自らの過失が大きく、相手保険会社からの賠償金が少ない場合、自ら契約している人身傷害保険が頼りになります。本件も、当方に80%以上の過失がある故、相手への賠償請求は、弁護士費用特約を使って相手の自賠責保険へ後遺障害審査と、できるだけ治療費の自己負担分を回収するだけで終わりました。

 その後、人身傷害保険の提示があまりにも低く、その請求が一番の山場となったのですが・・追加書類を提出して交渉を続け、最後には平均賃金で算定・支払ってくれたので、ご英断下さった担当者様には感謝です。

 被害者さんにとっての教訓は、人身傷害の保険金請求と言えど、何もせず座していてはダメです。確実に後遺障害を立証し、丁寧に証明書・領収書を集めなければなりません。とりわけ本件のような重傷の場合は、約款を精読して精密な申立て書を作成・提出することが必要です。多くの場合、逸失利益の計算上、大きな差が生じます。それで数十、数百万円(本件は数千万円も増額!)も保険金が変わるのです。

保険約款に精通した秋葉ならではの仕事と言えます  

5級2号:高次脳機能障害(20代男性・東京都)

【事案】

自転車で交差点を横断、自動車と出合い頭衝突・・自転車側が完全な赤信号。直ちに救急搬送さ、診断名はクモ膜下出血、硬膜下血種、眼窩底骨折、鎖骨骨折など。高次脳機能障害が予想された。   【問題点】

・80%以上の過失が被害者に課せられる事故で、相手損保の一括対応は望めない。まず、健保利用とその手続きに追われた。

・脳外傷起因のせん妄(脳の興奮により、性格が衝動的、攻撃的になる)から、入院先の病院で様々な迷惑行為が生じ、早々に精神科への転院が促された。ご家族としては精神科を避けたいご意向もあり、転院先の選定が急務となった。

・なんとか紹介をつてにリハビリ科への転院を果たした。そこでは、せん妄も落ち着き、1カ月ほど療養を経て退院となった。その後、整形外科、歯科での治療が進み、神経心理学検査を実施後、医師に診断書類の記載をお願いしたが・・その主治医がなかなか記載せず、催促を続けて8カ月後にようやく記載となった。   【立証ポイント】

高次脳機能障害の立証においては、いつもの作業を丁寧に進めるだけであった。問題は、主治医への(診断書記載の)催促で、最終手段として、その院の理事長と副理事長に直訴の手紙を出すに至った。

その後、自賠責保険で無事に等級認定されたが、残る人身傷害保険への請求も簡単ではなかった。休業損害の書類他、必要書類を集積して提出したが、担当者の提示では、逸失利益が”回復後に就職した先の初任給”で計算されたもので、まったく話にならなかった。その会社へ給与体系を開示していただき、障害がなかった場合の昇給モデルを計算、諸々の書類を添付して、将来の昇給の蓋然性を主張、平均賃金での支払いを求めた申立書を提出、再計算を促した。

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 3メガ損保で唯一、交通乗用具フルセットの損保ジャパンさんですが、かつての補償内容が全部元通り!とまでは言えません。補償の削減条項があります。自動車が絡まない(自動車に跳ねられたわけでもなく、自動車に乗っていた時の事故でもない)、例えば、歩行中に自転車に当て逃げされた場合は、支払い保険金に制限があります。

 察するところ、かつてのモラルリスク(保険金の不正請求)の回避が目的と思います。

 例えば、家の階段でコケて骨折したが、「自転車でコケて足を折りました」と言って請求してくる詐欺者や、テニス中にアキレス腱を切っても、「テニスの帰りに自転車のひき逃げに遭ってケガをしました」と言って請求してくる詐欺者がそこそこ居るので困ります。

 自転車でコケたとする単独事故では、加害者がいないので警察に事故届することはありません。ひき逃げも捕まらなければ、事故の証明者がいません(目撃者がいて、その情報から加害者が特定できれば別ですが)。つまり、第3者の証明がない、自己申告のみの事故となるのです。これが、人身傷害が”ざる保険”と言われた所以です。

 保険会社にとって、「なんでもかんでも人身傷害保険に請求してくる」心配が尽きないのです。その為、治療費実費はみても、慰謝料(精神的損害)や休業損害など、詐欺者が求めるであろう部分はカットしたいのです。後遺障害や死亡部分に制限はありません。やはり、ちょっとしたケガでの支払い増を懸念した結果と思います。この特則は、あいおいさんが先行して採用後、損保ジャパンさんは、令和3年1月1日の約款改定「交通乗用具復活」より盛り込みました。    (1)損保ジャパンさんの約款  人身傷害交通乗用具事故特約「損害額に関する特則」

第5条(損害額に関する特則)

 普通保険約款人身傷害条項第6条(損害額の決定)⑴の規定にかかわらず、第1条(保険金を支払う場合)⑴①に規定する事故のうち、自動車の運行に起因する事故および自動車の運行中の事故のいずれにも該当しない事故(つまり、自動車が絡まない交通事故)の場合で、賠償義務者が存在しない(つまり、自爆事故)または賠償義務者の住所および氏名もしくは名称が確認できないとき(つまり、ひき逃げで相手不明)は、普通保険約款別表3に定める損害額算定基準における次の損害に対する額を差し引いた額を損害額とします。   ① 第1 傷害による損害 2.休業損害   ② 第1 傷害による損害 3.精神的損害    つまり、自動車が絡まない事故での、単独事故、ひき逃げ(相手不明)の場合は、「治療費はだすけど、休業損害と慰謝料は勘弁して」 となります。

 なお、「後遺障害による損害」や、「死亡による損害」では、このような制限はなく、従来通りに慰謝料等を含めて払うようです。   (2)東京海上日動さんの場合       第6条 「お支払いする保険金に関する特則」

 当会社は、普通保険約款人身傷害条項第4条(お支払いする保険金)(2)の規定にかかわらず、人身傷害事故のうち、自動車または原動機付自転車の運行に起因する事故および自動車または原動機付自転車の運行中の事故のいずれにも該当しない場合、同条項の別紙に規定する傷害のうち、下表に該当する損害を差し引いた額を損害の額とします。   続きを読む »

 最後にCグループです。    すでに三井住友さんは、3年前の改定で交通乗用具の範囲を限定し、支払い内容も定額払いとしていました。それ以降の注目は、他社もそれに続くのか?でした。以下の表に整理しましたが、交通乗用具に関しては、他社に改定の動きはありませんでした。 その他、大きな改定として、長らくCグループの特徴としていた「支払基準」が変更されていました。    👉 人身傷害・今年の約款改定 ② ~ 三井住友、交通乗用具やめるってよ    続きを読む »

 続いてBグループです。

 支払い基準ですが、裁判の結果なら、その判決・和解額を損害総額とみなす」とは言うものの、実際、東海日動の担当者さんは、「その条項は求償の規定です。つまり、先に人身傷害保険を受け取り、後に裁判をした場合、裁判での損害総額に応じて、契約さんが損しない範囲で求償します、との意味なんです。これは、先に裁判で賠償金を受け取った後の過失分請求についての規定ではありません。したがって、支払い保険金は人身傷害基準で計算します(あしからず)。」と、満額支払いを拒否ってきました。    その話(長く難解ですが) 👉 人身傷害・今年の約款改定 ③ ~ 交通乗用具・三国志    それでも、連携弁護士が交渉、あるいは秋葉がお手紙を書いて説得し(保険金請求行為のお手伝いなので、非弁ではないですよ)、なんとか満額回収に成功しています。しかし、あきらめてしまう被害者さんが多いのではないかと思います。東海日動さん以外のBグループ社では、そのような回答はなかったと思います。さすがに、東海日動さんの担当者は手ごわい。悪い意味で優秀かもしれません。  

 この通り、東海日動さんは交通乗用具を半分復活させた一方、他社に目立った改定はありません。すると、日新さん、全労済さんの交通乗用具はフルセットの補償のままということです。支払い制限等もないので、「古き良き人身傷害」と言えるでしょう。

 別紙 ↓

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 主要社の比較に移ります。私共は、約款の支払い条項からA~Cと3グループに大別しています。それぞれの、支払い内容とその違いは、すでに何度も取り上げています。本筋に逸れますので、お時間のある方は以下をご覧下さい(長いですよ)。

 👉 人身傷害の約款改悪シリーズ 夢の全額補償が破壊された ②    前提として、人身傷害保険は、「自身に過失があっても、過失減額なく全額支払います。」「人身傷害保険で相手から減額された自身の過失分を出します。」と、全社パンフレットにうたっています。しかし実際は、損害総額を人身傷害の基準で計算しますから、弁護士などが介入して、賠償金を赤い本基準に釣り上げた場合、その額は認めず、あくまで自社の計算を限度にしか払わないのです。この問題は、平成23年2月の最高裁判例で、「裁判で決まった額なら、それで計算すべき(裁判基準差額説)」と、一応の決着はつきました。以後、各社は約款改定に追われ、支払い基準は、およそ3つのパターンに分かれました。    Aグループの支払い基準は、「裁判での和解・判決なら、その額を損害額の総額として認める」としています。最高裁判例に素直に従った形です。しかし、逆を言えば、「交渉解決では、人身傷害の決めた支払い基準ですよ」となります。交渉や斡旋機関で、裁判に近い賠償金を勝ち取った弁護士は、その後の人身傷害への請求(自身の過失分の回収)に毎度苦労させられます。あるいは、人身傷害への請求を放棄する先生も多いようです。    放棄の例 👉 ときに「人身傷害保険への請求が交通事故解決の最大の山場」となる ① 全額回収ならず     また、裁判で決まった額であっても、「支払い保険金は、人身傷害基準での総額まで」との、限度が規定されております(損保Jさん)。この天井によって、自身の過失が大きい被害者さんこそ、(過失割合によりますが)満額回収ができなくなります。   続きを読む »

 交通乗用具に限っては、フルセットの損保ジャパン、その優位(大盤振る舞い?)が目立ちますが・・

 最初に身も蓋もない事を言いますと、交通乗用具の補償範囲だけで損保の優劣は語れません。また、契約者さんもその観点のみで、保険会社を選ばないと思います。    ただし!    保険のプロたる代理店さんはそうはいきません。また、乗合代理店(複数の損保と取引、商品を扱う)の場合、違う責任が生じます。それは、お客様のニーズに合った商品・会社を選択して、お勧めする義務です。例えば、やんちゃ盛りの男の子3人は自転車を乗り回し、お父さんは駅まで自転車通勤、お母さんも買い物で自転車を・・このようなご家族に対し、(人身傷害の)自転車の補償を外すことは保険設計のミスです。もし、その補償のない商品・会社に切り替えて頂いた後、自転車で重傷を負ったら・・お客様に責められます。場合によっては、訴えられるリスクすらあるのです。

 もっとも、飛行機や船、エレベーター・エスカレーターでのケガで、その補償がない商品に切り替えたとしても、そう責められることはないと思います。あくまで、自動車保険なのですから。    それでは、3メガの一覧表です。見た方が早いです。  

※ 三井住友さんの△ですが、自転車・車いす・ベビーカー・シニアカーのみに限定しています。    詳しくは 👉 人身傷害・今年の約款改定 ② ...

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 この2年間、大きな動きがないこともあって、約款チェックを怠っていました。この春のセミナーにて取り上げるテーマですので、久々に(全社に近い)主要社の約款、その改正部分を確認していきたいと思います。まず、今年の改定では、交通乗用具の補償について、東京海上日動さんに動きがありました。   (1)交通乗用具への補償、その変遷を振り返ります

 人身傷害保険は、平成10年(1998年)、東京海上さんがアメリカのノーフォルト保険を参考に開発・発売し、その後、ほぼ全社が導入、今や自動車保険のスタンダードになっています。

 その後、大きな変化は「支払基準」と「交通乗用具」の改定です。今回の改定は後者についてになります。発売当初は、およそ移動に用いる乗り物なら、くまなく補償範囲としていました。それが、モラルリスク(不正な保険金請求)やリザルト(損害率)を理由に、東京海上さんが平成23年(2011年)に、続いて翌年、損保ジャパンさんから各社が次々に廃止しました。一方、三井住友さん、AIG(当時は富士火災)さん、日新さん、全労済さんなど、数社は残しました。

 それから10年後、何故か損保ジャパンさん、交通乗用具を復活させました。また、交通乗用具の範囲を狭めて定額払いとした三井住友さんや、補償内容を一部制限したあいおいさんなど、保険約款上、各社の違いが生じてきました。近年の約款改定で、最もダイナミックな部分と言えます。    基本、自動車が絡む事故・ケガであれば、人身傷害保険が適用されることは、一貫して変わりません(「契約車両のみ補償」を除く)。それでは、自動車が絡まない事故での交通乗用具の補償範囲について、今年改定の東京海上日動さんから見ていきましょう。    (2)交通乗用具への補償拡大を「人身乗用具事故補償特約」としました。パンフレット等には、以下のように整理されています。この特約で、「お車以外の乗用具に搭乗中の事故」、「歩行中や自転車運転中の乗用具との接触等による事故」に○がつきました。どこまで補償範囲が復活したのでしょうか?

  (3)交通乗用具の補償範囲を狭めました。

 かつての交通乗用具は、自動車以外も幅広く乗り物を認めていました。電車、船、飛行機まではわかりますが、人力車やベビーカーも含み、動く歩道やエレベータ―などは、もうわけがわからない補償範囲でした。

 本改定では、「軌道を有しない乗用具」と「軌道を走行する乗用具」と二分し、乗用具の定義を「軌道を有しない 陸上の 乗用具」としました。つまり、「軌道を有しない」で、まず電車が外れます。「陸上の」で、飛行機、船も外れます。エレベーター等は、問題外のようです。

 以下の通り、復活部分は黄色、かつての補償範囲すべての復活ではありません。

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 他社でも追加された、行方不明=死亡の推定条項です。生保ではおなじみのルールですが、自動車事故で行方不明とは想定しずらいので、今まで明記していなかったようです。

 しかし、交通乗用具への補償では、飛行機や船舶などが含まれますから、遭難、死体が見つからないなど、様々なケースが想定されます。しっかり書いておく必要に駆られたと思います。6条で、行方不明30日で死亡と推定するルールとしました。

 7条では、事故報告しなかった場合のペナルティが定められました。何を想定しているのか?ですが、これは保険金詐欺対策で、生きているのに死んだことにして・・例えば海難事故に便乗、「実は、あの沈没した船に乗っていました」等、保険金を請求する詐欺でしょうか。    一年間の行方不明者ですが、令和元年は届け出だけで86,933人です。安定した社会の日本でさえ、ここ10年は8万人台で横ばいです。<警察庁生活安全局生活安全企画課の統計発表>     第6条(死亡の推定)

⑴ 当会社は、被保険者が搭乗している航空機または船舶が行方不明となった場合または遭難した場合において、その航空機または船舶が行方不明となった日または遭難した日からその日を含めて30日を経過してもなお被保険者が発見されないときは、その航空機または船舶が行方不明となった日または遭難した日に、被保険者が死亡したものと推定します。

⑵ ⑴の場合、当会社に対する保険金の請求権は、被保険者が搭乗している航空機または船舶が行方不明となった日または遭難した日からその日を含めて30日を経過した時から発生し、これを行使することができるものとします。   第7条(事故通知の特則)

⑴ 被保険者が搭乗している航空機または船舶が行方不明となった場合または遭難した場合は、保険契約者または保険金を受け取るべき者は、遅滞なく行方不明または遭難発生の状況を書面等をもって当会社に通知しなければなりません。

⑵ 次のいずれかに該当する場合は、当会社は、それによって当会社が被った損害の額を差し引いて保険金を支払います。

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 自転車など交通乗用具での自爆事故、あて逃げ(加害者不明)の場合は、慰謝料と休業損害はでない。    今年、令和4年1月1日約款改定より、交通乗用具が復活して \(◎o◎)/! でしたが・・・   👉 人身傷害・今年の約款改定 ① ~ 損保ジャパン、交通乗用具・復活の日    どうやら、先行販売した人身傷害付の傷害保険UGOKUに同じく、制限があることに気付きました。   👉 画期的な傷害保険 UGOKU    これは、先日の茨城県・水戸セミナーで、代理店のMさまから教えて頂きました(ありがとうございます)。補償範囲拡大で喜んでいましたが、新たに増えた補償の支払い項目に一部削減がありました。

 あいおいさんも近時の改定より、同じように一部制限をかけました。両社の意図は、おそらく多くのケースで、自転車単独事故は警察の届け出などしない・・・つまり、交通事故以外でケガをしても「自転車でこけちゃって」と偽り、人身傷害保険を請求してくる・・虚偽請求を予想してのことかと思います。また、ひき逃げでも相手が判明しない限り、交通事故かどうかわかりませんので同じことになります。    このように、人身傷害の”交通乗用具への補償”はざる保険なので、東京海上日動さんはじめ、多くの会社が廃止した歴史があります。維持してきた会社(三井住友、あいおい他)、復活させた会社(損J)、いずれも自動車が絡む事故の補償は不変ですが、自転車はじめその他の交通乗用具に対して補償を制限する改定がありました。ちゃんと損保も考えているのですね。   続きを読む »

 

 人身傷害の約款に、過失分を引かれた賠償金と、過失を引かれない人身傷害の保険金、「どちらか多い方に請求を」と書かれているのでしょうか?    結論から言いますと、そのような記述はありません。どちらかを選択するのはあくまで被害者(請求者)です。担当者は「どちらかに」と、アドバイスをしているに過ぎません。もしかしたら、保険会社内部では約款に書かれてはいない、イレギュラーに対応する”運用基準”としているのかもしれませんが・・。    それでは、約款の支払い基準を復習しましましょう。人身傷害の支払いは、過去いくつかの裁判でも争われた、難しい 解釈論になっていました。約款タイプは大きく分けて以下、3メガ損保の3種に大別しています。ところが、他の会社も含め、担当者やセンター長の解釈が定まっておらず、案件ごとにちょっとした会議をして悩んでいる節があります。共済などは、そもそも(何が問題か)理解が及んでいない様子もうかがわれます。担当者の解釈・運用がバラバラな会社もあります。人身傷害の支払いとは、かな~り難しい問題なのです。    また、それを承知の上で、交渉や裁判で裁判基準の満額を獲得できる弁護士がわずかに存在するも、人身傷害の請求には消極的と言うか、端から介入しない弁護士さんが多いようです。これが、(弁護士に依頼したのに)被害者を困らせている現実です。

以下は復習となります。    現在、この問題に直面している被害者さん、頑張って以下を熟読、対策を講じて下さい。     平成24年2月の最高裁判決後、各社、約款を改定しました。人身傷害保険に自身の過失分を請求する場合は「相手と裁判で決着ならその賠償金(裁判基準)で計算」がスタンダードになっています。ただし、各社の約款・運用は異なります。   (1)東京海上日動さんは「先に人身傷害を請求した場合のみ、相手との裁判基準を認める」と、判例に合わせていますが、「先に賠償金を受けとった後に、人身傷害保険を請求すると」、まず「自社基準で支払います」と回答します。突き詰めると、「先の判例は求償の場合ですので、単に人身傷害への請求では人身傷害基準です」とのことです。

 詳しくは 👉 人身傷害の約款改悪シリーズ 人身傷害保険の支払限度は結局、人傷基準 ③   (2)損保ジャパンさんは潔く、「裁判なら、人身傷害の請求の前後に関わらず裁判基準で」としていますが、その約款には制限が仕掛けてあります。相手と裁判した場合、人身傷害の支払い額は裁判基準で計算するとしていますが、その限度額は人身傷害基準の総額なのです。30:70程度の事故なら間に合いそうですが、自身の過失が大きいケース、例えば、自分の方が悪い事故で70:30ともなれば、限度額までで終りそうです。確かに自分が悪い事故で、人身傷害に助けてもらう立場としては理解できますが、もう少し被害者に優しい内容にできないでしょうか。

 詳しくは 👉 続きを読む »

(自分30:相手70の過失割合として)

 相手から70%の賠償金が提示された後に、自身が加入している自動車任意保険の人身傷害に、相手から差し引かれた30%分を請求すると・・   「相手の保険会社の賠償額(過失分が引かれた70%)と、人身傷害の算定額(過失をひかれない100%)の高い方を選んで下さい」  

 人身傷害保険、最大の売りは、自身の過失を引くことなく100%支払う事です。そして、人身傷害の支払い基準は、基本的に対人賠償と同水準です。相手の賠償額は相手保険会社の対人賠償ですから、上の回答でも大きな差や損得が生じないことになります。

 しかし、対人賠償は「償い」の保険ですから、請求側(被害者)との交渉によって、支払う保険会社の対人賠償基準を超えることがままあります。請求側が弁護士であれば、確実に保険会社の提示を超えます。なぜなら、仮に裁判にならずとも、裁判での請求の相場でもある「赤い本」の基準で計算するからです。場合よっては保険会社の算定基準・提示の2倍以上にも格差が生じます。したがって、上の回答でどちらかを選択させる運用が幅を利かせてくるのです。

 これですと、相手から30%の過失分を差っ引かれても、その賠償金が人身傷害の算定額100%より多くなることが多く、結果、相手からの賠償金のみを受取り、自身加入の人身傷害保険を使わされずに済みます。

 

 同じ保険と名乗るも、”つぐない”の為の「賠償保険」と、契約で金額が決まった「傷害保険」は性質が違います。賠償保険は被害者への弁償ですから、とくに精神的損害の慰謝料や、収入によって変わる逸失利益などは、交渉で折り合いをつけるものです。もちろん、それらに相場がありますが、保険金は基本的な算定基準はあるものの、弾力的な増減を予定しています。一方、傷害保険は金額が基準で決まっているのですから、交渉の余地は原則ありません。    以前、大型代理店向けの人身傷害の研修で、裁判基準と保険会社基準で大きな差があり、これが人身傷害の最大の問題であるとの解説の中、営業マンさんから「賠償社と人傷社の金額を比べて多い方を選択する(=上の損保側の回答)が普通じゃないですか?」と質問されました。代理店さんも多くはそのような認識のようです。軽傷事故ならまだしも、後遺障害を残すようなケガであれば、障害の重さにもよりますが、数十数百万円から1千万単位で損をします。代理店さんがこれでは、お客様は浮かばれませんね。    では、担当者の言う「どちらか多い方に請求を」は、保険の約款に書かれているルールなのでしょうか?     つづく  👉 後編  

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 2度目のむち打ち14級認定は難しいものです。事故状況が車の大破なども含め、相当のケガでなければ2度目は難しい申請となります。

 本件の相手は、無保険、ひき逃げ、その筋の人と訳あり、まともに構える相手ではありません。そこで、相手の自賠責ではなく、人身傷害への請求としました。おかげで、加重障害の判定や厳しい審査を回避できた感があります。人傷社は諸事情を考慮せざるを得なかったと思います。災い転じてでした。後の賠償問題も人身傷害請求にて穏便解決としました。相手が相手なので・・。

あえて人傷  

人身傷害 併合14級:頚椎・腰椎捻挫(50代男性・神奈川県) 

【事案】

自動車で停車中、後続車の追突を受け受傷。

【問題点】

8年前の事故で頚椎捻挫で14級9号が認められていた。加害者車両は逃走したが後に捕まった。任意保険なく自賠責保険のみ。しかも、その筋っぽい。

【立証ポイント】

今回の事故で14級が認定されたとしても加重障害の判断で0円か、そもそも非該当にされやすい。相手が無保険であることから、人身傷害保険への請求・認定とした。

また、今回は腰椎の症状が強かったので、主訴を腰椎捻挫に絞った内容にまとめた。

頚椎・腰痛の両方がすぐに認定された。人身傷害認定はお客様に対しての認定であり、自賠責よりも易しい印象。  

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 何も好んで保険会社をディスる記事を書いているわけではありません。社員一人一人は皆、真面目で善良な人達です。ただし、組織となると・・昨日のように、契約者様をないがしろにするようなことになってしまうのです。

 通常、相手保険会社と敵対、バチバチ交渉することは普遍的な姿勢であり、被害者の権利です。ただし、それが掛金を支払っている保険会社に丸め込まれるとは、実にやるせない。その保険会社はお客様に対して背信的であると言えます。    さて、昨日のケースは最大の問題ですが、問題の規模が小さい件、つまり、金額の低い物損事故での過失割合の争いはより多いものです。この場合、自身契約の保険を使うことは、被害者=契約者の損得を計る上で、それ程の問題ではなく、むしろ自身契約の車両保険で完結する流れが得策であると言えます。これは、昨日とは逆の評価です。   ※ 人物名は仮名です。   (2)自分の保険を使えば、「金持ちケンカせず」で解決ですよ    南野さん、交差点の出会い頭事故に遭いました。幸いケガはありませんが、愛車のジャガー(英国製)の修理で50万円の損害です。優先道路を走っていた自分に責任はないと思いっています。今回も双方、同じ令和損保に加入していました。物損の交渉を自身加入の令和損保の対物担当:久保さんに任せたものの、相手の令和損保の対物担当者:吉田さんとの交渉で、10:90ならまとまるとのことです。

 納得できない南野さんは、直接、吉田さんと交渉しました。   吉田さん:「交差点では原則、両者に責任があります。南野さんは幹線道路で優先、相手は一時停止、判例では10:90、これでご納得できませんでしょうか?」   南野さん:「私が優先なので、責任はありません(怒)。0:100ではないですか」   吉田さん:「弊社としても過失10%は譲れません」   南野さん:「・・・」       交渉はこのまま平行線です。    そこで、久保さんから提案がありました。   久保さん:「このままでは埒があきません。南野さんは車両保険にご加入頂いているので、弊社の車両保険を使って頂ければ、即、修理できます。後は私が同じ会社とは言え、相手損保に取り立てして解決です。」   南野さん:「私が悪くないのに、自分の保険を使うんですか? それに、来年の掛金も上がってしまいますよ。」   続きを読む »

 私が保険業界に就職した30年前、国内損保社はおよそ32社、外資系3社だったと思います(不正確ですみません)。加害者側と被害者側が同じ保険会社だった事故は何度もあります。現在、吸収合併の進んだ業界、当然に同じ保険会社同士がぶつかることが増えたと思います。    同じ保険会社同士の事故は、正直好ましいと思いません。その弊害を実例から解説したいと思います。同じ保険会社同士なら話が早く、合理的に処理が進むケースも確かにありますが、それは、自身加入の人身傷害保険の出番ない、明らかな0:100のケースです。過失があれば、その減額分の確保のため、人身傷害保険が関与します。相手と示談して、賠償金をもらった後に、差し引かれた過失分を人身傷害に請求する流れが自然です。ところが、真っ先に自分の保険会社が人身傷害による解決を迫ってくるのです。   ※ 人物名は仮名です。   (1)人身傷害保険で解決しましょうよ    伊東さんは小型バイクで直進、交差点で一時停止無視の自動車と出会い頭事故となりました。バイクの修理費はたかが知れていますが、転倒による脛骨骨折でプレート固定の手術、入院10日・通院40日(後に後遺障害12級7号も)の人損の請求をすることになりました。判例タイムスなどから過失割合の相場は乙15:甲85です。しかし、加害者(甲)・被害者(乙)共に納得がいかないようです。双方保険会社の対物担当者・対人担当者にはしっかり交渉してもらいたいところですが・・・。  本件の保険会社は共に令和保険㈱です。事故後、伊東さんは相手損保からの連絡を待っていたところ、先に自身加入の令和保険の担当者:森保氏から電話が入り、こう提案されました。   森保氏 :「この度はお見舞い申し上げます。今後の補償問題ですが、相手の損保も弊社と同じです。そこで、提案なのですが、恐らく伊東さんにも過失がでて、賠償金を減額される恐れがあります。その点、弊社の人身傷害保険は過失減額なく支払えますので、相手との過失割合はじめストレスある交渉を続けるより、人身傷害への請求で進める方が良いと思います。いかがでしょうか?」   続きを読む »

 昨日のように、支払い内容をわずかに変更した会社を確認する作業・・老眼の進行と共に負担増を感じます。    それでも、以下のように一覧表にまとめました。しかし、2度の確認までしていませんので、間違いがあれば修正していきます。保険請求に直面し、検索の末たどり着いた皆様に事前に言いますが、情報を鵜呑みにせず、必ず約款を確認し、担当者に十分に調べてもらって下さい。

 まったく無責任な情報発信で恐縮です。近年の約款変更は本当に細かく、各社の担当者にとっても、自分の保険会社の約款理解すら追い付つかず、解釈が分かれることも珍しくありません。  

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 前回までは3メガ損保の比較をしました。大手社の新商品や約款改定があると、その他の会社が追従するパターンが常でしたが、独自路線の会社についても調べました。シリーズのタイトルは「人身傷害・今年の約款改定」と銘打ちましたが、2、3年前からの改定も含めますので、「近年の約款改定」と変更します。    前回まで

👉 人身傷害・今年の約款改定 ① ~ 損保ジャパン、交通乗用具・復活の日   👉 人身傷害・今年の約款改定 ② ~ 三井住友、交通乗用具やめるってよ    👉 人身傷害・今年の約款改定 ③ ~ 交通乗用具・三国志    三井住友さんは交通乗用具の補償範囲を狭め、支払い内容も人身傷害の最大の特徴「実額払い」を「定額払い」にしました。実額払いとは、実際にかかった治療費、休業損害などを実額で支払うものです。一方、定額払いは従来の傷害保険のように、「死亡1000万円、入院1日あたり5000円、通院1日あたり1000円」と契約前に金額が決められたものです。

 三井さんは2年前の改定で、(交通乗用具に限ってですが)定額払いに戻してしまいました。交通乗用具の範囲も、自転車、車イス、ベビ-カー、シニアカーだけに絞って、「自転車・車いす・ベビーカー・シニアカー事故傷害定額払特約」と別にしました。詳しくは、上のリンク 「三井住友、交通乗用具やめるってよ」をご覧下さい。    人身傷害・近年の約款改定 ④ ~ あいおいニッセイ同和さんの場合    あいおいさんの場合ですが、交通乗用具の補償範囲は保っています。しかし、2年前の改定で、(交通乗用具に限ってですが)傷害部分の支払いから、精神的損害(慰謝料)と休業損害を除きました(5条の①)。積極損害としての治療費は、提出する診療報酬明細書や領収書から金額が明確ですから、もちろん支払います。    静かな改定ですが、人身傷害保険のモデルであるアメリカのノーフォルト保険に近いづいた感があります。    もっとも、秋葉事務所では、深刻な問題ではないと解釈しています。なぜなら、大きな金額となるのは、何と言っても後遺障害です。賠償先行の場合、損害総額に傷害部分の慰謝料と休業損害を含めるようです(続きを読む »

世に言う、3メガ損保(※)。東京海上日動、三井住友、損保ジャパン。   ※ 3メガとは○○ホールディングスなどグループ企業(持ち株会社)の呼び方です。正しくは大手3社とよぶべきでしょうか。      国内社20数社から抜きんでた規模を誇る3つの巨大金融カンパニー、その補償内容については、常に他社が追従する傾向と思います。長らく全社同一補償・同一掛金であった戦後の護送船団方式は、1996年金融ビックバンより、各社、自由な掛金、自由な補償が可能となりました。それでも、会社ごとに大きな変化はなく、おおむね横並びは続いているようです。    横並びの補償であっても、ゆっくりとですが各社、約款に独自色をだしています。約款上の支払い条件などは、少々マニアック、契約する前に比較はしないでしょう。ただし、補償範囲はパンフレットで容易に比較できます。その象徴的なものとして、人身傷害保険の「交通乗用具」が挙げられます。    それでは、令和4年1月1日の改定、3メガ損保の変化を比較してみましょう。魏(東海日動)・呉(損保ジャパン)・蜀(三井住友)3国鼎立は崩れたのか、消費者(契約者)は厳しく見ていくべきと思います。あと、乗合代理店さん(複数の保険会社を取り扱う)もね。   続きを読む »

三井住友さん、どうした?  

三井住友、交通乗用具やめるってよ

 それでは、東海日動、損保ジャパンを後目に、交通乗用具を堅持していた三井住友さんはいかがでしょうか? 三井住友、あいおい、AIG・・長らく交通乗用具特約を残していました。念のため、今年改定の全社約款を確認のところ、三井住友さんが廃止したではないですか!

 正確に言いますと、三井住友さんは令和3年1月1日から交通乗用具の範囲を狭めました。自転車、車イス、ベビ-カー、シニアカー(以下、表。三井住友様パンフから転載)は残して、電車・船・飛行機など公共交通機関、エレベーター、エスカレーターなどそもそも乗り物としては疑問のあるものを廃止したのです。これを新たな特約として、人身傷害から分離させたようです。   続きを読む »

毎度! 人身傷害ウオッチャーの秋葉です。

 コロナですっかり研修会が無くなり、今年の自動車保険の約款チェックをサボっておりましたところ、重大な改定がありました。もっとも、大騒ぎしているのは秋葉一人で、業界ではいつもの約款改定の一つに過ぎないかもしれません。それでも一度やめた補償を復活させる・・これは保険商品として珍しい例と思います。

 来年、令和4年の約款が出揃いましたので、今日から3回に分けて解説します。  

損保ジャパン、交通乗用具・復活の日

 およそ個人契約の自動車保険の95%に付帯されている人身傷害保険、これは交通事故におけるご自身のケガを補償するものです。「搭乗中のみ担保」特約を付けなければ、歩行中や自転車搭乗中に自動車事故に遭った場合でも保障されます。それは契約者だけでなく、同居の親族まで補償範囲に入ります。支払い保険金は死亡で○円、後遺障害は等級に応じて○円、入院・通院で1日いくらの決まった補償ではなく、実際の治療費や休業損害はじめ実費の損害に加え、保険会社の決めた基準になりますが慰謝料や逸失利益まで、それら実額での支払いを売りとした保険です。東京海上日動が国内で初めて発売して以来23年、すっかり定着した感があります。      各社、補償の範囲はほとんど一緒ながら、一つだけ絶大な差がありました。それが、交通乗用具への補償です。交通乗用具とは、自動車や二輪車以外の乗用具の総称で、その代表は自転車でしょうか。自転車以外の乗り物は、約款で細かく指定されています。   人身傷害保険と交通乗用具の復習はこちらを 👉 詐欺シリーズ ...

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 人身傷害は保険会社が予め金額を決めた傷害保険なのか、    加害者を肩代わりする賠償保険なのか?    言い換えると、保険会社の支払い基準に準じで計算される定額保険なのか、加害者と被害者が交渉の末に合意した金額を払う「つぐない」の保険なのか? 現在も個別案件で絶えず問題となっています。

  

 平成24年2月の最高裁判決後、各社約款の改定を進めてきました。一部の会社を除き、「裁判での和解・判決なら、その金額を損害総額と認める」約款に改定、もしくは実際の運用でそうしています。すると、裁判外で合意・示談した賠償金総額は、この約款を盾に認めません。そこから交通事故・第2の戦いになります。人身傷害への満額請求こそ、私共にとって一貫したテーマなのです。    この3年は大きな約款改定の動きはないようです。詳しくは、  ⇒ 人身傷害の約款改悪シリーズ 人身傷害保険の支払限度は結局、人傷基準 ①     この問題を一から説明するのは難解で時間がかかります。一言で言えるものではありませんが、早い話、自動車保険の契約時には夢のような補償を説明しますが、実際に支払う際に裏切られることがある、と言うことです。    人身傷害保険発売以来、その売り文句は以下の通りです(某社パンフレットを参考に図示)。

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