私は決してアンチ整骨院(以下接骨院も含む)ではありません。柔整師さんの中には、高い技術と高潔な人間性をもったすばらしい先生を何人も知っています。医療機関としての役割も不可欠なものと思っています。西洋医学では対処できない症状に対し、有効な施術がある事実も理解しています。しかし、多くの患者は両者の違い・役割を理解していません。ケガ・症状によって病院と整骨院の使い分けは必要です。では、整骨院の利用目的はなんでしょうか。以前、匿名の柔道整復師から「柔道整復師の仕事は慢性疼痛の緩和ではない!」と誤解を指摘されたことがありました。この機に定義をしっかり把握しましょう。協会のHPから抜粋します。     (公益社団法人 日本柔道整復師会 HPより)整骨院・接骨院の上手な利用法

 整骨院・接骨院では、骨折、脱臼、打撲、捻挫、挫傷などのケガについて、痛みの少ない愛護的な施術(治療)で腫れや痛みを軽減させ、早期の日常生活復帰に努めています。ケガをされた場合には、近隣の整骨院・接骨院へ早めの受診をお勧めいたします。早期に対応することで、腫れや痛みを軽減することができます。すぐに受診できない場合でも、電話などで相談し、応急処置の指導を受けることができます。また、休日や受付時間外の施術(治療)も可能です。

 骨折・脱臼の場合は、整復、固定の応急手当てを実施して、医師の同意のもとで施術(治療)を行うことができます。まずは、近隣の整骨院・接骨院に来院ください。      このように、整骨院の役割として応急処置、これは医者・柔道整復師問わず絶対に必要でしょう。次に、愛護的な症状緩和、ここが誤解の元ですが、保険(自賠責、労災、健保)施術の場合は慢性的な症状、外傷以外の病的症状は除かれます。またケガ以外の症状、肩こりなどの慢性疾患の対処には柔道整復師の資格ではなく、あん摩・マッサージ師の資格が必要です。そして骨折・脱臼の場合は医師との連携治療となっています。

 しかし、必ずしも医師の同意が徹底されていないようで、整形外科の医師から多くの苦言を聞きます。「骨折の患者を勝手に診断して施術を進めている」「神経症状があるのにMRIも撮らずに捻挫の治療を続けている」、つまり「患者を手放さない」ことを問題視しています。上手く病院と連携している整骨院もありますが、現場では「医師vs柔整師」の構図をよく見かけます。今後、両者の明確な区分、つまり、「使い分け」について、行政から指標が示されることを強く願うばかりです。    さて、前回のつづき「落とし穴」について。後遺障害を追いかける者として、毎度口を酸っぱく言っていることを。     むち打ち、頚椎捻挫、腰椎捻挫で症状が長引く被害者、とくに単なる捻挫・打撲の類ではなく、神経症状を示す被害者は半年の治療でも症状が収まらないものです。この被害者に対して保険会社は捻挫・打撲の患者に同じく長期間の治療費の支払いを拒み、治療費打ち切りも辞さないのです。そこで治療費打ち切りを待たず、速やかに後遺障害等級14級9号の認定を受けて、一定の金銭的救済を図らなければなりません。 

 しかし、整骨院で治療を続けた「むち打ち」「腰椎捻挫」の被害者はこの14級9号が絶望的に認定されません。過去の認定経験は病院30回+整骨院200回に通院した被害者、もしくはメインは病院で補助的に整骨院の施術を被害者など数例です。これらの患者さんは、明らかな神経症状や画像所見があったので認定を受けました。本来なら12級13号が認定されるような症状とも言えます。それ以外で整骨院への通院に偏重したむち打ち、腰椎捻挫で等級認定された件は少数例となります。そもそも、整骨院では後遺障害診断書が書けません。医者じゃないので当然です。    例外的に、医師の指示により月に1~2回ほど整形外科に通院し、接骨院等でリハビリ通院を進めた患者ですが、診断書を書いてもらうことは可能です。症状や治療経緯によっては、14級9号の認定の可能性を残します。しかし、多くは険しい道となります。整形外科でリハビリを続けた被害者の方が、はるかに等級認定の可能性が高いのです。なぜなら、多くのむち打ち患者さんに明確な神経学的所見がでないからです。そうなると、審査側は病院での治療実績、つまり治療の一貫性や継続性、相当日数を検討することになります。    はっきり言います。「むち打ち・頚椎捻挫」「腰椎捻挫」にて、重い症状に悩まされる被害者さん、 整骨院・接骨院への通院を続けたいのなら、後遺障害は断念して下さい。    つづく  

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 常日頃から、弁護士はじめ各士業との連携はもちろん、医療機関とも連携することにより被害者救済に益する協業体制を推進しています。当然ですが、医療機関との連携はクリーンな関係を前提としています。法律家と医療機関の関係には高度な道徳心が必要です。とくに、柔道整復師の資格者である整骨院・接骨院さんとは、限定的な連絡体制に留まります。

 整骨院・接骨院との連携が限定的である理由を語る前に、まずは業界の背景から。先日の朝日新聞の記事を見てみましょう。   asahi juusei  車を持つすべての人が加入する自動車損害賠償責任(自賠責)保険に対し、接骨院からの保険金請求が急増していることが分かった。治療費の基準がなく、請求内容の審査もずさんなため、不正請求が横行。「生後半年の赤ちゃんが腰痛を訴えた」など、現実にはありえない診断がまかり通っている。国土交通省、金融庁など関係省庁は、改善策の検討に乗り出した。

 損害保険料率算出機構・自賠責損害調査センターによれば、2012年までの5年間で、交通事故件数は76万件から66万件に減った。負傷者は94万人から82万人に減少。一方、12年度までの5年間で、接骨院が自賠責に請求した総施術費は452億円から673億円と1・5倍に増えている。

 接骨院を営む柔道整復師らでつくる公益社団法人・日本柔道整復師会によると、接骨院による自賠責への請求が増えた一因には、交通事故患者を抱き込んでの不正・過剰請求がある。 (朝日新聞3月22日)      事故が減っているのに、施術料(治療費と区別されています)の急激な伸びは、不正請求以外からの理由では説明できない。このような分析は柔道整復師会(身内組織ですよ!)だけではありません。弊所では、年間360人もの交通事故被害者さんと会い、毎日のように病院に行っています。現場でも、整骨院・接骨院に通院している被害者の例を多く見ています。特徴は以下の通り。   1、病院よりも待ち時間がなく、予約等の制約も少ない。比較的、夜間や休日もやっているところがある。   2、先生も親身に話を聞いてくれる。スタッフも親切。   3、相手の保険会社も病院同様、施術料を出してくれる。    したがって毎日のように通う。    このように、病院とは違った良さがあります。「だから病院の治療費より高くていいのだ!」と断定するのはいささか苦しいと思います。よくよく施術証明書を見ると、事故とは関係ないような受傷名が載っていたり、過剰と思える施術がなされていたり、とどめは通院していない施術日に〇がしてあったり・・・このような不正は決して珍しくないのです。「慰謝料が多く出るから通院日多めに〇つけとくね~」、あけっらかんと言った柔整師もおりました。これは立派な保険金詐欺です。

 もちろん、病院も含め、どの業界にも不道徳な者がおりますので、一部の不正な柔整師だけを非難するのはフェアではありません。しかし、現場からは決して「一部の」とは言えないほど不正を多く目にするのです。

 さらに、後遺障害が残るような被害者にとって、整骨院への通院は深刻なデメリットが存在します。軽傷であればこのまま接骨院での施術で完治して示談、事故は解決となります。しかし、症状が長引く患者さんには、最大の落とし穴が待っています。    つづく   

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 ムコスタではなく、逆流性胃炎に最適なネキシウムを処方されました。 しかし毎日行っている整形外科と違い、胃腸科の女医さんは優しいなぁ。

nex_cp10_p2_1_1108  【効果】  胃酸は本来、胃腸に侵入してくる“ばい菌”を殺菌する大切な役目をしています。しかし胃壁が弱っていると、胃粘膜を傷つけ胃潰瘍の原因にもなりかねません。また、胃酸が逆流すると、食道を荒らし ひどい胸焼けを起こしたりします。ネキシウムは酸分泌の抑制薬です。胃酸の分泌を強力におさえ、胃酸の悪い影響をなくします。結果的に、胃潰瘍や逆流性食道炎の治りがよくなり、胃痛や胸焼けもやわらぎます。鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症薬)が原因の胃潰瘍にも有効です。

 そのほか、胃炎や胃潰瘍をはじめとする さまざまな胃病変の原因菌“ヘリコバクター・ピロリ”の除菌にも用います。この場合、他の2種類の抗生物質と併用します。この薬で胃酸を少なくすると、胃内での抗生物質の効き目がよくなり、除菌成功率が高まります。    そういえば去年検査したピロリ菌はどうなったっけ?(検査結果を聞きに言ってない)  

【薬理】  胃酸を分泌する最終段階である「プロトンポンプ」という機能をじゃまして、胃酸の分泌をおさえます。胃酸による胃粘膜への刺激が弱くなるので、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の治癒につながります。

   では薬持ってこれから大阪へ向かいます!

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 本日の病院動向はCRPSの疑いのある被害者です。骨折後、癒合も進むも、半年以上たっても痛みが無くなりません。いえ、さらに増悪しているともいえます。痛みを感じる神経が暴走、一向におさまりません。これは器質的損傷から神経損傷が推定されるのでTypeⅡ(カウザルギー)に類別されます。

 しかし臨床上、医師がそう診断したとしても、自賠責保険、労災、その他障害認定において行政側の判断は厳密な基準をクリアしなければその診断名とはなりません。カウザルギーの場合、他覚的所見として骨萎縮、骨の脱灰現象、皮膚色・温度変化、浮腫などが観察されなければなりません。立証するにはMRIや骨シンチ、サーモグラフィーなどの検査結果も必要です。さらにそれらを総合した専門医の確定診断が必要です。すると多くの方はこれらの条件に及ばなくなります。 pics324    本件も主治医の診断がカウザルギーでも自賠責保険の後遺障害としてはその診断名を維持できないとみています。そもそも自覚症状としてアロデニア(灼熱痛)が絶対的な所見です。これはちょっと触っただけで悲鳴をあげるレベルですが、本件被害者はそれほどの反応ではありません。

 こうして臨床診断と行政判断が食い違い、「私はなんの障害なの?」被害者は混乱してしまうようです。これを私の立場から時間をかけて説明していくことになります。

 医師の診断は絶対ではない?この仕事ではなかなか悩ましい問題です。

 

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 セカンドオピニオンとは主治医の診断や治療方針を聞くだけではなく、他の医師の診断、意見を聞くことです。かなり一般的になってきたと思います。ただしその意義や重要性が広く浸透した一方で、「主治医に失礼」「心証を悪くする」といった不安から、躊躇(ちゅうちょ)する患者が多いもの事実です。また経験上、セカンドオピニオンに寛容、積極的な医師は診断書の記載や後遺障害立証への理解があり、患者おもいで協力的です。逆にセカンドオピニオンでへそを曲げる医師はまったく協力をしてくれません。  

 2月21日発売の週刊朝日MOOK「手術数でわかる いい病院2014」はその辺の事情を特集していました。記事から引用します。  

 医師に遠慮する患者さんの気持ちはわかるし、伝わってもきます。でも、こちらはまったく気にしていないし、それで万一の見落としが防げるならそのほうがいい」 そう言い切るのは日本医科大学武蔵小杉病院脳神経外科講師の太組一朗医師だ。もしセカンドオピニオンで異なる治療方針が提示されたら、患者の意見を尊重しながら治療方針を立てていくという。

20070406  では、患者がセカンドオピニオンを取りたいと申し出て、医師は絶対に腹を立てないのかといえば、必ずしもそうとはいえない。一部の年配の医師や、若くても一つの術式にばかりこだわっている、言い換えれば、自分に自信がありすぎるような医師の中には、機嫌を悪くする医師が存在するのも事実だ。

 しかし、相手が医療の専門家である医師だからといって、何ものにも代えがたい健康や生命を預けるのは患者の側だ。「俺の言うこと」に従って命を差し出さなければならない理由などない。セカンドオピニオンを申し出て嫌な顔をされたら、それは医師を代えるチャンスと考えるべきだ。自分の考えだけを押し付ける医師とは、信頼関係が築けないだろう。

 あるアンケートでは、セカンドオピニオンを取った経験のある人の7~8割が、「セカンドオピニオンを取ったことで主治医(元の医師)との信頼関係が深まった」と答えている。セカンドオピニオンは「疑い」ではなく「信頼」を得る手段なのだ。

 では、どうすればセカンドオピニオンに好意的な医師と巡り合えるのだろう。前出の太組医師は苦笑しながらこう語る続きを読む »

 ドラマはあまり見ません。まして一年も続く大河ドラマなど・・。しかし先日NHK大河ドラマ「軍師 官兵衛」を観ました。行政書士仲間は戦国好きが多く、皆しっかり大河ドラマを観ています。忘年会でも官兵衛が話題に上がりました。

kan さて黒田官兵衛については詳しい方も多いと思いますので人物説明は割愛します。一言で言いますと戦国時代、信長、秀吉、家康の3天下人に仕えた軍師です。様々な逸話が残っていますが私にとって注目すべきことが一つあります。それは後遺障害の観点から「関節硬縮」です。    まず背景から・・・

 官兵衛が主君 織田信長に謀反を起こした荒木村重のもとへ、「謀反を思いとどまるよう」説得のために単身、有岡城へ出向きます。しかし村重は説得に応じず、官兵衛を牢に幽閉してしまいます。この牢は天井低く、官兵衛は座ったままの状態を強いられ、1年間も閉じ込められました。その後、村重の謀反は失敗し、官兵衛は救出されます。しかし下肢、とくに左脚が不自由になり、しばらく自力で歩くことができなくなりました。戦国時代にどのようなリハビリをしたのか、また装具はどうしたのか記録にありませんが、有馬温泉で療養したとの記録があり、杖を使って歩けるまでに回復はしたようです。ドラマの冒頭、小田原城への使者のシーンで足を引きずってましたね。

 ここで官兵衛の病態を分析します。考えられるのは2つ・・

1、くる病  おそらく陽も当たらず不衛生な環境から、ビタミンD不足を原因とする「くる病」が考えられます。大腿骨、脛骨や半月板が石灰化を起こし、ひどいと骨の変形となります。当然脚が曲がったままで伸びず、歩行不能が考えられます。しかし栄養状態の回復と運動療法から回復する病気でもあります。

2、廃用性症候群

 人間の関節は一か月も動かさなければ誰でも固まって曲がらなくなります。これを廃用性関節硬縮と呼びます。狭い牢で一年も歩かず座ったままであれば関節は固まってしまい、元通り100%動くまでの回復は困難となります。

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 後遺障害の予断に画像診断は欠かせません。問題なのはレントゲンのみならず、MRI、CTなどの画像を整形外科医が正しく判断できるか?です。これは大変失礼な物言いになりますが、画像の読影は医師と言えども相当の専門分野であり、専門の学習、多くの臨床を経験しなければ正確な読影は難しいのです。それは医療先進国のドイツやアメリカを例に取ればご理解いただけると思います。これらの国では、患者を診る医師と画像読影をする医師の分業化が進んでいます。医師は画像検査を指示し、その読影・解析を放射線科の医師にオーダーします。そして専門医による読影レポートを基に診断し、治療方針のデータとしているのです。特に医療過疎地などは村の診察所からデータ通信を介して、専門医による読影・診断を仰ぐことができます。

 このような背景から日本でも読影専門医のニーズが高まりつつあります。放射線科医を抱える大病院なら院内で完結しますが、町の個人病院においても進んで画像検査と読影を外注する仕組みが広がることが望まれます。

 さて交通事故外傷の現場でも医師の正確な読影なしに障害立証は困難なケースが続出しています。私たちのチームでも専門医に画像の読影を依頼することは日常の作業です。であれば相談会の段階からある程度画像に踏み込みたい、これは自然な欲求です。既に関西では先駆けて放射線科の医師が参加し、町の整形外科医では難解なMRI、CTについてその場で暫定的な読影をしていただいています。  このように医療判断が必須である交通事故外傷の相談において、究極のスタイルを実現しているのです。

 次回12/14、ついに有楽町相談会でも放射線科の医師が初参加します。すでに多くの予約を頂いておりますが、まだ数名予約可能です。是非、画像(XP、CR、CT、MRI)持参でお越し下さい。フィルムでもCD-ROMでもOKです。 

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 清々しい天気でした。山梨遠征はいつも好天に恵まれています。

 さて本日の内容は、中学生の骨端線損傷の異議申立についてです。既に事前認定で「非該当」なっております。自賠責保険の回答は「骨折等、器質的損傷がない・・」ことを理由に、疼痛と可動域制限を否定しています。しかし事故後1年以上も症状が収まりません。おそらく自賠は「成長痛」によるものと判断しているようです。  では成長痛を少し調べてみましょう。

成長痛 

 12歳未満の小児に多く、4人に一人の頻度で起きると言われています。特に原因なく夜間、両下肢に痛みが生じ、翌日になると痛みが軽快して障害などは全くなく普通に歩けるようになります。。痛みの出現は両側で、大腿、膝、下腿など下肢に多く出現します。時に前腕、頭部などの痛みを伴ないますが、下肢の痛みと同時に出現します。  成長痛の特徴として、筋肉、関節、骨などには異常を一切認めません。仮に異常があれば別の疾患となりますので、鑑別疾患を疑う必要があります。仮に異常があれば捻挫、打撲、骨折など別の疾患を考える必要があります。  治療は保存療法です。傷病ではないのでそのままにするしかありません。疼痛の緩和のために投薬やマッサージも有効ですが、中学校を卒業するまでにほとんどが消失します。

 このように成長期の子供さんにとっては「既往症」なのでしょう。しかし本件の場合は受傷した右脛骨・腓骨の遠位端、つまり右足首のみに疼痛が出現しています。両足ではないのです。単なる成長痛で諦めるわけにはいきません。なんらかの器質的損傷があったのかもしれません。これについて骨端線の観察、関節裂隙の左右比較を主治医に主張し、原因究明のため両足のXP 、ヘリカルCT検査を快諾して頂けました。これから専門医の読影を乞い、画像の解明作業です。

 

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 「不全」・・・・【意味】物事の状態や活動のしかたが完全でないこと。十分でないこと。また、そのさま。不完全。

 交通事故外傷名によく見たれる言葉で「不全」があります。

 不全骨折、不全麻痺、不全損傷 ・・・ 重いケガではないようです。中途半端なケガかな? 

 この「不全」が診断名の頭に付くと障害の想定は少し慎重になります。よくあるケースで説明します。むち打ちで整形外科医が患者の訴える痛み、痺れを聞いて診断名を付ける時、その診断名は大きく三つに分かれます。

1、頚椎捻挫  → おもに痛み(とりあえずこれで大間違いとはならない診断名です)

2、外傷性頚部症候群  → しびれ等、神経症状を伴うもの(実は曖昧な診断名)

3、頚髄損傷  → かなりひどいしびれを訴えたとき(詳しく聞くと「頚髄損傷の疑い」となります)

 ここで問題なのは3の頚髄損傷です。これは上肢、下肢が麻痺して動かなくなるほどの重篤な傷病名です。しかしMRIやシンチグラフィーなどの検査もせずに安易に診断名を付ける医師が珍しくありません。もちろん患者は痛みや痺れがひどくても歩いて通院しています。すると診断名が「不全麻痺」、「頚髄損傷の疑い」とトーンダウンしてきます。ちなみにこの診断名のみを信じてまともに損害賠償請求を起こす法律家が後を絶ちません。医師の主観で決めた診断名のみでは立証も何もありません。  話を戻します。この場合の「不全麻痺」は「頚髄損傷の疑い」と同じように思われがちですが、医学上は意味が違います。「不全」とは完全麻痺ではなく神経作用の残存が認められる状態を指します。例えば上肢にしびれがあるもののなんとか日常動作は確保している、しかし下肢は動かず車イス・・・これも不全麻痺と言えます。簡単に言いますと神経が完全にやられてしまって動かないわけではなく、動作の一部が確保されていれば不全麻痺です。麻痺の具合が軽いという意味ではないのです。手がまったく動かない完全麻痺に対して、しびれがある程度は軽度麻痺であって、不全麻痺との表現は医学的には違います。  不全を曖昧な意味で捉えると正確な診断がぼやけます。不全を正しい解釈で理解すること、そして医師が正しい意味で使用しているかを確認しなければなりません。

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言語聴覚士(ST=Speech Therapist)

言語聴覚療法は、脳卒中の後遺症や外傷による高次脳機能障害、構音障害(うまく話せない)、失語症(言葉が出てこない)、摂食・嚥下障害(食べたり飲んだりすることがうまくできない)のある患者さんを中心に各種検査ならびに訓練を行います。  STは言語及び聴覚に障害を持つものに対して訓練等の業務をおこなう者です。 治療内容は脳卒中の後遺症や外傷による高次脳機能障害で構音障害(うまく話せない)、失語症(言葉が出てこない)、摂食・嚥下障害(食べたり飲んだりすることがうまくできない)のある患者さんを中心に各種検査ならびに訓練を行います。  高次脳機能障害の立証で行う神経心理学検査には欠かせない専門職です。

 「言語聴覚士法」(平成9年12月制定)

臨床心理士(CP=Clinical Psychologist)

 臨床心理学に基づいた知識と技術で援助する専門職は、日本では、心理カウンセラー、サイコセラピスト、心理士、心理相談員など、さまざまな名称で呼ばれています。

 CPは心の問題で不適応に陥っている人、病気やけがなどをしている人への心理的援助が中心です。心理テスト、心理療法のほかに、デイケアやコンサルテーションなどの活動も行います。活動場所は病院に限らず市町村の公共施設、学校、刑務所・少年院など多肢にわたります。  治療内容は主に心理カウンセリング、心理学系の検査、リハビリ指導です。

 臨床心理士は(財)日本臨床心理士資格認定協会の認定を受けた者です。近年、国家資格化も検討されています。

 ※ 2005年、国家資格(認定心理士)として国会で承認されました。    

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 リハビリテーションを行う病院ではリハビリを専門とした準医師ともいうべきスタッフがおります。それぞれ国家資格者で厚生大臣の免許が必要です。  やはり英語二文字で呼ばれることが多いようです。整形外科やリハビリ科を出入りすることが多い私達も覚えておかねばならない知識です。2回に分けて整理しておきましょう。

理学療法士 (PT=Physical Therapist)

 理学療法は、身体の機能回復に加え、基本的な動作(起き上がり・座位・立位・歩行等)の運動を指導および介助方法の指導を行います。整形外科の病院ではおなじみで、多くのクリニックにリハビリ科が併設されています。  PTとは、何らかの疾病や傷害(スポーツを含む)などに起因する後遺症を持つ方に対し、徒手療法および物理療法(温熱、水、光線、電気治療)を用いて、諸機能の改善を図るものです。  治療内容は能力障害が残ったとき、基本的動作や日常生活活動を改善するための指導、そして社会生活を送る上で不利な要素を少なくするための福祉用具の選定や住宅改修・環境調整、在宅ケアなども行います。近年では、生活習慣病の予防・コントロール、障害予防も理学療法の対象になっています。

「理学療法士及び作業療法士法」(昭和40年6月制定)

作業療法士 (OT=Occupational Therapist)

作業療法とは、疾病や事故で心身に障害が生じた方々に、作業活動などを用いて訓練を行い、日常生活や社会的な自立を援助する、リハビリテーション医療の一専門分野です。  OTは身体又は精神に障害のある者に対して、主に応用的動作能力又は社会的 適応能力の回復を図るため、作業療法の治療・指導・援助をおこなう者です。  治療内容としては、身体機能(関節可動域訓練や巧緻動作訓練、利き手交換訓練など)や高次脳機能へのアプローチを行います。急性期リハビリテーションとして日常生活活動 (Activity of Daily Living:ADL)、つまり食事や更衣などの身辺動作がなるべく早く自立できるような視点を持って様々な作業活動を用いながら援助します。

「理学療法士及び作業療法士法」(昭和40年6月制定)

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 漢字ですと書き方が難しく、言葉にするとカミカミな膝の靭帯の呼び方。医師はカルテ上、英語で略して記載することが多いようです。今日は少し手抜きですが英語表記を復習しましょう。

前十字靭帯 =ACL: Anterior Cruciate Ligament

後十字靭帯 =PCL: Posterior Cruciate Ligament   内側側副靭帯=MCL: Medial Collateral ...

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 残念ながらすべてのお医者さんが優れているわけではありません。

 公務員、警察官、営業マン、社長さん、弁護士、運転手、職人さん、世にあるすべての職業に言えますが、優秀な者とダメな者、普通の者、つまりレベルの差があるのです。私の仕事は病院、弁護士、警察官、保険会社、市町村職員はもちろん、あらゆる職業の被害者さん・・・たくさんの職業の方と接します。その経験から切にそう感じます。

 交通事故で被害者となった方は病院との関係では患者です。日々の病院同行の中で治療やリハビリにおいて適切な判断、処置がなされているとは言い難いケースに出くわします。「レントゲン検査するも骨折を見逃している」、「靭帯断裂なのに捻挫でしょうと湿布だけだされた」、「神経症状が顕著なのに的外れな薬が出された」・・・整形外科でもこのような誤診?的外れな対応を多く目にします。医師と言えども人間、間違いは(あってはならない!のですが)あります。問題はその後の対処です。即治療内容を修正するか、検査を実施するか、場合によっては他院での検査や治療の紹介を進めるか、このような医師の対応が望まれます。   しかし頑固な先生もいるもので、「俺の診断に間違いはない!」、「検査の必要などない」、「他院へ紹介?俺の診断が気に入らないのか!」、このように感情的になる先生がいるのです。(年間数人ですが実在します。)

 断言します、診てもらってはいけない医師が存在します。症状によっては専門医の受診に切り替える必要があります。そして医師との人間関係も重要です。気の合う医師、どうも関係が悪くなりそうな医師・・・やはりこの部分も大事です。  そうなると患者は自身の治療のために医師を選ぶ必要があります。危険を感じたらなるべく早く見切りをつけるべきです。「お医者様なのだから」→「間違いはないはず」と甘い認識のまま漫然と通院を続けた結果、回復状態も悪く、また補償問題でも協力が得られずに立ち往生してしまうことになります。早期に転院し、事なきを得た患者はきちんと見極めをしています。

 いつも言っていますが治すのは患者自身の自己責任です。病院との関係は治療のみならず、後の損害立証、賠償交渉までずっとついて回りますよ。

                    

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 少し特殊な撮影法に入ります。以下の3つは高次脳機能障害の立証に重要な意味を持ちます。単なるMRIでは病変部を見逃すこともあるので、被害者、関係者には必須の知識です。

F L A I R 画像:Fluid Attenuated Inversion Recovery(水抑制画像)

 FLAIR(フレアー)画像は、基本的には水の信号を抑制したT2強調画像(脳室が黒く見えるT2WI風の画像)であり、脳室と隣接した病巣が明瞭に描出される。ラクナ梗塞(細い血管(動脈)が詰まってしまうことで起こる小さな脳梗塞のこと)に代表されるかくれ脳梗塞や血管性認知症にみられるビンスワンガー型白質脳症(高血圧や脳の動脈硬化などにより脳の血流障害のため大脳白質(脳表面より深い部分)が広範に障害されることによって認知症が現れること)などの慢性期の脳梗塞部位(白色に描出される)確認に有用です。

<高次脳機能障害では>  脳損傷後の脳萎縮、脳室拡大の経過観察に用いられます。脳内出血や硬膜下血腫など血だまりが発生した場合、脳外科医は受傷から翌日、3日後、1週間後、1か月後、3か月、半年後とこのMRI検査を継続します。再出血への警戒はもちろん、脳の器質的変化を監視するためと思います。

T2*強調画像:T2star weighted image (T2 star 強調画像)

 T2*強調画像(T2スター)は出血性病変の検出力が極めて高く(黒色に描出される)、過去に発症した出血巣の確認や無症候性微小出血の検出に優れています。

<高次脳機能障害では>  高次脳機能障害の診断「びまん性軸索損傷」の病原部として、微細な出血痕(点状出血)の描出に有効です。T2スターで点状出血を発見!をよく経験しています。また受傷後2年経過した場合でも、脳のわずかな出血部、損傷部の痕跡を発見できるのも特徴です。

DWI:Diffusion weightedimage (拡散強調画像)

 DWI(ディフージョン)は水分子の拡散運動(自由運動度)を画像化したもの。拡散が低下した領域が高信号として描出されます。急性期の脳梗塞では、拡散が低下してくるため、超急性期の脳梗塞の部位判定(白色に描出される)に有用です。T2スターでも見逃す細かな損傷でも描出可能です。

<高次脳機能障害では>  T2スター同様、「びまん性軸索損傷」における点状出血、または微細な損傷の確認に有用です。違いはより微細な出血も見逃さないが、受傷直後に限定されることです。脳外傷が軽度でも意識障害や半身麻痺がみられ、また相当の脳障害が残りそうな患者の場合は早めに手を打つ必要があります。既存のMRIで脳損傷が発見できなかったときは急ぎ「DWI(ディフージョン)でお願いします!」と医師にリクエストしなければなりません。このまま損傷部が映らなければMTBI(外傷性軽度脳損傷)の扱いとなり、後の障害が否定されてしまうからです。    続きを読む »

 MRI(magnetic resonance imaging)とは、体に強力な磁気を通し、体の水分の濃淡から磁気共鳴の差が生じ、それを画像にする技術です。詳しく解説するとより難解になってしまいますので、あとは専門書に譲ります。

 さてMRIにも様々な撮影法があります。病態の解明について、同一か所にそのいくつかの撮影法、描出法にて解析します。交通事故被害者や立証側が知っておきべき撮影法について解説します。  まずは基本の2種。ほとんどの場合、このT1とT2はセットで検査されます。簡単に言いますと病変部を示す部分がそれぞれ黒と白となり、コントラストが逆になります。

(1)T1強調画像:T1 weighted Image(T1WI)

 T1では水は黒く低信号で描出され(脳室は黒色)、CTとよく似た画像を呈し、大脳皮質と白質などの解剖学的な構造が捉えやすいという特徴があります。

(2)T2強調画像:T2 weighted image(T2WI)

 T2では水は白く高信号で描出され(脳室は白色)、多くの病巣が高信号で描出されるため、病変の抽出に有用とされている。以下T1とT2の画像上の特徴を整理します。

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 骨端線(こったんせん)損傷について、特に足関節(脛骨と腓骨)の成長線骨折を例にとって解説します。(XP画像は秋元接骨院さまHPより転用)

 成長期ではどんどん骨組織が発達します。脚では脛骨と腓骨がぐんぐん伸びていきます。その時期に足の捻挫などにより骨端線(成長軟骨部分)を損傷することがあります。足関節を構成する脛骨及び腓骨の遠位端には成長軟骨層があり、骨端核を中心に成長と共に成人の骨へと変化していくのですが、骨端部分が成人に近い状態にまで完成されても、脛骨と腓骨の成長が終了するまでは、骨幹と骨端の間に骨端線が残ります。  骨端線部分は完成された骨よりも強度が弱く、外力による影響を受けやすい部分のため、強い外力の働いた捻挫や衝撃で骨端線損傷を起こしやすいといえます。 損傷の程度が軽いものでは、レントゲン検査でも分かりにくく、捻挫と診断されるようなものから、骨端線からきれいに骨折している重傷なものまで、いくつかの種類に分かれます。

 XP画像はタイプⅠです。悩ましいのは骨端線骨折は、癒合を果たしたとしてもくっきり線が残ること、痛めやすく、骨折しやすくなることです。さらに交通事故外傷の場合、「癒合で完治」とは断定できません。前述の通り成長著しい幼児~10代は爆発的に骨組織が伸長しますので骨組織は容易に癒合します。しかしその後骨折しなかった方の足と比べ、転位や骨成長の左右差、軟骨の不具合による関節裂隙の左右差などが残存することがあります。これが可動域制限や、疼痛などにつながれば後遺障害の対象となるはずです。

 最近、小学生時の事故で成長線骨折となった未成年の被害者を2例担当しています。いずれも数年を経て癒合するものの成長による変化を伴った状態です。慎重な立証作業となります。

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 大勢の整形外科医の診断に立ち合ってきました。当然、打腱器を使った腱反射テストも頻繁に目にしています。むち打ちや腰椎捻挫で神経症状に及んでいる被害者さんは相当重篤と言えます。その神経症状の診断に代表的な検査が腱反射です。左右どちらかの神経根に圧迫のある方は概ね反応(左右の差)が低下、消失します。また脊髄圧迫(正中型)では亢進といって反応が大きくでます。

 医師によってやり方は違うようですが気になることがあります。それは「コン!」と一回叩く先生と、「トントン」と短く2回叩く先生に分かれることです。私も整形外科医から教わりながら、相当練習を積んできましたが、はっきりとした反射を取る場合、一発「コン!」と叩きます。経験上、弱く短く2回の「トントン」ではよく反応が診れません。

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 下肢骨折後の変形を立証すべく、XP(レントゲン)検査の手配を行いました。通常、医師は骨折の癒合状態を確認するために骨折箇所のみを撮影します。至極当然なことですが、下肢全体の変形を確認するためには左右差をみる必要があります。つまり両下肢共に一枚のフィルムに撮影しなければ比べることができません。そこでXPをフィルム化するサイズが問題となります。脚全体など長いサイズをフィルム化する場合、ロールフィルム撮影という方法があります。しかしこれを備えている病院は大学病院などそれなりの規模です。ロールフィルムがない場合は、何枚かのフィルムをつなげて確認することになります。

  良い機会ですので今日はフィルムのサイズについて調べてみました。

種類

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 湿布には冷感湿布といったひんやりするもの、温感湿布といった温かく感じるものの2種が市販されています。それ以外に医師の処方箋が無ければ原則手に入らない経皮鎮痛消炎テープ剤があります。これは交通事故外傷での消炎鎮痛に処方されることが多く、モーラステープがお馴染みです。少し湿布を整理しましょう。

冷感シップ(冷シップ)

 冷感シップには、炎症を抑える消炎鎮痛剤とメントール等の冷感の刺激がある成分が入っています。保湿性があり、貼ったときからひんやり冷たい感じがします。  主に、急な痛みや炎症に使います。患部を冷やし、シップに含まれている鎮痛薬で痛みを抑えます。

温感シップ(温シップ)

 一見冷シップと同じような感じですが、中に唐辛子エキスなど温かく感じる温感刺激をもつ成分が入っています。人によっては、ピリピリとした刺激でかゆみ、発疹が出ることもあります。  腰痛などの主に慢性的な痛みや熱や腫れが引いた後の痛みに使います。患部を温めることで血行がよくなります。また、筋肉の緊張が和らぎます。

経皮鎮痛消炎テープ剤 (モーラステープ など)

 主に肌色で、薄いテープのような貼付剤です。経皮鎮痛消炎剤といって、皮膚から吸収されるタイプの鎮痛剤が効果を発揮します。メントール等のひんやりする成分も入っていますが、シップと異なり貼った瞬間は冷たい感じがしません。しばらく経ってからスーッとしてきます。最近は、シップのように貼り付け可能なテープ剤も販売されています。   急性期・慢性期と分けることなく使われているようです。シップと異なりはがれにくく、伸びやすいことからよく動かす関節部分や、外出時に使われることが多いようです。

       注意:このモーラステープを貼ってから1~3週間は強い日光を浴びてはいけません。紫外線で皮膚炎になるケースが多く報告されています。貼付部位に紅斑や発疹・腫脹・強いカユミ・水疱など、さまざまな症状が現れるようです。

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 懐かしい骨折名です。大学の剣道部で同期の部員が2度経験しています。激しい稽古で消耗すると、自然に足の甲の小指側の骨が折れてしまいます。多くは時間をたてば自然に癒合しますが、怖いのは無感覚の偽関節、または骨折癖、つまり簡単に何度も折れてしまうことです。

 交通事故外傷では一度経験していますが、やはり癒合状態もよく、特に痛みも残らないので後遺障害の対象とはなりませんでした。もし偽関節(くっつかなかった)となっても普通に歩けるようです。しかし症状固定時に偽関節化していれば、当然、後遺障害として申請すべきです。

 今日はいつも骨モデルを購入しているトワテックさんからのメール(メディカルリポート)から抜粋しました。ちなみにスミスやジョーンズなど名前のついた骨折名があります。多くは学会で症例と治療法を発表した医師の名前がついているようです。

               

 Jones骨折とはJonesが自らの経験を基に最初に報告した骨折で、第5中足骨の骨幹近位部に繰り返し加わる外力により生じる疲労骨折の1つです。同じ部位に繰り返し弱い力が加わることによって起こる疲労骨折は、運動しているときに痛み、安静にしている時には痛みは治まります。骨折線の特徴として横走するものが多く見られます。 また再発を繰り返し治療に難渋する事が多く遷延治癒や偽関節になりやすいためスポーツ選手(特にサッカー選手)の場合は、選手生命を左右することが多い疾患と言われています。解剖学的に第5中足骨の基部は短腓骨筋腱・第4中足骨と連結している底側中足間靭帯・立方骨と連結している底側足根靭帯がついており強く固定されています。それにより基部は固定され基部中枢から末梢1.5cmの弱い部分に力が繰り返し集中し発生、骨折線も横走するものが多いのです。  症状として初めのうちは違和感程度で、これといって症状はありません。徐々に時間とともに負荷が加わり、疲労骨折の症状として運動しているときは痛み、安静にしているときは治ったりと増悪や緩解を繰り返します。完全骨折になると激痛で歩行困難となります。鑑別診断として、短腓骨筋の急激な収縮により起こる下駄骨折や残存性骨軟骨障害などが挙げられます。

 治療としては、不全骨折の場合は保存療法を選択します。繰り返し同部位に力が加わるため足圧分散の足挿板を使用したり、足底筋や腓骨筋など筋力バランスの強化。または姿勢反射調整などがあげられます。観血的療法に踏み込む場合は、完全骨折の場合など症状に応じて判断していきます。どちらにしても疲労骨折の1つであるJones骨折の治療の目的として、骨の癒合だけにとらわれず、持続的に同部位への繰り返しによる応力の集中を防ぎ、再発に努めることも大切です。

整形外科医 北村 大也 ...

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