(4)後遺障害のポイント

 交通事故外傷では、癒合で完治と断定することはできません。成長の著しい幼児~10代は、爆発的に骨組織が伸長するので、容易に癒合します。しかし、その後、骨折しなかった方の足と比べ、転位や骨成長の左右差、軟骨の不具合による関節裂隙の左右差などが残存することがあります。これが、骨短縮、可動域制限、疼痛などにつながれば後遺障害の対象となります。    解説 👉 骨端線損傷と成長線骨折   Ⅰ.

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腓骨遠位端損傷・骨端線損傷(ひこつえんいたんそんしょう・こったんせんそんしょう)  

  (1)病態

 成長期の子ども、(女子では15歳、男子では17歳頃まで)に特有な骨折です。足関節の脛骨および腓骨の遠位端には成長軟骨層があり、骨端核を中心に成長していきます。骨端線損傷は、骨の骨端線部分およびその周囲に起こる骨折のことです。

 ここでは、腓骨の遠位端・骨端線損傷を中心に解説します。

 成長期では、どんどん骨組織が発達します。下腿骨の脛骨と腓骨が、どんどん伸びていくのです。この時期に、足の捻挫などにより骨端線、成長軟骨部分を損傷することがあります。足関節を構成する脛骨および腓骨の遠位端には成長軟骨層があり、骨端核を中心として、成長と共に成人の骨へと変化していくのですが、骨端部分が成人に近い状態にまで完成されても、脛骨と腓骨の成長が終了するまでは、骨幹と骨端の間に骨端線が残っています。

 骨端線部分は完成された骨よりも当然に、強度が弱く、外力による影響を受けやすい部分であることから、強い外力の働いた捻挫や衝撃で骨端線損傷を起こしやすいのです。損傷の程度が軽いものでは、XP検査でも分かりにくく、捻挫と診断されるようなものから、骨端線からきれいにスライスしたように骨折している重傷例まで、いくつかの種類に分かれます。   ◆ 骨端線損傷のパターン

① 脛骨の骨端線を横断するように骨端線が離開したもの続きを読む »

浅腓骨神経麻痺(せんひこつしんけいまひ)

 軽い内返し捻挫をイメージしてイラストを作成しています。   (1)病態

 膝窩部で坐骨神経から枝分かれした総腓骨神経は、腓骨々頭の後ろから前側に回り込むように走行し、膝下部、深腓骨神経と浅腓骨神経に分岐して腓骨に寄り添って足趾まで下降しています。

 下腿を走行、下降してきた浅腓骨神経は、足関節の手前で、中間足背神経と、内側足背神経に分岐し、足趾に到達、足の甲から足指の上側の感覚を支配しています。

 上のイラストですが、上の青○印の部分で、浅腓骨神経が圧迫されることが多いのです。下の青○印は、足首を内返しに捻挫したときに、距骨の角が隆起して浅腓骨神経を下から押し上げ、伸びてしまうことがあります。   (2)症状

 いずれも、足の甲の先部分にしびれと痛みを発症します。   (3)治療

 浅腓骨神経麻痺は、足の甲部周辺の感覚を支配する神経であり、この神経に麻痺が生じても、足関節や足趾の自動運動が不能になること、筋萎縮することもありません。

 青○印の2つのポイントを圧迫しないようにすれば、程なく改善するもので、交通事故であっても、後遺障害の対象ではありません。   (4)後遺障害のポイント   Ⅰ.

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深腓骨神経麻痺=前足根管症候群(しんひこつしんけいまひ)

    (1)病態

 イラストのピンク色の線が深腓骨神経で、赤色で表示された部分の感覚を支配しています。青色の部分は、下伸筋支帯といい、筋膜が変性してできた腱で、ちょうど足首を回り込むようにして存在し、トンネルのような形状で足の背部を通る4つの筋肉を足根骨に押しつける役割を果たしているのですが、深腓骨神経はこの下を通り抜けて出てくるのです。

 サンダルのストラップによる圧迫、ジョギングシューズの紐の締め付けなどの繰り返しで、前足根管症候群を発症すると考えられています。足の下伸筋支帯の圧迫により生じる深腓骨神経麻痺は、前足根管症候群と診断されています。

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(4)後遺障害のポイント   ◆ 腓骨神経麻痺の経験は、交通事故110番宮尾氏が医療調査員時代、1999年5月から1年間、治療先に複数回の同行にて学習を続けました。まず、そのレポートから、確定診断までの観察。   ① 好発部位が、膝の外側周辺と、足関節の周辺であること、

② 骨折がなくても、強い打撲で発症する可能性のあること、

② 腓骨神経断裂では、自力で足首や足趾を曲げることができなくなること、

③ 足関節は、drop foot、下垂足の状態となること、

 これらを経験則としてマスターしたことから、傷病名に腓骨神経麻痺がなくても、受傷機転から、腓骨神経麻痺を疑うことができるようになり、結果、この19年で80例を超える経験則を積み上げたのです。   続きを読む »

 腓骨神経麻痺(ひこつしんけいまひ)

印は、腓骨神経断裂の好発部位です。   (1)病態

 長時間の正座で、足が痺れて立つことも歩くこともできなくなることがありますが、これは、一過性の腓骨神経麻痺です。腓骨神経は、坐骨神経から腓骨神経と脛骨神経に分岐しています。腓骨神経は、膝の外側を通り、腓骨の側面を下降して、足関節を通り、足指に達します。

 腓骨神経は、最も外傷を受けやすい神経で、膝窩部周辺や足関節の外傷で断裂することがあり、大腿骨顆部や脛骨顆部、足関節果部の粉砕骨折では、要注意です。   (2)症状

 腓骨神経麻痺では、足関節の背屈や足関節は自動運動が不能で、下垂足(かすいそく)となり、あひる歩行(※)=鶏歩、また、外反運動が不能になり内反尖足(ないはんせんそく※)を示し、足背の痛みを訴えます。腓骨神経の完全断裂では、足趾の自動運動も不能となります。

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 脛骨神経麻痺(けいこつしんけいまひ)

  (1)病態

 脛骨神経は、大腿後面の中央より遠位で坐骨神経の内側部分として分岐し、中央を下行、足関節の底屈と足趾の屈曲を行う筋群と、足関節外果より足背外側、足底の知覚を支配しています。

 脛骨神経は深部を走行しており、外傷の際に損傷を受けることはほとんどありません。稀に、膝窩部で損傷を受けることもありますが、腓骨神経麻痺に比較すれば少数例です。脛骨神経麻痺の代表は、神経の完全断裂ではなく、絞扼性神経障害の足根管症候群です。   (2)症状

 足根管症候群では、つま先立ちができない、足趾の屈曲が困難、足底の夜間痛、痺れなどの症状が出現します。大半は、保存療法もしくはオペで改善が得られるものであり、であれば、過剰反応することもありません。脛骨神経が完全麻痺すると、腓腹筋、ヒラメ筋の麻痺により足関節の底屈、内反、足趾の屈曲が困難となり外反鉤足を示します。   ※ 外反鉤足(がいはんこうそく)  踵足は、足のつま先が宙に浮き、踵だけで接地する足の変形です。中足骨の骨間筋は、神経麻痺のため、足趾に鉤爪変形が生じ、また、足底の感覚障害も起きます。   (3)診断と治療

 治療としては、足根管症候群であれば、保存的に、ステロイド剤の局注、鎮痛消炎剤の内服、足底板の装用、安静で改善を見ることもありますが、効果が得られなければ、屈筋支帯を切離し、神経剥離術を実施します。   (4)後遺障害のポイント   Ⅰ.

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 坐骨神経麻痺(ざこつしんけいまひ)

    (1)病態

 坐骨神経は背骨から出発、お尻を貫いて太ももの後面を下がり、ふくらはぎを通って足に分布します。

 坐骨神経は、末梢神経では、最も太くて、長さが1mの神経です。大腿後側の中央まで下降して、そこで、総腓骨神経と脛骨神経とに分岐しています。つまり、膝の裏までは、坐骨神経であり、そこから脛骨神経と腓骨神経の2手に分岐し、この2つの神経が足の運動と感覚を支配しているのです。   (2)症状

 坐骨神経麻痺では、ふくらはぎの裏側や足の裏の痺れや感覚鈍麻、うずき、灼熱感、疼痛を発症し、膝や足の脱力感を訴え、歩行困難となります。

 完全断裂では、足関節の自動運動不能、下垂足を示し、膝の屈曲が自動でできなくなります。   (3)診断と治療

 坐骨神経麻痺は、坐骨神経が圧迫されたことによる絞扼性神経障害もしくは座骨神経痛であることが大半であり、この因子を除去してやれば、改善が果たせます。

 MRI、針筋電図、神経伝達速度検査で診断されていますが、腰部脊柱管狭窄症、腰部椎間板ヘルニアに合併しているときは、ラセーグテストやアキレス腱反射の神経学的検査でも確認できます。

 治療は、保存療法が中心で、鎮痛消炎剤や筋弛緩剤の内服で、炎症を抑制しつつ、物理療法として超音波治療などが行われています。保存療法で改善が得られないときは、圧迫している梨状筋切離術などの手術が行われています。   (4)後遺障害のポイント   Ⅰ.

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  (1)病態

 肉離れ、筋違いの正しい傷病名は、筋挫傷です。筋挫傷とは、筋肉や腱が打撃や無理に引き伸ばされることで生じる外傷です。筋肉組織をやや伸ばした軽度なもの、組織が完全断裂する重度なものまで、拡がりがあります。   ※ 腱・・・筋肉を骨に付着させる組織のことです。交通事故では、転倒時の打撲などで、筋肉を損傷し、筋肉の腫れや内出血が起こります。   (2)症状

 打撲部の痛み、腫れ、圧痛があり、太ももの前の筋、大腿四頭筋であれば、膝の屈曲が制限され、大腿の後部の筋、ハムストリングスであれば、膝の伸展が制限、ふくらはぎの筋、腓腹筋であれば、足関節の背屈が制限されます。受傷機転、損傷した筋肉の圧痛部位から、確定診断が行われています。   (3)治療

 損傷のレベル、範囲、血腫の存在を確認するには、エコー検査やMRIが有用です。初期段階は、安静が一番で、痛いと感じる動作は避けるべきです。

 痛みが和らぐ安定期に入ったら、血流を良くして回復を促します。血流改善には、リハビリで、温める、ストレッチ、マッサージなどが行われています。筋肉に炎症があり、炎症が筋膜に生じているときは、4~7日、炎症が筋肉の中心に生じているときは、3~5日程度で完治します。   ◆ 捻挫のしくみ?

 さて、捻挫とは、靭帯の外傷を意味しています。靭帯は骨と骨をつないでいる組織で、関節内に存在しています。靭帯には、関節が正常範囲を越えて曲がる、伸ばされることのないように安定させる役割があります。

 例えば、足首の外側の関節には、3本の靭帯があります。この靭帯は、足部が前に突出する、内側に曲がり過ぎることのないようにシッカリとつなぎ止めていますが、外側からの着地で、無理に体重が掛かると、靭帯だけでは支え切れなくなって、伸びる、断裂することになり、これを足関節捻挫と呼んでいます。 このような靱帯の外傷は、肘や膝など体内の他の関節でも発生しています。

   発生直後から痛みのために歩行が困難となります。損傷を受けた筋の部位に圧痛があり、ハムストリングスでは、膝の屈曲運動で抵抗を加えると痛みが増強し、ハムストリングスを伸ばすような動作でも、痛みが強くなります。発症機転、損傷筋の圧痛部位から損傷筋の診断をします。

 損傷程度や範囲、血腫の存在の判断には超音波検査やMRIが有用です。受傷直後は、アイシングと、伸縮包帯で圧迫し、損傷を最小限に押さえ込みます。3~5日を経過、痛みが軽くなれば、患部を暖め、ストレッチング運動により、筋の拘縮を予防し、関節の屈伸動作のリハビリ療法が行われます。再発を繰り返すことがあり、慎重に対応する必要があります。   (4)後遺障害のポイント   Ⅰ.

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 腓腹筋(ひふくきん)断裂・肉離れ

(1)病態

 ふくらはぎは、下腿骨の脛骨と腓骨の後方に位置するのですが、下腿骨後方は、コンパートメントと呼ばれる隔壁で、浅部と深部に分けられています。

 ふくらはぎは、浅部にある筋肉、腓腹筋とヒラメ筋で構成されており、この2つの筋肉は下腿三頭筋と呼ばれています。下腿三頭筋はアキレス腱に連結しています。   ※ コンパートメント・・・筋肉を覆う筋膜組織で構成された隔壁で、筋間中隔とも呼ばれます。   (2)症状

 ふくらはぎの痛み、内出血、ふくらはぎの一部に凹みが見られる。   (3)治療

 XPで骨折を確認し、次ぎに、超音波検査、MRIで筋肉の損傷状態を確認します。治療は、消炎鎮痛剤、局所注射、固定、物理療法で炎症を抑えますその後、運動療法で筋肉の伸張性を高め、筋肉を柔軟にし、筋力強化を行います

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  (1)病態

 上・下肢の筋肉、血管や神経組織は、筋膜や骨間膜に囲まれており、この閉鎖された空間、構造をコンパートメント、あるいは筋区画と呼んでいます。

 下腿には、イラストで示すように、前部、外側、深後部、浅後部の4つのコンパートメントがあります。   ※ コンパートメント ・・・前腕部のコンパートメントは、屈筋群、伸筋群、橈側伸筋群の3つです。前腕部に生じたものは、コンパートメント症候群ではなく、フォルクマン拘縮と呼ばれています。

 前腕部では、屈筋群が非可逆性壊死に陥り、その末梢に拘縮や麻痺を生じることが多いのです。交通事故による大きな衝撃で、この内部に出血が起きると、内圧が上昇し、細動脈を圧迫・閉塞、筋肉や神経に血液が送れなくなり、循環不全が発生し、筋・腱・神経組織は壊死状態となります。この状態が長く続くと、元に戻らなくなってしまいます。

 元に戻らなくなることを、医学の世界では、非可逆性変化といいます。筋肉は4~12時間、神経は12時間を経過すると非可逆性となるのです。脛骨々幹部骨折に合併して、コンパートメント症候群を発症することがあり、かつての交通事故相談会では、1年間に1~2例程度を経験しています。   続きを読む »

(1)病態

 腓骨の単独骨折を解説します。腓骨骨折は、近位端骨折、骨幹部、遠位端骨折の3つに大別されます。

赤○印、上から近位端、骨幹部、遠位端

 腓骨は、脛骨と対になって下腿を形成している骨で、長管骨に属し、脛骨の外側に位置しています。右膝外側を手で触れると、ボコッと飛び出している部分がありますが、それが腓骨の近位端部です。

 膨らんでいる近位端は、腓骨頭と呼ばれています。腓骨頭の先端にはとがった腓骨頭尖があり、脛骨に接する部分に腓骨頭関節面を有しています。

 交通事故では、バイク、自転車と自動車の出合い頭衝突などで、膝の外側部に直撃を受けたときに、腓骨近位端骨折もしくは腓骨頭骨折を発症しています。

 腓骨頭部には、坐骨神経から分岐した腓骨神経が走行しており、腓骨神経麻痺を合併することがあり、そうなると、大変厄介です(腓骨神経麻痺の詳細は、その傷病名で追って解説します)。中央部の骨折は、骨幹部骨折と呼ばれています。

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(4)後遺障害のポイント   Ⅰ.  秋葉事務所では、大人の脛骨顆間隆起骨折を、前十字靱帯損傷と捉えてアプローチしています。

 相談に来られる被害者さんの多くは、医師から「様子をみましょう」とだけ、さらに弁護士に委任したものの、終始「診断書を待っています」とだけ・・・無為無策で不安になった方々です。これら発見が遅れたもの、発見するも放置され陳旧化したものですが、まずはLachman(ラックマン)テストを行い、脛骨の前方引き出しの度合いを確認しています。

 膝を15~20°屈曲させ、前方に引き出します。前十字靱帯損傷では、脛骨が異常に引き出されます。

  Ⅱ.

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脛骨 顆間隆起骨折(けいこつ かかんりゅうきこっせつ)      (左図)右膝関節の正面骨格図、(右図) 𦙾骨近位端の後方図   (1)病態

 8~12歳の小児に好発、成人でも発生している前十字靭帯付着部の剥離、裂離骨折です。前十字靱帯損傷と同じですが、交通事故では、自転車やオートバイの転倒、田んぼや崖下への転落で発生しています。   (2)症状

 症状は、膝関節の捻挫、打撲後に、急激に膝関節が腫れて強い痛みを訴え、膝を伸展することができなくなります。   続きを読む »

(4)後遺障害のポイント   Ⅰ. 後遺障害の対象は、膝関節の可動域制限と疼痛です。弊所の経験則では、脛骨顆部骨折の多くで「4分の3以下の可動域制限」=12級7号が認定されています。

 20年前までは、「2分の1以下の可動域制限」=10級11号も多く認定されていたそうですが、関節鏡術が進化したこともあり、10級11号は減少傾向となっています。いずれも、可動域制限の原因を画像で示す必要があります。3DCTで変形骨癒合を、MRIで軟骨損傷、併発した靭帯損傷の程度を立証しなければなりません。

 総じて、この部位の骨折からは軽重様々な障害を予断する必要があります。基本通り、受傷時~症状固定時までの画像を見守りながら、立証計画を策定します。後遺障害申請はくじ引きではありません。回復努力を第一としつつ、あらゆる認定パターンを念頭に観察していく必要があります。    可動域制限の実例 👉 12級7号:脛骨プラトー骨折(40代男性・千葉県)   Ⅱ.

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 腓骨神経麻痺。すねの外側を走る神経が断裂や損傷を受け、足首や足指の自動運動が不能になる症状です。  浅腓骨神経と深腓骨神経の2本の神経が前頚骨筋、長指伸筋、長母指伸筋、第三腓骨筋、長腓骨筋、短腓骨筋、短指伸筋、を支配しています。

 腓骨や脛骨の骨折の影響で神経が損傷するケースが多く、これらが損傷すると自分の意思で足首・足指を曲げられなくなります。程度の軽重はありますが、以下の後遺障害となります。   ○ 足首 → 1下肢の3大関節中の1下肢の用を廃したもの(著しい障害を残すもの =10級)   ○ 足指 → 1足の第一の足指又は他の4の足指の用を廃したもの =12級   ・・・ この場合、上記二つの認定から、併合7級となるはずでした。    この障害の立証で、被害者は2つの壁を経験しました。  

第1の壁 整形外科の仕事は骨をくっつけること?

   脛骨骨折の手術で有名なある名医の手術を受けました。プレートとねじで折れた脛骨をしっかり固定、10か月後見事に骨をくっつけプレートを摘出しました。腕は評判通りです。レントゲンを見ながら、「どうだね、元通りになったろ」と自画自賛です。しかし患者は「あれ足首が動かないな・・」、踏ん張りが利かなくて杖がないと歩けません。足首はだらんと下がったまま動きません。スリッパも自然に脱げてしまう。

 対する医師は、「あとはリハビリを頑張ることだね」と。満足げにリハビリ科に引き継ぎました。足首が曲がらない事には責任がないようです。

 後に後遺障害の審査となり、保険会社に言われるまま、そのレントゲン写真を提出しました。結果は 「骨の癒合は正常で、変形癒合、偽関節は見られないので・・・云々。しかしながら痛みや運動不能は認められるので局部に頑固な神経症状を残すものとして12級13号・・・えっ、杖なしに歩けなくなったのにそんな軽い障害?となりました。

 確かに脛のレントゲンを見ますと、骨折の癒合は問題ないのですが、MRIでは、周辺の筋組織の損傷がはっきり残っています。さらに外見からも筋委縮がはっきり見て取れます。左右の足の太さが違っているのです。そして、いくらリハビリしても足首も足指も曲がりません。これらの事実は審査されていません。   

第2の壁  治療は終わったのに、今頃になってなんで検査を?

   12級13号では異議申立の必要があります。必要な作業は・・・   1、足首・足指の可動域について再度計測します。骨をきれいにつなげる名医でさえ、計測を間違えています。   2、徒手筋力テストを行い、筋力低下を数値化します。   3、筋委縮を立証するため左右の足の外周を計測します。 ※ 私は写真も添付しました。   4、そして、必須は神経伝導速度検査。 麻痺が確実なら「誘導不能」となります。   5、できれば、針筋電図検査。 神経麻痺立証の決定版です。これができれば、4の必要性は下がります。    主治医にお願いして、検査をやり直しです。しかし、この名医である主治医は「可動域の計測は正しい」と自らの間違いを認めません。さらに「筋電図は必要ない」と紹介状を書いてくれません。「私の治療に問題はなかったのだ!」と依怙地になっています。患者さんはこれ以上逆らうこともできず、すごすごと帰ります。手術でお世話になったのだから当然です。    これら困難な2つの壁を乗り越えるのが私の仕事です。もちろん、医師の技術と尽力には敬意を表します。しかしベストな流れは骨の癒合の時点で上記1~5の検査を実施させ、間違いのない診断書を作成することです。そのために、頑なな主治医を説得するか、場合によっては別の病院へ誘導する必要があります。    ちなみにこの被害者のケースでは異議申し立てを行い、腓骨神経麻痺で9級、股関節可動域制限や膝関節硬縮による短縮障害とも併合しなんとか7級までこぎつけました。悪戦苦闘、9か月もかかったのです。    ありのままの真実を立証する・・・名医のおかげで茨の道でした。   続きを読む »

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