基本的な書類を説明します。 多くの場合、治療費と休業給付を請求することになるはずです。最初の治療費の請求の用紙は、業務災害(様式第5号)、通勤災害(様式第16号の3)となります。業務災害は5号から順番に番号が続きますが、通勤災害の書類は16号の○、○の番号が続く・・と覚えておくとよいです。   【治療費】

 労災指定を受けた病院であれば、以下の書類を窓口に提出すれば、自ら治療費を立替えることなく、労基に書類を送付して治療費を請求してくれます。下の書式はすべて通勤災害の16号です。業務災害は(様式○号)になります。   ① 療養給付たる療養の給付請求(16号の3)(5号)

 最初に提出する書類です。(左:表、右:裏)

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 労災の申請や書類の記載について、詳しく書かれている書籍は少ないものです。この手の相談は被害者さんだけではなく、弁護士や社労士さんからも少なくありません。社労士さんによると、専用ソフトでサクサク申請書を作り、申請慣れしている先生は一部で、驚くことにほとんど申請業務をしないそうです。専門と思われる社労士先生でさえ面倒なようです。

 理由は、労災事故は労基と病院が絡み、とくに病院の窓口ルールが病院ごとに違うものですから、ややこしい事に巻き込まれる印象を持ちます。とくに、交通事故など第3者行為の場合、保険会社や加害者がそれに加わるものですから・・社会保険の知識だけではなく、各方面への横断的な知識とそれをさばいていく交渉力・推進力が必要です。もし、その膨大な手間に対して、見合った費用や報酬が入れば報われますが、顧問先企業から支払われる顧問料だけなら、進んではやりたくないでしょう。中には顧問契約に「労災申請業務は除く」とし、一切やらない先生もおりました。

 これは構造的な問題でもあります。そもそも、社労士先生に顧問料を払うのは企業(社長さん)であって、ケガをした従業員さんではありません。すると、社長さんが「こいつ(ケガをした従業員)は大事な社員だから面倒見てくれ」とでも言わない限り、助ける責任はないことになります。これも労災請求の闇の部分かもしれません。

 構造的な問題と各ジャンルにまたがる業務の煩雑さから、誰も手を差し伸べず、被害者さんが独力で進めているケースが多くなります。労災申請、第2の壁と思います。   労災の申請書類の基本的な流れは、

 各請求書に、本人(あるいは代理者)記載、 署名・印

⇒ 会社の証明・印

⇒ 病院の証明・印(治療費に関するもの以外は病院を経ません)

⇒労基に提出となります。    書類はすべて厚労省HPからダウンロードできます ⇒ https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousaihoken06/03.html

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 零細企業では、いまだに無労災で従業員を雇用している会社が存在しています。

 昭和の時代は、中小企業で無労災はかなり多く、建築や運送、飲食店で1~10名程度では、珍しくないものでした。そのような会社に在籍中、大ケガをした場合は大変です。会社は責任逃れを考えますが、労災には被雇用者救済の制度があります。それが、「事後適用」です。この情報にたどり着き、社長さんの理解を促し、労基にて手続きを行い、やっと申請にたどり着くことになります。   事後適用

 事業主(会社・個人事業主)が故意または、重大な過失により労災保険の加入手続きをしていない期間中に労災事故が起き、労災保険から給付が行われた場合、事業主は最大2年間遡った労働保険料及び追徴金と以下の費用を徴収されます。

1、労働保険の加入手続きについて行政機関等から加入勧奨や指導を受けていた場合

→ 事業主が故意に手続きを行わなかったと認定され、保険給付額の100%を徴収

2、1以外で労働保険の適用事業所となってから1年を経過していた場合

→ 事業主が重大な過失により手続きを行わなかったと認定され、保険給付額の40%を徴収

   事故が起きた後に、掛け金を払って、保険がでる・・・極めて珍しい制度です。数ある保険でも、労災だけでは?と思っています。それだけ、労働者は保護の対象として、手厚く守られていると言えます。

 ただし、それでも会社側に保険料の追徴と、上記のようにに加算金が課されるので・・社長が駄々をこねて払わない、それを労基職員が説得する、かつてこのようなケースを見ました(その後、どうなったのかは知りません)。    現在、非正規雇用が増えた理由の一つに、「正社員に払う社会保険料が企業の負担になっている」ことが挙げられます。確かに健康保険、厚生年金の負担は企業を圧迫します。ただし、労災と雇用保険(失業保険)の掛け金はわりと安いものです。零細企業の社長さんとはいえ、それ位の負担は何とかして欲しいものです。    つづく  

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 通勤中の交通事故は通勤災害、業務中の交通事故は業務災害、いずれも労災を適用することが可能です。しかし、現実的にはすんなり労災が適用されないことが目立ちます。私どもが担う交通事故の諸事務では、多くの案件でこの労災申請が付いてきます。

 改めて数回に渡って、労災について復習・解説したいと思います。   (1)労災請求の実際

 ご存知の通り、被害者が労働基準局に申請(届出)さえすれば、労災の適用可否の審査を経て、労災は支給されます。ところが、多くの被害者は、「会社が労災支給を判断する」呪縛にかかっています。また、会社側も積極的に労災を使わせようとしない傾向です。

 何より、あえて労災を請求しない・・立場の弱い従業員側の事情も存在します。会社側が労災使用に対して難色を示せば、強く言えないのが使われている側の立場です。もちろん、各種申請書には会社の署名・捺印が必要です。それは、確かに第一の関門かもしれませんが、もし、会社にお願いして拒否されたら、労基に提出の際、「会社が判を押してくれない」と言えば、労基から会社に(行政指導まではいかないまでも)電話がいきます。ただし、これは会社を辞める覚悟を伴った非常手段です。会社は、「従業員が労基にたれ込んだ!」と恨むことになるからです。

 やはり、労災制度の利用は簡単ではないのかもしれません。

 また、中小企業では日雇い労働者などのすべてに労災加入しているとは言いがたく、無労災で人を雇っている企業も未だに存在します。建築業では孫請けとなる1人親方の場合、その全てが専用の「特別加入制度」に加入しているわけではありません。

 労災未加入を貫く悪質な企業は罰則がありますが、重大事故の場合は、なんとか事故後適用(事故が起きてからの労災加入でも適用してくれる)をやってもらわなければなりません。

     以上、労災断念を、レアケースとは思っていません。保険と事故の業界に身を置いて今年で30年、何度も「労災がでない」悲劇をみてきました。 労災申請は、その入口が最も大きい壁と言えます。

 つづく  

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 本件は、降車の際の転倒ですから、自損事故と言えます。それを助けてくれた人身傷害保険様々です。ですから、普通に傷害保険に請求する感覚となります。しかし、妥協できないのは、後遺障害です。この等級次第で、保険金が桁違いとなることがあります。したがって、基本通りに立証作業を進めます。その点、本件は秋葉事務所にご依頼下さって正解でした。

 また、保険金提示に対しても注意が必要です。人身傷害保険の特徴は、治療費や休業損害の実額だけでなく、慰謝料と逸失利益が計算・支払われます。約款上、慰謝料は入通院日数からの計算式、等級ごとの定額が明記されています。これは約款通りの提示となります。しかし、逸失利益は自由度が高いもので、年収または平均賃金から計算され、喪失率や喪失期間も担当者判断です。この計算で、いかようにも調整が可能なのです。

 本件の場合も、比較的高齢から、「もう隠居でしょ」と勝手に判断されて、最初は低い提示でした。しかし、復職を果たしている事実、まだ数年は労働が見込める点から、ご家族が交渉しました。結果、数十万円も増額しました。もっとも、加害者のいない事故で、助けてくれた保険会社相手にゴリ押しは遠慮したいところ、それなりの交渉で手を打つよう、アドバイスしました。   人身傷害も丁寧に申請すべきです  

人身傷害12級6号 :橈骨遠位端骨折(60代女性・神奈川県)

【事案】

停車後、降車の際に転倒し、手をついて手首を骨折したもの。

【問題点】

骨折後にわずか変形癒合があり、手首の動きがギリギリ12級の数値を示していた。ただし今回は相手がいない事故なので、相手保険会社や自賠責は使えない。相手がいる事故であれば自信をもって12級を狙いに行くのだが、相手のいない事故で自身の保険会社に請求する上で、強交渉は遠慮がち。

【立証ポイント】

まずは手首の状態を確認する為3DCTを撮影、次に本人の診察時に病院へ同行し、レントゲン記録や治療記録等も確認した結果、14級を確実に抑えつつ、12級も狙える内容にする方針を固める。2回目の病院同行前にその3DCTの打出しを作成した。その打ち出しを主治医に提示したものの、変形癒合の判断までは難色を示す。あくまでも本人は治療結果に満足をしている意思を伝え、対保険請求としての意見を求めなんとか記入頂けた。

その他、診断書に12級妥当となる情報をカルテから引っ張って記入頂いた結果、12級の判断を頂いた。

ちなみに、人身傷害の保険金提示では、毎度のことだが逸失利益の少額示など、支払い渋り、否、厳しい査定が続いた。納得のいかないご家族の粘り強い交渉から、70万円近く増額となった。場合によりますが、人身傷害保険も交渉次第なのです。

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 直ちに弁護士介入すべき事故もあれば、相手の反応を窺うように、まず、本人からの請求とすることがあります。    自賠責保険や労災が絡まない事故の場合、その後遺障害等級は誰が決めるのでしょうか? 多くの場合、企業・スポーツ施設は施設賠償責任保険を付保しています。加害者側である、その保険会社の”自社認定”の審査に付すことになります。すると、お手盛り審査ですから、最初から弁護士が介入するのは得策ではありません。施設側の保険会社は、被害者と穏便に(つまり、安い保険金額)相対交渉で解決する期待を持ちます。ですから、相手の等級回答を待ってから、弁護士介入が望ましいのです。これを、私達は「時間差介入」と呼んでいます。交渉事ですから、駆け引きは当然で、綺麗ごとだけでは済まないのです。    本件もその形を取りましたが、高望みなく、妥当な等級に落ち着きました。一方、施設側(裏に隠れた保険会社)も、最初から賠償保険の存在を隠し、安い傷害保険金のなめた提示をしてきたのですから、お互いさまです。    このような企業保険では、約款上、自動車保険のように担当者がじかに示談代行をしません。相手保険は加害者側企業の後ろに隠れて、操ることになります。その点からも、自動車保険の示談代行は便利です。お金を取っての示談代行は、非弁護士行為との指摘もありますが、保険会社の示談行為は、弁護士会が許している数少ない例です。このような企業の賠償保険でも、お互い駆け引きの無駄をなくすためも、示談代行OKとすべきかなぁ、少し思います。   現場調査でコースを回ってみたかった(経費で落ちますよね?)    

施設賠償11級7号:胸椎・腰椎圧迫骨折(50代男性・神奈川県)

  【事案】

ゴルフのプレイ中、キャディが操縦するリモコン式カートが背後から衝突、転倒したもの。直後から全身の痛みに悩まされる。診断名は胸椎と腰椎の圧迫骨折となった。

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 慣れない用語が含まれますので、先に解説します。    ○ 肩関節炎・・・中後年の肩の痛み、腕が挙がらないなどの症状の多くは、いわゆる「50肩」、加齢による肩関節周囲炎の診断が多くを占めます。処置として、最近ではヒアルロン酸注射が多いようです。本件の場合は、肩にケナコルト注射を打ちました。これはステロイド系に属し、肩関節腔内に注射して炎症を抑える効果を期待します。   ○ 医療過誤・・・(いりょうかご、 Medical malpractice)とは、治療行為における誤りによって患者に被害が発生すること。医療ミスともいう。   ○ 医療賠償責任保険(医師賠)・・・医師が加入する、医療過誤など患者に賠償責任を負った場合、その賠償金を肩代わりする保険です。主な支払い項目は以下の通り。   ① 法律上の損害賠償金

法律上の損害賠償責任が発生した場合において、被保険者が被害者に対して支払責任を負う損害賠償金

※ 賠償責任の承認、賠償金額の決定についてはあらかじめ保険会社の同意が必要となりますのでご注意ください。   続きを読む »

 腰椎や胸椎の骨折から、脊柱の変形=11級7号は画像と診断名だけで認定は容易です。しかし、後の賠償交渉では、11級の慰謝料は問題ないとして、相手損保は逸失利益を0円回答してきます。これは、最初に東京海上日動さんが、「単なる変形では痛みは消失傾向」、「骨再生が進めば限りなく治るもの」との医学的論文を根拠に、逸失利益を否定する流れを作ったと思います。他損保もそれに倣って、逸失利益0円回答が目立ちます。

 もちろん、そのように緩解する(症状が緩む)患者さんもいるでしょう。しかし、個別具体的に症状をみる基本は変わりません。多くの患者さんの場合、深刻か否か程度の差はありますが、一定期間は痛みや不具合が残るようです。

 したがって、自賠責保険の後遺障害認定において、「腰痛は(脊柱の変形と)通常派生する関係にある障害と捉えられることから、前記等級に含めての評価となります・・・」の文言を、認定書の理由に必ず残してもらうように申請しています。これで神経症状が内包されている評価になります。後に弁護士はこれを基に、痛みの継続を逸失利益(喪失期間5~10年)の請求根拠としています。本件に関しても、後遺障害診断書の記載に際し、主治医に自覚症状の記載を怠りなくお願いしました。さらに、別部位での14級9号認定も加えて、万全の状態で連携弁護士に引き継ぎました。     併合とならない14級9号の認定であっても、障害によっては無駄にならないのです     11級7号・14級9号:腰椎破裂骨折(10代男性・千葉県)

【事案】

バイクで直進中、左側民家から自動車が発進、衝突したもの。第1腰椎の破裂骨折は手術で前後3椎体を固定、他は両恥座骨、鎖骨、肩甲骨をそれぞれ骨折した。 受傷初期からご相談を頂き、入院先に訪問した。重傷案件ではあるが、術後から元気で、以後もどんどん改善が進んだ。「これが若さか」。

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 まったく捨て置けないタイトルです。弊所でも、各種保険請求のお手伝いをして、費用・報酬を頂くことがあります。ただし、その業務の中核は医療調査であって、せいぜい必要書類の収集・作成までです。「業として」、請求自体を代理して報酬を得るには、弁護士の資格が必要です。    先日、地震をテーマに記事を書きました。地震後に家屋の修理を呼びかける、建築関係の悪徳業者に対する注意を喚起したつもりです。しかし、以下、転載のニュースでは、保険金請求まで代理・代行し、その手数料まで取っている業者までいるそうです。悪知恵の働く奴は、被害者さんが”人が善い”となると、どこまでも食いついてくるようです。

 保険に関することは、保険会社や保険代理店さんに直接、または専門家に相談すべきと思います。      福島沖地震の保険金請求、書面などでも 悪質業者に注意

福島、宮城両県で最大震度6強を観測した13日の地震を受けた保険金について、損害保険各社は書面や写真の提出だけでも請求を受け付けている。保険金をねらった悪質なサービスもあり、国民生活センターは注意を呼びかけている。

地震保険は地震で居住用建物や家財が壊れた時に保険金を受け取れる。地震に伴う火災や津波による被害も補償対象。火災保険とセットでしか加入できず、火災保険の保険金額の3~5割の範囲内で、建物が5千万円、家財は1千万円を上限に保険金を決める。今回の被災地の住民も今から入れるが、補償対象は契約後の地震からだ。

被害があった場合、損保会社に電話などで連絡する。日本損害保険協会によると、従来は損保会社による被災状況の立ち会い調査を原則としたが、2011年の東日本大震災時は限定的に書面提出で可能にした。今回は立ち会い調査か書面提出かを契約者が選べる。保険会社から郵送やメールで届く書面に記入し、壊れた箇所などの写真を撮影して送ると、2週間~1カ月程度で保険金が振り込まれる。

災害救助法が適用された地域の被災者で、地震保険の契約先の保険会社が不明な場合、自然災害等損保契約照会センター(0120・501331)でわかる。受け付けは土日祝日などを除く、平日午前9時15分~午後5時。

災害に便乗した悪質業者には注意が必要だ。国民生活センターによると、「保険金が使える」と勧誘する住宅修理サービスに関する相談は19年度は2690件で、10年度の約24倍。20年度は15日時点で4200件だった。保険金の請求代行の報酬が保険金の4割にのぼる契約などの相談があった。センターは「請求は加入者自身で行うことが基本。自身が加入する保険会社や保険代理店に直接相談してほしい」と呼びかける。

損保全般についての問い合わせは、日本損害保険協会のそんぽADRセンター(0570・022808)。土日祝日などを除く平日午前9時15分~午後5時に受け付けている。 <朝日新聞デジタルさまより 記事:山下裕志さま>  

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 地震の被害に遭われた皆様にはお見舞い申し上げます。おケガをされた方が少なかったようで、それを安易に不幸中の幸いとは言いませんが、外国であったら死亡者がでるような揺れだったと思います。    傷害保険の多くは、地震による受傷は免責が多いものです。家屋の場合は、地震保険まで付帯している方は、かなり地域差がありますが、加入率30%程度でしょうか。家屋に損害があった場合、かつての経験では、まず、写真を残すことです。壁にひびが入る、瓦が崩れる、雨どいが外れたなどの被害で、一部損として保険価額の5%をお支払いした経験が数例ございます。

 被害状態を一部損、半損、全損と3区分していた記憶がありますが、確認したところ、半損が二つに分かれ、4区分となっていました。

(上表は損保ジャパンさまより)

詳しくは ⇒ https://www.sompo-japan.co.jp/knowledge/basic/service/contents8

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 火災保険や自動車保険、傷害保険のおまけに付いてくる個人賠償責任保険ですが、賠償金3000万円限度で掛金1000円位ですので、わざわざ外すこともなく一緒に契約しているのではないでしょうか。その付帯率は、マクドナルドのハンバーガーにセットのフライドポテトを上回ると思います。      どのような事故、場面で使える保険かは、今一つ実感がわかないと思います。代理店時代の”自らの”事故例から一つ紹介しましょう。     玄関開けたら、噛みつかれた

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 自賠責保険の後遺障害認定基準は、労災の制度から派生したもので、公表されている文言を見ると、その基準はほとんど同じです。ただし、基準はあくまで労災基準に「準じたもの」で、「まったく同じもの」ではありません。公表されてはいませんが、労災と違う自賠責保険のルールは諸々存在しています。

 以前、TFCC損傷で14級9号を取った後、労災で12級13号が認められた件で、弁護士から「自賠責も12級にならないかな?」との相談を受けました。よくある論点なので、「またか・・」と思いつつも、診断書・画像を預かり検証しました。画像所見上、TFCC損傷は微妙で弱く、手術もしていない。また、手首を酷使する仕事上、経年性の疑いも残る。この場合、労災は甘く12級、自賠責は14級どまりが結論なのです。結局、依頼者の希望に抗しがたく、その弁護士さんは再請求するも14級は変わりませんでした。

 このように、自賠責と労災の基準の違いは存在します。逆に、自賠責が有利で12級も、労災では14級となる件もあるのです。経験を重ねた事務所はそれを知っています。   これも自賠責と労災の認定基準の違いの一つです  

労災12級6号:TFCC損傷(30代男性・山梨県)

  【事案】

原付バイクにて一時停止中、左方から早回り右折してきた車に衝突され受傷した。直後から右手のしびれ、強烈な神経症状に悩まされる。

【問題点】

手術を受けたものの、症状が改善しないとのご相談を受けた。詳細を伺うと、既に事前認定にて14級9号が認定されており、その結果に納得していないご様子であった。後遺障害診断書、診断書・診療報酬明細書を確認すると、可動域も12級を逃しており、手術の内容も関節滑膜切除術で、理屈上は改善しているはず。12級への異議申立が通る可能性はほとんど無かった。

【立証ポイント】

よくよく事故の詳細を伺うと、通勤災害であることが分かった。自賠責は難しいが、労災で12級認定を獲得する方針で進めることとなった。

基本、12級にするためには、画像所から立証が必要なので、画像鑑定を依頼し、鑑定書とともに自賠責に申立てたが、結果は想定通り14級9号のままであった。

その後、労災にも全ての資料を提出し、労災顧問医の面談に臨んだところ、治癒日(自賠責の症状固定日に合わせたため、面談よりも1年以上前)よりも手関節が拘縮しており、可動域の数値は左右差3/4となった。労災では、現状の数値と診断書上の数値、どちらを採用するのか結果を待っていたところ、面談時の可動域制限を認めた12級6号認定となった。通常、症状固定日よりも数値が悪くなることはほとんどないが、本件では、自賠責の後遺障害診断時に、痛みをこらえて可動域計測に応じたため、正しい数値の計測ができなかった事情が存在する。 ...

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 人身事故の示談の場面で、相手損保の賠償金提示額はまず、保険会社の基準で計算されたものです。弁護士が裁判で請求する額より少ないものです。その差は歴然としています。中には2倍どころか20倍も違うこともあります。

 もっとも、人身事故の多くは3か月以内の軽傷です。3か月の慰謝料ですと、任意保険はほとんど自賠責保険の基準(実治療日数×2×4300円か、総治療期間×4300円の少ない方)のままで計算してきます。2日に1回ペースで通うと、合計387000円です。対して、弁護士が請求すると、打撲・捻挫で3か月の治療期間は赤い本で53万円です。

 15万程度の増額が見込めますから、頼みたいところですが、弁護士に払う報酬が20万円なら、費用倒れとなります。ただし、弁護士費用特約が付いていれば、この20万の出費は自らの保険で賄うことができます。再び、依頼するメリットが復活するわけです。弁護士介入の是非について、ご相談の多くはこのような損得勘定を説明した上で、ご判断頂くことになります。

 しかし、被害者さん側に過失が20%あった場合、話は元に戻ります。もし、弁護士が53万円の請求をした場合、(明らかな事故状況から20:80は動かないとします)20%差っ引かれることになれば、53万×0.8=424000円になります。一方、先に提示した自賠責保険基準の計算額387000円からは、過失分は引かれません。自賠責保険は、被害者に8割以上も過失が無い限り、減額なく100%支払います。被害者に厳密な過失減額がない、これが自賠責の有利な点です。

 すると、相手損保提示の387000円から424000円の差額、37000円の増額の為に弁護士を雇うことになります。弁護士費用特約があれば、確かに費用倒れはしません。しかし、弁護士は特約から最低でも10万円の報酬をもらうことになります。被害者さんに37000円の増額を果たした弁護士が10万円の報酬を得る・・・これって、おかしな現象に思えませんか?。被害者さんが高齢者で保険会社と交渉できない等、特別な事情で受任せざるを得ないケースは別として、弁護士さんは倫理上、”依頼者(の経済的利益)よりも弁護士が儲かる”、このような仕事は避けるはずです。

 このように、3か月程度の軽傷ですと、弁護士に委任して解決するに馴染まない事件が多くなります。このような事件では、弁護士に依頼せずとも、相手損保担当者に「切りよく40万円なら、すぐ印鑑押すよ」と、被害者さん自ら交渉すれば、まぁ多くは通ります。保険会社にとって、たった13000円の出費増より、案件の早期解決が優先されますから。

 この示談交渉を「よっこいしょの示談」、「浪花節の交渉」などと、私達は言っています。もし、数万円であっても、弁護士に増額交渉を依頼すれば、弁護士は法的根拠に基づいて13000円増額の裏付けをしなければなりません。決して「切りよく」などと、ざっくり交渉はできません。交渉が煮詰まった時、最後に言うことはあるそうですが。

 やはり、軽傷事案の多くは、相手損保との相対交渉で解決させる方が、手間や時間の節約、不毛な保険使用の抑制となります。「弁護士費用特があるから」だけの理由で、少額請求でも弁護士を使うなど如何なものでしょうか?・・・保険制度の根幹に関わることと思います。保険制度は、支払った保険金から掛金が計算されています。少額での弁護士費用の請求が続けば、掛金が上がるどころか、特約の制限や廃止につながります。保険請求の濫用は制度を壊すことになるのです。    最後に注意として、行政書士がこのようなアドバイスで相談料であっても報酬を頂くと、弁護士法違72条「非弁行為」となります。賠償に関する業は、相談も含め弁護士しかできません。賠償に関する相談案件は、以上のような計算をご理解頂くか、弁護士を紹介する・・ただ働きが多くなるのです。  

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 後遺障害の仕事で、まず重要なワードは症状固定(日)です。毎度、その決定に少なからずドラマが存在します。    まず第一に、相手保険会社の治療費打ち切り打診とセットになって、被害者に突きつけられます。「もう治療費は出せないので、症状固定して、後遺障害審査に進めて下さい」と、後遺障害診断書が送られてきます。そこで、多くの被害者さんは、「まだ、治ってないのに打ち切りとは(怒)保険会社の横暴だ!」と反発します。しかし、別に治療を止めろとは言っていません。もし、症状が残り、治療の必要性があれば、症状固定日以後も健保を使って治療を継続すれば良いのです。つまり、治療費は自腹にはなりますが、すんなり後遺障害審査に進めて、解決へ舵を切るべきと思います。

 症状固定とは一般に、”今後大きな改善や悪化はなく、症状が一定、もしくは多少の波があっても激変ないと判断される”状態を指します。後遺障害診断書にその日を記載する欄がありますが、実は医療用語ではなく、賠償用語と解されています。被害者さんの多くは完治を目指しますが、それではいつまでたっても、事故の後遺症による損害を計算することができません。だからこそ、賠償の目途として、しかるべき時に設定しなければならないのです。

 では、その判断は誰がするかですが・・・やはり、治療経過を診てきた医師の意見を参考にすべきと思います。しかしながら、ここで大きな勘違いがあるようです。それは、「症状固定日は医師が決めるもの」と思っている人が多いことです。実は、賠償請求に関する決断ですから、本来は被害者さん自身が決めるものと思います。ただし、医師は診断権がありますから、診断書を書く書かないでその権利を主張できる立場でもあります。やはり、医師の判断は尊重すべきで、十分に医師と相談した症状固定日であるべきです。    以上、回りくどい説明でしたが、症状固定(日)を決定するのは被害者です。医師や相手の保険会社ではありません。ただし、治療をしてきた医師や、治療費を捻出した保険会社と上手く調整をする作業が被害者さん達に圧し掛かります。

 そこんとこは上手くやるべきなのです。その調整こそ、実は秋葉事務所の主要な仕事の一つなのです。私どものような業者が生れる位、交通事故の解決は難解なのかもしれません。    

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 ご存じの通り、後遺障害の審査は、相手の(任意)保険会社に書類を託して任せる事前認定と、被害者自ら自賠責保険に提出する被害者請求の2通りがあります。

 以前に比べて、その比較論は聞かなくなりました。どちらも、同じ自賠責保険・調査事務所に書類が送られて審査するのですから、提出する書類が同じであれば、同じ結果になるはずです。どちらが有利ということはありません。しかし、書類を自ら収集、追加、取捨選択する被害者請求を被害者が選択したい気持ちはわかります。ネットでは、業者を中心に、被害者請求が良いとの意見が多く、それに反論する勢力がやや力負けの感があります。    秋葉事務所としては事務所立ち上げ当初から、以下のように整理・結論しています。問題は、どこまで書類を完備できるかが勝負ですから、不毛な比較はしていません。   事前認定vs被害者請求 最終決着します!   事前認定vs被害者請求 本質を語ろう    最近、事前認定でのおざなりな仕事をよく目にしています。保険会社の担当者が書類を完備しないで自賠責に送ってしまい、五月雨に追加提出を要請され、1年もダラダラ審査が延びているケースです。特殊な障害ゆえに、医療照会が追加・再追加で要請される場合は、ある程度仕方ありません。しかし、基本的に必要な書類や画像を漏らしています。担当者が忙しいことは私達も承知していますが、なんとかならないものでしょうか。

 さらに、頓珍漢な診断書が審査に回るケースも珍しくありません。私どもは、医師に対して修正・追記をお願いすることが日常業務です。なぜなら、医師は治療に関係ないとも言える、治療が終わった後の診断書には興味も熱意も薄れます。最も深刻なことは、賠償上の障害と、医師が判断する臨床上の障害も微妙に食い違う点です。鎖骨の変形はまさにこれにあたるもので、お医者さんは「この程度は日常生活に影響ないし、後遺症じゃないよ」と言いますが、保険上は12級5号となって、自賠責保険では224万円が支払われます。不完全・不正確の診断書が審査される・・・これは交通事故業界の隠れた、いえ、隠された問題なのです。

 そのような背景下、事前認定では、診断書の中身を精査する担当者などまったくに近い程、存在しません。そのまま右から左に審査に転送されます。精査しようにも、十分な医療研修を受けた医療調査員でもなければ、読み取る知識自体ありません。そもそも、診断書の内容に干渉するなど、担当者の越権なのです。やはり、任意保険の担当者が”進んでやるべき仕事ではない”のかと思っています。    では、被害者請求なら誰もが安心でしょうか? ここでも同じ陥穽があります。お金をもらって依頼を受けた事務所が、これまた基本的な書類・画像を提出しないで、形ばかりの不慣れな被害者請求をしているケースです。昨年のご依頼者様で、既契約の事務所を解任してきた方に多く見られました。ホームページでは力強く「後遺障害に強い」と表示していますが、ど素人の仕事としか思えません。お金を払っている分、先の保険担当者より始末が悪いものです。     自らの損害・ケガを数字(賠償金)に変えるには、それ相当の証拠書類を突きつける必要があります。もっとも多額の賠償金となる項目は、たいてい後遺障害です。そのための審査に臨むには、十分な準備が必要です。ある意味、これは後の賠償交渉よりも重大な場面なのです。必要な書類・画像・検査結果の提出漏れは、イコールその障害はなかったことになるのです。

 人任せ(事前認定)は心配です。また、弁護士・行政書士等に任せる(被害者請求を依頼)にも、選定・依頼は慎重にしなければなりません。

     

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   労災と交通事故(通勤災害)は切っても切れない関係です      今回は、労災が適用される交通事故において、保険会社からもらう賠償金には控除されない障害特別一時金について説明します。    労災で後遺障害が認定されると、障害年金(7級から1級)障害一時金(14級から8級)、障害特別支給金、障害特別一時金、を受給することができます。交通事故とは関係のない労災事故であれば、全て満額受給することができますが、交通事故では、相手方から支払われる後遺障害慰謝料・逸失利益というものが障害年金・障害一時金と重複してしまうため、金額によっては、労災からもらえない、年金では、一定期間もらうことができないといったことが生じます。     しかしながら、障害特別支給金と障害特別一時金については、相手方から貰うお金とは別に受給することができます。この点だけでも労災に請求するメリットはあります。これは、治療費を労災で請求したかどうかは関係ありません。最後の最後に会社と病院に書類を記載してもらい、申請すればOKです。(もちろん、労災でも後遺障害の審査がありますので、必ず貰えるわけではありませんが…)

     障害特別支給金と障害特別一時金については、下記の表のとおりです。

 障害特別支給金については、認定されると決まった金額がもらえるので、分かりやすいです。しかし、障害年金や特別一時金には〇日分というのがあり、請求者さんにとって一見ではわかならいでしょう。この〇日分というのは、算定基礎日額というものが〇日分支払われるということであり、皆様の賞与額によって決まります。

 「算定基礎日額」とは、負傷または発病以前1年間の賞与の総額を365日で割った額です。

 ※ 賞与の総額が給付基礎日額の365倍の20%を上回る場合は…といったことがありますが、今回はなしで考えましょう。

 仮に、1年間の賞与が夏・冬それぞれ18万2500円もらっていたとすると、合計で36万5000円となります。その金額を365日で割ると算定基礎日額が1000円となります。そのため、12級が認定された方であれば、障害特別支給金として20万円、更に障害特別一時金として15万6000円、合計35万6000円が受給できます。    このように、相手方からもらう金額以外に別枠で受給できるのです。「会社が労災を使わせてくれない、その後の会社での立場が…、手続きが面倒。」といった声をよく聞きますが、私からみると勿体ないなと思います。今は、分かりやすい金額で出しましたが、賞与がそれ以上もらえている方もいらっしゃると思います。手続きが分からないのであれば、交通事故に長けた事務所にぜひ相談してみてください。

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 顔面醜状痕、顔に傷が残るのは辛いものです。老若男女によって、その障害によるダメージはそれぞれ格差があると思います。10年前の基準では男女で差があり、3cm線状痕では、男子は14級、女子は12級としていたのです。それが、男女差別として改正されたのは以下の通りです。    ⇒ 醜状痕は残らないほうがいい    現在、医療の進歩から、形成術、美容整形術でかなり消すことができるようになりました。本件の場合は瘢痕でしたが、手術によってわずかな線状痕まで回復させる見込みがありました。面積から7級となる瘢痕も、12級の線状痕まで治すことができそうでなのす。

 しかし、損害賠償金の請求上、これはかなり賠償金が減ることになります。自賠責保険の保険金額ですら、7級は1051万円、12級は224万円です。つまり、手術前に症状固定して1000万円もらってから、20~30万円自腹となる手術費を払う方が圧倒的に賠償金が手元に残ります。多くの被害者さんは、たいてい「完全に治るまで示談しない!」と治療を続けますが、12級まで治してしまうと・・224万円まで減るのです。だったら、手術は示談してから(賠償金をもらってから)が得ではないですか。    この損得勘定は、あさましい考えでしょうか?    私達はこう考えます・・・己の治療方針と賠償方針を選択するは、被害者の権利です。   私達の仕事は、その情報提供をすることです。  

7級12号:顔面醜状痕(10代女性・山梨県)

【事案】

自転車で信号待ち停止中、信号無視で交差点に進入してきた車が青信号で進入してきた車と衝突、その衝撃で歩道に乗り上げてきた車に跳ね飛ばされた。まったくの”とばっちり事故”。全身を強く打ち、多発骨折、顔面にも傷を負った。

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 金融庁は13日、自動車やバイクの所有者に加入が義務付けられている自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)の保険料を検証する審議会を開き、今年4月の契約分からの値下げを決めた。新型コロナウイルスの流行後の交通量減少や安全装置の普及などで事故が減ったことを踏まえた。値下げ幅は今後、議論するが、全車種平均で8%程度下がる見通しだ。    自賠責保険は自動車交通事故の被害者や家族を救済する制度で、死亡事故は最高3千万円、後遺障害では最高4千万円が支払われる。利益や損失を出さないように運営されており、保険金の支払いが減れば保険料を引き下げる仕組みだ。 <(1/13)共同通信さま より>     交通量の低下=事故数の低下は当然のことです。しかし、これは軽微な事故が減ったことで、物損の支払いを行う任意保険の支払い減につながると思います。実は、令和2年の死亡数は令和1年を上回っています。そもそも、自賠責保険の掛金の算定は複数年、少なくとも2年の経過をみて計算・決定しますので、今回の値下げは、ここ数年の傾向とみるべきです。

 一方、任意保険の値下げは・・・難しいと思います。契約者の支払った掛金の半分は、おおよそ経費(運営費=設備+人件費+広告費)にあてられます(残り半分が支払準備金=保険金です)。経費は年々上昇するものです。余程、事故の支払いが減らない限り、下げられないのです。    

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 交通事故被害で自動車を修理する場合、修理金額の全額がもらえないことがあります。それは、被害自動車が古い為、減価償却と言って、自動車の価値が年々下がるからです。民法の賠償責任とは、公平の観点からその被害物の価値を限度に弁償することになります。

 例えば、新車200万円で購入した自動車も10年乗れば、およそ20万円までに下がります。それだけ使った「物」ですから、消耗しますので価値が下がるわけです。この自動車が追突されて、修理費が仮に40万円だとしても、相手の保険会社は、その車の価値である20万円しか払わないと言うのです。ここでもめることが毎度のことなのです。(その対策として、20年程前に「対物全損差額費用特約」が誕生、この差額20万円を払ってくれることも増えましたが・・。)

   いずれにしても、法律上の賠償責任のルールであっても、ある日、突然、被害者さんは、修理や買替から目に見えない時間や手間の被害を負うことになります。これを埋めるものは、残念ながらお金でしかありません。ここで、物損のわずかな金額で騒ぐより、ケガの賠償金をしっかり確保する事、これが交通事故解決のコツと言えます。これに早く気付いてほしいと思います。本件もその好事例です。  

14級9号:頚椎捻挫(50代男性・静岡県)

  【事案】

自動車にて路上駐車中、追突される。頚椎捻挫の診断となり、仕事に使う荷台の専用機械が破損した。

【問題点】

ケガの被害はさておき、物損で相手保険会社と紛糾。理由は、よくある古い車両の全損金額が低すぎること。それ以上に、専用の機械を積み込む車両が古い車種の為、代替車両が見つからなかった。困った代理店さまから相談が入った。

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 詐病者とは、保険金等を目的に、嘘・偽りの症状を訴える者です。もちろん、これは保険金詐欺に類するもので、刑罰の対象です。人身・物損に限らず、あの手この手で保険金を詐取しようと考える者が、私達や弁護士事務所にしれっとやってきて、保険会社の横暴な払い渋りにあった気の毒な被害者を装います。なかなかに巧妙で、この道何十年の弁護士先生も騙されることがあります。まして、交通事故業務歴の浅いと言うか、人生経験の少ない若手など、簡単に騙されます。    私達の相談会でも、毎年、数人やってきます。私は、保険会社・代理店時代から多くの例を見てきましたから、割と見抜くことができます。しかし、疑うのは簡単です。保険会社側はそれでよいでしょうが、私達の立場として、真実の被害で助けを求める被害者さんを疑い、見捨てることは絶対に許されません。嘘か本当か、迷うこともしばしばです。こればかりは、経験を積むしかないと思います。できる事として、色々な手口を知っておくことでしょうか。    最近は、その保険金の詐取方法をレクチャーし、共犯者として呼び込む、新手の組織が現れました。コロナ対策の持続化給付金の詐欺に代表されるように、あらゆる補助金・保険制度の穴をついて、お金を不正に得る元締めみないな組織が増えているのです。彼ら、給付制度や保険約款を本当によく勉強しています。これら不正によって、払われる保険金の額は膨大です。業界ではこの全体像を「モラルリスク」と呼んでいます。

 保険の掛け金は、正当な保険金支払いが前提で計算されています。支払いが増えれば、結局、契約者全員の掛け金値上げで回収せざるを得ません。国の給付制度だって元は税金です。不正請求者・不正受給者は国民全体の敵なのです。そして、強調したいのは、不正請求者の存在こそ、給付金の支払いを切に待つ困窮者、十分な保険金が支払われるべき被害者、これら真に困った人達に対して、審査の厳格化・長期化をもたらすのです。

 私達は、保険会社と対立する被害者側の立場です。しかし、”不正請求や保険金詐欺を排除すべき”との立場は一緒だと思っています。        

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