また新しい保険が開発されました。<朝日新聞4月の記事より>    独り暮らしの高齢者が誰にもみとられず自宅で亡くなる「孤独死」。賃貸住宅で亡くなった場合、大家がスムーズに対応できるよう必要な費用を補償する保険商品が増えてきた。超高齢化社会で家を貸す側も居住者の「もしも」に備える必要が高まっているようだ。

 損保ジャパン日本興亜は6月から、火災保険とセットで「孤独死」に対応した保険を売り出す。居住者が亡くなった後の部屋の清掃や修復、遺品整理や見舞金など、オーナーに必要になる費用を補填する。その後、空室が続いた場合の家賃も1年間まで補償する。出費や損失補償額を各100万円までとした場合、保険料は年2万5000円。

 三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険は、同様の商品を共同開発し2015年10月に発売。今年2月末時点で、両社で計1万2千件の契約があった。「高齢化の伴う突発的な事態に備えたいとのオーナーのニーズは高まっている(三井住友海上)。こうした保険が広がることで、独り暮らしの高齢者が賃貸住宅に入居しやすくなることも期待される。

 東京都監察医務院によると、東京23区内の65歳以上の単身世帯の人が自宅で亡くなり、死因がはっきりしない孤独死は2016年で3175人。10年前より焼く1300人増えた。

 以前から「家賃補償保険」がありました。これは、空き室の家賃収入減のリスクを回避するため、アパートオーナーに勧める商品でした。しかし、掛金が高いのか、あまり売れた印象を持っていません。社会的なニーズに今ひとつ・・だったのかも知れません。この保険が、現在の社会問題に即応した特約をつけて新しく生まれ変わった印象です。

 現在、高齢者社会の進行と共に、若い人の自動車保険や働き盛りの医療・傷害保険などは当然に契約数が減少しています。逆に、新しいニーズとして高齢化のリスクに対応する商品が続々と開発されています。この保険も、「高齢独居者の入居増加に対する貸主のニーズ」から生まれたものです。オーナーは若い人ならともかく、独り暮らしの高齢者の入居は、病気や孤独死の問題が想定され、敬遠したいものです。この保険の普及によって、「高齢独居者の入居問題」の緩和に期待がかかります。  

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 以前も指摘しましたが、頚椎捻挫で14級が認定される場合、診断名に腰椎捻挫があれば、高い確率で腰も認められます。例え、症状が重くなく、MRIも撮っていなくても容易に認定されます。弊所では、これを「ついで認定」と呼んでいます。

 14級は何個ついても併合で等級が上がる訳ではなく、保険金も同じです。後の賠償交渉において、たくさん14級をとることで、障害の困窮をより主張はできますが、劇的な増額効果は望めません。14級同士の併合はそれほどうれしい成果にはならないのです。

 頚部や腰部の神経症状は、治りづらく、再発を繰り返す傾向です。また、頚椎を傷めやすい人は、同じ脊椎である腰も同様の傾向です。自賠責は、既に14級認定者が2度目のむち打ち事故で申請してきた場合、「加重障害」扱いが可能です。加重とは「既に14級の障害者だから、同部位に同じ程度の障害が重なっても0円ね」とのルールです。ならば、既に頚で14級をとった被害者さんは、二度目は別部位の腰で申請を試みます。これに対して、自賠責は「先の14級認定で味をしめたな?」と考えます。したがって、このような申請者に備えて、腰も加重障害とすべく、(障害程度としては弱く、単独の申請では非該当かもしれないが)前もって14級にしておくのかもしれません。

 どうも、自賠責が併合認定を推奨、「14級認定なら両方つけとこう!」、このような運用しているように見えます。

ゲスの勘ぐりでしょうか?

併合14級:頚椎・腰椎捻挫(70代女性・山梨県)

【事案】

自動車運転中、飲酒運転の自動車に正面衝突される。頚部痛のみならず、手のしびれ、頭痛等、強烈な神経症状に悩まされる。 【問題点】

事故当日は独歩で帰宅したが、あとから症状がひどくなり3日後には入院してしまった。また、車がなくては不便な場所の為、ある程度回復するまでは一人で病院に通院することが出来ないことが懸念された。

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【事案】

バイク運転中、対向車線からの右折自動車の衝突を受ける。手指を損傷、診断名は以下の通り。

・母指(親指)→ 伸筋腱断裂

・示指(人さし指)→ 中手骨開放骨折、伸筋腱断裂

・中指 → 伸筋腱断裂

・環指(薬指)→ DIP関節脱臼

・小指 → 伸筋腱断裂 【問題点】

症状固定時期には、人さし指のMP関節とPIP関節の可動域が2分の1制限、中指のPIP関節も可動域が2分の1制限、それぞれギリギリであったため、症状固定を急いだ。さらに、薬指のDIP関節も関節可動域に制限を残した。このDIP関節はどのように等級判断されるかを注目した。

前任弁護士は手指の障害をあまり理解していない様子で、事故から1年たっても具体的な方策なく、症状固定に踏み込めずにいた。

【立証ポイント】

漫然と医師の診断を待っているわけにはいかない。依頼者の理解を促して、弁護士を交代して進めることになった。

主治医のいる病院と手術を実施した病院の医師とが分かれており、それぞれに検査、診断書の依頼で往復が続いた。一番の問題は、伸筋腱断裂とあったにもかかわらず、MRIは一度も撮影していなかったことである。急いで検査を実施し、可動域もしっかり計測を行い、専用用紙にまとめた。最後に、すべての画像、前任弁護士が集めきれていなかった診断書、レセプトを集積して被害者請求へ。

約3ヶ月も審査を経て、認定等級は以下の通り。

① 親指は可動域制限等なく、痛み・しびれ等の症状から、お馴染みの14級9号に。

② 人さし指のMP関節とPIP関節の可動域2分の1制限、及び、中指のPIP関節可動域2分の1制限から、「親指以外の2の手指の用を廃したもの」として、問題なく10級7号が認定。

③ 薬指のDIP関節は、「1手の親指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの」として、14級7号という、事務所初の認定が加わった。

尚、②と③の障害は同一系統(機能障害)の障害であったため、併合ではなく、10級相当と認定された。ただし、① 別系統(神経症状)の認定等級が加わり、最終的には併合10級に。

※ 併合の為、分離しています。

(平成30年4月)

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 自賠責が通院日数○日以上で14級、○日以下では非該当と、明確な基準でジャッジしていないことはわかっています。

 しかし、当然に目安のような基準は設けていると思います。さらに、14級認定は通院回数だけではなく、受傷機転や症状の一貫性を加味して判断します。補強的な所見として、神経学的所見やMRI画像などもあります。何より、訴えの信憑性が問われます。これらの要素を総合的に検討しているので、認定・非該当の明確な基準を求めてもはかなく、予想がしづらいのです。

 それでも、本件は通院日数を重視しました。通院実績を積み重ね、認定に漕ぎ着けたといえます。繰り返しますが、通院○日だったから認定と、単純に思わないで下さい。

継続的なリハビリ通院が重要です

併合14級:頚椎・腰椎捻挫(40代男性・静岡県)

事案】

自動車運転中、交差点で左方から相手方自動車が進入し衝突、受傷した。直後から頚部痛、腰痛のみならず、手のしびれ等、神経症状に悩まされる。

【問題点】

面談時では、通院回数が少なく、事故から半年経過しても少なすぎる懸念があった。 続きを読む »

【事案】

バイク運転中、交差点で自動車と出会い頭衝突、足を受傷。診断名は足関節内果(内側のくるぶし)・開放骨折。

【問題点】

長期のリハビリも機能回復が進まず、数年が経っていた。自賠責の申請をしていないことに気付き、相談会に参加された。専門性を評価いただき、ご依頼となった。

【立証ポイント】

医師面談の末、正確な計測を促した。時間は経っていたが、受傷程度から難なく認定となった。

※ 併合の為、分離しています。

(平成30年4月)  

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 久々に、顧問の社労士先生と打合せ、というか飲み。

 他士業の先生からは、別分野の話が聞けて大変に勉強になります。昨夜の話では、ある社労士事務所の雇用方針を聞きました。何でも、その事務所では、社労士資格もしくは資格勉強中の社員を募集・採用しないそうです。募集者の属性はなんとSE経験者です。SEとは和製英語ですが、システムエンジニアのことです。SEは、仕事に使うコンピューターの仕組み(システム)を作る人と理解しています。つまり、コンピューターにかなり強い人、と言っても外れていないでしょう。

 その社労士先生は、まずSEを採用し、SEに社労士の仕事を教えるそうです。当然ですが、どの士業でも、その作業の大半はパソコンを使います。その様々な手続きについて、専用ソフトも揃っています。したがって、そのソフトに沿って作業をする以上、社労士の知識<PCの活用能力、なのかもしれません。    これは、現在どの仕事にも当てはまる理論に思います。行政書士・司法書士なども、各種手続きは電子申請が増加、それ以外でもパソコンでの作業が普通です。もちろん、士業各分野の専門知識は必要ですが、それは少人数で足ります。組織的に事務所を運営する場合、システム重視の発想に行き着くのです。

 世の趨勢はシステム化、そして、いずれはAI(人工知能)が主流になるかと思います。士業の世界でも、当然に手続きの電子化が進むでしょう。業務を手段から考える・・目的(認可・許可・認定)と手段(パソコン作業・電子申請)の逆転現象が起きていると思います。

 ともあれ、”逆転を容認する柔軟な思考”が必要である事は間違いありません。  

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 いかに、自賠責調査事務所に障害を克明に伝えるか・・私達の仕事はこれに尽きます。

 とくに高次脳機能障害では、医師の診断だけに頼ることになく、家族から綿密な聞き取りを行い、関連する資料を出来るだけ集めます。その資料とは文章に限りません。写真や活動記録、そして、時には記録映像を作成します。ビジュアルに訴えることは、一目瞭然の例えのごとく、審査側に障害の実像が伝わると思います。

 本件では、事故前の活動記録を示す写真が、能力低下の証明に役立ちました。障害の調査は、誰かか自動的にやってくれるものではありません。医師任せでも不十分です。被害者側が積極的に動くものです。さらに、これをお手伝いできる事務所は、実は極めて少ないと思っています。    高次脳機能障害の立証、本件から学ぶことがたくさんありました  

5級2号:高次脳機能障害(60代男性・埼玉県)

【事案】

歩行中、自動車に衝突された。頭部を強打し、意識不明の状態で救急搬送、急性硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血、脳挫傷、頭蓋骨骨折の診断となった。

【問題点】

面談時に易怒性が顕著に現れていたものの、記憶障害やその他の障害については精査の必要があった。ご家族の話では、能力面において事故前との落差が激しいとのことだった。しかし、お住まいの地域に高次脳機能障害を検査・評価できる病院がなく、交通の便も良いとは言えない為、転院先の選定が課題となっていた。 続きを読む »

 高次脳機能障害の症状で、多くの患者さんに共通するものは、記憶障害や注意・遂行機能障害です。その他、言語障害や失認・失行など、様々な障害があります。いずれも、各種の神経心理学検査から、ある程度の客観的な所見(データ)を得ることが可能です。

 しかし、客観的なデータと言う意味では、性格変化が最も立証の工夫が必要と思います。怒りっぽくなる、逆に細かく神経質だった人が穏やかになる、他にも以前の性格が逆転し、明るく快活になる、暗く閉じこもりがちになる、子供に返る、趣味・嗜好が変わるなど、脳へのダメージで性格が変わることがあります。これらは、検査で確認できるものではなく、事故前後の比較に尽きます。患者の元々の性格を知らない医師では前後比較ができませんので、家族からの聞き取り、観察がすべてとなります。

 本件も一見、深刻な障害には見えない被害者さんでしたが、家族にとって、性格が変わってしまった事は大変な変化なのです。受任からおよそ10ヶ月間、ご本人とご家族に付き添った結果、自賠責に性格変化を克明に伝えることができました。    被害者にぴったり寄り添わなければ、わからないと思います。  

5級2号:高次脳機能障害(50代男性・埼玉県)

【事案】

自転車で走行中、併走する自動車と接触、転倒した。頭部を強打、意識不明状態で救急搬送されて、脳挫傷、くも膜下出血の診断となる。

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【事案】

歩行中、自動車に衝突された。頭部を強打し、意識不明の状態で救急搬送、急性硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血、脳挫傷、頭蓋骨骨折の診断となった。

【問題点】

面談時に易怒性が顕著に現れていたものの、記憶障害やその他の障害については精査の必要があった。ご家族の話では、能力面において事故前との落差が激しいとのことだった。しかし、お住まいの地域に高次脳機能障害を検査・評価できる病院がなく、交通の便も良いとは言えない為、転院先の選定が課題となっていた。

【立証ポイント】

受傷後約1ヶ月時に相談にいらして頂けたので、転院から密着してお手伝いとなった。本来であれば、高次脳機能障害は1年後に症状固定するのが通例だが、本人とご家族の意見から早期解決を目指し、事故後半年で症状固定する方針とした。

元々活動的で多趣味、周囲からの人望も厚く、多くの人に愛されていたであろうという事が分かるエピソードや資料が豊富に残っていた。さらに、ご家族に日常生活での問題行動を記録するよう指示、写真等も加えて集積した。

これらの資料から、受傷前後の対比が非常に分かりやすくなり、日常生活状況報告書でも具体的な主張ができた。高次脳審査会も本件の症状が容易に判断できたのか、わずか48日という期間で5級2号が認定された。弊所の高次脳機能障害の最短認定記録を更新した案件となった。

(平成30年3月)  

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【事案】

自転車で走行中、併走する自動車と接触、転倒した。頭部を強打、意識不明状態で救急搬送されて、脳挫傷、くも膜下出血の診断となる。

  <参考画像:右前頭葉への脳挫傷>

【問題点】

本人との面談時、外見上はとても元気そうで、職場や相手方保険会社の担当者からも症状は軽く見られていた。ケガをした本人も自分はもう大丈夫だと元気さをアピールしていた。しかし、家族の話を聞いてみると、本人が自覚しきれていない症状が多くあり、とても仕事復帰できる状況ではなかった。

【立証ポイント】

実施した神経心理学検査を病院同行で確認し、自覚症状(家族から確認していた症状)と表れていた検査数値と比較し、家族が重くとらえすぎている症状や、逆に軽く感じすぎている症状を浮き彫りにする作業が続いた。

とくに、神経心理学検査で判別が難しい、性格変化がクローズアップされた。事故前よりも性格が明るくなりすぎた事や、幼児退行、事故前から持っていた趣味への関心がまったくなくなったこと等が明らかになった。家族は性格が明るくなった面(周囲からは歓迎されうる性格変化?)について違和感を覚え、戸惑っている様子だった。そこで、弁護士事務所での面談や病院同行でのエピソードを採用、これらをもとに、日常生活状況報告書をまとめて被害者請求をした。

その結果、主治医の予想を上回る5級2号が認定された。なお、本件では味覚・嗅覚障害もあり、それぞれ14級相当が認定され、併合5級となった。

※ 併合の為、分離しています

(平成30年3月)  

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 前日の解説から、給与額・勤務日、その対比がはっきりしていれば、(b)方式=「休日を差し引いた勤務日数で月給を割って、日額を算定する」ことが正しい算定となります。それでは、アルバイト・パート・日雇い労働者の場合を続けます。

  (2)日雇い労働者やアルバイトについても、労働契約上、実際に労働した時間に応じた金額の給与が支給されることになっているはずですので、適切な証拠があれば、事故前に実際に労働した単位時間(実労働日1日)当たりの基礎収入を算定することが可能です。

 そして、労働契約上、各週・月のどの日に勤務するかが概ね決まっている者(アルバイトにはそのような者が相当数いると思われます。)については、事故に遭わなかった場合、どの日に労働していたかを認定することができるため、(b)の計算方法で休業損害を算定することができます。このような場合に、被害者側が(b)の計算方法で算定した休業損害を請求しているにもかかわらず、(c)の計算方法を採用することは、休業損害を過少に認定することになるので、適切とはいえません。    他方、日雇労働者は、通常、短期の契約を予定していて、事故の発生の時点で、将来どの日に労働するかが決まってないことが多いと思われます。

 また、アルバイトにも、労働契約上、各週・月のどの日のどの時間に勤務するかが決まっていない者もいます。このような給与所得者については、事故に遭わなかった場合、どの日に労働をしていたかを認定することが困難であり、(b)の計算方法で休業損害を算定することはできません。

 しかし、通院などによって、事故に遭わなかった場合と比較して、その分の労働の機会を失い、現実の減収が生じたとみることができますので、休日を含んだ一定期間の給与の平均日額を基礎収入とし、これに通院日等を乗じる方法((c)の計算方法)で休業損害を算定することになると考えられます 。  

 アルバイトについては、時給が定められており、勤務日(シフト)もある程度固定していれば、以前から保険会社も(b)方式で算定してくれました。日雇いも同じく、計算が易しいものです。しかし、今回の解説を読むと、証拠が必要であると読み取れます。保険会社に(b)方式で請求をすれば、勤務予定表や過去の勤務表なども必要になるかもしれません。

 保険会社は常に”払い過ぎ”に臆病な生き物です。細かい立証を待たず、(c)方式での支払が無難なのでしょう。そもそも、休業損害の支払いは、被害者の差し迫った損害に対し、急いで対応するものです。したがって、案件の性質に合わせて柔軟に算定方式を使い分けることはもちろん、まずは(c)方式での支払いを受けて、最終的な賠償交渉で、立証書類を基に(b)方式に算定し直し、不足分の追加請求も有りかと思います。

 総括しますと、判で押したように「事故前の3ヶ月を90日で割って、日額を算定する」方式は、もはや、スタンダードではない。ただし、「休日を差し引いた実勤務日数から、日額を算定する」方式は、それを裏付ける書類が必要であること。また、実勤務日数と対応する給与が明らかではない場合や、急場しのぎでは、「事故前の3ヶ月を90日で割って、日額を算定する」方式もあり得る、と言う所でしょうか。    

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 今年の『損害賠償算定基準2018・下巻』(いわゆる赤本)引用、 武富 一晃 裁判官 の解説を続けます。   (2)以下、どのような場合にどの計算方法を用いるべきか、給与所得者が継続して完全休業する場合と給与所得者が就労しながら一定の頻度で通院を行っている場合に分けて検討していきます。   給与所得者が継続して完全休業する場合

 休業損害は、事故による受傷を原因とする休業のために支給を受けられなかった減収分(差額)について認められるところ、労働契約上、勤務時間等が定まっていて、実際に労働した時間に応じた金額の給与が支給されている給与所得者については、休業損害を正確に算定するため、計算方法 ②で収入日額を算定し、これに実際の休業日数を乗じる方法((b)の計算方法)によるべきという考え方もあり得ます。

 しかし、完全休業の期間がある程度長期の場合には、(a)、(b)の計算方法のいずれを採用しても、結論に大きな差は出ません。また、休業損害は、事故後も事故前と同様に勤務を続けたという仮定的な状況において得られたはずの給与と現実に得た給与の差額を算定するものであること、給与は、基本給のほか、時間外・休日・深夜労働の割増賃金や歩合給を含む諸手当の金額、時間外労働や休日労働を含む実際の労働時間によって決まるものであって、同じ労働契約のもとでも、金額が期間ごとに変動することから、その性質上、厳密な意味で正確な休業損害を算定することはできません。

 したがって、ある程度長い期間継続して完全休業する場合には、(a)(b)の計算方法のいずれかを採用してもよいと考えられます。実務上、(a)の計算方法が採用されることが少なくないのは、このような事情によるものと思われます。 続きを読む »

【事案】

自転車で走行中、併走する自動車と接触、転倒した。頭部を強打、意識不明状態で救急搬送されて、脳挫傷、くも膜下出血の診断となる。

【問題点】

本人との面談時、外見上はとても元気そうで、職場や相手方保険会社の担当者からも症状は軽く見られていた。ケガをした本人も自分はもう大丈夫だと元気さをアピールしていた。

【立証ポイント】

受傷箇所が前頭葉であったので、感覚器障害を疑い、本人・家族から、味覚と嗅覚の異常を聞き出した。 (味覚・嗅覚などの感覚器障害は、前頭葉へのダメージで頻発します)

主治医の病院では、T&Tオルファクトメーターやろ紙ディスク検査設備が無かった為、設備と専門医のいる病院へ誘致した。その後、結果結果を持ち帰り、後遺障害診断書にまとめて頂いた上、被害者請求を実施した。

味覚・嗅覚ともに一部の低下がみられ、それぞれ14級相当が認められた。

※ 併合の為、分離しています

(平成30年3月)  

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【事案】

自動車運転中、飲酒運転の自動車に正面衝突される。頚部痛のみならず、手のしびれ、頭痛等、強烈な神経症状に悩まされる。 【問題点】

事故当日は独歩で帰宅したが、あとから症状がひどくなり3日後には入院してしまった。また、車がなくては不便な場所の為、ある程度回復するまでは一人で病院に通院することが出来ないことが懸念された。

【立証ポイント】

入院中にご子息と打合せをして立証作業を進めていた為、退院してからのMRI撮影も順調であった。また、ご子息に送迎等の協力を仰ぎ、症状固定まではとにかく通院を継続してもらった。主治医も協力的であった為、非常に良い立証が出来た結果、併合14級が認定された。

因みに、今回も、腰部はMRIは撮影していなにもかかわらず14級が認定されている。

(平成30年3月)  

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【事案】

自動車運転中、交差点で左方から相手方自動車が進入し衝突、受傷した。直後から頚部痛、腰痛のみならず、手のしびれ等、神経症状に悩まされる。

【問題点】

面談時では、通院回数が少なく、事故から半年経過しても少なすぎる懸念があった。

【立証ポイント】

保険会社の担当者にお願いをして、何とか事故から7カ月間治療費を出して頂き、通院実績を延ばすことが出来た。幸い医師も協力的で、画像所見も丁寧に後遺障害診断書にまとめて頂き、被害者請求を実施した。結果、頚部・腰部でそれぞれ14級9号が認定された。

(平成30年3月)  

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 (今まで保険会社が判で押したように提示してきた)休業損害の計算方法について、以前から議論がありました。ついにと言うべきか、今年の『損害賠償算定基準2018・下巻』(いわゆる赤本)において、具体的な見解が示されました。今後の交通事故賠償のスタンダードになりうる算定基準と思います。連携弁護士K先生から、早速のご指摘がありましたので、同本より抜粋して勉強したいと思います。    まず、問題点を簡単に説明します。

○ 保険会社が用いる、休業損害の計算方法とは・・

 事故がおきた日の前の月、前々月、その前月、の3ヶ月間の給与を合算し、それを90日で割った金額を「休業日額」とします。これに、実際に事故で休んだ日を乗じます。

(例)会社員の山本さんは追突事故でむち打ちになり、大事をとって、翌日から会社を3日休みました。その後も、週2回の通院の日は会社を休みました。2ケ月後に完治して示談となりました。会社を休んだ日は合計で15日でした。  会社で書いてもらった休業損害証明書を保険会社に提出したところ、計算・提示してきた休業損害の計算式は以下の通りです。尚、山本さんの給与額ですが、ここしばらく毎月25万円でした。   25万円×3ヶ月=75万円 ÷ 90日 = 8333円(日額)× 15日(休んだ日)= 124995円     山本さんは、そんなものかなぁと印鑑を押しましたが。どうも釈然としません。なぜなら、日額の計算は、完全にお休みとなっている土日も含んでいます。本来、25万の月給は、土日を除いた週20日前後の業務に対しての賃金です。事故前の3ヶ月の出勤日は祭日もありますので、それをひくと(20日、22日、21日)でした。したがって、   25万円×3ヶ月=75万円 ÷ (20日+22日+21日=63日) =11904円(日額)× 15日(休んだ日)= 178560円     保険会社の計算に比べ、約5万円も高いのです。これが正当な計算ではないかと・・・    これら計算方法による金額の違いが、長らく議論となっていました。     ここで、最新の裁判官の解説を見てみましょう。

 

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 秋葉事務所では、受任の80%の認定を達成していますが、逆を言えば、20%は取りこぼしています。残念ながら、5件に1件は非該当となります。認定予想がもっとも難しい傷病名ですが、実は、むち打ち=頚椎捻挫です。

 私達の姿勢は受任の100%に等級認定を得ること、認定が到底無理な件は受任しない、つまり、依頼者様に無駄なお金を使わせないようにすることです。それには、経験に基づいた高度な目利きが必要です。この目利きが利かなければ、”ダメもとで申請しましょう、等級がつくかどうかわからないが念のため”・・・このような動機となり、依頼者さんに貴重なお金と時間を浪費させることになります。

 ある事務所では、依頼者の希望さえあれば、又は、弁護士費用特約がついていれば、全件受任するそうです。もちろん、有償での依頼ですから受任者にお金が入ります。受任する側は、利益が少ないながらも、依頼者をさしおいて利益を得ることになります。経営方針と言えばそれまでですが、これで利益を得ることはいかがなものでしょうか?

 「依頼者が希望するから・・」であっても、「ダメなものはダメ!」と断言することが、目指すべき誠実な対応と思います。仮に、弁護士費用特約のおかげで、依頼者に費用がかからなかったとしても、依頼者に無駄な時間を浪費させ、希望を持たせてがっかりさせる・・これは罪なことだと思います。

 常に100%の認定を目指す、そして、無理な申請は無駄と依頼者に熱意を持って説明する。これが、プロの姿勢と思います。それでも、「どうしても!」と諦めない依頼者さんがおります。また、審査側も神ではありません。人が審査する以上、結果のすべてが完璧に障害の実情に合致することもないでしょう。100%は実に難しいものです。  

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 秋葉事務所では、足の難治性骨折の案件を常時、お預かりしています。

 とくに、感染症にさらされた被害者さんは、菌が暴れだす度にデブリ洗浄(手術で骨を洗う、と言うより削る)を行うので、骨癒合はやり直し、数ヶ月後に遠のきます。その間、治療費や休業損害の確保、労災適用や健保治療切り替え、専門医への誘致など、作業は多肢にわたります。重傷骨折者の皆さんこそ、その面倒をみれる事務所にご依頼いただきたい。まさに、被害者さんと二人三脚、折れた脚と共に歩むことになります。

 しかし、実際は、「等級が出るまで待っています」との事務所が圧倒的多数なのです。場当たり的なアドバイスはあるでしょうが、基本的に何もしないで待っているだけです。症状固定日まで無為無策では、予後の回復はもちろん、後遺障害等級、賠償金に深刻な禍根を残すことになります。重傷者の皆様、事務所選びは是非、慎重にお願いします。  本件も厳しい戦いが続きます。

9級相当:距骨粉砕骨折、母趾基節骨骨折(40代男性・埼玉県)

【事案】

2輪車で直進道路で走行していたところ、左後方から合流してきた自動車と衝突、受傷した。直後、救急搬送され、距骨粉砕骨折(足関節脱臼骨折)、母趾基節骨骨折、と診断された。

【問題点】

加害者は任意保険に入っていなかった為、労災で治療費を確保することになった。骨折した箇所を創外固定したが、術後に感染症を発症する。デブリドマン洗浄し、抗生剤治療を実施、骨折箇所の癒合を待ちつつ、リハビリを続けることになった。

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 埼玉から今の事務所に移って足掛け6年、5回目の桜です。今年も首都高速の真上、祝橋公園の桜が満開を迎えました。本日も手抜き記事ですが、お許し下さい。

 この季節、お弁当タイムは近隣のサラリーマン、OLさんで一杯です。夜は飲ん兵衛が深夜まではしゃいで、ちょっとした喧騒となっています。

旧電通本社ビルをバックに

   今年、事務所の引越しを予定しています。この桜も最後かな。  

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【事案】

2輪車で直進道路で走行していたところ、左後方から合流してきた自動車と衝突、受傷した。直後、救急搬送され、距骨粉砕骨折(足関節脱臼骨折)、母趾基節骨骨折、と診断された。

【問題点】

加害者は任意保険に入っていなかった為、労災で治療費を確保することになった。骨折した箇所を創外固定したが、術後に感染症を発症する。デブリドマン洗浄し、抗生剤治療を実施、骨折箇所の癒合を待ちつつ、リハビリを続けることになった。

さらに、運が悪いことに、本件は労災の規定上、術後150日経過のリハビリ治療費は支給中止と決定された。感染症の為、骨の癒合が遅れた理由から、主治医に治療の継続を労災に伝えて頂くが、労災はそれでもリハビリ代を出さなかった。

【立証ポイント】

被害者さんと骨癒合まで辛抱の日々が続いた。

骨の癒合が確認できたと同時に症状固定し、診断書に可動域制限を細かくまとめて頂く。本件では足関節、母趾関節の可動域制限が残ったが、このままではリハビリ不足による筋拘縮によるものと自賠責が判断する恐れがあった。したがって、診断書では表現しきれないこれまでの治療努力や具体的な症状について日常面、仕事面での各支障を別紙にまとめて被害者請求を実施した。

その結果、自賠責は、可動域制限は本件骨折によるものと認め、足関節の機能障害で10級11号、母趾関節は12級12号、(同一系統の併合による)9級相当が認定された。

(平成30年2月)  

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