平成10年10月、東京海上から人身傷害特約(保険)が発売されました。以後、各社、ほぼ同内容で続きました。

 しかし、従来から存在していた、搭乗者傷害特約、無保険車傷害特約、自損事故特約と”自らの人身事故に支払われるもの”として、補償が被ることになりました。

 搭乗者傷害保険は重複して支払われるので問題ないとして、無保険者車傷害と自損事故は調整が必要となりました。損保ジャパンは無保険車傷害を一時期、人身傷害約款に組み込み、また独立させた経緯があり、軽く混乱したと言えます。また、各社、約款に不明記ながら、「人身傷害の金額を超えたら無保険車傷害で支払う」などの社内規定で整理したり、また、請求事故が起きたら、その都度、社内会議で決めていたようです。

c_y_200(例1)人身傷害と無保険車傷害が競合した場合

 人身傷害は最低保険金額が3000万円、最高は無制限です。保険金額は選択でき、最も多い契約金額は5000万円です。対して無保険車傷害は2億円、もしくは無制限が保険金額です。保険金額は選択できず、約款で決められています。

 ケガの治療費や休業損害は人身傷害で支払います。なぜなら、無保険車傷害は後遺障害と死亡のみの補償だからです。後遺障害が認定された場合、やはり、人身傷害特約で支払います。それが契約金額を超えた場合、ようやく無保険車傷害からの支払いとなります。

 明らかな高額賠償の場合、最初から治療費・休業損害・その他費用を人身傷害から、後遺障害・死亡保険は無保険車傷害からとばっさり分けたケースもありました。   (例2)人身傷害と自損事故が競合した場合

 自損事故は死亡1500万円、介護費用200万円、入院1日6000円、通院1日4000円の定額保険なので、支払い保険金は人身傷害の方がほとんどのケースで高額になります。したがって、約款上、人身傷害付きの保険では自損事故特約は消滅しています。     さて、(例1)の実務上の対応もさることながら、人身傷害と無保険車傷害の併存問題について、約款上の整理もしくは統合を各社、進めました。最新約款を確認してみたいと思います。 

 前置きが長くなりましたが、ここからが本シリーズの主題に入ります。

 続き⇒  

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セミナー表紙20160214_00002 昨年末から自動車保険の約款をテーマとしたセミナーが続いています。  約款と言えば「難解」、「何が言いたいのか解らない」等々・・約款をじっくり精読してから契約を検討する自動車保険の契約者さんは皆無でしょう。一部の約款マニアは別として、保険会社社員や代理店さんですら、余程必要がないかぎり、約款を開くことはありません。現場ではカラーで解りやすいパンフレットで十分なのでしょう。

 さて、被害者救済業を名乗る以上、約款の熟知・活用は私達にとって避けられない重要事項です。

 とくに、任意保険に未加入の自動車による被害者さんは、人身傷害特約、無保険車傷害特約が頼りとなります。無保険車の被害者にとって知られざる重大なテーマなのです。

 約款解説は毎回長文となり、シリーズ化しますが、まずは以前に使用した表をご覧下さい。自動車保険で自らのケガ・後遺障害・死亡に支払われる主要な補償は以下の通りです。見ての通り、いくつか補償がダブっています。平成10年10月に東京海上が開発、販売をスタートさせた人身傷害特約の登場によってダブりが頻発したと言えます。

 明日からの内容について、下表と併せて以下を復習しておくと理解が容易となります。(長いですよ)

そして『無保険車傷害特約』は吸収された・・・①~⑧

結局、無保険車傷害特約は独立した ①~③  

契約車 搭乗中 他車 搭乗中 歩行中 自転車 他の交通機関 保険金 計算方法 重複 払い  人身傷害保険 〇 △ (特約で選択) △ (特約で選択) 実額 × 無保険車 傷害 特約 〇 〇 〇 実額 × 自損事故特約 〇 〇 × 定額 × 搭乗者傷害保険 〇 × × 定額 〇

  ※ 保険金支払い方法

実額… 実際にかかった治療費、交通費の他、契約している会社の基準により慰謝料、逸失利益、休業損害を個別に計算する。

定額… 契約時に定めた死亡・後遺障害・手術・入院・通院・その他金額。その金額により入通院は1日当たり○○円、もしくは部位症状別に○○円と決まります。   ※ 重複払い

 搭乗者傷害(現在は多くの会社で「傷害一時金」と改名されています。あえて旧名で表記します。)のみ、上の3つに加算して支払われます。しかし治療費を人身傷害に、後遺障害を無保険車傷害にと、ケガと後遺障害を別々に請求する場合は重複とはなりません。

 つづく  

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mikurasu 初登場! 第2のカプセル怪獣ミクラス=MC佐藤    最近、診療報酬明細書(レセプト)開示請求が必要な場合が多かったのでそのことを記載したいと思います。

 診療報酬明細書(レセプト)開示?と思う方が多いと思います。多くの被害者の方は、加害者の任意保険会社の一括対応により支払いなく治療・入通院しているので、診断書・診療報酬明細書(レセプト)、事故証明書等は保険会社の担当者が持っています。ですので、それらの書類を取得するためには、担当者に連絡し、コピーを欲しいと言えば送って頂けるでしょう。

 しかし、相手が無保険であったりすぐに一括対応を打ち切られてしまい、ご自身の健康保険や、労災で通院した場合はどうでしょうか・・。

 相手が無保険の場合や保険会社が払ってくれなかった場合、それらの書類をご自身で取得しなければならいなのです。今回は稀ではありますが、そのような場合の手続きについて説明いたします。

 まずは一番書類がシンプルな労災編です。今回は治療先の病院が労災指定病院であると仮定します。

1、労災で通院している場合、厚生労働省のホームページにある「保有個人情報開示請求書(標準様式第1号)」をダウンロードし、記入します。具体的には、行政機関の長の欄には労災指定病院の所在地の都道府県の労働局長を記入し、開示請求する個人情報には通院期間分のレセプトの事を記載します。開示する書類は年度ごと(毎年4月1日から翌年3月31日まで)によって手数料300円(収入印紙)がかかります。

2、請求は窓口・郵送どちらでも可能ですが必要書類が多少異なるので、注意が必要です。窓口であれば、「保有個人情報開示請求書(標準様式第1号)」、「身分証明書」を、郵送であれば「保有個人情報開示請求書(標準様式第1号)」、「身分証明書のコピー」、「住民票(請求の30日以内のもの)」を用意し、労働局総務部企画室に提出します。

3、その後決定の書類が届きますので、開示請求の意思と方法(閲覧かコピー請求)を示します。コピー請求の場合、開示書類の枚数によって該当金額を切手同封で支払うと、無事にレセプトが届きます。

 次回は健康保険の開示請求について説明いたします。  

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 続きまして、3メガ損保を比較してみましょう。まったくの横並びと思いきや、わずか違いがあるようです。もっとも、支払基準には社内マル秘運用マニュアルがあり、事案によって増減の調整があることもあります。そして、裁判となれば、和解・判決の額を渋々支払います。

 いずれも27.10改定約款を確認しました。地裁基準は「赤い本」です。

 かなり面倒、マメじゃないと出来ない作業です。   c_s_k_70

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 いきなり何のことやらわからないタイトルですが、何を意味するか?    

 これに即答できた方は後遺障害のプロ、認定でしょう。      

 答えは上肢の醜状痕の範囲です。

 

 下図の赤塗りの部分がそれぞれの範囲です。   

労災基準 自賠責基準 裁判 労災 自賠続きを読む »

 もう、普遍的な事となりました、他事務所からの契約切替えについて、意見します。

 せっかく弁護士他に依頼をしながら、その後の対応に不安・不満をもった被害者さんからの相談は、相談会参加者でも25%ほどまでに登ります。他の弁護士先生からも「今月は○○法律事務所から2件、△△法律事務所から1件、□□法律事務所から3件・・」と他事務所からの契約切替えを定期報告のように聞きます。

 確かに依頼をしてみた結果、「合わないな」と思って解任することもそれなりにあるでしょう。しかし、こと交通事故に関しては日常茶飯事、本当に多すぎるのです。それほど被害者さんは軽薄に契約しているのでしょうか。しっかり説明を受けて契約したはずです。また、依頼を受けた事務所も誠実に業務を遂行しているはずです。なぜ、交通事故に限って依頼先の変更が常態化してしまったのでしょうか?     交通事故で弁護士が活躍するのは、当然ですが賠償交渉です。そして、その前段階である諸手続き、損害の立証作業も腕の見せ所です。しかし、現実は前段階の事務をやらない、できない事務所が圧倒的多数です。賠償交渉ですが、裁判などは3%に満たない珍事であって、大多数は赤本などの基準表を見て計算し、相手保険会社と賠償金の計算書の交換をするだけで交渉が進みます。そうです、まるでクレサラ業務と同じ、すべてとは言いませんが楽~な作業なのです。近年、クレサラ事務所が交通事故に大挙参入してきたことと無縁ではないでしょう。

 対して、賠償交渉以前の事務では、ある程度、保険会社との折衝はするでしょうが、健保切替えに付随する第三者行為の書類作成、労災の手続き、身体障害者手帳の申請などすべて被害者に任せ、やってくれません。場当たり的なアドバイスはしますが、多くの弁護士は「それは窓口に聞いて進めて下さい」と丸投げです。さらに、後遺障害の立証も、被害者さんがすべて自分で医師と折衝し、検査を手配し、書類・画像を集め、争いとなれば自ら鑑定先を探し、異議申立て手続き・・頼るべき弁護士は等級が確定するまで待っているだけです。

 結局、このような事務所を選んだ被害者は、様々な対処に困って依頼したものの、全部自分で動かなければならないのです。

 弁護士たるもの「わからない」、「できない」、のであれば派手なホームページで「交通事故に強い」「後遺症も任せて」等、あたかもできるように書いてはいけないと思います。「当事務所は賠償交渉のみしかやりません」と書かなければ、誇大広告となるはずです。それでも生まれて初めての交通事故である被害者は比較しようもなく、宣伝だけで弁護士を選びがちです。    さて、それだけのことで済めば、どの商売でもよくある話です。交通事故の場合はそれだけでは済みません。普通、依頼を受けながら解任される弁護士事務所は、売り上げが逃げますのでそれなりに困るはずです。また、依頼者に問題がある場合を除き、解任自体を反省、恥じるべきです。しかし、弁護士費用特約(以後、弁特)の存在がそれらを打ち消します。

 契約を受けて、その依頼者の契約している保険会社に着手金を請求・受領すれば売上は達成されます。解約によって成功報酬はなくなるにせよ、ほぼ何もしないで、10~50万円を手に出来ます。そして、多くは(着手金はいかなる理由でも返還しない)契約を盾に着手金を返しません。やってくれた仕事と言えば、契約時の面談に、後は電話数本程度・・それでも頑として着手金を返しません。そもそも着手金の性質は手付け、経費の前払いとの理解です。業務量に見合った金額以外は返還するのが常識的な態度でしょう。しかし、依頼者も弁特からの支出ゆえ、自らの懐が痛んでいません。苦情もなくそのままに・・。

 こうして、依頼者に弁特があれば何でもかんでもとりあえず契約に持ち込み、着手金GET、その後何もしないで解約されても「あぁ、そうですか」で平然と応じます。弁特が無い場合は正式契約せず、相談を継続(実質、何もしない)して等級がでるまで様子見を決め込みます。この”相談状態”の宙ぶらりんな対応に不安を感じた(セカンドオピニオンとしての)2重相談者も非常に多い。残念ながら、少なからずの事務所がこの体たらくで、これが「異常に解約が多い」ことの温床になっていると思うのです。

 毎月何十件も受任している事務所は一定割合の解約もこのように利益にしています。弁特のおかげで、着手金稼ぎのビジネスが成立です。商売上手?ではなく、悪質とさえ思えてきます。保険会社も苦々しく思っており、いくつかの事務所に苦情を申し入れています。LAC(日弁連の)が着手金を「10万円まで!」に固執している理由は、この着手金稼ぎビジネスを防ぐためでもあるのです。    最後に最近の相談者さまを代弁して、  eEeS1ECvGkjZQON_VRgoj_67

「それが、お前らの、やり方かぁー!」

 

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win (2)加害者側の任意保険への直接請求権の行使について (物損の場合)

 治療費等、人傷の場合には、被害者請求や人身傷害特約を利用することで早期解決できるので、直接請求権の行使は現実的ではありませんでした。しかし、「直接請求権」は約款をみてみますと、人傷だけではなく、物損にも行使できる旨が記載されています。現在では普段の生活で自動車をよく利用される時代です。自動車の修理費は、人によっては治療費や慰謝料以上に強く求められることもあります。

 物損の場合、自賠責が適用されず、被害者請求はできない。また、人身傷害特約も物損には適用されません。加害者が物損の修理費を払いたくなく(経済的に支払えない場合もあります)、しかも自分の保険会社を利用しようともしない場合、泣き寝入りしてしまいます。そこで、相手方の任意保険会社に直接請求することを約款で認め、このような場合に泣き寝入りせずに物損解決ができるようになっております。

 この点、直接請求権を行使するための要件は、前回述べた内容と同様です。

 人傷の場合と同様、その中で最も現実的な方法は、「③ 損害賠償請求権者が被保険者に対する損害賠償請求権を行使しないことを被保険者に対して書面で承諾した場合」とみています。他方で、物損の場合、人傷の場合と異なり、賠償額の算定は比較的容易です。よって、前回述べた、「① 保険者が損害賠償請求権者に対して負担する法律上の損害賠償責任の額について、被保険者と損害賠償請求権者との間で、判決が確定した場合または裁判上の和解もしくは調停が成立した場合」の方法も理論上できそうです。

 しかし、実際に①の方法を利用するとしても、弁護士に依頼しても受任してくれない可能性があります。何故なら、物損は人傷よりも多くの場合、賠償額が低いため、結果として弁護士の報酬が低くなり、弁護士を使うことが現実的ではなくなるからです。すると、物損のみの交通事故の場合、被害者自身が裁判等をすることになることも視野に入れなければなりません(本人訴訟)。

 なお、物損額が60万円以下であれば、少額訴訟という制度を利用でき、仮にその額を超える場合でも140万円を超えないのであれば、簡易裁判所で訴訟をすることになります。いずれも、端的に言えば、事件の早期解決を図れる点で共通しております。これらの制度については、裁判所や弁護士によく相談してみてください。

 この論点を含む、物損の直接請求権については、ボスがメインブログで、ストーリーを絡めて詳しく解説しておりますので、ご参照ください。  ⇒ 「事故の相手が保険を使ってくれない」  

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win

(2)加害者側の任意保険への直接請求権の行使について

 自賠責保険で、治療費等を回収する方法として、被害者請求を説明しました。上記タイトルの直接請求権とは、端的に言えば任意保険会社版の被害者請求です。つまり、交通事故の被害者が加害者の任意保険会社に直接、治療費等を請求することです。

 通常、交通事故があった場合、加害者が自分の任意保険会社に対応をお願いすることで、一括対応をすることになります。ただ、交通事故の当事者はあくまで、被害者と加害者です。加害者側の任意保険会社が勝手に被害者に治療費等を支払うことはしません。契約者である加害者から連絡がなければ積極的に支払う義務もありません。この点、加害者が「自分が悪く無い事故なのに責任を取りたくないから保険を使わないよ」と言って、被害者に治療費はおろか、加害者自身の任意保険会社にも連絡しないことがあります。

 この様な不都合を回避するために、被害者は加害者の任意保険会社に直接請求点を行使して治療費等を回収できます。しかし、直接請求権による方法はあまり現実的ではありません。治療費を被害者自身で賄うことが困難な被害者にとっては特に言えます。その原因は、直接請求権の要件の厳しさにあります。

 直接請求権を行使するための要件としては、以下の通りです(ある損保会社の約款を参考にしました)。

① 保険者が損害賠償請求権者に対して負担する法律上の損害賠償責任の額について、被保険者と損害賠償請求権者との間で、判決が確定した場合または裁判上の和解もしくは調停が成立した場合

② 被保険者が損害賠償請求権者に対して負担する法律上の損害賠償責任の額について、被保険者と損害賠償請求権者との間で、書面による合意が成立した場合

③ 損害賠償請求権者が被保険者に対する損害賠償請求権を行使しないことを被保険者に対して書面で承諾した場合

④ 法律上の損害賠償責任を負担すべきすべての被保険者について、次のア.またはイ.のいずれかに該当する事由があった場合

ア.被保険者またはその法定相続人の破産または生死不明 イ.被保険者が死亡し、かつ、その法定相続人がいないこと。    これらの中で、最も現実的な方法は、③の方法ではないかとみています。 ①の方法は、治療中で全体の被害額が確定していない状態であることから、裁判がやりづらいこと。 ②の方法は、加害者が任意保険会社を使用しないと言い張っている状況等で現実的に同意するわけがないこと。 ④の方法は、加害者が死んでしまったレベルでなければなりません。    繰り返しますが、以上の要件を満たすための手続きはとても厳しく、面倒です。これらの手続きをするのであれば、自賠責に被害者請求をする方が現実的です。最近では人身傷害保険が普及しているので、本人もしくは家族に加入がないか探して人身傷害に請求するケースが多くなりました。

 自賠責は対人事故に適用されますが、物損は適用外です。これに対し、直接請求権は物損でも利用できます。次回は、物損で自動車の修理代を回収することとからめて説明します。  

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win

 今回は②任意保険の場合をあげてみたいと思います。

 ②任意保険の場合、(1)被害者自身の任意保険と、(2)加害者側の任意保険、とに分けられます。

(1)被害者自身の任意保険の場合について

 被害者が契約されている保険特約で、後遺症(後遺障害)の申請前、申請中段階でお金が欲しい場合にご確認して頂きたいものとして、A:搭乗者傷害保険、B:人身傷害特約、C:無保険車傷害特約、が主にあげられます。

A:搭乗者傷害保険について  これは、簡単に述べますと、保険契約した自動車に乗っているときに交通事故に遭った場合にお金が支払われる特約です。また、これは保険会社によって傷害一時金と改名されています。死亡、後遺症(後遺障害)で等級が認められたりした場合にも支払われますが、傷害の場合、後遺症(後遺障害)で等級申請する前の段階でも支払われます。

 怪我の部位、症状によって支払われる金額が変化しますが、基本的に通院に数が5日以上になった場合に支払われます。なお、損保ジャパン日本興亜の最新の約款では、人身傷害特約内に搭乗者傷害保険の内容が収められております。

B:人身傷害特約について  人身傷害特約については、別の記事で説明しました。この特約も、保険契約した自動車に乗っているときに交通事故で死亡、受傷した場合にお金が支払われる保険です。Aの搭乗者傷害保険との違いは怪我の部位、症状によって支払われる金額が変化するわけではなく、実際にかかった費用が(支払限度額は契約で定めます。5000万円の契約が多いようです。)支払われる点にあります。

 怪我が重く、しかも、加害者が自賠責のみしか入っていない(最悪、自賠責にも入っていないこともあります)場合、実際にかかった治療費全額が手に入らない場合に大変有効な特約です。

C:無保険車傷害特約、  この特約についても、別の記事で人身傷害特約との比較の際に説明しました。これは、死亡と後遺障害に限定されますが、交通事故加害者が保険に入っていない場合や、保険に入っていても被害者への支払が不十分であったり、まったく支払われなかったりする場合に、不足分の金額を被害者自身の保険から回収するものです。Bの人身傷害特約と同じく、加害者が自賠責のみしか入っていない場合や、自賠責にも入っていない場合に有効な特約である点で共通しています。

 実際の運用も、B:人身傷害特約とほぼ同様の流れになりますので、保険会社によっては一時期、人身傷害特約と一緒になったり、独立したり、と変遷がありましたが、現在ではどちらか一方のみを適用し、もう一方は適用しないという流れが主流になっています。

※なお、近日中にメインブログで東京海上日動火災の最新約款についてボスがまとめる予定です。その中には無保険車傷害特約についても触れますので、お楽しみにお待ちください。

 人身傷害特約と無保険車特約のどちらを適用するかは、別の記事でも触れましたが、前者は被害者に過失があった場合にも満額獲得できるのに対し、後者では請求者の過失が反映されます。また、人身傷害特約の場合、多くの契約が5000万円程度であるのに対し、無保険車傷害特約の場合、基本的に2億円~無制限です。 よって、過失の有無やその重さ、怪我の重さも加味した上で、どちらを適用するのかを決めることをお勧めします。  

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win   方法としては、①自賠責保険の場合、②任意保険の場合、に分けられます。

 今回は①自賠責保険の場合あげてみたいと思います。  

① 自賠責保険の場合

 (1)被害者請求(16条請求)

 加害者が自賠責には入っていても、任意保険に入っていなかったり、仮に任意保険にも入っていたとしても、被害者の過失が大きく、相手の保険会社が一括対応してくれなかったりする場合もあります。

このような場合に、治療費が膨大になり、治療を受けたりすることが困難であることがあります。被害者が治療や交通事故による損害賠償を受けるために、自賠責は16条で被害者が加害者の加入している自賠責に対して、請求できるようにしました。

 これまでは、後遺症(後遺障害)の申請段階での説明を主にしてきましたが、後遺症(後遺障害)申請以前に被害者が実質的に治療費を回収できるようになっているのです。但し、この手続きは後遺症(後遺障害)の申請と同様、審査に時間がかかります。迅速に治療を受けたい場合には、以下の(2)仮渡金請求の方法もとることができます。   (2)仮渡金請求(17条請求)

 この請求は、賠償金支払い前に、治療費や生活費、葬儀費等が必要な被害者が請求するものです。この請求方法も、上記(1)の被害者請求と同様、加害者が任意保険に入ってない、または、被害者の過失が大きく、加害者の任意保険会社が一括対応をしないような場合に有効です。

 急ぎお金が必要なときには、以下の通り、治療中でも一時金を請求できます。(1)被害者請求と異なる特徴として、死亡や一定の傷害があった場合に、診断書さえあれば診療報酬明細書や治療費の領収書がなくても支払われるという迅速性があげられます。一定の場合に支払われる金額は、以下の通りです。

① 死亡の場合:290万円

② 傷害の場合

A:入院14日以上で、かつ治療に30日以上を要する場合や背骨等の骨折で脊髄を損傷した場合。→40万円 B:入院14日以上を要する場合や上腕又は前腕の骨折の場合。→20万円 C:上記以外で治療11日以上を要する場合。→5万円

 詳しくは ⇒ 自賠責保険の請求形態について

 仮渡金請求は被害者請求と比較して迅速に進められますが、被害状況がはっきりしている場合には、被害者請求を並行して進めることもできます。

 ただし、最近では、任意保険の特約の発展(人身傷害保険等)により、仮渡金請求を利用せずに治療費等を確保できるので請求の機会は少なくなっているようです。  

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win

 交通事故に遭われて被害者となった方は、まず、怪我を治せるかどうかが気になるかもしれません。しかし、それと同時に問題となるのは、治療費や収入についてではないでしょうか。

 これまでは後遺症(後遺障害)の申請で等級を得た上でのお金の得方を説明していきました。

 しかし、後遺症(後遺障害)の申請に行きつく前に費用面で満足に治療を受けられない場合もあります。

 例えば、加害者が自賠責以外の保険に入っていなかったり、最悪、自賠責にも入っていなかったりする場合(日本人であればほとんどこのような場合はありませんが、外国人の場合、未加入の者もおりました。)もあります。仮に、加害者が任意保険に入っていても、被害者の過失が大きくて一括対応してくれない場合等、治療費が賄えない場合があります。   c_y_164  怪我が軽ければ自腹でも大丈夫かもしれません。しかし、怪我が重い場合もあり、金銭的に治療が受けられず、また、もっとひどい場合、仕事ができず、収入がなくなり、ご自身の生活が立ち行かない場合もあります。

 基本的に、賠償関係は弁護士が最後(等級を獲得してから)にまとめてするものです。しかし、これらのような事情の場合、後遺症(後遺障害)申請に行きつく以前の問題です。

 これまでに説明してきた内容と一部重なりますが、次回から後遺症(後遺障害)の申請前、ないしは申請中の段階で治療費等のお金を先取りする方法ついてまとめていきたいと思います。  

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 被害者さんからの相談で、「相手保険会社が弁護士を立てて、調停の提案がきました!」が少なからずあります。治療が長期にわたる方に多いようです。保険会社が治療費の打切りや示談解決へ進めるにあたり、業を煮やしている様子が伝わってきます。

 被害者側は調停云々の前に、まずやるべき事をしっかり抑える必要があります。後遺症が残った場合、等級認定を済ませているでしょうか?(認定を受けている場合)認定等級は正当でしょうか? 申請・認定なきまま、後遺症はないものとして調停で解決させられてしまいます。相手保険会社(弁護士)の狙いは早期解決です。後遺障害認定手続きなど待たず、さっさと進めてしまいます。

 調停の目的とは「相互の歩み寄り」による解決です。つまり、調停員が「(被害者と保険会社の主張する金額の)双方の間位で手を打たないか?」などと斡旋案をだしてくる”ぬるい場”です。しかも、どちらかがその斡旋案を蹴ったらおしまいです。調停の斡旋案に拘束力(斡旋案に従う、または尊重する)はないのです。   c_y_38 ← イラストのような・・  交通事故の場合、多くは保険会社vs被害者となりますが、この交渉の斡旋の場として「交通事故紛争処理センター」(以後、紛セン)があります。調停との一番の違いは拘束力です。「保険会社は斡旋案を尊重する」ことがうたわれています。絶対的な拘束ではないにしろ、保険会社が斡旋案を蹴って、上部審査の審査会や裁判にすることは稀です。断言します、紛センは調停に比べてはるかに被害者に有利です。

 逆に保険会社及び相手弁護士は調停が有利、だから調停解決を持ち出してくるのです。(もっとも紛センは保険会社側から申立てするものではありません。あくまで被害者側のための機関です。)    ここで被害者の採るべき行動を整理します。

1、調停など蹴る。

 双方が参加しなければそもそも調停となりません。ただ、無視・無断欠席は駄目ですよ。必ず、事前に不参加を表明して下さい。

2、後遺障害の認定は?

 後遺障害が賠償金の最大ウェートを占めます。まず、ここを固めなければいけません。秋葉の出番は正にここです。損害がすべて明らかになっていないのに交渉も何もありません。

3、紛センに申立て。併せて弁護士を立てる。

 調停を蹴ったからにはこちらも対案を用意すべきです。それは裁判か紛センです。もちろん、交渉の継続でもよいですが、ここまでもめたら交渉は現実的ではないでしょう。そして、できれば被害者側も代理人(弁護士)を立てて進めるほうが良いです。相手弁護士と交渉するのはそれなりにハードです。    この1~3をしっかり抑えることが基本行動です。交通事故の解決はクールに進めるものです。そして加害者側保険会社に主導権を握られっぱなしから脱却し、被害者側で後遺障害を立証する、代理人を立てる、紛争センターや裁判に持ち込む行動と気概が必要です。

   以下、調停について抑えておきましょう。     民事調停手続 (裁判所さまのHPより抜粋)

1.概要

調停は,裁判のように勝ち負けを決めるのではなく,話合いによりお互いが合意することで紛争の解決を図る手続です。調停手続では,一般市民から選ばれた調停委員が,裁判官とともに,紛争の解決に当たっています。

2.民事調停の特徴

•手続が簡単  申立てをするのに特別の法律知識は必要ありません。申立用紙と,その記入方法を説明したものが簡易裁判所の窓口に備え付けてありますので,それを利用して申立てをすることができます。終了までの手続も簡易なので,自分1人ですることができます。

•円満な解決ができる 続きを読む »

 最近、三井住友の代理店さんと弁護士費用特約についてお話をする機会がありました。三井住友さんの弁護士費用特約は契約自動車・契約者に関連する交通事故に限定した「自動車事故弁護士費用特約」と日常生活全般に適用可能な「弁護士費用特約」に分かれています。ちなみに秋からの料率改定で「日常対応型」は掛金が3900円(年額)に上がるそうです。安いのか高いのか?・・交通事故のみならず、日常のトラブル全般に適用できれば、ある意味、顧問弁護士を準備していることになります。そう考えると安いと言えるかもしれません。

 外資系損保の一部でも日常に対応した弁護士費用特約が販売されています。また、これを専用商品としている会社もあります。プリベント少額短期保険株式会社さんの「mikata/ミカタ」がそうです。1回の事件で弁護士への支払い・300万円までの補償で掛金は月額2980円です。    c_y_184  今後、弁護士保険の発売が続きそうです。国内社では損保ジャパン日本興亜さんが以下の発表を行いました。その記事を抜粋します(マイナビニュースより)。    

損保ジャパン日本興亜、弁護士費用を補償する「弁護のちから」販売

    損害保険ジャパン日本興亜(以下損保ジャパン日本興亜)は8月31日、個人の顧客の日常生活における法的トラブルを解決するための弁護士費用を補償する新たな保険「弁護のちから」を、12月1日以降保険始期契約から販売すると発表した。

○ 日常生活における法的トラブルを解決するための弁護士費用を補償する保険を開発

 これまで、日常生活における法的トラブルに備えるための保険としては、顧客が「加害者」となり法律上の損害賠償責任を負った場合の補償(個人賠償責任補償特約等)を中心に販売してきたという。顧客が「被害者」として賠償事故に巻き込まれ、加害者に十分な対応をしてもらえない場合や、遺産相続や賃貸借契約など日常生活におけるその他の法的トラブルに巻き込まれた場合には、当事者本人や家族の精神的・経済的な負担は非常に大きいものとなるという。このような顧客の負担に対する「備え」を提供するため、損保ジャパン日本興亜は国内の損害保険会社として初めてという、日常生活における法的トラブルを解決するための弁護士費用を補償する保険を開発した。

○「弁護のちから」の商品概要

・商品名:「弁護のちから」。「傷害総合保険」と「新・団体医療保険」の特約として「弁護士費用総合補償特約」を新設する。「弁護のちから」とは、同特約をセットした契約のペットネーム

契約形態:企業などを契約者とする団体契約で、団体の構成員が加入できる

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win

 人身傷害特約と無保険車傷害特約 その3

  3:人身傷害特約と無保険車傷害特約双方を使う。

 前回のまとめですが、 1:では5000万円、 2:でも5000万円を回収できますので、結論としては変化がないと説明させて頂きました。

 しかし、皆様はここで一つ疑問が出てくると思います。

 過失分は人身傷害特約で回収し残りの分は無保険車傷害特約から回収できないのか?

 本件では人身傷害特約で2500万円、残りについては、無保険車傷害特約で回収し、合計5000万円を回収できないかという流れです。この流れでは手続きも早く、交通事故の早期解決が出来そうです。では、実際にそのようなことができるのでしょうか。

 結論から申しますと、保険会社は実際の運用段階では、約款上、併用を認めない記載があり、人身傷害特約と無保険車傷害特約のいずれかしか適用を認めないようにしているところが大多数です。 c_y_39  仮に約款やホームページ等でいずれも適用できるようなことが記載されていても、保険会社の担当者はどちらかのみ適用させるか、若しくは人身傷害特約を適用させて運用していこうとします。後者は、保険会社に勤めていた方からのお話では、担当者が無保険車傷害特約を知らないからであると言われています。何故なら、担当者は無保険車傷害特約を使ったことが無く、保険会社も研修や業務で教える機会があまりないことが多いことが理由として挙げられます。

 よって、 3:人身傷害特約と無保険車傷害特約双方を使うことは現実的ではないのかもしれません。

 しかし、無保険車傷害特約は、死亡もしくは後遺症(後遺障害)が認められないと利用できないという特徴があります。  この点、交通事故の内容によっては、当初は重傷でも、腕のいい医者に巡り合うことができて、外観上完治しているような場合がありますが、目に見えない障害が残存してしまうようなケースもあります。また、治療期間が一定期間あるものの、死亡してしまったケースもあるでしょう。このように、死亡、後遺症(後遺障害)が残存するかどうかがわからない時期に保険会社が人身傷害特約と無保険車傷害特約のどちらを適用すべきかが判断できないことがあります。

 そのような場合はどのように保険会社は運用していくのでしょうか。

 元保険会社社員の方のお話ですと、この場合には、保険会社は先に人身傷害特約を適用させます。治療費(実額損害)を人身傷害特約で支払った後、後遺症(後遺障害)申請をして等級が認められた場合には、まずそのまま人身傷害特約で保険会社は運用していき、人身傷害特約の支払いで足りない分(慰謝料等)を無保険車傷害特約を適用して支払う運用をするようです。

 上記したように、無保険車傷害特約を保険会社の社員は知らないことが多く、後で気がつく場合が多いことからこのような事態が生じることもあるのです。

 前回からの比較をまとめますと、相手方加害者が保険に入っている場合には過失分、支払限度額で人身傷害特約、無保険車傷害特約のどちらが得になるのかを判断することになります。

 これに対して相手方が無保険車であった場合、弁護士の運用次第ですが、人身傷害特約、無保険車傷害特約のいずれも同額回収できますので、結論としては変化がありません。後者の場合で皆様に必要なのは、弁護士がこれらを知っているか否かを判断する力です。  

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 人身傷害特約と無保険車傷害特約 その2

   前回の記事で、人身傷害特約と無保険車傷害特約との比較を説明しました。

 今回は、以下の事例(相手方加害者が完全な無保険者である場合)から、どのように保険を使ってお金を回収するのかを検討したいと思います。

 <事例>  Aさんは自転車で横断歩道を赤信号であるにもかかわらず進み、無保険のBさんが横断歩道上でAさんをはねてしまいました。Aさんは脳挫傷で後遺症(後遺障害)が残りました。Aさんの損害額は、裁判所の基準で合計1億円になりました。しかし、Aさんにも5割の過失が認められました。  しかし、Bさんは保険に入っておらず、貯金もまったくありませんでした。そこで、幸いにもAさんには人身傷害特約(支払限度額は5000万円)と無保険車傷害特約がありました。 c_y_164  では、これらの特約をどのように使った方が良いでしょうか。  使い方としては、以下の3つに分けられると考えております。

1:人身傷害特約を使う。 2:無保険車傷害特約を使う。 3:人身傷害特約と無保険車傷害特約双方を使う。

 今回は 1:、 2:についてまとめさせていただきます。

  1:人身傷害特約を使う

 ここでは以前に説明した人身傷害特約を先に使ってから裁判で解決する流れで検討していきます。  本件事故がAさんの任意保険会社の算定基準ですと総額5000万円であったとします。その額から過失分を差し引いた2500万円が、まず人身傷害特約で出ます。その後、弁護士が裁判で決着をつけても、Bさんは無保険、無一文であるいから、仮に裁判所の基準で総額が1億円であったとして、過失分を差し引いた5000万円を請求できたとしても、金銭の回収は出来ません。  この場合、2500万円を回収して終わりそうです。  ただ、支払限度額が5000万円であり、2500万円については上記5000万円の請求権が認められたことを盾にAさんの任意保険会社に交渉する余地があります。何故なら、以前に説明しました通り、約款で裁判所の算出額を尊重する旨が記載されていることがあるからです。 よって、ここでの金額は5000万円とします。

2:無保険車傷害特約を使う

 この場合でも、本件事故がAさんの任意保険会社の算定基準で総額5000万円であったとします。過失分を差し引いた2500万円が、無保険車傷害特約で出ます。そしてBさんは無保険、無一文であり、裁判所の基準で総額1億円、過失分を差し引いた5000万円を請求しても、金銭の回収は出来ません。

 但し、懇意にしている弁護士によりますと、全額を回収できる方法もあるとのことです。  手続きの流れは簡単に言いますと、以下の通りです。

① 後遺症(後遺障害)の認定。 ↓ ② 加害者(Bさん)に損害賠償請求訴訟を起こし、確定判決を得る。  この場合、加害者が裁判を欠席したら、判決が公示されて終わります。 ↓ ③ 確定判決書を添えて自身の任意保険会社に保険請求をする。

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 任意社の意見書(もしくは情報)で被害者に等級が認めてもらえるよう推すケースが存在します。

 それでは実例(仮名)で説明しましょう。

   追突事故で頚椎捻挫となり、半年間、2日に1回の頻度で通院している被害者:又吉さんが相手保険会社:ピース損保から打ち切りを迫られています。ただし、又吉さんは詐病や心身症の問題のある被害者ではなく、有名な作家で社会的な地位もあり、収入も多く、ピース損保も乱暴な扱いはできません。

 ピース損保の担当者:綾部さんはなかなか治らず長く通院している又吉さんに「もう治療費は払えません、今後は後遺障害を申請したらいかがでしょうか?弊社も出来るだけの賠償金を提示します」と水を向けます。

 そこで又吉さんは言われるがまま、後遺障害診断書を主治医に記載いただき、綾部さんに託しました。

 綾部さんは自賠社に送達する際、「又吉さんは有名な作家です。神経症状が重篤で、後遺障害に値します」旨の情報を添えました。

 それを受けた審査先である自賠保険調査事務所ですが、もちろん、任意社の意見で左右されることなく、定型書類から厳正に審査をします。しかし、半年間に渡り被害者を見続けてきた担当者:綾部さんの意見を無視できません。大いに参考となるはずです。それが治療経緯・症状の一貫性を重視する14級9号なら最重要情報にすら思えます。

 ちなみに、自賠責の受付業務が民営化される以前の大らかな時代、センター長が調査事務所に電話して、「等級はどうなっているのか?」「なんとか○級はつかないか?」などと話をしていました。現在でも調査事務所から任意社に電話がかかってきて、「この(申請があがってきた)被害者って、どんな人?」などと聞かれることがあります。このようなやり取りは被害者請求でも同じです。何を言われるかわからない?だから「担当者とケンカするな!」と言っているのです。

・・・・

 そして、めでたく又吉さんに14級9号が認められました。綾部さんは早速、後遺障害(慰謝料+逸失利益)を加算した賠償金提示を行いました。その額は、

 通院慰謝料(567000円)+後遺障害(800000円)で合計1367000円です。

 さらに綾部さん、「即断してくだされば、上席に掛け合って150万円お支払いさせていただきます」とたたみ込みます。

 又吉さんも「100万円を超えているし、そんなものかな・・」と150万円で承諾しました。こうしてめでたく解決です。

   詳しい方はもうお解かりですね。実はピース損保、自賠責から通院慰謝料で55万円程度、後遺障害で75万円、つまり150万のうち130万円は自賠から回収できるので、任意社は20万円しか出費していないのです。このように対人担当者は、軽傷なら「自賠内で解決」、後遺障害でも「自社の支払いはちょっとだけ」が腕の見せ所です。そして本件の場合、綾部さんは又吉さんが弁護士に相談する前に急いで150万円提示、まさに火花の散るようなスピード解決を図り、成功したのです。

 もし、弁護士に赤本で計算されたら・・通院慰謝料89万円+後遺障害{慰謝料110万円+逸失利益100万円(年収500万として)}=合計 約300万円!

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 加害者側の任意保険・担当者は「常に被害者への支払いを少なくすることが仕事」「後遺障害を認められないように妨害する存在」なのでしょうか? c_y_193

 営利企業である保険会社が支払いの抑制に傾くのは当然の摂理でしょう。それでは低い賠償金で解決させれば優秀な社員となるのでしょうか?・・そんな単純なものでありません。対人担当者の成績を評価する上で、「支払い保険金の抑制」は評価が難しい項目と言えます。なぜなら、約款の規定以下の少ない保険金で示談した場合、それなりの理由がなければ倫理上、問題とされるからです。つまり、原則「約款に則り、適正な支払い」をしなければなりません。

 支払い保険金の多寡はそもそも、保険会社の基準が裁判基準に比べ極端に低く設定されていることが原因です。これは結局、自賠基準→任意基準→裁判基準のトリプルスタンダードの問題に帰結します。そうなると、賠償金を自賠責保険の範囲で解決させること、なるべく任意保険からの支払いを少なくすることは評価になるようです。

 それでは、担当者の評価で一番の項目は何でしょうか? それは”案件の処理スピード”です。担当者は毎月10件ほどの交通事故のファイルが机に置かれます。あっという間に年間100件です。つまり、毎月10件づつ解決していかなければ、どんどんファイルが溜まっていくのです。担当者が必死に「治療費の打切り」「示談」を切り出してくるのは、単純に「急いでいるから」です。

   掲題に戻ります。それでは、後遺障害申請の場合、一括社意見書なるものが必ず添付されるのでしょうか?そして、必ず被害者に不利になるようなことが書かれるのでしょうか? 

 まず、前提ですが、この書類もマル秘扱いです。表向きは「存在しない」とされても仕方ないでしょう。当然に社外秘はおろか、社内でも限定された者しか目に出来ません。顧問・協力弁護士にも見せませんし、存在すら言わないものです。だからと言って、裏の必須書類とまでは言い過ぎです。実務上、全件に添付されるわけでもなく、また、書面とは限りません。消極的な物言いですが、「被害者の詳細情報が等級審査に必要な情報となり、任意社から調査事務所へその情報伝達が遮断されることはない」、これが正解です。    明らかに軽いケガでありながら長期通院していること、賠償志向が強く詐病者と疑われるような事情、問題のある被害者・・これらの情報は必ず伝達するでしょう。これはある意味、必要な情報伝達と言えます。さすがにネットで書かれているような、恣意的・不当に被害者を貶めるような、認定を妨害することはほとんどないと思います。「絶対ない」とは言えないところがなんとも・・開示されない(存在しない?)以上、わからないからです。

 そして、昨日の最後に書きました、逆に「被害者に等級を認めてもらう意見書」も存在します。それは、障害が明白であり、気の毒な被害者である情報はもちろん、示談の際に賠償金額を盛る必要があるケースで起こります。それは、後遺障害が認められて「後遺障害保険金があった方が大きい賠償金を提示できる」ことを意味します。

 次回、わかり易く実例で説明します

 つづく  

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 自賠責保険への被害者請求、ここ10年で周知が進んだようです。昔は相手に任意保険がなかった場合、仕方なく行う作業でした。しかし、交通事故の情報がネットに溢れ返っている現在、後遺障害の申請の一手段として認知された感があります。それでも後遺障害申請の主流は相手保険会社経由で申請する「事前認定」です。

 巷の(とくに行政書士)HPを観ると、被害者請求を推進する業者は「事前認定」をすると、相手保険会社の担当者が通称”任意社一括意見書”を添付し、等級認定を邪魔する」などと解説しています。

 また、逆に「そんな書類は存在しない」と言い切っている法律家さんもおります。特に(なぜか保険会社に詳しいはずの?)保険会社の協力弁護士さんに多い傾向です。    一括意見書は存在するのか?また、意見書で被害者の等級認定を妨害しているのか? 被害者さんだけではなく、業者の皆さん必見! 真相に迫ります。   f_c_035  まず、任意保険の担当者による事前認定の事務を簡単に説明します。後遺障害の申請に必要な書類を集積し、「整理表」なる書類とともに自賠の窓口社を経由して調査事務に送達されます。特に意見書のようなものは必須の提出書類に含まれていないようです。表向きはそのような書類の存在を明言している様子はありません。

 保険会社に在籍していた時も一括者意見書なる書類をじっくり目にしたことはありません。後年、サービスセンター(支払部門)の人身担当者に直接、聞いてみました。すると、「確かに自賠の審査上、必要書類ではないけど・・特別に必要な情報として伝達事項を書面にすることはあるよ」と、やや歯切れ悪い回答。

 そもそも対人賠償の担当者は保険金支払いのルールブックである「約款」のみを傍らに置いて仕事をしているわけではありません。机の中に「任意保険算定の運用基準」のような別のルールブックが存在します。これは文字通り、約款だけでは算定できないイレギュラーな事に対処するルールです。これは、サービスセンターのセンター長、統括社員、賠償主任、対人担当者しか見ることが出来ません。もちろん、営業部門にいた私にも見せてくれません。後に研修で短期間サービスセンターに配属された際、マル秘扱いながら陰でこっそり見せてもらったことがあります。休業損害や慰謝料、逸失利益等の別計算、特別なケースの対処法が記載されていました。何事も正規のルールでは対処できないことがあるものです。まして、交通事故のような揉め事の解決には非正規のルールも必要でしょう。

 話を一括意見書に戻します。これも非正規ルールの中で存在するものです。ただし、巷の行政書士が被害者請求を煽るため、事前認定の”害悪物”として挙げるような単純なものではありません。中には「この被害者は後遺障害に該当する。理由は○○、○○・・」など、被害者に有利な情報が書かれることもあるのです!

 つづく  

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人身傷害特約と無保険車傷害特約

   無保険車傷害特約とは、簡単に言ってしまうと、交通事故の加害者が保険に入っていない輩であったり、あるいは保険に入っていても被害者への支払額を全額カバーできないような場合に、支払ってもらえない分の金額を自分の入っている保険から回収するものです。

 特に、ひき逃げや、暴走行為の被害者等、加害者がいない場合や加害者に支払能力が無い場合の事故の際に活躍する特約です。

 この点、人身傷害特約のメリット1の箇所で、加害者がいない場合や加害者に支払能力が無い場合の事故のときでもお金を回収できると説明しました。このメリットの部分は無保険車傷害保険でも重なっているといえます。そして、これまで説明してきました人身傷害特約と無保険車傷害特約との違いのひとつとして、保険会社の支払限度額が(会社によって少々差がありますが)、最高2億円、もしくは無制限であることがあげられます。この点、人身傷害特約の場合、多くが5000万円の支払限度額であるのに対して(これだけでもかなりの高額ではありますが)非常に高額のお金を回収できます。 c_y_195  皆様はこの段階である疑問を抱くと思います。

 何故高い保険料を支払ってまで人身傷害特約にも入る必要があるのか。  同じようにカバーされるのであれば、どっちか片方に入っておいて保険料を節約したほうがいいのではないか。だったら、支払額の多い無保険車傷害特約に入っておいて人身傷害特約は入らなくていいかもしれない・・・。

 ※ 統計的にみて、人身傷害特約よりも無保険車傷害特約に入っている場合が多いです。なぜなら無保険車傷害特約は対人賠償に自動担保されているからです。

 この点、無保険車傷害特約と人身傷害特約との区別については、被害者に過失があった場合に出てきます。

 前回説明した通り、人身傷害特約のメリットとして、被害者に過失があっても過失分は回収できる点をあげました。これに対し、無保険車傷害特約の場合、被害者の過失分を減額して支払われます。  過失が1割であっても、請求額が全額で1億円であればそのうち1000万円を引かれてしまいます。重篤な被害が出れば出るほど過失額も大きくなります。そして、1割や2割の過失は、前回説明しました通り、皆様がある種、常識的な運転をしていてもたまたま運悪く事故に巻き込まれてしまうこともあります。それで過失分を減額されてしまうと、重篤な被害者にとっては将来の生活そのものにも影響が大きく出るといえます。

 以上から、いくら支払限度額が多くても、最終的に回収できる金額を確保できなければ意味がないといえます。                   続きを読む »

win メリット3:後遺障害を申請していなくても、または申請中であっても請求できる。  交通事故に遭われた方は、基本的に治療費の悩みがあります。

 修療費を加害者の任意保険会社が支払ってくれる場合には、特に悩む必要はありません。しかし、加害者が無保険の場合、被害者は加害者に治療費を請求するしかありませんが、ほとんどと言っていいほど支払ってくれません。  c_y_164  また、保険会社の対応が遅れてしまっている場合や、被害者の方も過失があり、過失のことで加害者(相手の保険会社)と揉めている場合には、相手方の保険会社が対応してくれない場合があります。

 そうなってしまった場合、お金がない被害者ですと、治療を受けられないで重症化してしまう方が出る恐れがあります。また、被害者には、交通事故に遭われた後、仕事が制限されてしまい、給料が減ってしまう方もいます。そのような方の中には、治療開始直後は貯金の切り崩し等で治療費を出せていたとしても、途中で出せなくなることもあります。

 そのようなときに、人身傷害特約を利用すれば、治療費を賄うことが出来ます。

 治療を継続してきた被害者は、完治すればいいですが、被害者の中には後遺症(後遺障害)が残存してしまう方もおります。そのような被害者は後遺障害の申請をする必要が出てきますので、主治医に症状固定して頂くことになります。  症状固定後に申請手続きに移りますが、これら手続きには時間がかかります。そしてその間はお金が入らない状態になります。  この点、人身傷害特約は、後遺症(後遺障害)が認められようと認められないとにかかわらず、支払われます。

 そこで、人身傷害特約を利用して、自賠責分(最低額)の通院慰謝料や休業損害分を先に請求することが出来ます。

 ただ、後の賠償交渉等を視野に入れている被害者もおります。 そのような方の場合、賠償交渉等を含み、手続き(特に計算)が複雑になりますので、先に人身傷害特約を使う必要性があるような方にお勧めします。

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