醜状痕の認定では数々のパターンを経験してきました。医師が診断書の該当欄に計測値を記載さえすればで済むものではなく、写真の添付や時には別紙に図示していただくこともあります。それでも、ほとんどのケースで自賠責調査事務所から”実際にキズを見て計測する”ための面接の要請が入ります。もちろん、即座に面接に応じ、連携弁護士が同席して計測を見守るなど万全を期します。

 しかし、全件に面接をしているわけではなく、面接を割愛することがあります。それは以下、4パターンを把握しています。   ① 高齢、重傷で外出不能、車イスなど、被害者さんの健康状態など事情によっては、自賠責側が面接を遠慮してくれる時があります。その場合、写真判定になりますから、角度を変えて数枚撮影するなど写真の充実と、写真からキズの大きさが計測できるようメジャーをあてた写真などの工夫を加えることになります。   ② 下腹部や臀部など、とくに女性の場合は写真もはばかられますので、これは、医師の図示から判定して頂きます。まさか、面接でパンツを下ろせとは言えません。   ③ 明らかに醜状痕の基準に満たないキズの場合。自賠責から念のため面接の打診が入りますが、申請者側から「非該当でいいですから面接はいいです」と断るケースです。   ④ 逆にキズが明らかで、容易に判定できるケース。意外と稀だと思います。本件実績はこれにあたります。    私も何度か面接に立ち会いました

9級16号:顔面線状痕(50代男性・埼玉県)

【事案】

自転車搭乗中、交差点で右折しようとしたところ、自動車が進入し衝突、受傷した。顔面挫創の診断。

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 こんにちは、金澤です    今日は交通事故被害に遭われた方にも多い、鎖骨の骨折について記事にしていこうと思います。

 整骨院では、鎖骨に限らず骨折直後に来院してくることは殆どありません。あったとしても、おばあちゃんが「さっき転んでから手が痛いの」 →コーレスじゃないですか!

 おばあちゃんが「朝起きて息したら痛い」 →おばあちゃんは寝返りや咳するだけで肋骨がイってしまう。 等々です。

 肋骨は、整形にいっても何もする事はないですが、一応は整形に送ります。ですので、整骨院に来る方としては、半年前に骨折をして治ったけど、どこどこが痛い。など訴えて来院されます。そして本題の「鎖骨骨折後、せおうことになる痛み」。鎖骨というのは、沢山の筋肉が着きます。 一つの骨につく筋肉の数で言うと上位です。

・三角筋  ・僧帽筋  ・大胸筋  ・胸鎖乳突筋  ・鎖骨下筋

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 「治っていないのだから、まだ治療費を出して下さい!」

 痛みや痺れの症状が残っているのに、相手保険会社から治療費の打切りを切り出されれば、被害者さんはこのように言うはずです。これは当然の被害者感情です。しかし、賠償金で考えると、受傷から半年関治療を続けても症状が残っているのなら、後遺障害14級9号「局部に神経症状を残すもの」の認定を得て、高額となる賠償金を得て解決させるべきです。仮に保険会社が治療費を打ち切っても、その後は健康保険を使って治療を続ければ、自己負担する3割の治療費など高が知れており、後遺障害のお金の方がずっと高額なのです。

 神経症状というものは、通常、受傷からどんどん軽減していくものです。さらに、極端に治療を延ばせば、心因性(心の病で痛いと感じる)、あるいは詐欺(休業損害や慰謝料など賠償金・保険金目当て)に思われるかも知れません。このような被害者さんはおよそ非該当になります。原則、症状がはっきりしている時期までに、後遺障害審査に付すべきなのです。

 つまり、交通事故被害者さんは、解決に向けての損得勘定をする必要があるのです。本件は相手保険会社の打切り後、さらに労災で治療を継続しました。症状は軽減傾向となりましたが、なんとか後遺障害14級9号を得ることができました。結果的に1年以上も治療費を確保した上の認定ですから、結果オーライです。それでも、私達はこのような危ない橋を渡らせることに眉を潜めてしまいます。

巻きの作業でした

併合14級:頚椎・腰椎捻挫(40代女性・静岡県)

【事案】

自動車搭乗中、直進道路で後続車の追突を受ける。直後から頚部痛、腰部痛等の神経症状に悩まされる。

【問題点】

受傷後半年まで保険会社から治療費を出して頂けたが、症状が続いていた。治療費打切り後、本件は労災事故だったらしく、遅れて労災申請、適用し、さらに治療を継続した。その後、労災からも治療費が打ち切られ、この段階で相談の連絡があった。事故から1年以上経過していた。 続きを読む »

佐藤、今日はバッターです。

 日本ハムファイターズの清宮幸太郎選手が怪我したことで一躍有名になった「有鉤骨」ですが、交通事故においては、傷病名として目にすることが少ないと感じています。手根骨の骨折は手関節機能に影響を及ぼしますが、有鉤骨についてはほとんど影響がありません。その為、14級9号を前提に進めていくことが望ましいと考えますが、様々なケースを考えてみましょう。

有鉤骨とは8つの手根骨の一つです 

 まず、有鉤骨とは手根骨と呼ばれる手首の8つの骨のうちの一つであり、薬指・小指の下に存在する骨です。主にスポーツで負傷してしまうことが多いでしょう。野球のバッティングやゴルフ、テニスのスイングで骨折することが多いようです。負傷の原因としては、外力によるものと、蓄積したダメージによるものに分かれます。交通事故は前者ですね。交通事故の場合には、バイクや自転車のグリップによって、転倒した際に地面に手を付いた等、骨折の可能性があります。症状は「腫れ」、「痛み」、「熱」が強くなると言われていますが、具体的には小指の痛みや痺れがひどくなるようです。ひどい場合には、握力低下や小指の可動域にも影響が出るとも言われています。

 治療法としては、他の骨折同様に「保存療法」と「手術」に分かれます。保存療法では、ギプス等で小指までしっかりと固定します。(有鉤骨には「短小指屈筋」と「小指対立筋」という小指を動かす筋肉がくっついているので)一方、手術では、「接合術」と「摘出術」に分かれます。「接合術」は、ネジを使って固定します。しかし、手根骨全般に言えますが有鉤骨は血流が悪い為、癒合がしにくいという点からこの手術はあまり一般的ではないようです。「摘出術」は、骨片を除去します。癒合を待つ必要が無い為、リハビリの開始時期も早めることが可能となります。    有鉤骨骨折により、小指に可動域制限が残存した場合には、13級6号「1手の小指の用を廃したもの」に該当する可能性がありますが、小指対立筋と短小指屈筋の損傷等を明らかにする必要があるでしょう。そうは言っても非常にハードルが高い為、14級9号認定となるケースが多いようです。    

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 最近の病院同行でのことです。膝の靱帯損傷による、動揺性(膝の関節がぐらぐら、階段を降りる際の膝崩れが怖い)について診断書に記載をお願いした際、主治医から計測基準に対する指摘がありました。    自賠責は、膝関節の動揺性の判断にまず画像所見を前提とします。相応の靱帯損傷、靱帯の部分断裂や伸びてしまった状態がなければなりません。装具の硬軟(堅い装具かサポーターのような装具か)なども、程度の判定に加味しているようです。そして、医師が徒手で行うラックマンテストや前方引き出しテストから、ぐらつき具合を、前方・後方・左右で「○cm」と計ります。医師は徒手検査の感触で○cmと判断します。また、ストレスXP画像に線を引いて、関節裂隙(かんせつれつげき・・・ 関節のすき間)を左右(健側・患測)比較して丁寧に計る医師もおりました。  動揺性、それが5mm前後であれば、多くは保存療法を選択します。リハビリでは、大腿四等筋を鍛えて弱くなった靱帯を助け、膝の安定性を確保することが目標となります。また、靱帯の完全断裂、又は1~2cmを越える高度な動揺性を示す場合、このレベルでは歩行に支障をきたすので手術(靱帯の再建術・・・膝蓋腱等から移植することもあります)の判断となります。

 しかし、医師によっては、「○cmとは、膝のどこを軸に計るのか」、「基準が曖昧で記載不可能」との声が上がります。これは実に正しい意見と思います。自賠責や労災では、具体的に等級判断の為の計測法や診断基準を公表しません、以下の表からでは、装具の使用状況のみです。労災は顧問医の診察から判断できますが、自賠責は画像と診断書から推察するのみ、医師に記載に必要なガイドを与えないのです。

 事前に示される基準は以下の通りてす。

 よく言えば「総合判断」、悪く言えば「曖昧」です。したがって、賠償上の判断基準と臨床上の計測・判断が繋がらない、または食い違うことが起きてしまいます。本例もその代表例です。これでは、明確な基準から正確な判断を求める、ある意味真面目な医師は記載に迷うと思います。一方、手で関節を引っ張って、なんとなく「前方1cm」と賠償上の目安に乗って記載して頂ける医師もおります。

 現場では、どちらが正しいか、議論の暇はありません。メディカルコーディネーターはどちらの医師であっても、審査側に明瞭な状態が伝わるよう、診断書の記載を誘う役割に徹します。原則、医師の判断に任せるも、等級基準に合致させる臨機応変な誘導をすることになります。それが、等級を取りこぼすレベルでなければ、医師との衝突は避けるべきです。本件の場合は12級確保が目的で、ストレスXP検査の了解を得たので、細かい数値にはこだわりませんでした。この調整力こそ大事で、単なる知識だけでは務まらないことが多いのです。  

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高次脳機能障害の性格変化については、医師が高次脳機能障害の専門的な知見を持たない限り、非常に見逃されやすい症状と前回述べました。

その理由として、以下の(1)~(3)等があげられます。   (1)かかりつけ医がいない限り、事故後病院に運ばれてからはじめて医師に会うことが多く、事故前の患者の性格を確認できないことが多いこと。   (2)事故後の患者を診て頂いても、現状の性格が事故前と違うのかどうかを確認することは、高次脳機能障害に知見の深い病院や医師でない限りあまりないこと。   (3)高次脳機能障害の患者は、性格変化の症状を自覚することはほぼ無く、患者自ら医師に訴えることはあまりないこと。また、不思議なことに、就労不能レベルではない程度の性格変化の場合、家族の前でしか症状が現れず、医師や近所の方々に会う場合には普通に接することができる患者もいます。よって、患者から医師に対して症状を訴えることはあまり期待できません。 そこで、性格変化の症状を必要になってくるのは、家族、特に同居している家族からの報告です。事故前と事故後の性格の違いを判断でき、さらに、医師や病院関係者、近所等の他人に対しては症状が出ないことがあるため、性格変化の症状を一番認識できるのは家族だけなのです。     高次脳機能障害によって性格が変わってしまった場合、これに対する治療方法は、投薬方法があげられますが、効き目は人によってバラバラです。また、投薬以外にできることはあまりありません。このことから、一部の医師は、性格変化について、日常生活に大きく影響しない場合は重く受け止めて頂けないことがあります。この点、性格変化が加齢等によるものであれば、やむを得ないこともあるかもしれません。

他方で、交通事故の場合ですと、保険会社に治療費を請求するため、あるいは後遺障害申請をするため、診断書に性格変化まとめて頂く必要があります。

しかし、短い診察時間で性格変化は表出しづらく、「臨床上大したことない」「診断書に書く必要がない」等、まじめに取り合ってもらえないことがあります。肝心の医師が高次脳機能障害に対して理解して頂かないと、意味がありません。このような医師にあたってしまった場合、性格変化について立証する手段としては、(1)専門医の紹介状を書いて頂き、専門医の診察を受けること、(2)家族からの「日常生活状況報告」として日常のエピソードと共に性格変化の内容についてまとめてから後遺障害申請をすること、の2点があげられます。

専門医や高次脳機能障害について知見の深い病院であれば、家族から性格が変わったことを報告されると、診断書やカルテにまとめてくれます。また、性格変化で日常に影響が出る場合も専門的なアドバイスももらえますので、保険手続面や後の裁判面だけではなく、今後の日常生活を送る上でも、症状をメモ等にしてまとめておくことをお勧めします。また、医師は診察中忙しく、逐一報告しても聞いて頂けないことが多いこと、本人の目の前で性格が変わったことを報告するのは躊躇いがあることが多く、これらの事情からも、メモにしておけば医師に渡して報告が出来ますので、その方面でもお勧めします。  

なお、弊所では専門医にお連れすることだけではなく、やはり家族からの本人の状態・症状を確認し、かつ、家族には常日頃、気付いた点をメモにまとめるようにアドバイスしています。というのも、上記(1)(2)はいずれも重要であるため、後遺障害申請時に使用する日常生活状況報告をまとめる際に極めて有効な手がかりになるといえるからです。

交通事故に遭われた方はご自身で治療努力することは当たり前のことですが、高次脳機能障害で自分ではどうしようもない状況になってしまった場合、最後に助けてくれるのは信頼できる家族である、と言えます。    

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高次脳機能障害の認定に必要な3要件として、① 事故後の意識障害、② 頭部外傷による脳挫傷等、脳外傷による画像所見があること、③ 事故後の症状、があげられます。

この内、③の要件は、記憶障害や言葉が出てこなくなった等のように一見してわかりやすい症状から、わずかに計算ミスしてしまうことや、少し注意力が落ちた等、注意深く確認しないとわからない症状まであり、様々です。

注意深く観察すれば専門の医師や専門の言語聴覚士の検査中に確認できるものもありますので、弊所では専門の検査ができる病院や専門医がいらっしゃる病院で診察を受けるために、紹介状を主治医に書いて頂いたり、通院先で検査が可能であれば、必要な検査のお願いをしたりすることがあります。

しかし、中には医者でも言語聴覚士でも気づきにくい症状もあります。

その一つとして、性格変化があげられます。

性格変化も内容は様々で、例として、易怒性、易疲労性、飽きっぽくなる(注意障害等)、幼児退行、等があげられます。

易怒性とは、性格が怒りやすくなることです。ひどい場合には、就労不能レベルになりますと、病院関係者まで怒鳴り散らして大暴れします。もっとひどい場合には、他者を殴ってしまうこともあります。   易疲労性とは、少し作業するだけであっという間に疲れ果ててしまうことです。事故前は活発で明るい人が、事故後、とても大人しくなり、外出もしなくなるケースもあります。

飽きっぽくなる(注意障害等)とは、家事や仕事の作業中に、全く別の作業をしてしまうこと等を指します。その結果、すべての作業が中途半端になってしまって、何も終わらなくなることもあります。わかりやすいのは、例えば、ある場所を掃除中に、途中で全く別の場所を掃除し始めてしまい、かえって散らかってしまうようなケースがありました。

幼児退行とは、性格が子供っぽくなったことを指します。成人女性が事故後、周りを気にせず(男性の前であっても)、服を着替えてしまうような羞恥心の欠如のケースや、わがままになって周囲を困らせる場合、面談中に飽きて遊んでしまう場合等、様々です。

上記した症状以外にも性格変化のバリエーションがあります。これら性格変化が事故後生じた場合、高次脳機能障害の症状として、等級認定を検討する必要があります。

しかし、この性格変化については、医師が高次脳機能障害の専門的な知見を持たない限り、非常に見逃されやすい症状といえます。詳しくは次回のブログで述べます。  

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  (4)外分泌機能と内分泌機能の両方に障害が認められる場合

 服することができる労務が相当な程度に制限されると考えられるところから、9級11号が認定されています。   (5)膵臓損傷では、膵臓の切除術が実施されることが一般的ですが、 術後は、腹部にドレーンが挿入され、膵液の漏出に対応しています。

 膵液は、脂肪、蛋白、炭水化物を分解するための消化酵素を含んだ液です。 重症の膵液瘻では、多量の膵液漏出があり、電解質バランスの異常、代謝性アシドーシス、蛋白喪失や局所の皮膚のただれ、びらんが生じ、膵液ドレナージと膵液漏出に伴う体液喪失に対しては、 補液、電解質を供給するなどの治療が必要となります。つまり、このレベルでは、治療が必要であり、症状固定にすることはできません。

 しかし、軽微な膵液瘻で、治療の必要性はないものの、難治性のものが存在しているのです。これが続くと、瘻孔から漏れ出た膵液により、皮膚のただれ、びらんを発症します。 軽度な膵液瘻により、皮膚にただれ、びらんがあり、痛みが生じているときは、局部の神経症状として12級13号、14級9号のいずれかが認定されています。  

※ 代謝性アシドーシス  ヒトが生存していくには、体内の酸性とアルカリ性を、良いバランスに保たなければなりません。 これを、酸塩基平衡と呼ぶのですが、具体的には、ph=水素イオン濃度が7.4の状態です。 酸は、酸性、塩基は、アルカリ性、平衡は、バランスをとることなのです。 pHの数値が7.4以下となると、酸性に傾く=アシドーシス、以上では、アルカリ性に傾く=アルカローシス状態となります。 酸性の物質が体内に増えればアシドーシスとなるのですが、アルカリ性の物質を大量に喪失しても、酸性に傾きます。

 ひどい下痢で、アルカリ性の腸消化液を大量に喪失すると、pHは酸性に傾く、アシドーシス状態となり、 ...

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(3)膵臓の内分泌機能の低下    経口糖負荷検査により判定します。

① 正常型 膵損傷後に障害を残さないものであって、

 空腹時血糖値<110mg/dlかつ75g OGTT 2時間値<140mg/dlであるもの

② 境界型 膵損傷後に軽微な耐糖能異常を残すもの

 空腹時血糖値≧110mg/dlまたは75g OGTT 2時間値≧140mg/dlであって、 糖尿病型に該当しないもの

③ 糖尿病型 膵損傷後に高度な耐糖能異常を残すもの

 空腹時血糖≧126mg/dlまたは75g OGTT 2時間値≧200mg/dlのいずれかの要件を満たすもの。要件を満たすとは、異なる日に行った検査により2回以上確認されたことを要します。

 内分泌機能の障害による後遺障害の認定基準

① 経口糖負荷検査で境界型または糖尿病型と判断されること。

 インスリン投与を必要とする者は除かれています。

② インスリン異常低値を示すこと。

 インスリン異常低値とは、空腹時血漿中のC-ペプチド=CPRが0.5ng/ml以下であるものを言います。

③ 2型糖尿病に該当しないこと。

 上記3つの要件を満たせば、内分泌機能の障害として、11級10号が認定されています。   ○ 経口糖負荷検査

空腹時血糖値および75gOGTTによる判定区分と判定基準 続きを読む »

 後遺障害は(1)切除、(2)部分切除、(3)内分泌機能の低下、と3分します。   (1)膵臓が切除されると、外分泌機能が障害され、低下することが通常とされています。 膵臓の部分切除がなされており、上腹部痛、脂肪便および頻回の下痢など、 外分泌機能の低下に起因する症状が認められるときは、 労務の遂行に相当程度の支障があるものとして11級10号が認定されています。

※ 脂肪便とは、消化されない脂肪が便と一緒にドロドロの状態で排出されるもので、 常食摂取で1日の糞便中、脂肪が6g以上であるものを言います。   (2)膵臓周囲のドレナージが実施されるも、部分切除が行われていないときは、

①  CT、MRI画像で、膵臓の損傷が確認できること、

②  上腹部痛、脂肪便および頻回の下痢など、外分泌機能の低下に起因する症状が認められ、かつ、PFD試験で70%未満または、糞便中キモトリプシン活性で24U/g未満の異常低値を示していること、

 上記の2つの要件を満たしているときは、11級10号が認められています。

 また、他覚的に外分泌機能の低下が認められる場合として、血液検査で血清アミラーゼまたは、血清エラスターゼの異常低値を認めれば、11級10号が認定されています。  

※ PFD試験=膵臓の外分泌機能検査

 膵臓は2つの異なる働きをしており、1つは、食物の消化に必要な消化酵素、炭水化物を分解するアミラーゼ、 蛋白を分解するトリプシン、脂肪を分解するリパーゼなどを含んだ膵液を12指腸に分泌する外分泌機能です。 2つ目の作用は、血糖を下げるインスリンと血糖を上げるグルカゴンを血液中へ分泌して、血糖を調節する内分泌機能です。

 PFDは、膵臓の外分泌機能検査法の1つです。薬剤を服用後、6時間尿を採取する方法ですので、体に負担はかかりません。 膵臓の外分泌機能が低下するような病気で、異常値、低値を示します。 この薬剤は小腸から吸収され、肝で化学変化を受けた後、腎から排泄されます。 したがって、膵外分泌機能の低下以外に、小腸における吸収低下のある場合、 肝機能や腎機能低下のある場合にも、尿中の値は低下します。

 早朝空腹時排尿後に、BT-PABAというPFD試薬500mgを水200mLとともに服用します。開始6時間後の尿を全部集め、尿量を測ります。 採取した尿の一部を使って、尿中PABA濃度を比色測定し、尿中PABA排泄率(%)を計算いたします。正常値は71%以上です。  

※糞便中キモトリプシン活性測定試験

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1、膵臓の働き

 膵臓はおたまじゃくしのような形で、胃の後ろに位置する長さ15cmの臓器で、消化液を分泌する外分泌機能とホルモンを分泌する内分泌機能の2つの機能を有しています。 膵液は、膵管を通して十二指腸内へ送られ、糖質を分解するアミラーゼ、たんぱく質を分解するトリプシン、脂肪を分解するリパーゼなどの消化酵素、核酸の分解酵素を含んでいます。また、膵臓のランゲルハンス島細胞からは、ブドウ糖の代謝に必要なインスリン、グルカゴン、ソマトスタチンなどのホルモンが分泌されています。

 インスリンは、血液中のブドウ糖によりエネルギーを作るのですが、インスリンの不足、働きが弱くなると肝臓・筋肉・脂肪組織などの臓器でブドウ糖の利用や取り込みが低下し、血中のブドウ糖が増えることになり、血液中の血糖値が高くなります。 逆に、血液中の糖が低下すると、グルカゴンが分泌され、肝臓に糖を作らせて血糖値を上昇させます。 インスリンとグルカゴンによって、血液中のブドウ糖の量が一定になるように調節されているのです。 膵臓は、食物を消化し、ホルモンによって糖をエネルギーに変えるという、2つの働きを調節する役割を果たしているのです。

 膵臓は胃の後面の後腹膜腔に位置しており、前方向からの外力では、損傷されにくい臓器です。 損傷を受けたとしても初期に診断することは難しく、膵臓液が腹腔内に漏れて激しい腹痛を訴えるようになってから膵臓損傷が疑われています。 とは言え、日本では、交通事故による膵臓の損傷が増加しています。 バイク、ワンボックスの軽四輪では、ダッシュボードやハンドルなどで腹部を強打することにより、損傷しているのです。 事故直後は、おへその上部に、軽度の痛みを訴えるのみですが、時間の経過で、痛みは強くなり、背部痛、吐き気を訴え、実際に嘔吐することもあります。

 血液検査により、膵臓の酵素の1つ、アミラーゼの血中濃度がチェックされています。 一度正常化した値が、再び上昇するときには、膵臓損傷が疑われます。主膵管損傷を伴う膵臓損傷は、造影CTにより診断されています。 所見が明確でないときは、12時間後に再度、造影CTを行うか、内視鏡的逆行性膵胆管造影が実施され、確定診断がなされています。 主膵管損傷を伴う膵臓損傷に対しては、膵臓摘除術が選択されています。  

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 膵臓損傷を語る前に、膵臓の病気で代表的な膵炎から基礎知識を学びたいと思います。膵臓だけではなく、他臓器の損傷後に発症した患者さんがおりました。(内容はメディックノート様より引用)  

1、膵炎とは?

 膵炎には、急性膵炎と慢性膵炎があり、急性膵炎は何らかの原因でアミラーゼなどの膵臓の酵素が活性化して膵臓の組織にダメージを与える病気のことです。一方、慢性膵炎は長い間、膵臓に小さな炎症が繰り返されたことで徐々に破壊され、膵臓の機能が著しく低下する病気です。

 急性膵炎と慢性膵炎はどちらも男性に多く発症し、発症の原因はほぼ共通していますが、症状や経過は大きく異なります。

2、発症の原因と症状

○ 急性膵炎

 もっとも多い原因はアルコールの多飲によるもので、全体の約40%を占めます。次に多いのは胆石が膵管と胆管の合流部にはまりこんだもので、女性の急性膵炎に多いです。原因不明のものも約20%あります。そのほかには、内視鏡検査や手術などが原因となる医原性のもの、腹部外傷、膵臓や胆道の奇形、高脂血症、感染症などが挙げられます。

 急性腹症のひとつであり、症状は重症度によって大きく異なります。みぞおちから背中にかけての断続的で強い痛みが起こり、吐き気や嘔吐、発熱などの症状が続きます。また、重症になると、腹膜炎を併発し、腸管の運動が麻痺するために高頻度で腸閉塞が起こり、ショック状態となるため、全身状態としては、頻脈や血圧低下、出血傾向、呼吸障害などがみられ、非常に重篤な状態へ移行します。また、膵臓の組織が壊死えしを起こすため、膵臓から遊離した脂肪と血中のカルシウムが結合して低カルシウム血症を呈することがあります。また、慢性膵炎が急激に悪化すると、急性膵炎のような症状が現れることもあります。   ○ 慢性膵炎

 もっとも多い原因は急性膵炎と同じくアルコールの多飲によるもので、男性では70%を占めています。原因不明のものが約20%で、女性の慢性膵炎の約半数は原因不明の特発性とされています。そのほかには、胆石などの胆道系疾患、高脂血症、腹部外傷、奇形など急性膵炎と共通した原因となります。

 症状は発症してからの時間によって異なります。発症してから10年ほどは、主な症状はみぞおちから背中にかけての痛みであり、飲酒や脂肪が多い食事を食べた後にひどくなるのが特徴です。また、発症後10年以降には腹痛は軽減しますが、膵臓の機能が低下し、消化酵素やインスリンなどのホルモンの分泌が次第に減少します。このため、脂肪が消化されず、脂肪便や下痢、体重減少などがみられ、インスリンが正常に分泌されないことで糖尿病を併発します。慢性膵炎はしばしば急激に悪化することがあり、その場合には急性膵炎と同様の症状が現れます。   3、検査・診断

 膵炎の診断にはCT検査が有用です。そのほかにも補助的な診断や全身状態を評価する目的で、血液検査や他の画像検査、消化酵素やホルモンの分泌能を評価する検査などが行われます。

○ 画像検査

 造影剤を用いたCT検査がもっとも有用な検査です。急性膵炎では、膵臓の腫れや周囲の炎症がみられ、慢性膵炎では膵管の拡張や膵石がみられます。腹部超音波検査やMRCP検査なども膵管や膵石の状態を確認することができますが、第一に選択されるのは造影CT検査でしょう。また、もっとも簡便に行えるレントゲン検査では、腸閉塞や膵石を確認することができ、急性腹症の場合には緊急的に消化管穿孔などとの鑑別が行える検査です。   続きを読む »

(1)一側の腎臓を失ったもの

①  一側の腎臓を失い、腎機能が高度低下していると認められるものは、7級5号が認定されます。

 腎機能が高度低下しているとは、糸球体濾過値(GFR)が31~50 ml/分であるものを言います。高度低下は、腎機能の低下が明らかであって、濾過機能の低下により、易疲労性、ホルモンの産生機能の低下により貧血を起こし、動悸、息切れを生じるような状態です。   ②  一側の腎臓を失い、腎機能が中等度低下していると認められるものは、9級11号が認定されます。

 腎機能が中等度低下しているとは、糸球体濾過値(GFR)が51~70 ml/分であるものを言います。中等度は、高度に至らないまでも同様の症状が生じる状態です。また、健常人と腎機能低下の者(血清クレアチニン1.5~2.4mg/dl)を比較すると、 前者に比べ後者は運動耐容能が有意に低く、嫌気性代謝閾値が約4.3METsという報告がなされています。この知見を踏まえると、おおむね高度低下では、やや早く歩くことは構わないが、 早足散歩などは回避すべきと考えられています。   ③  一側の腎臓を失い、腎機能が軽度低下していると認められるものは、11級10号が認定されます。

 腎機能が軽度低下しているとは、糸球体濾過値(GFR)が71~90 ...

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1、実質臓器 腎臓の働き

 腎臓は、腰のやや上部、胃や肝臓の後ろ側に位置する2つが一対の臓器で、主に、血液中の老廃物をろ過し、尿を作る身体の排水処理工場の役目を担っています。 拳よりもやや大きめで、130gの重さがあり、脾臓と同じくソラマメの形をしています。

 腎臓には、心臓から血液が1分間に200ml程度送り込まれます。腎臓に送られた血液は、腎臓の糸球体でろ過され、原尿=尿のもとが作られています。腎臓でろ過される原尿は、1日あたりドラム缶1杯、150lですが、 糸球体でろ過された原尿は膀胱へ尿として貯められるまでに、 尿細管、集合管で必要な電解質やたんぱくなどが再吸収され、水分量の調整も行われています。原尿の99%は体内に再吸収され、最終的には約1.5リットルが尿として体外に排泄されています。 尿を生成する腎臓の部位は、糸球体と尿細管をあわせてネフロンと呼ばれます。1つの腎臓には約100万個のネフロンがあります。

 尿細管は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、重炭酸イオンなどの内、身体に必要なものを取り込み、また、不要なものを尿中へ分泌して排泄しています。これにより、体内のイオンバランスを一定に保ち、血液を弱アルカリ性に保っています。

 腎臓のろ過機能が円滑に働くには、血液の流れが一定に保たれている必要があるのですが、腎臓では血流の流れが悪くなるとそれを感知し、レニンという酵素が分泌されます。レニンが血液中のたんぱく質と反応して血管を収縮させて血圧を上昇させます。腎臓は、レニンの分泌量を増減させて血圧の調整もしているのです。

 腎臓は、エリスロポエチンというホルモンを分泌し、赤血球の数を調整しています。ビタミンDは肝臓で蓄積され、腎臓に移ると活性型に変化し、さまざまな働きをしています。活性型ビタミンDは小腸からのカルシウムの吸収を促進し、利用を高める作用があります。   2、 腎挫傷、腎裂傷、腎破裂、腎茎断裂

 交通事故における腎臓損傷は、それなりの件数が発生しています。バイクの事故で、身体を壁、電柱、立木などに強く打ちつけることで、腎 臓が破裂することもあります。自動車VS自動車の事故では、シートベルトによる損傷も経験しています。

 腎外傷では、あざができる軽度な挫傷から、尿や血液が周辺組織に漏出する裂傷や破裂、腎動脈が切断される腎茎損傷まで、大雑把には1下の4つがあります。

     ①     ②      ③     ④

① 挫傷、打撲、被膜下血腫 ...

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 近時、内臓損傷の相談が続きましたので、少し特集します。(内容はメディックノート様より引用)

 そもそも、交通事故外傷でも内臓損傷による後遺障害は数が少なく、なかなか経験値が積めないものです。 時折入る相談者さまも、どのHPでも医学的知識に留まり、交通事故外傷に詳しいと言う弁護士や行政書士、その他に聞いても「わかりません」との回答ばかりで嘆いているそうです。医学的解説はネットや文献に頼れますが、実際の申請・認定の経験はどこも乏しいものです。交通事故や労災事故において、被害者さんが本当に知りたい情報は医療と賠償・補償をつなぐ実務だと思います。私達も少ないケースから、確実に学ぶ機会を得ていきたいと思います。

1、、腎臓損傷とは?

 事故やスポーツで腹部に強い外力が加わり、腎臓が傷ついてしまうこととです。腎外傷とも呼ばれることもあります。腎臓損傷(腎外傷)の程度は、以下に示すJAST分類を用いて評価されます。( )内の数字は、それぞれの頻度を示しています。   I型:被膜下損傷(47%)

 腎臓を覆う膜(被膜)が保たれていて、その内側だけに出血がある場合。   II型:表在性損傷(22%)    被膜の外側に出血を認めるも、腎臓の表面(腎皮質)に損傷が留まる場合。   III型:深在性損傷(25%)

 腎臓の深部(腎髄質)に損傷が及ぶ場合、あるいは腎臓が離断(粉砕)されている場合。    このほか、腎臓を栄養する主たる血管(腎茎部)に損傷がある場合にはPVと表記され、より重症と判断されます(6%)。   2、原因

 日本における腎臓損傷(腎外傷)の原因としては、交通事故がもっとも多く、次に転倒や転落、スポーツが続きます。海外のデータでは、青少年のスポーツ由来の腎外傷は1年で100万人あたり6.9件で、とくにスキー・スノーボード・サイクリングによるものの頻度が高いという報告もあります。我が国の腎外傷の特徴としては打撲(強くぶつけること)による鈍的外傷がほとんどであり、刺創・切創・銃創などによる外傷(穿通性外傷)は、全体の数パーセントと少ないです。   3、症状

 背部痛(腎臓がある部位の痛み)と出血が主な症状であり、特に肉眼的血尿(目で見てわかる血尿)は診断につながる重要な所見です。ただし、腎臓損傷があっても血尿が出現しないこともあり、血尿がないことで腎臓損傷を否定することはできません。一方、腎臓は周囲を脂肪と筋膜に覆われており、血液が広がるスペースがないため、鈍的外傷であれば、緊急手術を必要とするような大出血をきたすことはまれです。このほか、腎臓の周囲に尿が漏れることがあり(尿漏)、重症な細菌感染症(敗血症)をきたすことがあります。   4、検査・診断

 肉眼的血尿がある場合、血圧が低くかつ尿検査で血尿を認める場合、他の腹部の臓器に損傷が疑われる場合、腎臓損傷を起こしやすい受傷パターンを認める場合に、腎臓損傷を疑った検査がなされます。腎臓損傷の診断には、造影剤を用いたCT検査(エックス線を使って身体の断面を撮影する検査)が有用です。これよって損傷の程度を把握することができ、治療方針の決定に役立ちます。

 また、腎臓損傷を認めた場合、40〜57%に他の臓器の損傷が存在するといわれており、肝臓や脾臓の損傷、頭部や胸部の損傷、骨盤骨折や四肢の骨折などの検索が合わせて必要です。循環動態(血圧など)が安定せず、CTをはじめとする十分な検査が実施できない場合には、エコーを用いて体表から臓器周辺の液体貯留の有無や臓器損傷の確認を行うこと(FASTと呼ばれます)によって診断がなされることがあります。   5、治療

 初期の段階では、主たる血管の損傷がなく、循環動態(血圧など)が安定していれば、多くの場合に自然軽快を期待します。先に示したJAST分類を当てはめると、I型(被膜下損傷)およびII型(表在性損傷)の大部分では、自然軽快を待つことが推奨されます。一方、III型(深在性損傷)では治療を必要とすることも多く、特に、CT検査で造影剤が血管から外に漏れ出ている所見を認める場合、時間とともに血腫(血液のかたまり)が拡大している場合には、動脈塞栓術(動脈に細い管を進めて出血点を詰めることで止血を得る治療)が行われます。

 腎臓の主たる血管(腎茎部)に損傷がある場合には、開腹手術が検討されます。尿漏があり、かつ発熱や腹痛などの症状が続く場合には、ドレナージ(体表から腎周囲に管を挿入して漏れ出ている尿を抜く処置)も行われます。  

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 近時の依頼者さまは、自ら「左側に黒いもやもやがあって、見えない」ことをある程度自覚していました。外傷性網膜はく離など、直接、眼球にダメージを受けた結果による視覚障害は、「見えない」ことを自覚できます。しかし、半側空間無視は見えないことが自覚しずらく、昨日の解説のように、周囲の観察と検査で明らかにする必要があります。

 しかし、兆候を掴むにしろ、検査誘致するにしろ、まず、ご本人とご家族に半側空間無視をわかっていただく必要があります。そこで、以下の事例説明を用いています。   (1)テレビが昔に戻った?

 左側の視野が認識できないのですから、正面からテレビを観ると・・

    ワイド画面が ↓    続きを読む »

 脳機能の障害で、半側空間無視という症状が存在します。立証の現場では、高次脳機能障害の症状として捉えています。半側空間無視は半分が見えないというより、左側(右側)の映像を把握できないのです。通常、人は眼に写った情報を脳で解析しています。しかし、脳の解析システムが故障することよって、写っているものが認識できない状況に陥るのです。したがって、当人は見えてないことすら自覚できなくなります。

 日本一簡単な解説は明日に、まずは、基本解説をします。   (1)兆候

・ 食卓に並んだいくつかのおかずの皿から、右半分しか箸をつけない ・ 片側から話しかけられても反応しない、片側に人が立っていても存在に気づかない ・ 歩いていると、よく左肩を壁にぶつける ・ 家の絵を描かせると片側半分だけしか描かない 

(2)病態

 半側空間失認(unilateral spatial agnosia)は同義語として用いられていますが、厳密には「失認」ではなく、「注意障害」のカテゴリーですから、半側空間無視と呼ぶ方が一般的です。視野障害あるいは眼球運動障害が原因で、無視側の視野の半盲を伴っている場合と区別されます。目をレンズとすれば、それに写った画像を認識・解析するのは脳ですから、ビデオカメラのレンズではなく、CPU(コンピューター)の故障となるわけです。

 この半側空間無視は、左大脳半球頭頂葉後部の病変による右半側空間無視も見られますが、通常は右大脳半球頭頂葉後部の病変による左半側空間無視の方が圧倒的に多く、私も左の症状の被害者さんしか経験がありません。事故外傷の他に、右半球の脳血管障害でもみられます。大脳半球頭頂葉後部は中大脳動脈領域であるために、多くは右中大脳動脈領域の脳梗塞により生じます。同部位・周辺に脳梗塞を起こした患者の、実に4割が発症との統計もあります。半側空間無視の予後には、病巣の広がりが最も影響すると言われています。慢性的な脳出血、脳梗塞の起きやすい高齢者のほうが予後不良となります。   (3)検査

 日常生活場での動作を観察することが第一です。例えば、片側に置かれた食事を食べ残すとか、片側にある障害物にぶつかったりすることが見られます。他覚的な検査では、欧米ではBIT検査(Behavioral inattention test)が比較的よく使用され、日本では日本語版BIT行動性無視検査として用いられています。

 簡易的な検査では、検出率が高く、定量化もできて便利な「線分二等分試験」があります。この試験は20 ...

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 「後遺症」と聞けば、大ケガを連想します。しかし、後遺症にも軽重があり、労災や自賠責の後遺障害は1級から14級まで、細かく規定しています。その中には、生涯治らないケガもありますが、5年もすればほぼ治ってしまうケガも含みます。代表的なものは、お馴染みのむち打ち後の神経症状です。また、医学の進歩、形成術の向上から、薄いキズや瘢痕もほとんど消える可能性があります。

 本件は、幸い骨折はありませんでしたが、脚に酷い打撲と挫傷を受けました。腫れもひいて治癒は進みましたが、痣(あざ)が残っています。いずれきれいに消したいとは思いますが、その前に後遺障害申請、等級に応じた慰謝料を取らなければなりません。この辺の知識が被害者さんにあるわけはなく、早めの相談を呼びかけています。

   大変に痛い思いをしたのですから、しっかり賠償金を積み上げなくてはなりません。  

14級5号:下肢醜状痕(40代女性・静岡県)

【事案】

庭にいたところ、道路からハンドル操作を誤った自動車が家に突っ込んできた。自動車と家の壁に挟まれ、脚を受傷。膝関節挫傷の診断となる。

【問題点】

奇跡的に骨折等はなかったが、膝関節に疼痛及び痣(瘢痕=醜状痕)が残存した。醜状痕での認定を申請することになるが、相談会に参加した時点で既に半年以上経過していたので、薄くなってきていた。 続きを読む »

 その代表が、鎖骨の変形ではないでしょうか。

 例えば、交通事故で鎖骨を骨折し、癒合部が変形で盛り上ることがあります。あるいは、肩鎖関節が脱臼し、肩鎖靱帯や鳥口肩鎖靱帯が伸びてしまった為に、肩峰と接合する鎖骨遠位が盛り上る、いわゆるピアノキーサインとなることがあります。

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 同じ等級でも号の違いで、後の逸失利益の算定期間から賠償金に大きな差が生じます。

 自賠責保険の保険金は、同じ等級なら何号であっても一律の保険金額になります。だからと言って、間違った号をそのままに弁護士に引き継ぐことなどできません!

 秋葉事務所は数度、号の変更を求めた再請求を実践・成功しています。弁護士からの感謝は言うまでもなく、依頼者さまも大増額の解決へ向かいます。    膝関節での代表例と、近時の足関節の変更例は以下の通り

12級13号⇒12級7号:脛骨近位端骨折 異議申立(40代男性・静岡県) 

機能障害は神経症状より優位な後遺症なのです!

12級13号⇒12級7号:足関節脱臼骨折・腓骨遠位端骨折 異議申立(30代男性・神奈川県)

 【事案】

原付バイクにて走行中、前方を走行していた車の左折に巻き込まれ受傷、足関節の脱臼骨折となった。相談に時点で、受傷から8ヶ月経過しており、可動域も回復傾向にあり、12級7号のボーダーラインであった。

【問題点】

早速、MRI検査と両足関節を揃えたレントゲン撮影依頼をおこなった。可動域計測も全てその日に出来るとのことだったが、主治医の可動域計測が目視であまりにもずさんな為、理学療法士にリハビリ室にて検査するよう依頼した。日整会方式によって正確な計測をしていただき、12級7号の数値となった。画像上からは、可動域制限の確固たる立証は出来なかったことが原因か、後遺障害申請するも、わずか40日程で12級13号認定となった。 続きを読む »

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