2、肩腱板損傷の診断    その多くは、棘上筋腱が大結節付着部から断裂するケースです。   ■ 圧痛部位

 大結節上方(肩と腕をつなぐ部分)に痛みが生じます。特に腕を外転60度から上に挙げた時に顕著で、肩の高さ以上に上げるとその痛みが軽減します。腕の無力感も伴うので腕の上げ下げ自体が自力で困難となります。これらがドロップアームサイン(昨日業務日誌参照)によって判定できます。     ■ 画像

① MRI(T2) ・・・腱板の断裂部分が高輝度で描出されます。   ② MRI(造影剤使用) ・・・完全断裂に至らない損傷の場合、微妙な病変部をよりはっきりさせるため造影剤が有効です。腱板の亀裂部分から造影剤が漏出するので損傷が明らかになります。しかし、造影剤使用はかなり限定的です。最近のMRI高性能マシン3.0テスラでは、断裂部がしっかり写るからです。MRI検査も技師の腕によって左右します。   ③ エコー ・・・超音波をあて反射音波の変化よって画像を描出する技術です、基本的に超音波は液体・固体がよく伝わり、気体は伝わりにくい。よって断裂・亀裂部分が腱の表面に描出されます。MRIより、エコー診断に自信のあるドクターもおりました。   ④ 関節鏡 ・・・腱板不全断裂の確定診断に有用です。主に鏡視下手術(直径2~10mmの細長いビデオカメラを手術部位に挿入し、テレビモニター上に映し出された映像を見ながら行う手術)の際に用います。   ■ 筋萎縮

 視認できますので、等級申請の際に写真添付をします。腱板断裂では断裂のあった棘上筋もしくは棘下筋の委縮となります。しかし他の筋に及ぶ場合、僧帽筋(副神経麻痺)、三角筋(腋窩神経麻痺)の時は腱板損傷以外の病態も疑う必要があります。  

<後遺障害等級>

部位

主要運動

参考運動

肩関節

屈曲 ...

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 最近、肩の不調を訴える被害者が続きました。交通事故外傷でも比較的見逃しやすい筋腱の損傷です。

 断裂まですれば、それなりの検査と治療が行われます。しかし、僅かな亀裂や損傷の場合、単なる捻挫の類と同一視されがちです。後遺障害の診断の時になって「肩が動かない!」と訴えても、診断名や治療実績がなければ認定上疑問視されてしまいます。人体でもっとも自由に動く関節部だからでしょうか、肩の関節部は骨も筋も複雑です。   【1】肩の機能障害      骨に異常はありませんでしたが・・・    ■ 肩関節可動域からチェック

① 腕の拳上(呼ばれてハイッ!と手を上げる)  

 可動域検査で言うと、「屈曲」(前方拳上)です。通常「気を付けの」位置から肩間節を軸に腕を耳の横まで拳げる。背泳ぎの腕の動きです。180度 が参考可動域です。

 ※ 体の柔らかさには個人差がありますので、腕の左右の差を見て異常と判断します。

 上げきった状態での安定には肩周りの鳥口上腕靭帯後方、間節包後部、小円筋、大円筋、棘下筋(肩回りほぼすべて)が正常である必要があります。これらの筋や他に広背筋、大胸筋胸肋部の緊張によって動きが制限されます。   ② 逆に腕を後ろに曲げます  

 可動域検査で言うと、「伸展」(後方拳上)です。「気を付け」の位置から肩間節を軸に腕を後方へ伸ばす = 50度 が参考可動域です。

 鳥口上腕靭帯後方、間節包前部、他に大胸筋鎖骨部、前鋸筋の緊張が影響します。   ③ 真横から腕を挙上

 可動域検査で言うと、「外転」(側方拳上)です。 通常「気を付けの」位置から羽根を広げるように肩間節を軸に腕を耳の横まで拳げる。180度 が参考可動域です。

 屈曲と混同しているケースをみます。説明する時は、「ジュディ・オングのように」と言っています。

 上げきった状態での安定には、肩周りの鳥口上腕靭帯後方、間節包後部、小円筋、大円筋、棘上・下筋(肩回りほぼすべて)が正常である必要があります。他に間節上腕靭帯中部・下部、間節包下部、広背筋、大胸筋の緊張も影響します。

◆ 腱板損傷も重度となると、この「外転」ではっきりわかります。

 患者の腕に手を添えて90度(肩の高さ)まで持ち上げてあげます。そして手を離すと自力で維持できずストンと腕が落ちます。これをドロップアームサインと呼びます。棘上筋に損傷があるケースが多く、痛みは角度によって発生します。   ④ ...

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 今年に入って時効接近相談者を3件担当しました。時効接近相談者、私の造語です。「時効間際になって駆け込んできた」、「時効の接近に気付かずにいた」被害者さんです。  あと○日!鬼のように書類を集め、寝ずに書類を書きあげ、受付窓口に放り込む・・・(お願いです、相談は早めに来て下さい!)

 さてこの時効ですが、交通事故において 民法の損害賠償請求権 → 自動車任意保険 → 自賠責保険 の3つを確認しておく必要があります。

  1、治療費や慰謝料はいつまで請求できるのか

<民法> 第724条 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする。

 事故から3年過ぎて「車を弁償して下さい」「治療費を出して下さい」と言っても「時効なので払えません」と言われても仕方なくなります。  条文2行目の20年とは・・・たとえば相手を知ったのが8年後(ひき逃げ犯が8年後に捕まった」、損害を4年後に知った(脳の障害は4年前の事故が原因であったと診断、やっと認定された)、このように3年を過ぎてしまうことがあります。それでもどんな理由にせよ20年で時効になります。

※ 時効をストップさせるには

・裁判をおこす  ・・・確実にストップできます。 ・催告する   ・・・内容証明郵便等で請求を行い6か月延長させる。ただし6か月以内に裁判 を起こさないと時効となります。 ・債務の承認  ・・・相手に請求を行い、1円でもいいから払ってもらう。これは相手が自分に支 払い義務があることを認めることになります。そこからまた3年です。  

2、任意保険会社と示談交渉中ですが・・

<保険法> 第95条 保険給付を請求する権利、保険料の返還を請求する権利及び第63条又は第92条に規定する保険料積立金の払戻しを請求する権利は、3年間行わないときは、時効によって消滅する。

 昨年の改正前まで2年でした。なんで民法が3年なのに保険は2年と厳しくなっているの?との声が上がったのでしょうか、同じく3年となりました。 時効の中断は民法と同じ扱いです。  

3、相手が任意保険に入っていない/自分で後遺障害の申請をするため ・・自賠責保険に被害者請求をしよう・・

<自賠法> 第19条  第16条第1項及び第17条第1項の規定による請求権は、2年を経過したときは、時効によって消滅する。

 時効を中断させるには「時効中断申請書」を担当損保窓口にに提出し承認を受けます。2週間ほどで承認書として戻ってきます。  

4、民法も3年、任意保険も3年に、それなら自賠責も・・

<保険法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律> 第15条 自動車損害賠償保障法の一部が改正され、「第19条第1項中「2年」を「3年」に改める。

この「○○に伴う関係法律の整備に関する法律」は特別法のようなもので便利に使われます。そもそも法律改正は国会の承認や周知期間など、実現するまで時間がかかるものなのです。そこで他の法律が改正され、急ぎ準じる必要がある関連法律をこのように修正するのです。お堅い法律も柔軟なところがありますね。

これですべて3年。覚えやすくなりました。                             続きを読む »

 昨日は暖かいというより暑い中、都内を訪問面談が3件続きました。事務所待機もいいですがじっとしているのは性に合いません。書類とパソコンをバックに突っ込み、田町→新宿→上野、ぐるっと山手線一周です。  田町などは初めて降りた駅で、何かないかと見渡すと、ビル街に一枚の石碑が・・・

            

 ここは旧薩摩藩邸があった場所だそうです。幕末に西郷隆盛と勝海舟が江戸城無血開城の談判をした跡地とありました。  この歴史的会談のおかげで江戸は戦火を避けることができたのですね。実際はこのあと寄った上野において彰義隊の上野戦争だけはおきてしまったようですが。 ちょっと歴史に思いを馳せる一日でした。 

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 恥ずかしながら、私の交通事故体験からお話します。     数年前、直進道路を走行中、右の路外(駐車場)から車が飛び出してきました。危ない!と思って急ブレーキ、それでもぶつかる!と思い左にハンドルを切りました。そして左の電信柱に自車の左角が接触しました。飛び出し車とは50cmを残し接触を避けることができましたが、こちらの車は損傷、50万程度の修理費がかかりました。現場で、「あなたの飛び出しを避けた為の事故なので原因はあなたです。責任をとって下さい」と主張しましたが、「自分は悪くない」と頑な態度です。言い争いをしても仕方ないので「保険会社同士の話し合いに委ねましょう」と同意してわかれました。   双方の保険会社の話し合いでは、私30:相手70 の過失割合が提案されました。まぁ妥当な線だな、と私は納得するつもりでしたが、しかし相手は「自分には責任ない!」と突っぱねました。相手にしてみれば自分の車に損害がないので、そのままでいいわけです。予想はしていましたが、相手保険会社の説得に期待しても無駄なので、法的手続きをする旨を伝えました。     ← 左目わずかにウインクとなった愛車

 法律家相手に虎の尾を踏んだな、と言いたいところですが、大船に乗っていられるのは弁護士費用特約を付けていたからです。この軍資金でいかようにも法的手続きがとれます。その時は「支払督促」を選びました。

■支払督促とは

 正式な裁判手続をしなくても、判決などと同じように裁判所から債務者に対して金銭などの支払を命じる督促状を送ってもらえる制度です。  この制度は、民事訴訟法382条で定められたもので、債権回収(お金を取り返す)の有効な手段です。申立ては金銭債権の額にかかわらず、簡易裁判所で行います。

 普通の人なら裁判所からの「払いなさい!」って通知でビビります。案の定、相手は「取り下げて!(慌)」と泣きついてきました。そして元通り保険会社同士の示談に戻って解決となりました。  結局無駄な回り道をしただけです。そもそも車両保険を付けていた私は自分の保険で車を直せるので意味のない手続きです。しかし「支払督促を一度やってみたかった」ので。(不謹慎ですみません)

■支払督促の費用と手続き

 100万円以下の訴額(請求額)ではその0.5%  今回は請求額が50万円なので   50万×0.5%=2500円 + 切手代  安いです。弁護士費用で支払いました。   1、管轄(通常相手方の住所)の簡易裁判所に出向きます。 2、書類(申請書、事故証明書、事故状況説明書、損害見積、通知はがき)を書いて提出するだけです。 3、1週間ほどで相手に支払督促通知が届きます。 4、2週間以内に相手が異議申立をしない場合、債務を認めたことになり仮執行宣言の手続き(30日以内に)ができます。 5、それでも2週間以内に相手が異議申立をしなければ差し押さえができます。

 書記官さんが書き方等教えてくれます。

 ちなみに司法書士や弁護士にこの手続きを任せて5~10万円払ったとしても弁護士費用でまかなえます。

■ 支払督促の注意点

 債権回収の一手段としてなかなか使えます。しかしこの支払督促、注意があります。それは今回は「相手が泣き付き→保険会社へ任す」という読みどおりでしたが、保険未加入で支払い能力がない、もしくは変な人?には脅しは通用せず、督促に対して異議を申し立ててきます。その場合正式な裁判となります。脅しのつもりが本戦になってしまうわけです。  それでも弁護士を雇う軍資金(弁護士費用特約)を手にしていれば大丈夫ですが。

 双方任意保険に入っていても相手が賠償に応じない、保険を使いたくないとごねるケースもあります。その場合「保険の保険」ともいうべき存在です。思ったより使い勝手がいいのですよ。   

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 先日のメールフォームで触れました弁護士費用特約について。

 発売してから6年ほどでしょうか、まだこの特約を自動車保険についけている方は30%程度との統計を目にしました(特約を販売している会社と販売していない会社もあり全体統計がとれていません)。内容もよく周知されていないようですので少し詳しく解説します。

■ 保険契約者 (契約者本人だけではなく、同居の親族別居の未婚の子契約自動車に搭乗中の方を含みます)が、

1、歩行中、自転車搭乗中、他の自動車・バイクにより、ケガや物(自転車・持ち物)へ被害を受けた 2、自動車・バイク搭乗中、他の自動車により、ケガや自動車・バイク、車内の所持品へ損害を受けた 3、他の自動車のにより家屋に被害を受けた ・・・車が家や商店に飛び込んできた事故です。

■ この場合、相手への損害賠償請求について、

・弁護士 ・司法書士 ・行政書士 ・裁判所 ・斡旋・仲裁機関

 に対して委任または相談を行った場合に負担する費用を支払います。   ただし、保険会社の同意を得て支出した費用に限ります。

■ 保険がでないケース

・相手に損害賠償責任がない。 悪くもない相手に「単なる言いがかり」、ではダメです。 ・自分に重大な過失、犯罪、故意、自殺、飲酒等があれば当然ダメです。 

■ 限度額は、

○ 法律相談費用  10万円 ○ 費用保険金  300万円 

■ 掛け金は、

月々140円/年間1600円  程度が各社標準です。

 どうでしょう?被害事故で相手と単独で交渉するのは心身ともに大変な労苦となります。 事故相談の時に「弁護士費用に入っていますね。これで行政書士や弁護士に頼めますよ!」と言った時、相談者の皆さんの安堵の表情がすべてを語っています。                                   続きを読む »

 おはようございます。

 皆さまから頂くお問い合わせですが、今月に入ってから週末に集中しています。おそらく休日に時間を割いて事故の対策を検討していることと察します。今日はメールフォームについて少し。

 グループの行政書士ホームページでは独特のメールフォームを使った事故相談を受け付けています。メニュー「ご相談・お問い合わせ」を開いて頂ければ確認できます。  一見入力項目がたくさんあって、面倒に感じるかもしれません。しかし利用者の感想を伺いますと、「意外と短時間で送信できた」「長い文章を書かなくて助かる」・・・おおむね好評です。また相談を受ける側も「入力項目=必須情報」なので、それぞれを質問しないで済みます。お互いスムーズに問題点を浮き彫りにできるのです。    とくに「人身傷害特約」や「弁護士費用特約」など、自分が被害者になった場合でも自身契約の自動車保険が活用できるケースがあります。自分が自動車を運転している場合は当然ですが、以下の場合でも適用できるので要確認です。

○ 人身傷害特約

・歩行中自動車やバイク、公共の乗り物(電車、バス等)とぶつかってケガをした ・自転車に乗っていて自動車とぶつかってケガをした ・公共の乗り物に乗っている時の事故でケガをした

 事故相手から全額賠償してもらえない場合=自分にも責任(過失割合)がある、相手に賠償能力がない(保険をかけてない等)に自身契約の自動車保険から補償が受けられます。

★ 自身契約の自動車保険の範囲  ・・・以下を要チェック!です 1、自分もしくは同居の親族が契約している

2、別居の未婚の子の場合、実家の誰かが自動車保険に契約している

 ※ 別居の未婚の子・・・学生さんで自宅以外に下宿しているケースが典型的です。                しかし未婚であれば仕事をしていても範囲内です。範囲から外れる                のは、結婚されている場合 (バツ1も含みます)です。

  こういった細かな保険適用条件を事前に調べて頂くためにも、専用メールフォームは有用なのです。                                

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 おはようございます。この1週間世界で一番美しい日本を満喫しました。どこの病院へ行っても桜が満開でしたので。   むち打ちシリーズも本日記事で最終回にします。もちろん新しい情報や経験則が得られれば今後も記事にしたいと思います。交通事故外傷で半分以上を占める症状です。まだまだ語りつくせない分野です。  

6.脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)型

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 むち打ち週間が続きます。前日までの1.頚部捻挫、2.神経根型、3.脊髄症型、4.バレリュー型、いずれも実務上経験しておりますが本日からの病態はレアケースになります。もちろん担当したこともありません。したがってご覧の皆様もその辺をお含みおき頂ければと思います。  

5、胸郭出口症候群型

<症状>    頚部痛だけではなく、おもに片側の上肢にしびれと冷感が生じます。肩こり、倦怠感、様々な症状を起こします。症状はかなり広範囲です。  原因ですが少し長くなります。腕の神経は頚部から両上肢に左右にそれぞれ5本ずつ走行しています。 その通り道に胸の鎖骨下、第一肋骨に前・中・後斜角筋、斜角筋、鎖骨下筋、小胸筋が存在しています。 それらの組織の損傷、変形で血管や神経の通り道が狭くなり、血管や神経が圧迫されたり、引っ張られたりする結果、知覚鈍麻・筋力低下の神経障害が発生してくるのです。  神経根型は頚椎の位置によってしびれる箇所が分かれますが、肩の動きや角度でしびれが変わることが特徴です。  

<検査と治療>

 簡単にできる検査として以下を挙げます(事故110番抜粋)

・Morleyテスト  鎖骨上窩を圧迫すると、上肢が痛みます。

・Wrightテスト  肘のレベルまで両手を上げた状態で、橈骨動脈が触れなくなり、胸骨出口部が痛くなります。

・Roosテスト  Wrightテストの状態で、手・指の屈伸を3分間行い、腕神経叢に圧迫がある場合は、腕がだるくなり、指が痺れてきます。 静脈に圧迫がある場合は、上肢が青白くなり、チアノーゼが生じます。

・Edenテスト  両肩を後ろ下方に引っ張り、胸を張ってもらうと脈が触れなくなります。

 確定診断には容積脈波やサーモグラフィーの検査を行います。それにより病源を特定し運動療法を行います。痛みがひどい場合には薬物、可動制限が著しい場合は手術を検討しますが、保存療法が第一としています。

   <後遺障害認定>

 やはり画像所見や器質的損壊(骨折等)を伴えば12級13号、自覚症状のみでは14級と他の神経症状と変わりません。しかし岐阜の脳神経外科医・加納先生が血管造影検査と手術で成果をだした途端、全国の患者が加納クリニック殺到し一大キャンペーンの様相を呈しました。もちろん治療の成果はありましたが後遺障害等級認定は自賠責の基準外とし、相手にされませんでした。したがって勝負の場は裁判にもちこまれ、その後いくつか認定結果を得ています。

 当時の一大キャンペーンの患者さんの一人、別件の事故にて現在担当中です。今日病院同行中その時の”お祭り”話を聞きました。

 ある傷病名が有名になると患者や等級申請者が殺到する・・・病院も審査する側も大変ですね。                                                                  続きを読む »

 そもそもむち打ちは自覚症状(痛み、しびれ等々)のみで、画像所見もなく、医師も「頚椎捻挫ですから安静にすれば治ります」となるケースが多いのです。これが保険会社が「賠償病」「補償症」と呼ぶ理由です。しつこく症状を訴える患者に対し医師も最後には「精神的なものです」と言って心療内科への紹介状を渡します。医師も保険会社も、はたまた家族も誰も自身の症状を信じてくれません。この段階でどうしたらいいでしょうという相談者が後を絶ちません。お気持はわかりますが自分を助けるのは自分です。つまり正しい診断へ辿りつくべき努力が必要です。

4、バレ・リュー症候群

(症状)  たとえば痛み、しびれはもちろん、めまいやふらつき、吐き気、耳鳴り、不眠などの異常が長期間に及ぶ場合、バレ・リュー症候群の可能性があります。1925年にフランスの神経学者バレ博士が、「頚部の疾患、外傷でありながら頭部や顔面に頑固な自覚症状を訴える症例があり、これらの症例は頚部の交感神経機能と密接な関わりを持つ」と発表したものです。さらに「深部交感神経(椎骨神経)が責任部位であり自覚的所見が症状のほとんどを占める」と続きます。つまり「自覚症状だけ!?」なのです。そんな無責任な!と言いたいですが、バレ博士の教え子リュー氏(だからバレ・リューか!)が多くの症例を集め研究を続けましたが、完全解明されず現在に至ります。臨床上、その存在は知られていますが、原因や根治療法は確立していません。

(治療)  これは整形外科の分野から外れます。牽引や電気治療を続けても効果はありません。早めに神経内科、ペインクリニック等専門医に診てもうらう必要があります。症状の緩和にはやはり神経ブロックが有効です。その種類・方法は専門医の判断が大事です。  また受傷直後は安静が大事ですが、過度の安静は頚部・肩関節の関節拘縮や、抑うつ傾向によって痛みを強めてしまうので、ポリネックでの固定は避けたほうが良いとされています。この辺が単なる頚椎捻挫の治療と一緒にできないところです。

(後遺障害認定)  この傷病名が直接、後遺障害の対象とはなりません。あくまで頚部神経症状の一環として12級13号、14級9号の対象です。そして大事なことは神経症状の検査をきちんと行っていること、受傷後遅くとも3か月以内に神経症状の診断を受けてカルテに記入してもらうこと、そして専門医の治療を開始していること、これらを6か月後の後遺障害診断書の段階でやっても遅いのです。後遺障害等級申請のときになってはじめて神経症状と書いてもらっても、「受傷後6か月後に発生した症状で、事故との因果関係に乏しく・・(つまり認められません)」と毎度お決まりの審査回答となります。  

 私が相談を受けた被害者さんも泣く泣く非該当や低い等級を甘受し、ペインクリニックに自費で通っている方が何人かいます。不眠や耳鳴りはとても辛いとお察しします。この皆さんは受傷後1年たっての相談だったり、すでに等級申請を済ませていたり・・・つまり相談時期が決定的に遅いのです。   医師も万能の神ではありません。専門外の症状には素人と変わないかもしれません。周りが「むち打ちなんて」と甘く見ても、自分の事は自分でしっかり見極めて下さい。                                 

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 おはようございます。昨日の続きです。

3、脊髄症型

(症状)  事故後、頚部痛だけではなく両上肢、両下肢までしびれが生じている。例えば上肢については両手で顔を洗うときに両手が上手く動かない、ボタンがかけずらい、下肢については長時間の歩行はだるさを伴い困難、階段昇降で痛みが走る。神経根圧迫であれば片側の上肢のみに症状がでることに対し、両上肢下肢にまで及ぶ場合この脊髄症を疑うべきです。

(治療)  まずレントゲンで頚椎の損傷がないか確認します。そしてMRIでヘルニアの脊髄圧迫なのか、脊髄そのものに損傷があるのかを判断します。ヘルニアの圧迫であれば神経根型と類似の治療となります。脊髄に損傷がある場合、必ずT2(高輝度所見)で撮影します。この場合は脊髄に不自然に白く光る病変部が移ります。造影剤を使うこともあります。  受傷直後は安静、そして痛みの緩和にはやはり神経ブロックで、症状に応じて硬膜外ブロック、星状神経節ブロックが有効です。このブロック注射は手術扱いで点数(治療費)の高さから整形外科も積極的です。しかし腕の差がかなりでる技術なので医師選びが重要です。  脊髄麻痺が進行しているケースでは手術適用となります。前方固定術が代表的で、この手術は脊髄を圧迫している椎間板を除去し、腸骨の骨片を空いた隙間に埋め込みます。これも執刀する医師により判断したいところです。  ちなみに近所の整形外科で椎間板切除に積極的な医師がいます。あまり病態が深刻ではないのに勧めるので、ちょっと心配です。 下肢への症状があり同時に腰を受傷した場合、腰椎を損傷していないかも調べて下さい。

(後遺障害認定)  脊髄損傷はそもそも頚部症候群から外れており、中心性脊髄損傷、脊髄不全損傷、頚椎椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、後縦靭帯骨化症等として判断するべきです。なのでこれらは別の機会に譲ります。神経症状であれば神経根型に同じく12級13号、14級9号です。  神経根型と同じ検査を行い、さらにバビンスキー、膝・足クローヌス、ホフマン、トレムナー、ワルテンベルグ、手指の巧緻運動を加えます。脊髄に異常があるときにそれぞれ陽性反応を示します。

 むち打ちでも見逃してはならない深刻な病態もあります。漫然と治療を続けず、自身が何型のむち打ちなのか把握することが大事です。保険金や等級云々よりも後遺障害は残さない方がいいに決まっています。

 ではまた明日に続きます。

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 「むち打ち」とは俗称であり、正式にはいくつかの病態に分かれます。いずれも治療方法が確立されたとは言い難いものですが、「頚椎捻挫」であれば一定の回復が図れます。保険会社が賠償金交渉で逸失利益(将来にわたる損害)を認めない、もしくは2~3年とみる理由は「むち打ちは治るのだから・・」です。

 しかし、症状の残存は病態によって差があります。まず、自らの病態を把握し、適切な医師の治療を受ける必要があります。併せて、症状固定時に正しい後遺障害診断が得られるよう計画・準備をします。   1、頚椎捻挫型

(症状)  多くは追突事故を受けた後に頚部に違和感が生じます。当日はレントゲンで「骨に異常ないですね」と言われ、痛み止めの薬(ロキソニン、カロナールなど)を処方されて帰ります。翌日~3日後位になると、痛みに加え、こわばり、肩が重だるい、腕から手指にかけてしびれを感じるようになります。   (治療)  安静が第一です。無理に動かしたりせず、痛みが和らぐのを待ちます。   (後遺障害認定)  医師や保険会社の言う通り、多くは「治る」ものです。したがって、週1回リハビリに通った程度では後遺障害とはなりません。もし、1か月経っても症状が軽減しない場合、早期に下記2以下の病態を疑い、その際、MRI撮影をして下さい。   2、神経根型

(症状)  肩から手指にかけてしびれを自覚します。首を曲げるとピリピリとした感覚が走ります。これは頚椎のヘルニアや骨棘(頚椎の骨の角)が神経に触ることで生じます。これは、MRIで視認できます。しかしながら、事故の衝撃で椎間板ヘルニアになることはなく、多くは加齢によるものです。事故の衝撃で椎間板が飛び出したら、頚椎の骨折・脱臼、脊髄損傷になるはず、命に関わる外傷になります。

 理論的には、神経に元々圧迫があった部分に事故の衝撃が加わり、神経症状を発することになります。知覚障害、放散痛、筋力低下など、諸々の神経症状が現れます。神経の圧迫が続く限り症状は残存しますので、ひどいと手術適用になります。   (治療)  MRIの診断で頚椎(第1頚椎:C1~第7頚椎:C7)のどの部分が神経根を圧迫しているかを確認します。ケースとしてはC5/6、C6/7間、C8の部分が多いようです。そしてなるべく早い段階で医師にスパーリングテスト、ジャクソンテストをしてもらい、カルテに記入してもらいます。

 症状によっては神経ブロックが有効で、痛み・しびれを和らげる効果があります。硬膜外ブロック、星状神経節ブロックなど、注射を打つ場所は頚部になります。薬剤はキシロカイン、カルボカイン等の麻酔薬が主で、この注射は神経科の領域になります。最近では、ペインクリニックの呼称で個人開業医でも施行しています。

 軽度のヘルニアであれば保存療法ですが、ヘルニアの切除、レーザーで焼き切る術式があります。ヘルニアの突出や変形がひどければ、神経への圧を除去するための前方固定術や、椎弓形成拡大術が選択されります。これは、脊椎外来などを擁す、医大系の専門医の執刀になります。   (後遺障害認定)  MRI画像から、はっきりと神経根圧迫が認められれば、しびれや痛みの症状の根拠となりますので12級13号の対象となります。ただし、40歳を超えた人は大なり小なり頚椎の変形やヘルニアの膨隆(バルジング)があります。したがって、画像上微妙な場合は14級9号となります。いずれも整形外科に地道に治療を続けることが大事です。

 診断書には他に続きを読む »

 桜が咲きました!悲しいニュースが続きますがそれでも花は咲き、季節は変わります。

                  

 土曜日はプライベートの外出でしたが携帯は鳴りっぱなしです。ありがたいことにこの土日で4件の相談をいただきました。したがって日曜はのんびりできず、それらのメール・電話返信、書類作成で平日と変わりません。相談内容はすべて外傷性頚部症候群でした。むち打ちなどと呼ばれることもありますが、実際は症状も細分化され深い分野です。交通事故の後遺障害で6割を占めるとのデータもあります。専門書も数多く出版されており、適時参考にさせていただいています。専門的な解説は明日からにしますが、とにかくまずMRIの画像所見です。そして接骨院や鍼灸、柔道整復師へのリハビリもよいですが整形外科にしっかり通って地道な治療を続けて下さい。なぜならほとんどの保険会社は「むち打ちは後遺障害とはなりません」との認識で待ち構えています。自身のケガは自分が一番よくわかっているはずです。そして自身の権利を守るのも自分です。

 交通事故110番のコンテンツを熟読して下さい。相談先を見極める目を養えます。そして私たち全国の110番行政書士が出番を待っています。

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 MRI・・・磁気と電波だけを利用して体の内部を画像化する検査装置です。放射線を一切利用しないため被ばくせず、からだにやさしい検査ができます。

 後遺障害の立証に画像所見は重要な資料となります。肩が上がらない、痛い、痺れが残っている等、その原因を明らかにする時に画像は動かぬ証拠になります。 医師は初診時、まず骨に異常がないかレントゲンを撮ります。骨折を見逃したとあれば医師の責任問題だからです。しかしレントゲンに写りづらい腱板損傷、軟骨損傷、ヘルニアの突出や写らない脳幹部の点状出血などを確認するにはMRIが必須です。なるべく早いうちに体の異常を訴え、MRI検査をしてもらう必要があります。医師に「骨に異常はないから打撲です。湿布を出しときましょう」と言われた場合でも「おかしいな」と思ったらMRI検査をお願いしてみましょう。

 そのMRIにも種類と性能差があります。現在は1.5テスラが主流になりつつあります。このテスラが高いほど画像の解像度が上がります。繊細な損傷を見逃さず、細かく観るためにはより高テスラが有利です。  特に頭蓋底骨折が疑われる場合、最新鋭3.0テスラのマシンで「眼窩部を3mmスライスで」、とお願いします。地方の町営病院の0.5テスラで撮っても小さい損傷は写らないからです。そもそも頭蓋骨の外側に骨折がないかだけを調べますので頭蓋底骨折は見逃されやすいのです。  この3.0テスラマシンのある病院はまだ少数です。

 種類は

1、T1 ・・・穏やかなコントラストで移ります。脳梗塞のあった部分の新旧の判別によく用いられます。

2、T2 ・・・ターミネーター2ではありません。「高輝度所見によると・・」のセリフで登場します。水分の反応が白く光って写り、出血、水たまり、病変部と骨や筋などの組織とコントラストがはっきりします。腱や軟骨、脊髄の損傷を発見できます。

3、FLAIR ・・・前記T2の水分を逆に黒く映します。脳溝や脳室に接する病変の診断に特に有効です。

4、DWI ・・・細胞内の水分子の動きを画像化し、腫瘍や炎症などを知るために使用します。正常な細胞は水分子の運動が活発ですが腫瘍・梗塞・炎症など病変した細胞はこの運動が小さくなります。がん検診ではPETに替わる注目の技術です。

5、MRA ・・・頭部の血管の様子を詳しく立体画像化します。脳動脈の狭窄や閉塞動脈りゅうなどを発見できます。正常な速さで流れる血管は真っ白く映ります。脳挫傷や脳委縮のあった部分は血管の流れが悪くなるので黒ずんできます。

 他にMR拡散テンソル画像(MR Diffusion Tensor Imaging)もあります。神経線維を画像化することにより神経線維の減少や異常を証明できます。高次脳機能障害案件で先日採用しました。脳挫傷が軽度で脳委縮がない場合などに望ましい画像です。

 MRIからの診断は医師も慎重です。同じMRI画像を3人の医師に見せた場合それぞれ意見が分かれることがあります。それだけに素人判断は慎み、経験を積んだ専門医の診断に早い時期に漕ぎつけることを目標にしています。

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 腓骨神経麻痺。すねの外側を走る神経が断裂や損傷を受け、足首や足指の自動運動が不能になる症状です。  浅腓骨神経と深腓骨神経の2本の神経が前頚骨筋、長指伸筋、長母指伸筋、第三腓骨筋、長腓骨筋、短腓骨筋、短指伸筋、を支配しています。

 腓骨や脛骨の骨折の影響で神経が損傷するケースが多く、これらが損傷すると自分の意思で足首・足指を曲げられなくなります。程度の軽重はありますが、以下の後遺障害となります。   ○ 足首 → 1下肢の3大関節中の1下肢の用を廃したもの(著しい障害を残すもの =10級)   ○ 足指 → 1足の第一の足指又は他の4の足指の用を廃したもの =12級   ・・・ この場合、上記二つの認定から、併合7級となるはずでした。    この障害の立証で、被害者は2つの壁を経験しました。  

第1の壁 整形外科の仕事は骨をくっつけること?

   脛骨骨折の手術で有名なある名医の手術を受けました。プレートとねじで折れた脛骨をしっかり固定、10か月後見事に骨をくっつけプレートを摘出しました。腕は評判通りです。レントゲンを見ながら、「どうだね、元通りになったろ」と自画自賛です。しかし患者は「あれ足首が動かないな・・」、踏ん張りが利かなくて杖がないと歩けません。足首はだらんと下がったまま動きません。スリッパも自然に脱げてしまう。

 対する医師は、「あとはリハビリを頑張ることだね」と。満足げにリハビリ科に引き継ぎました。足首が曲がらない事には責任がないようです。

 後に後遺障害の審査となり、保険会社に言われるまま、そのレントゲン写真を提出しました。結果は 「骨の癒合は正常で、変形癒合、偽関節は見られないので・・・云々。しかしながら痛みや運動不能は認められるので局部に頑固な神経症状を残すものとして12級13号・・・えっ、杖なしに歩けなくなったのにそんな軽い障害?となりました。

 確かに脛のレントゲンを見ますと、骨折の癒合は問題ないのですが、MRIでは、周辺の筋組織の損傷がはっきり残っています。さらに外見からも筋委縮がはっきり見て取れます。左右の足の太さが違っているのです。そして、いくらリハビリしても足首も足指も曲がりません。これらの事実は審査されていません。   

第2の壁  治療は終わったのに、今頃になってなんで検査を?

   12級13号では異議申立の必要があります。必要な作業は・・・   1、足首・足指の可動域について再度計測します。骨をきれいにつなげる名医でさえ、計測を間違えています。   2、徒手筋力テストを行い、筋力低下を数値化します。   3、筋委縮を立証するため左右の足の外周を計測します。 ※ 私は写真も添付しました。   4、そして、必須は神経伝導速度検査。 麻痺が確実なら「誘導不能」となります。   5、できれば、針筋電図検査。 神経麻痺立証の決定版です。これができれば、4の必要性は下がります。    主治医にお願いして、検査をやり直しです。しかし、この名医である主治医は「可動域の計測は正しい」と自らの間違いを認めません。さらに「筋電図は必要ない」と紹介状を書いてくれません。「私の治療に問題はなかったのだ!」と依怙地になっています。患者さんはこれ以上逆らうこともできず、すごすごと帰ります。手術でお世話になったのだから当然です。    これら困難な2つの壁を乗り越えるのが私の仕事です。もちろん、医師の技術と尽力には敬意を表します。しかしベストな流れは骨の癒合の時点で上記1~5の検査を実施させ、間違いのない診断書を作成することです。そのために、頑なな主治医を説得するか、場合によっては別の病院へ誘導する必要があります。    ちなみにこの被害者のケースでは異議申し立てを行い、腓骨神経麻痺で9級、股関節可動域制限や膝関節硬縮による短縮障害とも併合しなんとか7級までこぎつけました。悪戦苦闘、9か月もかかったのです。    ありのままの真実を立証する・・・名医のおかげで茨の道でした。   続きを読む »

 首都圏を担当していますので神奈川へ行くこともあります。昨日は金沢八景の近くまでドライヴ。海を持たない埼玉県民にとって少しウキウキします。湾岸高速を疾走、ベイブリッジをくぐり半島へ。天気も良く車のトップルーフ全開です。

 土地には独特の雰囲気があって海の近くはどことなく開放的でゆったりとした感じです。普段は都内の喧騒やベットタウン埼玉の在り来たりの風景が仕事場です。便利ですがたまには遠出もいいものです。たまには、です。 ・・・横浜方面に行政書士の仲間がいると助かるのですが(笑) 

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 交通事故被害者は自動車運転、同乗中、2輪車、自転車、歩行者と分類されますが、常に被害者であるとは限りません。 たとえば自転車がいきなり路外から道路に飛び出して車に衝突した場合、自転車の過失の方が大きくなる場合があります。また自転車で走行中、歩行者に衝突の場合もです。

 15年位前でしょうか自転車総合保険の団体契約を扱っていたとき、契約者の女子高生が自転車で歩道を走行中、お年寄りにぶつかり転倒させてしまいました。そのおばあちゃんは骨盤を骨折し、これをきっかけに寝たきりの状態になってしまいました。この場合、自転車総合保険に付帯された個人賠償責任保険にて対応が可能です。しかし当時この保険は自動車保険のように示談交渉付きではありませんでした。あくまで保険会社が認定した額を限度に支払う保険です。治療費など請求金額が明確なものについては問題ないのですが、慰謝料や介護費用など当事者同士が直接、または保険代理店が間に入って交渉するしかありません。事故から10か月くらいのち、当事者の高校生と父親を伴い3人で相手宅にお伺いしました。

 交渉相手は息子さんです。事故が原因で寝たきりになった、との主張は予想通りでした。これについては因果関係が問題となり保険会社もすんなり認めないことはわかっています。お祖母ちゃんの若いころの話やお孫さんの話や雑談が続きます。一向に核心に話が進みません。  そして1時間が過ぎ、息子さんも「保険では厳しいんでしょ、かといって直接払ってとは言えない。秋葉さん、なんとかならないの?」と。そして自賠責保険の基準での金額を提示し、「なんとかこれでお許しいただけませんか」と3人で平謝りです。  幸い、諦め気味に納得して示談に応じていただきました。契約者親子はほっとしたと思います。しかし私は漠然とした不満を感ました。 自動車保険のように示談代行ができない賠償保険は欠陥商品ではないかと。

 数年後、東京海上日動は示談交渉ができる内容に約款改定しました。保険会社にとって大きな一歩と思います。しかしまだすべての損保はこの示談交渉付きにしていません。自転車事故だけではなくスキー場での接触事故や子供同士のけんかや細かなもめごとは日常茶飯事です。軽微な事故では弁護士を介入させることなく保険を使った解決が図れるのならそれに越したことはありません。

 個人賠償責任保険、3000万円限度で年間1500円位の掛け金です。この保険、示談代行付きを必須とし更なる改良が望まれます。

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 後遺障害を観察する場合、二つの視点があります。他覚的所見と自覚症状です。簡単に言いますと、   〇 他覚的所見・・・専門家の見立て。つまり医師による診断です。   〇 自覚症状 ・・・患者自らが訴える症状です。「ここが痛い」「関節が曲がらない」等々です。    調査事務所による審査は当然、他覚的所見を重視します。何故なら、自己申告の症状は詐病(保険金目的のウソ障害)、または、大げさの可能性があるからです。審査側が性悪説(人は元来嘘つき)で考えることは仕方ないのかもしれません。

 したがって、自分にしかわからない症状や苦しみを医師に把握して頂き、確実に診断書に残して頂く必要があります。ここまでは、どの後遺障害にも共通することですが、高次脳機能障害では少し勝手が違います。それは高次脳機能障害の患者の多くが、身らの障害に自覚がないため、認知障害、記憶障害、性格変化、社会適合性など、一緒に暮らす家族の観察が重要となってくるからです。医師の限られた診察時間だけではわからない、細かな変化をきちんと申告、立証する必要があります。

 ほんの数年前、ようやく障害についての審査項目と書式が整理されました。医師の診断書とは別に「日常生活報告書」を添付して、家族の観察結果を申告します。「言葉による指示を理解できますか?」「タバコの火やガスの始末ができますか?」・・・50程度の質問に対し、6段階の評価をしていきます。この書面は、いくらでも恣意的、実態より重めに書くことができます。やはり、参考程度にしか見られないのでは・・という不安も尽きません。そこで、秋葉事務所では、ビデオを用いることがあります。

 元来、裁判で障害の有無・程度を争う際、証拠として映像を用いる方法でした。であれば、自賠責保険の後遺障害の審査にも有力な資料となるはずです。書面では書ききれない患者さん特有の症状や、書面からは伝わらない障害の事実・実態が強烈にアピールできます。先日も、担当の患者さんのビデオを撮影しました。その効果を実感しています。とりわけ3~7級の判定は、大変微妙な審査のとなるはずだからです。    現在、高次脳機能障害を扱う弁護士・行政書士事務所はホームページで大勢見られます。もし、ご相談を考えるなら以下の4要件を指標として下さい。   1.高次脳外来に専門医が在籍、評価ができる病院へ誘致できるか?   2. 

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 連日放射能汚染のニュースが流れ事態はまだ予断を許さないようです。復興もこれから長い時間と費用、なにより心をすり潰すような日々が続くと思います。幸いにも被害に遭わなかった人たちは平時の経済活動を通じて復興の後方支援を果たしたいところです。

 この一週間新しい相談や依頼は僅かでしたが担当中のクライアントさんからの連絡は頻繁に入ります。

 ・病院が計画停電の影響で・・「予約や急患優先で検査は延期になってしまった」  ・会社が医療品関係なのでこの1週間泊まり込み・・「書類はちょっと待って」  ・お店の客足が3分の1になってしまった・・「契約は来月以降にして」  ・燃料不足で工場が動かない・・「交通事故の件は後回しにして」

 世の中が機能不全を起こしています。じわりじわりと業務遅滞になっています。首都圏すべての仕事になんらかの2次被害が生じていますので愚痴は慎むべきですが、早く通常の活動に戻りたいところです。  物資の不足、ガソリンの不足はもうすぐで落ち着くそうですが、原発の後始末も含め電力不足はしばらく続くそうです。「停電は夏まで」という予測も発表されました。被災地の皆さんに比べれば些細な試練ですが、当事務所も踏ん張りどころです。交通事故被害者の一日も早い解決と日常復帰を目指すことは何があっても変わりません。                                     

 

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 女子の外貌に醜状を残すもの     12級5号 

 女子の外貌に著しい醜状を残すもの  7級5号

   保険会社に入社し初めて遭遇した後遺障害が醜状痕でした。

 私の担当する契約者さんが運転中に追突事故を起こしました。幸い相手はケガもなく、車の修理だけで示談に応じてくれました。しかし運転していた契約者さん(24歳独身女子)はおでこをバックミラーに打ちつけ何針か縫うケガを負いました。数か月たっても数cmのキズは残っています。

 さあ、初めて後遺障害の申請を行う仕事になりました。

 

顔面部では 10円銅貨以上の瘢痕または 3cm 以上の線状痕 →12級

      鶏卵大以上の瘢痕または 5cm 以上の線状痕 → 7級 です。

   この件で初めて自賠責調査事務所の方と会いました。ほとんどのケガ・障害の審査は書面ですが醜状痕のみ面接があります。すでに私が撮ったキズの写真は送付済みで、キズの長さは約4cmだったと記憶しています。それを踏まえ、調査員が契約者宅へ訪問してくれました。金属製の定規を持って・・。

   訪問した調査員は「はい前髪上げて」と言い、冷たい定規を顔面にあてがいました。「2.8cmかな・・ごにょごにょ」なんか歯切れの悪い説明が延々と続きます。その間、終始涙を溜めて真っ赤な顔の女性契約者さま。自分の顔のキズが将来残るか否か、そんな議論を目の前でされていては無理もないです。

 それに面談前にお化粧!をしようとしていて、私が慌てて止めたのです。    結局、家族も「すぐに消えるよ」「ファンデーション塗ったらわからないよ」と後遺障害の否定に流れていきます。たった一人「12級では・・」と主張する私は孤立無援です。最後に調査員はケロイド状のキズやえぐれたようなえぐいキズの写真を見せて「これが後遺障害の対象」です、と言って「今回はたいしたことなくてよかったですね~」と帰っていきました。 

 これがきっかけで後遺障害認定の困難さを知りました。審査の厳しさ、本人の自覚、周囲の雑音、すべてが等級認定の障害となります。これらをうまくコントロールしなければなりません。今なら12級を獲得する自信がありますが・・ 

 本当に重篤な(重い)ケガを負った人、前向きに回復へ努力する人ほど後遺障害を認めたくないものなのです。その辺の心理、このエピソードからは女心、勉強することは医学的知識だけでは済みません。                                                                                   

 最新式はデジタル表示ですね  

<注意>後遺障害認定等級について平成23年に改正されています。  以下新基準を記載します。

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