を裁判基準でくれなければ保険金請求訴訟するぞ!

 これも良く使う手です。加害者側(賠償社)に賠償先行し、交渉で解決させました。続いて過失分(200万円とします)を人傷社に請求した時、人傷社から「弊社の算定基準では100万円です」と約款を示した回答がきます。この約款を素直に受け入れてしまう弁護士が多いのです。しかし、約款を盾に主張する人傷社のyakuza担当者に、「うるせぇ、約款がおかしいんだよ!200万くれないと保険金請求訴訟するぞ、法廷で決着付けようや!」、このようなヤクザ口調はいけませんが、優等生のように納得するのではなく、約款無視 上等、強硬に裁判基準での差額を請求します。この結果、多くのケースで人傷社は「上席と相談した結果、今回は特別に契約者保護の為に200万円支払います」となるのです。もちろん、平成24年6月「人傷基準差額説」判例(過失分は人傷社の基準で払っていいよ)を持ち出し、人傷社が本気で争ってくる懸念があります。しかし私の知る限り、人傷社は自社の約款を曲げても、折れて支払ってくるのです。その額が数十万から2、3百万程度であれば、保険会社センター長の鶴の一声で払ってしまうのでしょう。やはり「裁判から逃げている」のではないかと思います。sanma保険会社はいくら約款で規定しようと、ある種の後ろめたさを持っているのかもしれません。続きを読む »

 損額の全額を訴訟基準で得るために弁護先生がとっている3策を続けましょう。

20090608  

2、訴訟するしかない

 以下、3パターンで痛い目にあったことがある弁護士さんがとる方法です。最初から依頼者(被害者)に過失が見込まれるなら、損害の全額を訴訟基準で確保するために訴訟をするしかない、という結論になります。   

zonbi-jinshou続きを読む »

 少し間が空いてしまいました。このシリーズは一回一回とてもエネルギーを使います。できれば主要損保会社10年間の約款をすべて確認したいのですが、それをやったら半年かかってしまいます。とりあえず損Jを中心に、東海他数社を確認しながら進めています。不正確な記述あれば、後戻りしてちょこちょこ修正していこうと思います。

 さて、昨日まで主要な問題点を明らかにしました。現在、連携している弁護士の先生方がこの状況でどう対処しているかを紹介します。題して「訴訟基準をゲットするための3策」。  

1、人傷先行

 「差額説」判決の根拠となった、代位(求償)の規定、「被保険者または保険金請求権者の権利を害さない範囲内で」を生かし、先に人身傷害にせっせと請求します。とくに高額となる後遺障害の慰謝料と逸失利益を事故相手(賠償社)に請求する前に、人身傷害から確保します。まずは人傷基準とはいえ、自身の過失関係なしで100%を得ることができます。自身の過失が大きければ大きいほど威力を発揮します。

 そして、次に相手側に賠償請求します。それが裁判となれば当然、交渉や斡旋機関で解決しようとも賠償金を得て、その内から先に人身傷害特約で得た分を返します。その際、「契約者の権利を害さない範囲で」返せばいいので、以下のように訴訟基準の損害全額1000万円を確保し、それを超える300万円を人傷社に返せば済むことになります。

保険会社 加護 人傷先行続きを読む »

 またしても人身傷害・約款の壁で、矢口さんは全額の補償が得られません。    損保ジャパンでは既に平成21年から、第8条『保険金の計算(3もしくは後段)』でこの規定(以下6条(3))を盛り込んでいました。損保ジャパンは人傷先行後の求償について、裁判となった場合限定で「訴訟基準」で払う事を早くから規定していたようです。  そして、26年7月改定ではこの規定を第8条『保険金の計算』から第6条『損害額の決定(3)』に移転させました。この条項移転によってより積極的に、賠償先行+訴外解決の場合は「人傷基準差額説」と規定したことになります。  また、この条項移転を好意的にとらえれば、「賠償先行でも裁判で決定した総額なら、差額は訴訟基準で払います」となります。

 こうして「人傷基準差額説」vs「訴訟基準差額説」の回答、つまり、人傷先行か賠償先行かで支払い保険金に差がでる問題について、「それは請求の前後ではなく、あくまで裁判するか否か次第」としました。ようやく保険会社からの(少なくとも損保ジャパンからの)見解・解決が提示されたと言えます。    このシリーズ、約款の不備を指摘したかったのですが、逆に保険会社の(約款の)周到さに感心させられました。まるで保険会社の掌にあった孫悟空の気分です。   

第6条 支払い保険金の決定(3)

 わかり易いように略=( )を加えています  (総損害額は当社の基準で計算しますが)それにかかわらず、賠償義務者があり、かつ、賠償義務者が負担すべき法律上の損害賠償責任の額を決定するにあたって、判決または裁判上の和解において、(当社の)規定により決定される損害額を超える損害額が認められた場合に限り、賠償義務者が負担すべき法律上の損害賠償責任の額を決定するにあたって認められた損害額をこの特約における損害額とみなします。  ただし、その基準が社会通念上妥当であると認められる場合に限ります。  

 これは「TUG損保と後藤弁護士間で裁判になった場合に限って、その総損害額を認めます。」と解します。つまり逆を言えば、総損害額の決定は裁判での和解・判決を除き、人傷社(加護火災)の算定基準で計算することになります。本件はTUG損保と後藤弁護士の交渉による総損害額なので、加護火災はあくまで自社基準でしか払えないと言うのです。しかし、この交渉でまとまった金額は「赤い本」基準で計算された裁判基準の額です。「たら、れば」ですが、裁判をやればほぼ同じ賠償額が予想されます。そもそも「訴訟基準差額説」の「訴訟基準」とは形式(実際に裁判をやった結果)なのか、実質(赤い本等で計算された額)なのか議論があるところですが、少なくとも約款では「形式である」ときっぱり明言しています。  

 ・・保険会社がいくら約款を明確化しても、やはり納得がいきません。後藤弁護士は交渉ながら裁判基準を勝ち取った素晴らしい成果をあげたにもかかわらず、裁判で決まった額ではないが故に、人身傷害の全額補償が受けられない。こんな理不尽が交通事故賠償の現場では多発しているのです。私はこれが人身傷害における最多発の矛盾問題、人傷基準ハザードと思っています。    zonbi-jinshou  続きを読む »

 人身傷害特約は「安心の実額補償」「夢の全額補償」との宣伝で輸入された保険自由化の目玉商品です。

 「実額補償」とは、契約時に決められた死亡で1000万円、入院1日10000円、の定額ではなく、実際の治療費や休業補償、逸失利益や慰謝料の相当額が計算されて払われることです。「全額補償」とは自分に過失があって、相手から全額の補償が受けられなくても、差し引かれた過失分を人身傷害が払ってくれることです。そりゃ、代理店時代に初めてこの保険の説明を聞いた時は「いい保険が出たものだなぁ~」と感じ入っていました。

 しかし、「実額」とは言ってもあくまで保険会社の基準で計算されること、そしてそれは裁判などで用いられる基準に比べて著しく低いことが、後に様々な問題・矛盾をもたらしました。その結果、宣伝とは異なり「全額」の補償が受けられないことが起きるのです。

 いよいよシリーズも最終局面に突入です。矢口さん&後藤弁護士と加護火災、最後のバトルです。(何度も言いますが、登場する個人・組織名は架空です)  

人身傷害特約は自分の過失分も出る保険なのに何故?

     矢口さんは自動車で走行中、交差点で出合頭の衝突事故でケガをしました。腕を骨折し、半年後、後遺障害12級の認定を受けました。そして弁護士の後藤先生に交渉を依頼しました。20140507benngosi

 後藤弁護士は「赤い本」で計算した損害額を請求、TUG損保と交渉しました。結果、TUGは請求額のほぼ全額を飲みました。過失割合については判例通り矢口さん20:相手80です。TUGは後藤先生と裁判をやっても結果は変わらないと踏んだのでしょう。TUG損保は800万円の賠償金の支払に合意しました。

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 裁判官は「人身傷害は傷害保険」、こう定義してしまったね・・。そんな簡単な結論ではないからこのシリーズが10回を超えているのですが・・。

 また、裁判官は「平成10年以降、保険の自由化により各社約款が多様化しているのだから、算定基準もいろいろ・・裁判基準に拘束される筋のものではない」と言うけれど、それはまったくの建前論です。現在、どの会社も十把一絡げに同じだった対人賠償基準の旧約款を人身傷害の算定基準に流用しています。各社、その支払い金額の計算に大差はありません。大差があるのは、いわゆる「赤い本」などの裁判基準と比べてなのです。問題の本質は(各社、大差ない)保険会社基準と(絶大な差がある)裁判基準のダブルスタンダードです。そして、人身傷害は支払い金額を「契約前に保険金を約束した傷害保険」なのか、それとも「損害の実額を支払う、つぐないの保険」なのか? これが人身傷害誕生以来負ってきた、宿命的テーマのはずです。何か履き違えている印象が拭えません。

c_y_98   判旨の通り、確かに保険会社は約款に書かれていることを守ればよいでしょう。まったくの正論です。しかし、裁判官は正論ながら現実とかけ離れた解釈を示しています。  まず、被害者(ここでは保険契約者)が※賠償先行か人傷先行かの損得を簡単に判断できるわけないですよね。

※人傷先行=先に人身傷害保険を受取り、次に裁判で賠償金を請求  賠償先行=先に裁判で賠償金を取り、次に自身の過失分を人身傷害保険に請求

 裁判官の言う「選択の自由」は大抵、保険会社有利に運ばれるのが現実です。金融庁の監督下だからと言って、馬鹿正直に損保が「人傷先行が得です」と契約者にアドバイスなどしません。逆に表立って契約者が不利になるような発言・誘導もしません。では、人傷先行か賠償先行か、選択の場面となったら人傷社の担当者はどうするでしょうか?まず、静観を決め込みます。なぜなら過失割合が契約者20:相手80のような事故であれば、通常、相手の保険会社が一括対応(治療費や休業損害の支払い)をしています。そして治療終了後、何の疑いもなくそのまま賠償交渉に進むのが普通だからです。  保険会社は裁判官が期待するような、優しくお人好しの組織ではないのです。営利を求める一民間企業が数百万円~数千万円の支払いが増える方法を親切に教えてくれるわけないでしょ?そんな担当者は人事異動で地方の子会社に飛ばされます。それが民間企業の限界、保険会社を責めることはできません。・・判旨は無垢で純真な理想郷を前提としたものです。

 さらに、「人傷先行が大多数じゃね?」の判旨。自身の過失が50%を超えるような事故なら、相手保険会社は賠償の対応をしてくれないことが多いので、その場合は人身傷害を先に請求することになるでしょう。しかし本件のように自身の過失が5~30%程度でも、先に人身傷害を請求するのが大多数か?・・そんなわけないでしょう。裁判官は「発売以来 普及が進んだこと、求償の裁判がやたら多いこと」から単なる推測で「みんな先に人身傷害に請求している」と思ったようです。しかし、事実はこのシリーズを読めば解る通り、求償に関する裁判は人身傷害の約款に問題があるからで、決して人身傷害への先行請求が大多数となったわけではないです。

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 平成24年6月7日高裁で「人傷基準差額説」判決が出ました。先に賠償金をもらって、差し引かれた自分の過失分を後で自身契約の人身傷害特約に請求した場合、その計算は「訴訟基準」の総額か、「人傷基準」の総額かの判断が下されました。

 わかり易くするために、例によって矢口さんと加護火災に登場してもらいましょう。  

「人傷基準差額説」だと以下の通り、全額はもらえません

  両会社 ⇒賠償過失 人傷差額説続きを読む »

 自動車保険料率の自由化以降は、各社の約款に違いがあって当然です。しかし、この人身傷害の支払い基準の差について、保険契約の際に契約者が理解・選択することはほぼ不可能と思います。パンフレットからは到底読み取れない補償の差があることは、やはり消費者保護の観点から望ましいことではありません。

 「差額説」vs「絶対説」の裁判が続く中、平成23年6月、北海道の消費者団体がこの問題について、「訴訟基準差額説」or「人傷基準差額説」のどちらで支払うのか損保各社に質問状を送りました。回答は以下の通りです(簡略化しました)。「絶対説」が退けられることは、各社、覚悟していたと思いますが、「訴訟基準」か「人傷基準」かは不明確で、これを約款に反映させる過渡期にこの質問・回答を行いました。人身傷害約款の不整備、もしくは改定中の損保に対し、会社の見解・方針を聞き出す画期的な活動だったと思います。

※特定非営利活動法人  消費者支援ネット北海道様から、引用・掲載のご許可を頂きました。  

 

会社名

賠償義務者への 訴訟が先行した場合

人身傷害保険の 支払が先行した場合

改訂時期

回答

回答

あいニッセ同和

H22.10.1

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 またしても学説の対立です。人身傷害を先に請求し、後に賠償金を受け取る場合の求償のルールについては「差額説」で決着しました。しかし、先に賠償金を取得した後から人身傷害を請求した場合、以下、どちらの基準かによって損得が生じてしまうのです。    自社基準の損害総額から矢口さんの過失分(人身傷害保険金)の算定をすることを「人傷基準差額説」と呼びます。相手との裁判で決まった賠償金総額を認め、その額から矢口さんの過失分(人身傷害保険金)を算定するのが「訴訟基準差額説」です。  

訴訟基準差額説

 両会社続きを読む »

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